時の流れを越えてやってきた17歳のハマーン様UC   作:ざんじばる

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新たなる牙

「例の信号をキャッチしたわ。多分これが話に会った輸送船でしょ」

「そうか。座標をよこせ。それから見失わないように注意しろ」

 

 セラーナの来訪のその翌日。ハマーンはブライトが用立てたHLVに乗って宇宙へ上がった。そこから更に一日。ラー・カイラムで受け取ったネェル・アーガマたちの予想航路に沿ってZプラスを飛ばしていた。

 

 急遽用意されたサブシートに座るのはロニ。ラー・カイラムに残っても死刑を待つだけの彼女を引き取り、ここまで交代しながら監視態勢を維持してきたが残念ながらネェル・アーガマの発見は未だならなかった。そうして先にセラーナが用意したジオン穏健派の輸送船とランデブーすることになったのだった。

 

 サブシートに詰まれた機材とにらめっこして予定コースを確認しながらロニが口を開く。

 

「ねぇ。あんたハマーン・カーン本人なのよね」

「だからなんだ」

「ううん。なんかイメージが違ったから。こう『鉄の女!』みたいな感じかと思ってたのに」

「なんだそれは」

 

 ロニの妄言を一笑に付すハマーン。ロニもそれに頷いて。

 

「それがまさかヤラハタなんてねぇ」

「ぶっ殺すぞ! 貴様!!」

「冗談よ。でもまあこの時代のあんたは経験することなく死んじゃったのよね」

「よほど死にたいらしいな。コックピットから叩き出してやろうか」

「いや別に馬鹿にしてるわけじゃ無くて……そんな人生私は嫌だなって」

「それが馬鹿にしてるんじゃなくてなんなんだ」

 

 ハマーンは呆れたように言うがロニは首を振って。

 

「だからさ。あんたとバナージがトリントンで助けてくれてなかったらさ。私もそんな最期だったんだろうなって。だからこれでも感謝してるのよ。あんたたちにはさ」

「……そうか」

「そ。私子供欲しいんだよね。それもたくさん。だから経験しないで死ぬなんて嫌だなって。私が殺した人達からすると巫山戯んなって感じだろうけど」

 

 ロニのその発言に対してハマーンは重い部分には触れず。

 

「たくさん?」

「そうね。十人くらいは欲しいかな」

「じゅッ!? ……ベースボールチームでも作るつもりか?」

「あはは。それもいいかもね。あるいはもう一人頑張ってフットボールチームか」

「正気の沙汰とは思えんな。貴様は本能に支配された猿か?」

「なんで? いいじゃない子供は多い方が。子供は可能性の塊だもの……ってこれもお前が言うなって感じだろうけど」

 

 またしても切っ掛けを振ってくるロニに眉を顰めると、ハマーンは予防線を張った。

 

「貴様の罪悪感など私の知ったことではないからツッコまんぞ。……貴様は母になりたいのか?」

 

 そんなハマーンにロニは「あはは。残念」と苦笑してから言葉を続けた。

 

「そう。私は母親になりたいの」

「一足飛びだな」

「乙女思考全開のあんたから見たらそう見えるかもね」

「よし、死ね」

「だから馬鹿にしてるわけじゃないってば。ようは好きな相手と関係を深めた結果として子供を授かりたいのか。それとも子供が欲しいから相手を探すのか。順序が違うだけで過程も結果もそう変わらないでしょ」

「その差は決定的だと思うが……だいたい子供が欲しいという目的があってから相手と関係を持つなど不純ではないか。打算的というか」

「そういう思考回路がまさしく乙女———ごめんごめん。もう言わないから殺気を飛ばしてくるの止めて。まあでも大概の人はその後のプランを持った上で相手を決めてるんだと思うよ。人生少しでも間違えないためにさ」

「…………よく分からん」

「そ。まああんたみたいのが居てもいいのかもね。可愛らしいし。今のところは」

「なんだ今のところはって」

「10代の今ならまだOKってこと。これが20代も後半になってたら痛々しいだろうけど」

「ふん。余計なお世話だ……まったくなんなんだこの会話は」

「特に意味はないわ。単なる暇つぶしの女子トークよ。ほら見えてきた。三時の方向」

 

 そう言ってロニが指し示す先。岩塊に隠れるようにしている船影が見えた。非武装貨物船。小型だがモビルスーツを両弦に一機ずつくらいなら格納できるだろう。やがて片側のハッチが開き、こちらを誘導するレーザー通信が飛んできた。待ち合わせ相手に間違いないらしい。ハマーンは誘導に従って機体を優しく着艦させた。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 機体の火を落としてゼータプラスから降りた二人をこの貨物船のクルーが総出で待ち受けていた。そしてハマーンの姿を見て一斉に驚きの声を上げる。一方でハマーンの方にも彼らに覚えがあった。

 

「あなたたちはキュベレイ開発チーム?」

「おお。さすがはセラーナ様がハマーン様の再来と言われたほどのお方。我らのことをご存じですか」

 

 さすがもなにもつい先日までいっしょにキュベレイを開発していた仲間なのだが。前に出て言葉を返してきたのはテスト時に管制を務めていた男だ。時の流れ相応に老けてはいるが。そんな感想をお首にも出さずハマーンは話を続けた。

 

「セラーナが用意してくれた特別なモビルスーツというのはあなたたちが開発したのか?」

「そうです……といっても生憎、基本設計を担当したものはこの場にはいませんが。既にジオンを去ってしまっていますので。彼女が残したものを私たちで完成させたというわけです。まあまずは見てみてください。その間に乗ってこられた機体にも補給をしておきましょう」

 

 そう言って彼らは反対側の舷側にある格納庫へ向かって歩き出した。大人しくハマーンは後に続く。ロニはゼータプラスの補給状況を見守るためその場に残った。廊下を歩いている途中ハマーンは船が振動するのを感じ取った。

 

「船が動き出したのか?」

「ええ。先ほどセラーナ様からネェル・アーガマという連邦の戦艦の行き先について連絡がありましたのでそちらに向けて加速を開始しました」

「間に合うか?」

「もちろん。この船の加速を済ませてから飛び出していただけば問題なく間に合うはずです。この機体なら」

 

 そう言って格納庫の扉を開けた。その先には。白亜の機体が鎮座していた。機体の要所に紫の差し色が入っている。ハマーンのパーソナルカラーだ。その機体を見てハマーンは感嘆の声を漏らした。

 

「大きいな……モビルアーマーか?」

「いえ。区分としては重モビルスーツとなります。一見鈍重に見えるかもしれませんが、機動性・反応は随一ですよ」

 

 ハマーンの感想の通りその機体は通常のモビルスーツよりかなり大型だった。重厚なボディラインがその機体に秘めた凶暴な力を感じさせる。

 

「設計は少々前ですがシナンジュのデータをこっそり拝借してサイコミュの制御系も最新化しています。こいつならシナンジュはおろか連邦のユニコーンとかいうガンダムにだってそうそう引けはとりませんよ」

「そうか」

 

 とここまでそのモビルスーツのことを自信を持って語っていた男はなぜか表情を曇らせた。

 

「とはいえあなたをこの機体に乗せるのは少々複雑なんですが……こんなことになると知っていたらあなた専用機を用意しておきたかった。コイツも実は急遽リペイントしただけでして」

「それは神ならぬ身には不可能というもの。こんな事態を予想できるはずがあるまい。これで十分だ。私は満足しているよ」

「そう言っていただけると幸いです。その代わりと言ってはなんですが、内部のセッティングは残されていたハマーン様のデータを元に最適化してありますのですぐに馴染むはずです」

「あなた達に感謝を」

「とんでもない。私たちこそこのような機会を与えられたことに感謝しています。もう一度ハマーン様に会えるなど」

「私はあなた達が知るハマーン・カーンとは違うぞ」

 

 万感を込めるように言う男とその背後の人々へハマーンは断りを入れるが、男は首を振って否定した。

 

「いいえ。あなたもまたハマーン・カーンです。その姿。声。そして何よりその有り様がハマーン様だと告げています」

「そうか…………では行ってくる」

「どうかご武運を」

 

 ハマーンはクルーたちに見送られながらコックピットへと乗り込んだ。ジェネレーターに火を入れる。クルーたちが格納庫から待避したところでハッチが開き始めた。船の甲板へと機体を歩かせる。外に出てみれば船の反対側からゼータプラスも出てきていた。向こうの補給も終わったらしい。

 

「ハマーン・カーン。——— 出るぞッ!」

 

 ブリッジに通信を入れてからスラスターを焚く。船の前方へと飛び出した。スラスターを切ってそのまま慣性に従って宙を滑りながらゼータプラスを待つ。まもなくウェイブライダーが追いついてきた。その上に機体を乗せてロック。そのまま二機は戦場へと駆け出した。始まりの地。工業コロニー『インダストリアル7』へと。

 

 

 

 ◇◇◇

 

 

 

『インダストリアル7』周辺宙域。ラプラスの箱が示す最期の地点に向かっていたネェル・アーガマはそこで激戦に見舞われていた。ネェル・アーガマの前方から攻めてくるのは袖付きのモビルスーツたち。これをユニコーンとネェル・アーガマの直掩部隊が幾度となく取り付かれながらも危ういところでせき止めていた。

 

 そして偶然だろうが袖付きたちと挟撃するかのようにネェル・アーガマの背後から襲いかかってきたモビルスーツが一機。黒いユニコーン、バンシィ・ノルンだった。そしてそれを操るのは。

 

 ——本当のあなたに戻って、リディ少尉。それ以上自分を傷つけないで!

 

 けれどミヒロの思いは届くことなく、リディが駆るバンシィがビームマグナムをネェル・アーガマへ突きつける。射線を塞ぐようにマリーダのクシャトリヤが間に立ちはだかり。次の瞬間には誰かの命が消える。

 

 そんな絶望的な思いで見つめるモニターの先、バンシィの背後から突如としてメガ粒子が襲った。咄嗟の反応でバンシィは回避するもビームマグナムを放つ余裕はなかった。間一髪でマリーダは、あるいはネェル・アーガマの乗組員たちは命を繋いだ。

 

「なんだ今の攻撃はッ! どこから来た!?」

 

 思いがけない事態に艦長のオットーが吼える。その声に我に返ったセンサー長は即座にコンピュータに射撃点を予測させ、その位置をレーダーで精査した。返ってくる反応が一つ。報告のために声を張る。

 

「黒いユニコーンの遙か後方からの長距離狙撃です! この反応は……」

「どうした! なにが見つかった!?」

「高熱源体急速に近づく。数は1。この動きは……モビルスーツですが…………通常のモビルスーツの三倍の速度で接近中ッ!?」

「識別信号は!?」

「なんだこの識別信号は? 見たことない……いや、ライブラリに該当あり! これは……AXIS(アクシズ)です!!」

「なんだとぉッ!?」

 

 オットーが驚愕に叫ぶと同時に、そのモビルスーツはモニターで捉えられる距離に姿を現した。白亜に輝く凶暴なシルエットのモビルスーツ。そのモビルスーツは常識外れのスピードで距離を詰めるとそのまま黒いユニコーンへと躍りかかるのだった。




とりあえずまだハマーン様がなにに乗ったのかは秘密です。
アンケートを用意してみたのでよければ次回までに予想してください。

ハマーンが乗ってる新型機のいったいどれ?

  • ドライセンをシュネーヴァイス化しちゃった
  • トワシズで出てきたシャア専用ザクⅢ
  • 意外なとこでブレッダとかジ・O系じゃね?
  • 重MSといったらクィン・マンサだろ
  • あれだよ。あれ。シャア専用のヤツ
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