無口な瑞鶴さん   作:榊 樹

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今回はガバ設定が割と出て来ますが、そんなもんなんだ、程度に思いながら見て下さい。


第10話:明石は見た

誰か来たのに気付くと同時に、その誰かがすぐそこに居る事にも気が付いた。廊下の長さ的に今の姿がバレバレになる。なので、ここは三階だがバレるよりはマシだろう、と窓を開けて私は鳥になった。そしてあっという間に重力に従って落ちた。

 

まぁ、いつも艦載機越しで見る光景の方が凄いので新鮮味も何も無かったが、着地をするのは別だし、思ったよりも高かった。しかも身体はボロボロ。唯一の救いは下が芝生だった事。

 

着地の取り方なんてよく知らないから、普通に両足で着地して、身体に掛かる負荷によって両手を地面に突いた。

 

ゴシャッ!と嫌な音が両足から聞こえる。

 

ちらりと見てみると膝から骨が突き出ていたし、足首より下は両足とも捻れてる。両手を見ると軟体動物に負けず劣らずのぐにゃぐにゃっぷりだった。

 

痛みは消せる。だが、衝撃は消せないし、感覚も残してある。骨が突き出たからか、足の肉からなんか変な感じが伝わってくる。しかも、落ちた際の衝撃で集中力が保てなくなり、身体の至る所から大量の血が噴出する。

 

ボロボロの身体に私を中心とした血溜まり。完全に投身自殺のような状態になった。

 

隣にある建物の中から、人が走る音がする。恐らく、あの気絶した子の悲鳴を聞いたのだろう。四肢が使い物にならなくなったので、出来れば私も助けて貰いたいなぁ、なんて思うが、この惨状がバレたらバレたで更に騒ぎになるだろうからやっぱりバレたくないというジレンマ。あ、出血止めとこ。

 

今更ながら、何故艦娘の力を使わなかったのだろうかと後悔してしまう。あれは身体の表面に薄い膜が出来て、それがダメージを肩代わりしてくれるという代物で艤装無しだと効果は半減する。装甲の強度はこの膜の厚さにも比例するので、私の場合はあまり効果は期待出来そうにないが無いよりはマシだっただろう。

 

・・・うむ、今更どうこう言っても仕方無い。

次は気を付けよう。

 

 

さて、取り敢えず入渠するか。

 

 

 

 

無事な所を見つける方が困難な程に全身血だらけでボロボロ。何故生きてるのか、ソレを見た時の第一印象が驚きや恐怖よりも勝る勢いで瀕死だった。

 

四肢が使い物にならないのだろう。ズルズルと身体を地面に擦り付けながら、肘で芋虫のように這う姿に人の尊厳を見い出せない。日の出間近にそんな憐れな姿を曝す(さら)瑞鶴を少し離れた場所で足を止めて見詰める人影があった。

 

その者の顔には何の感情も映っていない。驚きも恐怖も増してや疑問すらも抱いていない。それを助けようとはせず、只々ソレを見るだけ。目に映る光景をただ認識してるだけ。

 

少しすると、未だに茂みの上に赤い道を作りながら這いずる瑞鶴から視線を外し、人影は去って行った。

 

 

 

それから数十分後。

 

 

「ごめんなさい、赤城さん。すぐに準備するわ」

 

「はい」

 

 

そんなやり取りが港近くで行われた。

 

 

 

 

えっちらおっちらと地面を這って何とか入渠場に到着。実は入渠場はあの建物からは結構離れた所にあり、しかも、ふと後ろを振り返ると芝生が赤っぽくなってたから、割と他の人も使うような道を通る近道は使えず、かなり遠回りする羽目になった。いつもより遠く感じる道のりが精神的に辛いです・・・。

 

ん?腕は大丈夫なのかって?・・・いや、実は途中から艦娘の力の事を思い出して、かなり楽になったりしたから、割と余裕。はい、そこ。さっきの反省がまるで活かされてないとか言わない。自分でも私は鳥頭か、と自己嫌悪したんだからもう勘弁して。

 

・・・・・・・・・七面鳥だけに。

 

 

さて入ろう。

さっさと入ろう。

流石に身体が冷えてきちゃった。

 

服は使い古したかのようなボロいスカートと紐パンだけだし、這いずってたからもう殆ど脱げてるのでズルズルと湯船に浸かる時に勝手に脱げた。

 

包帯は・・・あれ?無い?もしかして途中で千切れて、完全に全裸で徘徊してた?・・・抱腹前進してたからセーフって事で。

 

 

ぬるっと頭から湯船に入る。

 

 

あ゙〜〜〜~~~〜・・・まぁ、そこまで温かくも無いんですけどね。しかも、見た目は全然よろしくないしであんまりいい気持ちにはならない。慣れるまでそれなりに時間が掛かった。

 

それでも入らない訳にはいかないのでぐじゅぐじゅと再生していく肉体から目を逸らすように天井を見て、物思いに耽ける。

 

今更ながらに思い出した事がある。そう言えば、エロピンクと会わなかったな、と。大本営所属だと聞いたから、 ちょっと、ちょっとだけ、ミジンコレベルで会える事を期待したんだけど居なかった。

 

あ、大本営と言えば、あれだ。虚ちゃん結局の所どうなったんだろ?

 

記憶を探っても大本営に行った時は影も形も無かったし・・・あ、同じ型の子なら居たな。でも普通の女の子って感じがしたから、その子では無さそう。

 

思い返してみれば、症状が私と似てたから私と同じく欠陥機みたいなものであそこに突っ込まれてたって考えも出来るんだよね。となると、私も寝てる時はなんか喚いてたりするのか?いや、無いか。もしそうなら、多分その声で起きてるだろうし。

 

起きるで思い出したんだが、虚ちゃんのあの私の胸に対する執着は一体何だったのだろうか?最後の最後に態々包帯を解く程、気に入っていたのかな?

 

モミモミ

 

 

うーん・・・特に何とも思わない。強いて言うなら、再生中の右胸が大変気持ち悪いぐらい。

 

・・・・・・寝るか。

 

 

 

 

入渠終了の三十秒前に起床。外は完全に日が上に昇って、大体昼過ぎになっている。経験上、一度出撃すれば次の出撃は最低でも二、三日は空く。その間は気兼ねなく書類作業が出来る。

 

入渠終了を知らせるブザーが時計から聞こえてきた。

 

立ち上がって己の身体を確認する。傷一つない四肢、胸の傷も完全に消えた。手を開いたり閉じたりしてみても特に違和感は無い。相変わらずの再生能力も今では慣れたものだ。

 

身体を拭こうとタオルを手にしようとした時に気が付いた。視界がいつもより狭い。正確には左側が見えない。

 

 

・・・・・・ハハ。

 

 

急いで虹彩を全開にする。

 

 

のお゛お゛お゛お゛!!!

 

 

右眼に強烈な光が入り込むと同時に左眼からピキリという何かが割れる音がしたような気がした。虹彩を調整するまで右手で押さえて、収まってから設置されている鏡に映り込む自分の顔を見た。

 

特にこれと言って変化は無いいつも通りの無表情。ただ、左眼に確かな変化があった。正確には左目の瞳。

 

右目の瞳の黒や黄色のような色彩は無く、眼球をホワイトとすれば瞳はオフホワイトのような白。そして、瞳の中心から瞳全体に蜘蛛の巣のような(ひび)が入っている。

 

虹彩を調整してみたが、右眼の瞳だけが大きくなったり、小さくなったりするだけで、左眼の瞳はピクリともしなかった。視線だけあちらにやったりこちらにやったりしてみたが、右眼は動くが、左眼はやはりピクリともしなかった。

 

 

左眼が死んだ!

この欠陥機!

 

 

試しに修復剤を掛けてみたが、うんともすんとも言わない。一旦取り出して、もう一度修復剤を掛けて鏡を見ると眼球は戻っており、今度は瞳は罅割れの無いオフホワイトになっていた。

 

罅は無くなったが、動かないのは変わらないし、何も見えない。右眼だけ動かすと、右眼だけがギョロギョロと動いてなんか気持ち悪い・・・気持ち悪くなってばかりなような気がする。

 

 

さて、どうしたものか・・・目が見えなくなる、というのは欠陥の中でも相当なモノの気がする。それに日常生活でも支障が来たす。

 

・・・あー、うん。なんか、新しく欠陥が増えるという異常になんか慣れてしまった。むむむ、取り敢えず隠すのは確定として、どうやって隠すか、か。髪を前にパサりとしてみるとか?・・・頼り無さそう。眼帯は着けてる時点で何かあったとバレるから本末転倒だし。色を塗る・・・は良い色も道具も無い。

 

うーん・・・何も思い付かないし、消去法で髪前パサにするしかないか。欠陥が増えるのは別に構わないけど、こうやって隠蔽工作するのが少し面倒だ。どうせなら、そういうのが楽な欠陥とかになって欲しかった・・・私は何を言ってるんだろう。

 

まぁ、ここで何の進展も無い事をグダグダ考えてても時間の無駄だから、部屋に戻りますか。ついでに、この髪前パサがどれだけ隠しながら動けるかを試してみますか。

 

 

 

 

髪前パサ凄いわ。結構ふわふわしてる感じだけど、なんやかんやで前にパサりとした状態に戻るから何にも準備出来ない今では中々の高性能。しかも、かなり激しい動きをしないと髪が目の辺りから外れる事が無い。戦闘だと潮風が凄い事もあって多分バレバレだろうけど、地上だと心配する事は無さそう。

 

さて、さっさと虹彩を調整して・・・あ、今ピキリみたいな音がした。鏡が無いから分かんないけど、多分割れたな。となると、虹彩調整をすると割れるのか・・・なんで?まぁいいか。割れた所で視界に何か変わる訳でも無いし。

 

さってさってさってっとー早く書類終わらそー。

 

 

この後、視界が(せば)まった事により、片目で両目分の仕事を補う大変さに四苦八苦しながら頑張ったり、まさかの夜中に呼び出されて涙目(心の中)になりながらも闇夜の海を出撃したりしたけど、今日もずいずいは元気です。

 

 

 

 

『ん、どうかしたの?』

 

 

あぁ、またこの夢か。

 

 

『え?周囲の人間が阿呆過ぎてつまらない?むむむ・・・あ、ならこういうのはどうかな。自分も阿呆になれば、周囲の人と同じレベルになれるよ!』

 

 

いつもどこかおかしな答えをそれが然も当たり前のように語る少女。

 

 

『どったの?話したくない?・・・そっか・・・・・・んー?べっつにー。ただギュッとしてるだけー。え?恥ずかしいから止めろ?こんのマセガキめー。うりうり、ここか?ここがええんか?』

 

 

どうでもいい時だけ周囲の阿呆共と同じように割と自分の思い通りになるのに、思い通りになって欲しい時だけその通りにいかない、そんな彼女。

 

 

『相変わらず綺麗な髪してるよねー・・・弄るの止めろ?よいではないかーよいではないかー』

 

 

人の髪を弄るのが好きらしく、よくいろんな髪型にさせられた・・・表面は嫌がっていたが、心の中ではそれが嬉しくて、楽しくて、それが原因で髪を伸ばし始めた事もあった。それを女装に目覚めた?と聞いて来た時は思わず張り倒してしまっが・・・。

 

 

『見て見て〜。どう?チアガールの格好・・・顔真っ赤だけど大丈夫?気にするな?ふーん?・・・ではいきます!チアガールが〜・・・立ちあがーる・・・え?その為に着替えたのかって?そうだけど?・・・え、なんでそんな大きな溜め息吐いたの?』

 

 

スタイルがいいのにその事にまるで無自覚。そもそも、自分がどれ程に魅力があるのかすら気が付いていない。

そして阿呆。誰よりも阿呆。極め付けにギャグが寒い。無駄に凝ってる癖に。

 

でも、そんな彼女だからこそ・・・

 

 

『ハロハロ〜。お?どした?そんなに思い詰めた顔してからに。悩み事?なら、お姉ちゃんに聞かせ給え!ほらほらー遠慮せずにぃ。聞くだけならタダだよぉ?・・・む、明日話す?むむむ、気になるが仕方無い。それじゃ、今から私のスーパームーンウォークでも見せてあげよう。・・・・・・いくよー。ヒャッホーーー!!』

 

 

人が一世一代の思いを告げようと悩んでいると言うのに本人は能天気。こちらの気が抜けて、結局はその日も阿呆な事に付き合う。

 

そして、言おうと決心した次の日に・・・

 

 

『逃げて!!』

 

 

 

 

「ッ!!?」

 

 

ソファーの上で寝転んでいた青年が悪夢から目を覚ましたかのように見開く。額に掻いた汗を拭いながら、今のが夢であった事を認識する。と、同時に廊下からドタバタと誰かが走る音が聞こえ、バンッ!と勢い良く扉を開いた。その犯人はピンク色の髪が特徴的な十代くらいの活発そうな笑みを浮かべる美少女だった。

 

 

「お久しぶりです!明石ですよー!ちょっと面白い事になったので報告に来ましたー!」

 

 

何やら興奮が抑え切れないかのような口調で話し掛けて来た彼女に対して、ほぅ?と少し興味深そうに目を細めた。

 

 

「お前がそこまで興奮するのも珍しいな。何があった?」

 

 

トーンが低めの若干、怖い印象を受ける声を発する青年に対して、まるで気にせずに近寄って束の書類を渡す明石。

 

 

「いやぁー本当に最っ高ですよー!もう毎日が楽しくて仕方無いって感じです!見て下さいよ、これ!あの欠陥機の瑞鶴が一隻で夜戦してしかも全勝してますよ!それも二回!もう意味不明ですよ!!ついでに左眼も失明しましたし、もう何コイツって感じですよ!」

 

 

何があったのかを端的に説明しながらゲラゲラと笑い転げている明石を他所に束の書類をペラペラと字が見えているのかすら怪しい速度で見通す青年。

 

 

「ふむ、まさか本当にやってのけるとはな。失明は痛手だがそれに見合う結果だ。普段の行為を見てまさかとは思ったが、これは良い収穫だ」

 

「おやおやぁ?その割にはあんまり気分が優れてないような表情ですねぇ?あ、もしかして夢でも見ました?今日はどっちです?」

 

「喧しい。そんなモノはお前に関係無いだろう」

 

「成る程ー。初恋のお姉ちゃんの方ですかー」

 

「ッ!?貴様ッ!」

 

 

言い当てられて、その端正で澄ました顔を一気に見る者を凍えさせるような憤怒の表情へと変貌させる青年。それに対して明石は特に慌てる様子もなく、どこか可笑しそうに続けた。

 

 

「嫌ですねぇ。貴方が分かり易いだけですよー。そっちの夢だといつも少し不機嫌に誤魔化すんですから。あ、因みに婚約者(仮)の方だと特に返事も無く話を終わらせますね。そういう癖は早めに治しとくべきだと思いますよ」

 

「・・・はぁ、ご忠告感謝する」

 

「もう何度目でしょうか?」

 

 

厭らしくニヤニヤと薄笑いを続ける明石だが、外から新たに足音が聞こえていつもの人懐っこい笑顔へと即座に変え、青年も近寄り難い雰囲気は消して爽やかそうな雰囲気を纏った。

 

 

コンコンコンコンと扉が四回ノックされ、入って来たのは委員長のような風貌で眼鏡を掛けた、これまた美少女。その少女は明石達を見付けると少し近付いて、用件を切り出した。

 

 

「数日後にとある鎮守府への抜き打ち検査が行われる事になりました。これがその資料です」

 

 

そう言って渡される資料を受け取る青年に、ニヤリと何かを思い付いたかのような笑みを一瞬だけ浮かべた明石。

 

青年が見始める前に明石は青年が座るソファーの後ろに回り込み、青年を所謂あすなろ抱きにして目の前の委員長風の少女に見せ付けるかのように耳元に顔を寄せた。

 

 

「提督ー、明石にも見せて下さいよー」

 

「鬱陶しいから離れろ」

 

「まぁまぁ、そう言わずに〜。んー、もうちょっと身体を寄せた方が見え易いかなー?」

 

「・・・」

 

 

そう言いながら、何気に豊満なその胸を押し付けながら提督と呼ばれた青年に顔を近付ける明石にそれを心底鬱陶しそうにして、まるで心動かされない青年。 そして、目の光と表情が消えた状態で見下ろす委員長風の少女。

 

 

「明石、離れなさい」

 

 

端的に発せられたその言葉に温度は無く、身体の芯まで凍ってしまいそうな程に冷淡だった。それでも明石はそちらをチラリと向くとどうしたの?とでも言わんばかりの表情で問い掛けた。

 

 

「淀、どうかしたの?」

 

 

淀と呼ばれた少女はその問に対して、今度は怒気を含んで少し声を荒らげて再度応えた。

 

 

「いいから離れなさい!明石!!」

 

「おっと、ごめんごめん。冗談だよ、淀。そうカッカしないでよぉ」

 

 

少し堪えたかのように謝りながら、提督から離れて謝る明石にそんな明石をキッと睨む淀と呼ばれた少女。そんな二人を見ながら内心溜め息を吐きつつ、打開策を練る提督。

 

 

「大淀、用件がこれだけならもういいだろう。明石には俺から言っとくから」

 

「失礼しました。用件はこれだけです。それと明石にはよく言って聞かせて下さい。特に私の前で提督に不用意に接触するな、と」

 

「ごめんってば〜淀〜。そんなに拗ねなくても・・・」

 

「それでは、私はまだ仕事があるので失礼しますッ」

 

 

そう言って、やや乱暴に扉を閉めてカツカツと廊下に足音を響かせながら去って行く大淀を耳を澄ませながらシーンとする提督と明石。聞こえなくなって来た頃に明石は肩を震わせ始めて、もう耐え切れないとばかりに笑いだした。

 

 

「アッハハハハハハハ!!見ましたか!?さっきの淀のヤンデレみたいな表情!もう可愛いなぁ淀はぁ♡拗ねてる顔もすっごく興奮する♡」

 

「はぁ、アイツも難儀な奴に惚れられたものだな。お前の本性を知ったらどんな反応をするんだろうな」

 

「んー?別にいいんですよー。ああ見えて、淀はヤキモチ妬きのゾッコンですからねぇ。それなのに素直になれない淀ぉ♡あぁ、もう本当に虐め甲斐が有りますよぉ♡」

 

(苦労しそうだな。にしても大淀のヤツ、女運が無いと言うかなんと言うか・・・まぁ、似た者同士でもあるし、何かと気が合いそうだからほっとくか)

 

「あ、そうそう提督。さっきの書類ってあの瑞鶴を送った鎮守府の事でしょ?大丈夫なんですか?」

 

「あぁ、鎮守府内で艦娘が何者かに気絶させられる事態が発生したらしい。外傷は無かったものの目覚めた瑞鳳には相当なトラウマだったのか、当時の事を聞いたり暗い廊下を見たりしただけで、発作やら過呼吸に目眩、終いには気絶してしまう程の重症なんだと」

 

「あー!それあれですね!先日あった奇跡的な事件!・・・くふふ、思い出しただけで笑えて来ますよ。なんたって逃げ出した後の瑞鶴の方がどう見ても重傷なのにだぁれも気が付かない!四肢がまともに使えずに這いずり回る姿は爆笑しましたよ!あ、そう言えば一人居合わせた艦娘が居ましたね。確か、元々は提督の下に居た赤城さん」

 

「赤城か・・・あれは完全な予想外だったよ。あの赤城とあの肉達磨の性格だとほぼ深海化一歩手前まで行けるだろうとは思っていたが、まさか感情を消して自力でそれを阻止するとはな。本当に赤城型は大した艦娘ばかりだ」

 

「あぁ、自分が深海化するって何故か気付いた時は驚きましたね。その対処法も数ある中の一つをあっさりと考え付いて実行するんですから。でも、それを誰にも言わないで勝手にするとは・・・あの赤城さんらしいと言えば、らしいですけどそれに狼狽える加賀さんは見物でしたよー」

 

「加賀には本当に感謝してるよ。思い込みが激しい所が無ければ、最高クラスの艦娘だったろうに。その欠点があるだけで寧ろ誰よりも扱い易くなった。計画がトントン拍子で進んだのも彼女のお陰だ」

 

「瑞鶴の手を握り潰した時は笑い死ぬかと思いましたよ!実際、過呼吸気味な時に淀に見付かって、アタフタと慌てる淀は最高でした!ここぞとばかりに人工呼吸をしようか顔を真っ赤にして迷い、最終的に目をギュッと瞑って唇を近付けて来る淀を眺めるのは何物にも替えられない至福の時でした!ご馳走様です!」

 

「そうかい。そりゃよかったな」

 

「話は戻りますけど、その審査する所ってあの肉達磨の所ですよね?どうするんです?庇います?」

 

「いや、アレにはもうこれ以上の結果を見込めない。出したとしても大して意味の無いものであるし、艦娘達もそろそろ限界だろう。ここら辺が潮時だ」

 

「・・・へぇ。なら、貰ってもいいですか?」

 

「好きにしろ。ただ、それまでに少し時間が掛かるがな」

 

「生きているのなら、それで十分ですよ・・・となると、そろそろ憲兵ごっこは止めて、本職に戻るんですね?」

 

「そうだな。次は俺が引き継ぐだろう」

 

「その時は私も同行させてもらいますよ?そんな楽しいそうな現場に一人で行くなんて卑怯です」

 

「大淀はいいのか?アイツまで連れて行くのは無理だぞ」

 

「うーん・・・ま、大丈夫ですよ。あの娘の行動は全て監視カメラでいつも見てるので」

 

「あぁ、そう」

 

「それでは、私はちょっと改造・・・コホン、手術の準備をして来るので席を外しますね」

 

「見付かるなよ?」

 

「誰に聞いてるんです?淀にすら見付からずに何年も隠れて改造しまくってる私ですよ?そこらのヤツらが気付く筈無いじゃないですか〜」

 

 

口を三日月に歪ませて、心底楽しそうに出て行く明石を見送りながら、青年はアイツ本当に苦労しそうだなぁ、と健気な少女へと同情していた。




目に関して、最初は割れっぱなしにしようかと思いましたが、再生するのにそれは可笑しくね?などの謎の疑問が湧き上がり、虹彩を調整すると割れる仕様になりました。

あ、ただの趣味です。なんか格好良くないですか?そうでもない?・・・まぁ、人それぞれって事で。髪前パサはかなり雑な気がしましたけど、特に思い付かなかったのでこれにしました。串でどうこうってのも考えたんですけど、三つ編みを維持しつつ、前パサできる髪型が思い浮かばなかったのでボツ。

後半の明石がいろいろと知ってる理由ですけど、単純に鎮守府の至る所に隠しカメラを設置してるだけです。どうやったのかって?・・・こちら側の人間が頑張った?とかですかね。

書くタイミングが見当たらなかったのでここで書いておきます。血の道は瑞鶴が書類作成をし始めて暫くして大雨で流れました。(ご都合展開)
気付いた子もちらほら居ますが、怖がって見ただけで終わり、どこまで続くかは見ていない。頼りになる人達は出撃中。帰って来た時には水で流れて分からない。
明石は爆笑。


それから、肉達磨提督にはそろそろ退場して頂きます。
内容はもう粗方決まっていますが、何処をあっさり目に書くか、詳しく書くかで少し迷い中。少なくともあっさり死亡とかは無いです。


次回も気長にお待ちください!


(2019/03/25)
感想にて、筆談をしてみては?のような内容の感想があり、確かに疑問に思われてる方も多そうだと思ったのでここで昔、感想返しで書いたものをそのまま書きます。


一応、筆談なら会話と同じかそれ以上の速度で意思疎通は出来ます。ただ、紙は書類だけなのでそれに書こうなんて発想自体がまず出てこない。仮に紙を提督に要求しても、黒幕さんからそれはするなと言及されているので提督もその要求は絶対に受け付けない。
そもそも、紙が欲しいと伝える事すら出来るか怪しいレベル。何処からか盗むとかも仮に思い付いても性格的に出来ない。

つまり、大体コイツ(黒幕)のせい。


もし、筆談が可能になっても、艦娘の殆どは噂もプラスされて怯えてまともに会話出来なかったり、逃げ出されたり、怒りで話を聞いてくれなかったりと理由は様々で兎に角、会話にならない。

加賀さんに今の状態で伝えてもこちらを油断させる為の嘘だとすぐに思われる。ずいずいの部屋を見せてもそれも罠だと思われる。量も含めて何かと冗談みたいなレベルですからね。

でも、大事な書類なのでずいずいは部屋を見せる事を忌避するし、部屋へ招く可能性は無いに等しい。あったとしてもまず罠だと思われて取り合ってくれない。粘ったら加賀さんも少しは信じてくれるでしょうが、その前にずいずいの心が折れて、信じて貰う努力を止めます。


因みに今までのはずいずいが自分の現状に不満を持って変えたいと願った場合の話。


ここからは本編のずいずいについて。
ずいずい本人も心のどこかで自分がおかしいのはなんとなく理解してはいます。でも、全く働かせて貰えず穀潰し状態が続いた結果、文字通り眠れない程に忙しいのは提督に必要とされてるから、という理論が展開されてそれが幸福になってたりする可哀想な思考回路をしてる。


つまり、大体コイツ(黒幕)のせい。


と、ざっとこんな感じです。
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