無口な瑞鶴さん   作:榊 樹

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筆が乗るぜ!

後半にちょっとグロがあります。
苦手な方はお気を付けて。


第11話:√肉達磨

その日、肉達磨提督は執務室でいつものように葉巻を吹かしながらダラダラとしていた。忠実な駒である瑞鶴の出撃も昨日終わったばかりで今日は特にする事が無い。自身がしなければならない書類も瑞鶴がやっており、指示も何一つとしてする必要が無い。

 

そんな暇な時はいつも自分の豪遊している将来を妄想しては下品に薄ら笑いを浮かべるのが彼の日課だ。そしてつい先日、気に食わない青年からある連絡が入った。あと数日で終わります、という短く省略した内容であったが、優秀な肉達磨提督は全てを理解した。

 

ついに私が元帥となる日が来るのだと。そうすれば、金も女も権力も地位も名誉も何もかもが全て私のモノとなる!そう思っては下品な笑い声を執務室に響かせていた。

 

 

「アヤツも馬鹿な男だ。元帥となる私に媚びを売って自分だけ助かろうとでも思っておるのだろうが、そうはいかん!私が元帥となり、謙りながらお零れを貰おうとした所を銃殺刑にでもしてやろうか。いや、確か明石とかいう随分と親しそうな艦娘が居たな。そうだ、アヤツに好意を寄せている大淀なんて者も居た筈だ。・・・フッフッフ、アヤツを縛り上げた状態で目の前で二人を犯させるのも一興だな。兵器を犯したいなんて気が知れんがそこら辺の気色悪いホームレスにでもさせればいいだろう。クックック、アーハッハッハッ!!」

 

 

一体誰の力でそのような地位になるのかを完全に忘れ、そんな高笑いを上げていると、扉からノックする音が聞こえて来た。何事かと考えて、そろそろ準備が整ったのだろうと思い至り、ニヤリと笑って入室を許可した。

 

入って来たのは予想通り憲兵だった。恐らく、あの青年が寄越した遣いか何かだろう。葉巻を吹かしながら、憲兵の言葉に耳を傾けた。

 

 

「失礼します。本日、大本営から派遣されて参上致しました。連絡の無い急なご訪問、大変失礼だとは思いますがご理解頂けますよう・・・」

 

「下らない御託はいい。さっさと行くぞ。案内しろ」

 

「・・・はっ!」

 

 

長ったらしくご高説を垂れる憲兵に嫌気が差して、先を促す肉達磨に憲兵は一瞬だけ呆けた表情をしたが、すぐに取り繕い、車まで案内した。

 

駐車場へ向かった時にやけに車の数が多いと感じたが、恐らく私がそれ程の重要な人物だからだろうと言う結論に至り、特に気にせずに車へと乗り込んで大本営と発った。

 

 

 

 

大本営へ到着し、憲兵の後ろを付いて歩く肉達磨。到着した部屋は遠方地域の提督用の泊まる部屋だった。そこで数日程の待機をするよう言われ、疑問に思ったものの私の元帥就任の為の準備があるのだろうと推察した。

 

何かあればすぐに人を呼べ、好きな物もある程度はすぐに用意してくれる。流石に女を呼んだ時は無理があると言われたが、元帥になってからの楽しみに取っておくかと勝手に一人納得した。

 

 

そうして数日が経った日の未明。部屋でパンツ一丁で贅沢に過ごしていた時の事だった。憲兵が移動する旨を伝えに来て、準備をする間もなく簡単な服を着た時点で前に手錠を掛けられ、数人の憲兵に強引に連れて行かれた。

 

 

「おい!貴様ら無礼だぞ!!私が誰か分かっているのだろうな!覚悟しておけよ!私が元帥となった暁には貴様ら全員親族諸共一生牢獄行きだ!!」

 

 

ぎゃあぎゃあ喚く肉達磨を無視して、目的地へと連れて行く憲兵達。その後も喚き続けるも辿り着いたのは大きな何かを話し合う時や決定する時に使う会議室。

 

憲兵がノックをして、中からくぐもった声で許可が降り、憲兵が扉を開ける。中はまるで裁判所のように誰も居ない机を中心に半円に囲んだ海軍の幹部や厳つい堅気の顔とは思えぬ人、そして正面に元帥が居た。

 

 

ここに来て、漸く何かがおかしいと思い始めた肉達磨。何がどうなっているのかを頭の中で思考を繰り返すも上手く整理出来ず、強引に中心の机の前に立たされる。そして、未だに整理出来ていない肉達磨を他所に元帥が物理的な重圧があると錯覚する程に重たい声で話し始めた。

 

 

「何故ここに立っているか、理解してるな?」

 

 

その声を聞いただけで、背筋が伸び、水溜まりが出来る程の大量の汗をダラダラと掻き始めながら硬直する肉達磨。反応の無い肉達磨に元帥は先程と同じような調子で続けた。

 

 

「はぁ、やはり何も分かっていなさそうだな・・・先日の瑞鳳の陸上での謎の気絶について、こちら側の者が調査に向かう事になった」

 

 

まるで心当たりの無い内容に更に混乱する肉達磨。

 

 

「しかし、貴様の評判は非常に悪い。そこで、お前が何かをしたのではないかと言う声が多数上がり、抜き打ちとして検査する事となった」

 

 

何かをした。

その言葉に自分は何もしていないという確信があり、何が何だか分からないがこのままでは不味いと思った肉達磨は咄嗟に声を荒らげた。

 

 

「い、いえ!私は何もしておりません!!何かの間違い━━━━」

 

いつ発言を許可した?

 

「ヒイッ!?」

 

 

ただ重苦しかっただけの声に抑え切れんばかりの強烈な殺意が乗せられ、肉達磨は少し過呼吸気味となりつつも黙って、大人しくした。

 

 

「この件にお前が直接関わっていないのは既に調査済みだ。何があったのかも信頼出来る筋からの情報で知っている。そして、本題はこれでは無い」

 

 

この訳の分からない事件の話が自分の無実で終わる事を知った肉達磨はあからさまに安堵し、それを見ていた者達によって室内の温度が数度下がった。だが、肉達磨は気付く事無く、安心したような勝ち誇ったような表情のまま続きを促した。

 

 

「それで?一体どうしたというのですかな?閣下」

 

 

先程の事を全く懲りてないのか、そんな調子で話す肉達磨に何人かの者の額には青筋が浮かんでおり、腕にも何本もの血管が浮き出ていた。

 

 

「・・・この瑞鳳の件を調べている時に興味深い資料が多数発見されてな。詳しく調べてみると中々の内容が溢れる程に出て来たよ」

 

 

尚も変わらずに話し続ける元帥。

 

 

「そして、貴様の鎮守府で禁忌とされる艦娘への悪質な環境での労働、入渠の制限、大破進軍・・・挙げればキリがない。実際、何人かの艦娘にも確認済みであるし、長時間傷だらけで放置したと見られる艦娘やボロボロの居住区・・・いや、広間に押し込むように入れているという物的証拠も多数出ている」

 

 

語られた内容に余裕の表情が一瞬で崩れ去っていく肉達磨。同じように再び汗を大量に流し始め、身体はガクガクと震え、股からは黄色い液体が流れ始めていた。

 

 

「終わりなんだよ肉達磨。もう少し理性が働けば気付けた筈だ。自分が底の見えない崖で綱渡りしていた事を・・・」

 

「成功すれば一攫千金。失敗すれば全てが、命までもが御破算。そしてお前は失敗した」

 

 

焦点が合わずに瞳がブレ続ける。歯がガタガタと噛み合せる音が室内に響く。顔の穴という穴から汚らしい液体が肉汁のように溢れ出す。

 

 

「もう分かっているだろう?これが裁判なんて話し合いをするような生易しいモノではなく、ただ決定した事をお前に突き付ける場であると」

 

「ぁぁ・・・ぁぁぁあ・・・」

 

貴様の提督としての権限、及び軍人としての階級を全て剥奪。並びに海軍を永久追放とする

 

 

結論を言い渡され、残った気力で絞り出すかのように叫び出す肉達磨。

 

 

「違う!私じゃない!!アイツだ!全てアイツに指示されてした事だ!そうすれば私が元帥になれると!!何もかも私のモノになると!!私は悪くない!!全てアイツが悪いんだ!!!!」

 

 

全身や顔中から滅茶苦茶に液体を撒き散らしながら、カエルのように泣き喚く肉達磨。それに対し、元帥は静かに、然れどヤケに耳に入る声で質問した。

 

 

「ならば、その者の名は━━━なんだ?」

 

「え・・・?」

 

 

その質問に完全に虚をつかれたかのようにポカーンとする肉達磨。

 

 

「容姿は?海軍の者か?ならば階級は?初めて出会ったのはいつでどこだ?」

 

 

「え・・・あ・・・・・・え・・・」

 

 

答えれない肉達磨。思い出そうとすればする程にあの青年に関しての記憶が無い事に気が付くばかり。何かをされた。だがそれが何なのか、いつなのか、皆目見当が付かない。

 

そして、次第に自身が信じ切れなくなり、終いには「ぁぁ・・・」や「ぅぅ・・・」などの意味の無い言葉をボヤく抜け殻のようになっていた。

 

 

「連れて行け」

 

 

その様子を見て、これ以上は何も無いだろうし出来ないだろうと判断した元帥。その声に反応して憲兵数人がかりで廃人のような肉達磨を運んで行った。

 

 

 

 

 

「どの面下げて生きてやがる!」

 

「よくもノコノコ外に出歩けるなぁ!外道!!」

 

「裏切り者が!どんな神経していたらあんな事が出来るんだ!!」

 

「その上自分は豪遊だ!?お前には人の心が無ぇのかよ!」

 

「そして今はこのザマか!汚物のようなお前には相応しい末路だな!」

 

 

海軍を追い出された肉達磨。いきなりそうされても、行く宛などない。あの青年に連絡する手段も無ければ、金なども元帥になれば心配いらないという思いから全て使い込んでおり、完全な無一文。

 

初めは道行く人に自身が提督であり、自分に貢げとのたまわっていたが格好からして有り得ないので世迷言と無視され、それに腹が立った肉達磨はギャンギャン喚き出した。

 

そんな彼をなんだなんだと取り囲む野次馬。彼らに対して見世物じゃないと当たり散らす肉達磨。そんな時だった。野次馬の一人が叫んだ。

 

 

「あ!コイツ艦娘に酷い仕打ちして自分だけ贅沢な暮らししていた肉達磨じゃね?」

 

 

その一言で周囲の目が変わった。最初は面白そうな事をしているという好奇心のようなものから、養豚場の豚以下のナニかを見る蔑んだ目。何故彼らが肉達磨の事を知っていたのか、それは単に詳細な身体情報と共に行って来た非道の数々。そして、禁忌を犯した大罪人であるという事実、おまけに脱走したという虚偽情報まで上乗せされて全国に日夜報道されていたからだ。

 

本来、このような汚点を態々暴露するのはデメリットしかないが、海軍がどれだけ国の為に、そして国民の為に活動して来たのかを国民の多くは身をもって知っている為に海軍のイメージがダウンする事は無かった。

 

と言うのも、嘗ては所謂ブラック鎮守府と呼ばれる程の労働を強いていたのが当たり前だった。だが、その結果、多くの艦娘達が人間に対して反乱を起こし、各地で大虐殺が起こった。ただ、艦娘は一人殺すと正気に戻ったかのように一度呆然とした後、自らを撃ち抜いてその場で四散。少なくとも人は最小限の被害で抑えられ、反乱は数日で終わった。

 

その後、何が原因かを徹底的に調べ上げ、その結果から分かった事がある。それは正と負の感情であり、艦娘と深海棲艦は同じ存在であるという事。負の感情を積み重ね過ぎると、深海化と呼ばれる現象が艦娘に起きる。これは一気に変化する者も居れば、少しずつ変化するなど、変化の仕方は様々であり、その要因は負の感情の大きさ。

 

この感情というのは人間と同じらしく、簡単に言えば幸福を感じる程に正となり、苦痛を感じる程に負となる。

そこでまず行ったのが労働環境の改善。これは案外早く実現する事が出来た。その理由が今まで、ブラックな故に何度も出撃しては敵を撃破し、結果、敵の数が格段に減っていたというあまりにも皮肉なものだったからだ。また、艦娘用の娯楽施設などの息抜きが出来る設備を整えるなどして、艦娘達のメンタルケアもほぼ完璧に行われた。

 

だが、ここである問題が発生した。強い者は先の反乱で殆どが轟沈。残った者達も弱い訳では無いが、轟沈した強者に比べれば見劣りする。そして、彼女達は出撃や訓練をする前にメンタルケアを行い、その後の極度に減った出撃回数。要因を挙げればキリがないが、艦娘に笑顔が戻り、日本各地でも笑顔が溢れる程に復旧した頃、轟沈者が出た。

 

別に悪い事をしていた訳では無い。ブラックな環境に置いていた訳でも無いし、寧ろどこよりも笑顔溢れるような鎮守府だった。ただ、出現した深海棲艦が強過ぎたのだ。

 

下手をすればその鎮守府の艦娘が全滅する程の強敵。あの状況下で轟沈者が一隻で済んだ事は寧ろ素晴らしい戦果だった。

 

 

だが、その戦闘から数日後。その鎮守府にて深海化した、或いはその予兆が見られる艦娘が多数出現。完全に深海化した艦娘は止む無く沈めて、予兆が見られた艦娘は別の施設でメンタルケアの後に回復し、そこの鎮守府の提督は責任を感じたのか、気が付いた時には失踪していた。

 

そして、何故このような事が起こったのか、再度調査が進められ、ある事実が判明。それは正の感情が大きければ大きい程に、その要因となったモノが消えると大きな負の感情を蓄積するという事。考えてみれば当然であったが、どこか兵器という感覚が抜け切っていなかったが故の失態。

 

この事実が判明すると早急に全鎮守府に事の詳細と轟沈の禁止、及び中破の時点で撤退する旨を伝えた。

 

 

それ以来、轟沈者は文字通り無し。度々、強力な深海棲艦が現れるも、幾多の鎮守府が共同で事に当たり、被害は大きいものの轟沈者無しでの撃破。どの鎮守府でも平和な一時を過ごしつつも、国民への艦娘のイメージアップを少しずつしていく。

 

その為の近隣の町への奉仕活動などなど、様々な事を行って来た。容姿も相まって、当初の予定よりも順調に進んだ。

 

そんな中で肉達磨が提督に成れたのは妖精さんが見える数少ない人材という理由もあるが、勿論、それだけでは無い。妖精さんが見える者が提督に就くというのが、業務上や艦娘側からもベストらしいが、そこまで絶対と言うほど重要では無い。

 

ならば何故、この地位になれたのか?それは単純。ある男がそうなるように根回しをしたからだ。

 

反対していた者に上手い話を持ち掛け、その上であの肉達磨の責任は全て自分が持ち、貴方は甘い蜜を何のデメリットも無しに吸える。

 

簡単に言えば、大体こんな感じの内容。それに乗っかかるようなヤツだけにした。とまぁ、そんな経緯で肉達磨は初めから傀儡として提督にならされた(・・・・・)

 

 

そして、そんな哀れな傀儡は今現在、国民から罵倒罵声を浴びせられ、ゴミや石を投げつけられ、気付けば辿り着いたのは路地裏のゴミ溜めのような場所。

 

そこで痛む身体に鞭を打ってゴミを漁り、その日を生きる為の食料を探しては喰らっていた。だが、すぐに特定され、そこを追い出されて再び彷徨う生活。

 

 

頭は禿げ、身体は前に比べれば少し痩せ、至る所が汚れまくり、鼻の曲がるような悪臭を撒き散らし、歯は殆どが無くなった。全身が打撲、所々が骨折、指先は腐ったように腐敗していた。

 

 

(どうして・・・私が・・・こんな目に・・・)

 

 

未だに自分の何が悪かったのかを認めたがらない。分かってはいるが、その事実から目を背け続け、自分は正しく、周りが間違っているのだと思い込んだ。

 

 

(そうだ・・・アイツだ・・・アイツのせいで)

 

 

何処かも分からない、道無き道を苦しみつつも自身を嵌めた者へ恨みながら歩き続け、遂には力尽きてその場に倒れ付した。

 

 

(クソッ・・・クソッ・・・クソッ・・・許さんぞ・・・絶対に・・・許さんぞッ)

 

 

自身の惨めさに顔中から汚らしい液体が溢れ出す。本当ならもっと極楽のような生活をしていた筈。あの男さえ居なければ。

 

こんな状態になっても、尚も自身に都合の良い事のような思考しか出来ない滑稽な肉達磨。

 

 

意識が薄れ行く時、近くに車が止まるような音がし、誰かが降りて来た。

 

 

「うわっ、クッッサァ!!何ですかこの臭い!鼻が曲がりそうってレベルじゃないですよ!ちょ、退散退散!」

 

 

そう言って車に戻り、暫くするとまた出て来た。

 

 

「ふぅ・・・うっ、自信作の超高性能なガスマスクなんですけど、これでも少し臭うんですか。まるで世界の汚物を掻き集めたかのような臭い、いや今の姿も相まって存在ですね」

 

 

開幕からいきなり馬鹿にしてきた人物。残り少ない体力を振り絞って見上げてみるとガスマスクをしたピンク髪の長髪の女が見下ろしていた。

 

 

「ハイハーイ、ご機嫌如何ですかぁ?お久しぶりですねぇ。明石ですよぉ?覚えてます?」

 

 

煽るように手をヒラヒラとさせ、こちらを小馬鹿にしたような巫山戯た口調。ガスマスク越しから辛うじて見えるニタニタと薄ら笑う嫌な表情。見覚えがあった。自身を嵌めたヤツとよく一緒に居た艦娘だ。

 

 

「あらら、完全に死に体ですねぇ。まぁいいです。それよりあの人からの伝言を伝えに来ましたよ!」

 

 

こちらの反応など初めから興味が無いとばかりに話を続ける明石。

 

 

「『最後の晩餐は美味しかったでしょうか?僭越ながら、何かと不都合がありましたのでお出しした料理に貴方の記憶を弄る薬を入れさせて貰いました。それから、提督の真っ白な服よりも今のゲテモノ姿の方が何兆倍もお似合いですね』だそうです!あ、因みに薬は私が作ったものなんですけど、どうでした?あまりモルモットが手に入らないので実験出来てないんですよね。まぁ、今の姿を見れば効いたかどうかは一目瞭然ですけど♪」

 

 

自身に何があったのかを知った肉達磨。然れど、怒る気力は湧かず、代わりに無様に顔を流れる液体が目に見えて増えた。

 

 

「ん?ブハッ!何ですかその顔!アッハハハハ!!ちょ、笑い死にしそうなんで止めウハハハハハッ!!」

 

 

肉達磨の泣き面を見て腹を抱えて笑い転げる明石。それが一層惨めになり、更に溢れ出す。それを見て更に笑い転げる明石。次第に明石が慣れてきたのか、咳払いを一つ話を再開した。

 

 

「コホン・・・さて、私が何をしに来たかなんですが、別に伝言を伝える為に来た訳ではありません。私にとっては寧ろここからが本題です」

 

 

そう言って、(かが)んでこちらの瞳を覗き込むようにして見る明石。そして、何やら手の平サイズの機械を取り出してスイッチを押し、音声が流れて来た。

 

 

『アヤツも馬鹿な男だ。元帥となる私に媚びを売って自分だけ助かろうとでも思っておるのだろうが、そうはいかん!私が元帥となり、ヘリ下りながらお零れを貰おうとした所を銃殺刑にでもしてやろうか。いや、確か明石とかいう随分と親しそうな艦娘が居たな。そうだ、アヤツに好意を寄せている大淀なんて者も居た筈だ。フッフッフ、アヤツを縛り上げた状態で目の前で二人を犯させるのも一興だな。兵器を犯したいなんて気が知れんがそこら辺の気色悪いホームレスにでもさせればいいだろう。クックック、アーハッハッハッ!!』

 

 

高笑いが終わり、ピッとスイッチを押して停止させた。流れて来た声は紛れも無く自身のモノであり、内容にも覚えがあった。何とか見えた明石は変わらずニタニタと笑っていたが、その目はまるで笑っていなかった。

 

 

「いやぁ、随分とまぁ面白そうな事をのたまわっていましたねぇ。自分がずっっっと監視されているとも知らずに。そして、テいトクを縛リ上げて私ト淀を犯ス?終い二は銃殺刑?アハハッ!じシンがドウいった存在ノ上でナリ立ってイタのかも忘レ、よくモソこまで愉カいな事ヲ言エタものデす」

 

 

そう言って、肉達磨の腹をサッカーボールのように蹴り抜く。

 

 

「ぐふぉッッ!!」

 

 

人間を超えた力に内臓が破裂し、強烈な鈍い痛みと共に血反吐を吐き出した。尚も変わらずニタニタと笑い続ける明石。

 

 

「おっと。ちょっと興奮し過ぎちゃいましたね。コホン・・・あの人からですねぇ。貴方を好きにしてもいいというお達しが出たんですよぉ。この意味が分かります?そうです!貴方はこんな糞溜りみたいな生活から脱却出来るんでよ!いやぁー良かったですねぇ!貴方は私に一生感謝して生きていくべきですよぉ?そこの所、分かってます?」

 

 

一体誰のせいでこうなったのか。そんな言葉すら思い浮かばない程に、目の前でケタケタと笑うナニカが不気味で仕方無かった。

 

 

「そんな訳で、今はおやすみなさぁい♪」

 

 

そう言って何かを肉達磨に刺した明石。次第に視界はボヤけていき、意識が落ちる瞬間にこんな声が聞こえた。

 

 

「次に目覚めた時を楽しみにしておいて下さいね♪」

 

 

見えない筈なのに、口を三日月に歪めて笑う明石を見た気がした。

 

 

 

 

カタカタとタイピングする音が響く薄暗い部屋。様々な機械が置かれ、どれもが起動しているのか画面に無数の文字や数字、グラフが映し出されている。そんな部屋の唯一の住人である明石は付近に置かれた大人が二人入っても余裕がありそうな程の黄緑色の液体で満たされた大きな試験管にコードを繋げたパソコンを弄っていた。

 

中には何かの肉塊のようなもの。それは何処か人間のような部分が多々見られたが、今のこれを人間とはあまりに表現し難い。皮膚は全て剥かれ、肉が丸出し。中心部分は開帳され、中にドクンドクンと脈動する心臓。その他の機能しているであろう綺麗な臓器。

 

 

暫くタイピングしていた明石は作業が一段落付いたのか、ググッと腕を天に伸ばして背伸びをした。

 

 

「ふぅ、取り敢えずはこんなものですね・・・ふふっ、人間に艦娘の力を植え付ける。再生能力とちょっとの頑丈さだけですが、やりたかった事はほぼ完成ですね。これで資材がある限り無限に再生するモルモットの完成です♪いやぁ、私ってばやっぱり天才だわ〜」

 

 

そう言いながら、試験管に手を当てて中の様子を覗き見る。

 

 

「痛みは消してあげたんです。それに人類の糧となれる。糞溜めで生活していた頃に比べれば余程マシでしょうぅ?ね、肉達磨さん♪」

 

 

口を三日月に歪めてニタニタと笑う明石。次第に込み上げて来たのか、声を荒らげて笑い出した。

 

 

「アハハハハハハ!やっと欲しかった物が手に入りましたよぉ!検査と称して瑞鶴をバラバラにしてた時に気が付いたんです!人間にも同じ力があったら、たった一体で無限に等しい実験を繰り返せるんじゃないかって!!だから、貴方が堕ちて行くのをずぅっと待ってました!これで貴方は半永久的に不死身となったんですよ!良かったですねぇ!人類の夢を貴方の身体で叶えちゃいました!!これからも末永く宜しくお願いしますね?肉達磨さん♪」

 

 

肉達磨は名実共に肉達磨となり、人類ではなく明石の糧となり続けた。




不細工肉達磨に相応しい最後だッ!笑ってやる!!
フハハハハハハハハ!!!
(これがしたかった)


そんな訳で肉塊エンド。
この後もずーーーーーと彼は再生と崩壊を続けます。因みに意識もありますし、精神は明石によって狂ってもすぐに強制的に正常な状態へ戻されます。あ、艦娘の力を与えただけで、艦娘は犠牲になってません。

どうやったのか?
・・・・・・明石って、便利ですよね(ガバ設定&オリジナル要素)


次回からは多分、鎮守府の復興編みたいなのになると思います。なのでずいずいの出番は減るかもです。


次回も気長にお待ちください!
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