無口な瑞鶴さん   作:榊 樹

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やっと・・・出来ました・・・。

ここ最近、忙し過ぎる上にあんまり筆が走らなくて、更新速度がガタ落ちしてしまいました。すみません。

閑話も書いてたんですけど、気付いたら本編が思った以上に長くなったので、取り敢えず投稿する事にしました。瑞鶴さんは暫く出番が激減するかもです。
ズイ (((ง˘ω˘)ว))ズイ


第12話:大本営での一幕

大本営のとある一室。中は広く、装飾品や家具に至るまで、一目見ただけで高価な物であると分かる程に豪華な一室で二人の男が向かい合うようにソファに座っていた。

 

 

「此度の件、ご苦労だった」

 

 

そう重々しく、何処か申し訳無い様な雰囲気で口に出した初老の男性。彼は現在の海軍の頂点に位置し、今の平和な海軍や日本の社会を確立した張本人である元帥、その人だ。

 

 

「いえ、それが私の仕事ですから。私も書類を見ただけですが、それだけでも現在のあの鎮守府の悲惨さは想像に難くありません。寧ろ、遅過ぎたくらいですよ。轟沈してしまった艦が居ないのは本当に運が良かった・・・だからこそ、今回の件の発見が遅れたと言うのは、何とも皮肉なものですがね」

 

 

対して、元帥というトップであり、今や生ける伝説とまで言われた大物に掛け値無しの賞賛を送られたにも関わらず、何処か悔いるような、そんな印象を抱く、それでもその端麗な容姿が健在の美青年は唯々自身の無力さを嘆くかのように返答した。

 

 

「・・・そうだな。言葉を取り繕う必要も無かろう。お前の言う通り、轟沈者が出なかったのは不幸中の幸いだが、だからこそ彼女達に長い間、苦痛を強いるはめになった。あのデブがあそこまでのやり手だと見抜けなかった私の責任でもある」

 

「そんな事ッ・・・いえ、よしましょう。今はこのような会話に勤しんでいる場合ではありませんでした」

 

「・・・あぁ、本題に入ろう」

 

 

その言葉を皮切りに、元帥はいつもの覇気ある表情で青年へ切り出した。

 

 

「貴殿の憲兵の任を解き、件の鎮守府へ提督として着任するよう命ずる」

 

 

『憲兵の任』

それは、嘗て提督であった者が大切な者を失い、それでも護国の平和に尽くそうと元帥へお願いして与えられた特殊任務。本来の憲兵とは違い、提督としての面も持っており、幅広く物事を調査、時には捕らえることも可能。

 

言うなれば、囮捜査のようなものだ。

 

 

「ハッ!必ずやご期待に応えてみせます!」

 

「フッ、あれからもう何年だろうな。また、お前の力を借りねばならんとは。情けないものだ」

 

「いえ、私が望んでしている事です。先程も申した通り、今回の事態を予め阻止する為に私はその任に着いていたのです。それがこのザマ・・・責めてもの罪滅ぼしとして、彼女達の復興に誠心誠意尽くさせて頂きます」

 

「あぁ、こちらもバックアップは出来る限りしよう。何かあれば遠慮せずに言ってくれ」

 

「お気遣い痛み入ります。では、少しお願いしたい事があるのですがよろしいですか?」

 

「あ、あぁ、構わない。一体、何だね?」

 

 

まさか今言われるとは思わずに少し驚きを露わにしたものの、すぐに表情を取り繕いその用件に耳を傾けた。

 

 

「私が着任する鎮守府ですが、出来れば明石も連れて行きたいと思っています。なにせ、彼女は優秀ですから」

 

「ふむ・・・確か、君とよく居るあの明石か?彼女も多大な功績があるし、今はここも落ち着いている。それに君と親しい艦娘が居た方が何かと彼女達の警戒も解き易いだろう。・・・うむ、許可しよう。手続きはこちらでするから、今から連れて行っても問題は無い」

 

「恩に着ります」

 

 

一礼した青年は席を立ち、扉へと歩いて行く。その背中に元帥は思い出しかのように声を掛けた。

 

 

「あぁ、迎えの車は用意してある。準備が出来次第、向かってくれ」

 

「分かりました。それでは私はこれで」

 

「あぁ、彼女達をどうかよろしく頼む」

 

「無論です」

 

 

そう言って部屋を出て言った青年を見送り、元帥はふぅ、と一息吐くと元帥としてではなく、一人の老人の顔になった。

 

 

「・・・すまぬ。辛い仕事ばかり、お前に押し付けて。本来、英雄と呼ばれるに値する偉業を成した筈のお前が名誉も何もかも捨て、文字通り、その身を削って護国の平和に尽くしてくれたというのに・・・儘ならないものだな、この世界は」

 

 

頭を過ぎるのは、愛する者の横であの心の底から笑った、少年のような屈託の無い笑顔。それが守れなかった事が、今でも元帥の心に影を差す。

 

あの時、ああしていれば。ふとした時に考えるのはそんな益の無い事ばかり。後悔ばかりが募り、自身を英雄と呼ぶ者達に出会う度、その影は闇を増す。

 

 

「ハハッ・・・こんな近くに居た子供一人救えなかったというのに、何が英雄だ」

 

 

その懺悔のような嘆きは、室内に響く事無く、虚しく消え去った。

 

 

 

 

元帥との話が終わり、青年が扉を出て暫く歩いた廊下の壁に寄り掛かっている美少女が居た。少女はその美貌を台無しにするが如くニヤニヤと厭らしく笑いながら青年を見ていた。

 

その姿を認識した瞬間に青年は顔を一瞬だけ歪めたかと思うと、すぐに無表情を取り繕い、無視して前を通り過ぎる。その少女は無視された事に不快感を表すどころか、一層笑みを深めて後に着いて行った。

 

 

互いに口を開く事なく、元帥が居た部屋から暫く歩いた所で少女が堪え切れないかのように青年の横へ出て、下から覗き込むように口を開いた。

 

 

「いやぁ〜、それにしてもよくもまぁ、あそこまでペラペラと言葉が出てくるものですよねぇ〜。薄っぺらいからですか?」

 

 

まるで煽るかのような、人を不快にさせるのを隠す気ゼロな口調に青年は顔は歩きながらも咎めるような視線を少女に寄越した。並大抵の者や空気の読める者ならそこで黙るだろうが、少女は変わらぬ様子で話し続けた。

 

 

「だ〜い丈夫ですよぉ。盗聴なんてされてませんし、周囲に人も居ない。その辺は弁えてますってばぁ〜。そこの監視カメラだって、今頃、私達が仲睦まじく会話しているようにしか見えてませんよ〜」

 

 

無駄だと気付いたのか、青年は視線を前に戻し、先程の元帥の時とは真反対のまるで感情が乗っていない平坦な口調で返した。

 

 

「盗聴していたのは貴様の方だろう。元帥との会談までするとは・・・あそこは許可された電子機器以外は使えなくなる筈だが?・・・いや、貴様に言っても無駄だったな」

 

「当たり前じゃないですかぁ。そのシステムを作ったの、誰だと思ってるんです?()()な明石ですよ?()()な。そんな明石さんが、自分が作った物に保険を掛けてない訳無いじゃないですかヤダァ〜」

 

 

ヤケに優秀を強調して喋る明石。それだけでも本当に盗聴していた事を伺わせるが、予想していた青年にとっては特に驚きも無く、淡々とその歩を進めた。

 

そんな反応に何を思ったのか、明石は心底楽しそうに懐から手の平サイズの長方形の箱を取り出し、スイッチを押した。

 

 

『私が着任する鎮守府ですが、出来れば明石も連れて行きたいと思っています。なにせ彼女は優秀ですから』

 

 

それは先の元帥と青年の会話の内容の一部。アレを聞かれていた事に青年は余程堪えたのか、足は止めなかったがその無表情を崩し、不愉快そうな顔を隠そうともせずに明石を睨み付けたが、本人はニマニマと楽しそうに笑うばかりだった。

 

 

「いやぁ、照れちゃいますねぇ〜。提督にそこまで思われていたなんて。普段、なんやかんや言ってたのって、照れ隠しか何かですかぁ〜?これ、淀に聞かせたら、嫉妬されちゃいそうだなぁ。あ、因みにこんな事も出来たり・・・」

 

 

そう言って、目にも止まらぬ早さでスイッチを次々に押して、最後に再生ボタンを押すと再び同じ音声リピートされ何度も流れた。

 

『明石は優秀ですから』

 

「んもぅ〜、そんなに褒めたって何も出ませんってばぁ〜・・・でもぉ、ここまで熱々に告白されたら、返答しない訳には行きませんねぇ〜」

 

 

足を止め、ゴホン、と態とらしく咳払いをした明石に、何をするのかと同じく足を止めて身体ごと振り向かせた青年。

 

明石は先程までの嫌な奴、という印象が欠片も見当たらない、自身の魅力を最大限に引き出したかのような仕草、角度、微笑みを伴って、まるで慈母のような優しさに満ちた心温まる声色で宣言した。

 

 

「提督、私も愛してますよ」

 

 

それは、男であれば誰もが見惚れてしまい、日暮れをバックにしていたら映画のワンシーンのような、そんな魅力を放つ魔性とでも言える雰囲気を醸し出していた。

 

 

「気色悪い」

 

 

しかし、考える余地など無いとでも言うかのように、即答して踵を返す青年。それが予想通りの反応なのか、明石はまるで堪えた様子は無かった。

 

 

「あらら、フラれちゃいました。冗談でも良い返事が聞けたなら、淀をもっと揶揄(からか)えたんですけどねぇ・・・残念です」

 

 

録音中だった特製のレコーダーをフリフリして、懐に戻してから青年の後を追い掛ける。その顔には先のような魅力は無く、厭らしい笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 

「ふぅ、こんなものでいいかな・・・にしても、見事に綺麗になったなぁ」

 

 

一仕事終えたとばかりに、掻いても無い額の汗を拭う仕草をしながら息を吐く明石。何をしていたのかと言うと、引越しの為の自身の部屋の整理である。

 

とは言うものの、元から移動する計画だったので始めてから十分も経たずに荷造りは終了し、運ぶのが大変な機材やその他諸々は既に積み込み終えていた。結果、手元にあるのは小物や小さい部類に入る完成品の玩具だったりと、カバン一つでどうこうなるものばかりだ。

 

 

「さぁて、時間にもまだ余裕あるし、最後に淀に会ってから行こっかなぁ・・・くふふっ、どんな反応するか楽しみ〜♪」

 

 

ルンルン気分でカバンを手に取り、扉を開ける。すると、何かにぶつかり、反動で扉が閉められた。もう一度、ソロりと開けると扉の前に額を抑えて蹲る明石と似たような格好の少女が居た。

 

 

「・・・何してんの淀?」

 

「・・・頭ぶつけたのよ。見ればわかるでしょ」

 

「あぁ、うん・・・」

 

 

しゃがんだままの状態で涙目になりつつ、こうなった原因を睨み付ける淀改め大淀。微妙に気不味い空気が流れ、立ち上がろうとしている大淀に話題転換として明石は尋ねた。

 

 

「そう言えば、なんで淀が?どうかしたの?」

 

「え・・・あ、あぁ、いや、丁度近くを通り掛かって、違和感があったから覗こうとしただけで・・・」

 

 

フリーズからの赤面。何をそんなに驚くのかと不思議に思った明石だが、そんな事よりも本来の目的を思い出したのでそちらを優先。

 

 

「それより淀。私、異動になったから、後はよろしくね」

 

「え、えぇ・・・・・・・・・え?・・・は?」

 

「さっきから表情がコロコロ変わるね。淀にしては珍しいんじゃない?」

 

「ちょ、ちょっと待ってよ!異動ってどういう事!?私、何も聞いてないんだけど!?」

 

「そりゃ・・・さっき決まったから?」

 

 

普段の冷静沈着な人物とは思えない程に狼狽する大淀。

そんな彼女の様子とは対照的に、明石は表面上は私、何か変な事言った? という何でもないかのように装い、内面は歓喜に溢れていたりする。

 

 

「さっきって・・・だからって、私に連絡が来ないのはおかしいし・・・」

 

「決めたのが元帥だからじゃない?」

 

「元帥・・・って閣下が!?あ〜〜もぉ〜、だからかぁ〜〜」

 

「あの人の力って凄いよねぇ。大抵の事なら、鶴の一声で何だって許可出来ちゃうんだからさ」

 

「・・・それで場所は・・・・・・あぁ、あの鎮守府ね」

 

「正解!流ッ石ー!相変わらず冴え渡ってるねぇ!」

 

 

だいぶ落ち着いて来た大淀は、いつもの調子が出て来たのか、その頭脳を遺憾無く発揮し、あっさりとその答えを導き出した。

 

しかし、それは彼女をより不機嫌にさせたのか、目が据わり、ジト目で明石を睨み付ける。それは何処か拗ねているような、そんな印象を与えた。

 

 

「・・・なんでよ」

 

「ん?」

 

「なんで・・・貴女だけなのよ・・・」

 

「んー・・・取り敢えず、コレ聴いてみて」

 

「・・・ボイスレコーダー?」

 

 

カバンではなく、懐から取り出したソレは大淀の言う通りボイスレコーダー(明石特製)。訝しげに見詰める大淀を他所に明石は再生ボタンを押した。

 

 

『明石は優秀ですから』

 

 

聴こえて来たのは、聞き覚えのあるその一言のみ。それだけで大淀は理解したのか、俯いて動かなくなった。そんな大淀を他所に明石は停止させると、片手で頭を掻きながら照れたように笑い出した。

 

 

「いやぁ、明石さん、思った以上に提督から想われていたみたいなんですよねぇ」

 

「・・・」

 

「そんな訳で、鎮守府の復興を手伝う為に着いて行く事になったんですよぉ」

 

「・・・」

 

「そうなると、必然的に少なくとも一年以上はあっちで活動する事になりました」

 

「・・・でよ」

 

「淀?どうか」

 

 

ボイスレコーダーの音声を聴いてから俯いていた大淀がボソリと何かを呟いた。さてさて、どんな反応をするのかなぁ?と期待を胸にニヤけそうになる頬を抑えつつ、尋ねようとした明石。

 

しかし、その言葉は大淀が詰め寄って胸倉を掴まれた事によって遮られた。

 

 

「なんでよ!なんでいつも貴女だけなのよ!私だって、一緒に行ってもいいでしょ!?」

 

「よ、淀?どうしたの急に?ほら、落ち着いて?」

 

「これが落ち着いていられる訳ないでしょ!大体、明石も明石よ!私の気なんて知らないで、いつもいつもいつも好き勝手やって!私がどれだけ必死こいて誤魔化して来たか、なんでそんな事をして来たか分かってるの!?」

 

「え、えー、あー、えっと・・・」

 

 

まさか、ここまで急変するとは・・・。

て言うか、思ってたのとなんか違う。

 

そんな大淀の急な変化に狙ったとは言え、ここまでは予想外だった明石。溜まってるのかなぁ、なんて呑気な事を考えつつ(現実逃避)、流石に宥める事にした。

 

 

「よ、淀、取り敢えず落ち着こ?ね?足が着いてるけど、割と息苦しいよ、これ」

 

「そもそも、見た感じ部屋が大分片付いてるみたいなんだけど?ねぇ、どうゆう事?貴女の部屋はよく見てたから、どう考えても可笑しいわよね?私が居なければ散らかり放題のあの明石が荷造りを今朝から始めても間に合う筈が無いし、艦娘の力を使ってもそれは不可能。出来たとしても、それなりに大事になるわよね?ここら一帯を行ったり来たりしてる私に一切悟られずにそんな事が出来るのかしら?ねぇ、答えてよ?おい答えろ」

 

「ちょ、怖い怖い!あと、一旦離して!段々絞まって来て本当にマズい!」

 

「ねぇ、なんで答えないの?何か後ろめたい事でもあるんでしょ?そうよね?大方、提督が四面楚歌な所に放り出されてそこを明石が味方になって距離を縮めようとでも思ったんでしょ?そんな事は絶対に許さないわよ?」

 

「淀ッ!?そんな気色悪い事言わないでよ!全身に鳥肌が立って鳥になりそう!」

 

「ねぇ、どうなの?さっさと白状しなさい。でないと私、何するか自分でも分かんないわ」

 

「あ、首が・・・ま、待って・・・淀・・・息が・・・」

 

「そう、あくまでシラを切るつもりなのね。いいわ、そっちがその気なら白状するまで徹底的に追い詰めてあげる。覚悟しなさい明石」

 

「・・・カフッ」

 

「ふふふふふふふふふふ」

 

 

 

 

「な〜んて事があったんですよねぇ。いやぁ、あの時は本当に殺されるかと思いましたよ」

 

「ザマァねぇな。いい気味だ。序に尊厳を踏み躙られていたらもっと良かったのにな」

 

「あっるぇ?もしかしてぇ、提督はぁ、そぉんなエッチぃ展開をご〜所望で〜すかぁ〜?明石のぉ乱れる姿が見たいだなんてぇ、提督のケ・ダ・モ・ノ」

 

「・・・」

 

「いやん♡そんな眼で見詰め無いで下さいよぉ〜。興奮するじゃないですか♡」

 

(相変わらず、度し難い変態だな)

 

 

揺れる車内で二人の男女が、そんな仲が良いのか悪いのかよく分からない会話を繰り広げていた。片や養豚場で豚の真似をしている変態を見るような冷ややかな目をした提督に、片や自身の身体を抱き締めて頬を染めてクネクネと揺れ動く明石。

 

暫くそうして、無反応な事に飽きたのか、動きを止めてシートにもたれ掛かった。

 

 

「淀なら大丈夫ですよ。ちゃんと、上手くやりましたから。大本営での任務娘を辞めるなんて事はないでしょう。あ、どうやったのか聴きたいですか?」

 

「アイツが来ないならそれでいい。その情報だけで充分だ」

 

「まず、淀が正気に戻るような言葉を掛けて、落ち着かせます。そして、力が緩んだ隙に抜け出して、淀を抱き締めて拘束。あ、艦娘の力も使ってです。後は何とでも捉えられる理由で誤魔化しつつ、私も行く、なんて言い出した淀に大本営の秘書艦はそうコロコロ変わっていいものじゃない等の大淀が正論だと思っているであろう内容で説得・・・ふふっ、相変わらずチョロいですね〜」

 

「・・・」

 

「って、あれ?提督、どうかしました?」

 

「なんでもねぇよ」

 

「?」

 

 

呆れた眼差しを向けられた明石であるが、大淀関連の話の時は大体いつもの事なので特に気にする事も無くスルー。会話が途切れたかと思われたが、ここで再び明石が切り出した。

 

 

「あ、そう言えば、部屋ってもう決まってるんですかね?その辺、私何も聞いてないんですけど」

 

「・・・工廠(こうしょう)だ。お前の場合、与えてもそっち(工廠)に入り浸るだろう。キチンと仕事をするなら、好きに使え」

 

「ひゅ〜、太っ腹〜!楽しみが増えましたよ!」

 

「変な物を置いてバレるなよ。特にあの肉塊」

 

「だ〜い丈夫ですってばぁ。その辺は弁えてますよ・・・そう言えば、あの艦娘はどうしたんです?」

 

「・・・あぁ、アレの事か。何かと試して問題無いと判断した。近々、欠陥機同士で出撃させてみる」

 

「ふ〜ん・・・!・・・ちょっと、私も一枚噛んでいいですか?」

 

「また碌でも無い事が浮かんだのか・・・」

 

「ヤダなぁ〜、違いますってばぁ。更に面白くさせるだけですよ〜」

 

「好きにしろ。くれぐれもヘマはするなよ」

 

「了解しました〜」

 

 

待ち遠しいとばかりに笑みを浮かべる明石とボーッと外の景色を眺める提督の二人が乗った車は、その後も無事に走り、目的地へと向かって行った。

 

 

 

 

「おぉ〜ここが鎮守府ですかぁ。見るからに空気が淀んでますねぇ」

 

 

鎮守府の駐車場に車を停め、荷物を持って先に外に出た明石が見た鎮守府の第一印象がソレだった。

 

 

「今日本で最もクソったれな場所の一つだからな。大本営に慣れた者からすると、余程なものだろうよ」

 

 

それに付け加えるかのように、後に出て来たこの鎮守府で着任する事になった提督。実は明石は初めて生で見たが、彼は何度かこの鎮守府にやって来ていた。

 

その内の一つが、前提督の送迎などの為の運転手である。

 

 

「どうしましょうか?私の荷物はコレだけで後は工廠にあるんですよね?もうそっち行っていいです?」

 

「呼ぶのが面倒だから着いて来い」

 

「・・・は〜い」

 

 

望んだ返答では無かったのだろう。何処か拗ねたような表情でそう返事した明石は、前を歩く提督に不貞腐れたように着いて行った。

 

そうして歩いて行くと門の前に一人の少女が感情を押し殺したかのような無表情で立っていた。

 

 

「・・・お待ちしておりました」

 

「お出迎えご苦労さま。君が案内役だね。名前を聞いてもいいかな?」

 

 

爽やかな笑みを浮かべ、相手が不快に思わないような声色でそう尋ねる提督の姿は先程とはまるで別人で、何処から見てもいい人だった。

 

 

「加賀です。それではこちらへ」

 

 

そう言って振り返ってこちらを気にする事無く進む姿は友好的では無い、と隠す気がまるで無いと一目で理解出来る。それでも提督は困ったような笑みを浮かべるだけで、大人しくその後に着いて行き、そんな提督に明石は笑いを堪えるのに全力を賭していた。

 

 




今回から、ブラック鎮守府復興編?のようなものです。

デブ提督が拘束されてから今回までの鎮守府側の流れを次回あたりに書きます。
閑話は出来次第投稿になると思います。


次回も気長にお待ち下さい!
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