(注)今回、区切りが多くなっています。
先生の
然し未だに、剣術や呼吸を教わってすら無い。
「あぁぁぁぁあぁああぁぁあぁああああぁああぁぁぁ!!!!!!」
「後、50周追加。頑張れ」
現在グレイは、早朝から昼の今までぶっ通しで、オラリオの城壁の上を走っている。
炎雷は、かなりきつい修行をグレイにさせていた。様子見に来たフィン達が、顔を引き攣らせる程の鬼っぷりを見せる程だ。
基礎体力の大幅な向上、それと並行して柔軟と筋力強化もさせられていた。グレイは今では開脚は180度よりやや開き、開脚したまま溶ける様に、身体が地面に触れる程になっていた。前までは断末魔の様な叫びをしていたのに、今では地面に触れたまま
筋力強化は、とにかく全身の小さい物から大きい物まで、様々な筋肉をバランス良く強化した。その結果、グレイの全身は細くしなやかに鍛えられていた。
1ヶ月経った後には更に、他の修行が増えた。
ここで少し、内容を紹介しよう。
最初の1ヶ月が経つまで、1日に城壁の上を100周(段々増えた)走り込みをする、地獄(ほぼ力技)の柔軟、筋力(大量の重り付き)の強化、これらをひたすら行った。
1ヶ月が経った頃それらを速く出来る様になってきたら、刀を持って(ランダムに何かしらの攻撃が飛んでくる)の走り込み、炎雷の攻撃をひたすら避ける(転んだら即起き上がる)、1000回(毎回1000回増やされる)の素振り、打ち込み台が壊れるまで打ち込み。
結果、それを今までの2ヶ月行った影響か、グレイの体はかなりの体力向上、身体の可動域の範囲の向上、ぶれる事の無い体幹を確認出来た。今なら2ヶ月前よりも広く、激しく動けると思う程に身体が仕上がっていた。
「2ヶ月の走り込みでついた体力と、柔軟による可動域の向上、筋力強化による身体の強化、そして1ヶ月行った物で得た、反応速度や打ち込みはこれからの為の下地だ、刀を取れグレイ。今日よりお前に鬼殺の『呼吸』と『技』を教える」
「…………お願い……します」
修行を始め2ヶ月、遂にグレイは呼吸を教えられる。だがしかしそれは、柔軟と走り込み、その他様々な事が優しいと思える程に、苛烈さをきわめたのだった。
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─3ヶ月後─
〜昼頃〜
ロキ・ファミリア本拠地、黄昏の館から出てくる少女が居た。
その小さい両腕で、抱える様に持った袋に入った
彼女の名は『アイズ・ヴァレンシュタイン』
グレイの義理の妹にして、両親を自分から奪ったモンスターに、憎悪の炎を燃やす少女である。
彼女は意識を取り戻して以来、昔と違い表情に変化無くまるで人形の様な鉄仮面になってしまった。そのせいか、ファミリアの団員にとって近寄り難い存在になっている。そして、リヴェリアからの座学も殆ど逃げ出す始末だ。何回もロキに
「それは出来ひん、グレイとの約束やからな。ほれアイズたん、リヴェリアのとこ行こな〜」
と全て断られ、リヴェリアの所に連れてかれる。そんなアイズが何故城壁に薬や軽食を持って向かうかと言うと
『ロキに頼む→恩恵が貰えない→兄さんが止めさせている→兄さんに言う→意味が無い→兄さんに優しくする→許される→意味の無い座学から解放→モンスターを殺せる→ダンジョンで強くなれる』
この様な図式が齢6歳のアイズの頭の中に出来上がっていた。そしてここ一週間、アイズは座学を毎日抜けグレイの所に向かっているのだ。
長い階段を駆け上がり、城壁の上に出れば直ぐに兄は修行をしている。ここ最近は、呼吸や技を先生に向かって打ち込む事をしているらしい。
やっと階段を登り終わり、グレイに声をかけようとしたアイズの声は、その声をかき消す衝撃音で途切れた。
「……兄さん。ご『バンッ!!!』飯……」
「グレイ、まだ速さが足りない。言っただろう、雷の呼吸は全ての力を下半身に溜め、爆発させ空気を裂く様にすると…………私の友の
音の正体は、炎雷によって吹っ飛ばされたグレイだった。グレイは直ぐに立ち上がり、腰の鞘に刀を仕舞い柄を握らず手を添えた。
「……はぁぁ……はぁぁ……分かってる!」
───シィィィィィイイ
──全集中・雷の呼吸ああ壱ノ型
─
ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!ドン!!
雷が落ちた様な音が六回鳴った。
居合いの体制から放たれる技、雷の呼吸の壱の型である霹靂一閃は真っ直ぐに行われる1回の居合いである。そして雷の呼吸と言われる訳は、この壱の型を発動した時、雷が落ちた様な音がする事に由来する。
それが六回……六連……つまりグレイはそれを連続で6回行ったのだ。それにより、6回の方向転換を可能にし、最初の前方を含め炎雷の左右前後、そして上から攻撃をしたのだった。
だが六連全てを、グレイは炎雷に受け止められてしまった。
「…………くぅ!これでも駄目か」
「良い動きだった。雷の呼吸はあと少しだな」
グレイと炎雷は、互いに向き合い刀を収め休憩に入った。その時、グレイはアイズの目線に気がついた。
「……居たのかアイズ。また座学を抜け出したのか?」
「兄さん……これ」
グレイはアイズから袋を受け取り、アイズと共に壁際に座った。
「兄さん……『ポン』……ん」
グレイはアイズの頭を撫でながら、アイズに優しく言い聞かせた。
「…………アイズ……すまないが何度言われても駄目だ。それにあと1ヶ月程だ。我慢してリヴェリアの勉強を受けろ。ダンジョンに潜る為にも知識は要る」
「…………私は、早くダンジョンに、行きたい」
アイズはグレイより背が低い。座ってもグレイより低い為、話す時グレイを見上げる様になる、アイズ自身狙ってないだろうが、アイズは鉄仮面になってもそこらの女神より美しい、そんなアイズが上目遣いの様にグレイを見ている、グレイにとってそれはかなり困る事であった。
「……アイズ(………………可愛いすぎる。……こうやって間近で見るとアイズはアリアさんに本当に似ている)あと少しだけ待ってくれ……頼む」
グレイの言葉が、アイズにとっての心の闇に触れてしまった。
アイズの心には黄昏の館で目覚めてから、いや村での惨劇から常に弱く泣いていて蹲っている自分と、モンスターに対しての復讐の黒い劫火が巣くっていた。アイズはこの弱い自分に近ずかない様に、そして追いつかれない様に、大切な存在を奪ったモンスターを、一匹でも多く殺す事で強くなりたいと思っているのだ。
そんなアイズにとって神の恩恵は、一番今欲しい物であった。手に届く所にありながら、自分にとって兄の様な存在であり一番気の許せる人が、自分の邪魔をする。それは度し難い物であり、待ってくれと何回も言われ、アイズの感情は溢れてしまった。
「っ!………兄さんばっかずるい……私は、早く強くなりたい!……それなのに、まてまてまてって、ずっとそればっかり!なのに兄さんは、どんどん強くなって!兄さんなんて
大嫌い!」
アイズは、隣に座っていたグレイを突き飛ばし、そのまま走って行ってしまった。その事にグレイは唖然とし固まってしまった。
「…………アイズ」
「グレイ、あの少女の闇は深いぞ」
グレイは炎雷に鞘で小突かれるまで、アイズが降りていった階段を見続けたのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
グレイを突き飛ばしたアイズは、ただただ道をがむしゃらに走った。そして分からない道を走り続け、気づけば周りに誰も居ない、何処か分からない場所に居た。
「……ここ、どこ?(……どこだろう、ここ?道が分からない。……私は悪くない。これも兄さんが悪いんだ。私に恩恵を刻むのを許してくれないから)……戻れば、良いかな?」
アイズは、自分の居た所から後ろに行こうとした。しかし、
「大丈夫か?嬢ちゃん?こんな所で1人だと危ねぇぞ」
「……すいません……うっ!?」
アイズは直ぐに去ろうと、男の横を通ろうとしたが腕を掴まれてしまった。
「おいおい、それは無いぜ嬢ちゃん?俺はお前に用があるんだよ」
「や、やめ……て………に……さ……」
アイズはそのまま、両腕を後ろで拘束され、目隠しを着けられ口元に何か当てられた途端、眠くなってしまった。最後に見たのは、黄金の装飾を身に着けた不思議な男だった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「……アイズが帰ってこない?」
夜、今日の修行を終え黄昏の館に帰ったグレイに、リヴェリアから伝えられたのは、衝撃の出来事だった。
「あぁ、勉強を抜け出したまま帰ってきていない。部屋にも館の何処にも居ないのだ」
あのまま、走って何処かへ行ったのか?既にあれから、4時間近く経っている。今のオラリオでは夜は危ない。それとも……嫌な予感がする。もし闇派閥絡みだった場合、
「分かった。俺は外を見て来る。先生とリヴェリアは此処に居てくれ」
「外は任せた。既にフィンとガレスにも伝わっている筈だ……迷子だけだったら良いのだが、如何せん嫌な予感がする」
「あぁ気をつけろグレイ……ん?この匂いは何だ?」
そうして俺が外に出た時、激しい爆発音がオラリオの空に響いた。
バァァアン!!!!!!
見れば、オラリオのあちこちから煙が昇り、様々な喧騒が聴こえる。周りの住人もぞろぞろと家から飛び出してきた。そして、ホームからロキ、フィン、ガレス、リヴェリア、先生やホームに他の居た団員も出てきた。
「何や、何や!何が起こったんや!」
「何じゃ!?今のは」
「分からない。だけど今はアイズを探さないと行けない。僕は直ぐにギルドに向かう、リヴェリア、ガレス、グレイはアイズを探してくれ!ロキと炎雷は共に、他の団員を連れ近場の住人の避難を頼む」
「分かった。私は大通りを見る」
「儂とグレイで、近場の路地裏を探そう」
「分かった。ガレス、先に行くぞ(アイズ……無事でいろ)」
「ん?……まてグレイ、アイズを探す手間なら必要無いようだ」
それはどうしてか……その場に居るフィン、ガレス、リヴェリア、ロキ、グレイが炎雷に目を向けると、炎雷は屋根の上を見ていた。その視線を辿り屋根を見ると、風に吹かれ激しく靡く金髪が見えた。数人の男が居て、1人は縄を持ち、アイズが繋がれていた。目隠しや布を口に噛ませられて身動きを封じられていた。
それを見た、グレイは即戦闘体制に移った。
「っ!!アイズを返せ!!」
全集中・雷の呼吸ああ壱ノ型
グレイは即、地を蹴りその勢いで壁を蹴り敵に近ずき、最速の一太刀を出した。しかし敵は既に隣の屋根に移動していて空振りになってしまった。
「おいおい、急に斬りかかるなんて、子供の躾がなっちゃいねぇなぁロキよぉ〜」
敵の中から、1人確実に雰囲気の異なる存在が出てきた。そいつは、過去1度だけ見たが、たった1回視界に入れるだけで姿を覚える程の存在。
赤銅色の肌で黄金律を思わせる程の肉体を持ち、手首や足首に黄金や水晶の光る腕輪や足輪をし、同じ材質だろうネックレスを身に纏う神
「……お前は、神セト」
あの異様な雰囲気を神会で放っていた神物である、セトだった。
「覚えてもらえて光栄だぜ?グレイ・ズィーニス、レオの息子よぉ〜」
「……何故アイズを攫った」
セトは、アイズの頭を掴みながら話始めた。
「何故攫ったか?それはなぁ〜グレイ!お前だよ!ロキ・ファミリアに置いて、今お前は期待の新人何だろう?それにお前をこうやって、
「巫山戯るなセト……アイズは関係無い、直ぐに手を離せ。斬り落とすぞ?」
セトは俺に用があるのに、わざわざ無関係なアイズを攫った。許せない。……俺の大切な存在に気安く手を出しやがって…………その汚ない手とその首、今此処で斬り落としてやる。
グレイは直ぐに、霹靂一閃を放てる様に構えた。
「おぉ怖い、良いぜ。おい離してやれ。
セトの後ろの奴は、アイズを手放した。アイズはそのまま、倒れる様に下に落ちて行ってしまった。
「アイズ!くそっ!『ブチャァアア!!!』ごふっ?!!?……な、な……に」
俺はアイズを助けようと、
幸いアイズはフィンが、俺は先生に受け止められ地面に激突するのは避けられた。しかし、俺の腹には穴が開き、あまりの事に感覚が麻痺して痛みが無い。それに内蔵も無くなっている。とめどなく血が溢れ、何も無い腹に水が溜まるように血が溜まっていく。周りの人が集まってきているのが微かに分かり、意識が朦朧としてきた。
「お……グレイしっ……しろ!誰……良い!エ……サ……!!」
「気をし……り持……!グ……!」
地面に置かれ視線が上を向き、屋根の上に見えるのは、
「プレ……だ…?ひ……はは…………!じ……ぁ……レイ」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
セト・ファミリア率いる闇派閥の暴動から三週間が経った。
俺は一週間程前に目が覚めた。どうやら、リヴェリアの回復魔法やエリクサーを大量に使い何とか一命を取り留めたらしい。直ぐに、セトの所に向かおうとして、ここ一週間は安静にしてろと、リヴェリアに釘を刺されてベッドに拘束されてしまい、結局リハビリしかしていない。
あれからオラリオでは、様々な闇派閥が本格的に活動を開始し、ガネーシャ・ファミリアやアストレア・ファミリアといった治安維持ファミリアが、オラリオのあちこちで活動し、ロキ・ファミリアやフレイヤ・ファミリアも協力しているが一向に収拾がつかない。
それは、オラリオの北と南東、南西に居る三体のモンスターが居るからだ。あの時、俺の中から飛び出してきた物は、モンスターの幼体だった。
北で活動を確認されている狼型のモンスター『フェンリル』
南東で活動を確認されている人型のモンスター『ヘル』
南西で活動を確認されている蛇型のモンスター『ミドガルズオルム』
ロキへの当てつけか、嫌がらせか、セトは去る際にこの三体の名前を言って行ったらしい。そしてこの三体によって鎮圧が上手くいっていないのが現状だ。
第一級冒険者が居て討伐出来ないのは、それぞれの固有の能力による物だった。
『フェンリル』はその強靭な牙と爪で、鎧を裂き冒険者を喰らう。さらに自身の喰らった魔法を冒険者のステータス事喰らう。喰われた冒険者は、その魔法がステータスを更新しても蘇らない事から、ついた異名が
『
『ヘル』は霧を操り、霧に入った存在を消す。現在霧に入った人との連絡は無し。そして、度々霧の外に出てきた際は、強くなって出てくる為、消した冒険者から経験値を取って吸収していると思われる。ついた異名が
『
『ミドガルズオルム』は強力な毒を吐き、自身に向けられたスキルを冒険者のステータス事喰らう。喰われた冒険者は、そのスキルがステータスを更新しても蘇らない事から、ついた異名が
『
どのモンスターも異常と分かる能力があった。そして、俺が最も憤り悔しいのが
それは、他にも冒険者の中にモンスターを入れている事。『ヘル』『ミドガルズオルム』『フェンリル』の三体は俺の経験値を喰らって成長した事。そして、冒険者の中には洗脳されている者が居る事。幸いな事に、ギルドは手紙を読まずに渡してくれた様で、俺の経験値を食って成長した事はギルドは知らない。
他の2つは流石に伝えたらしいが……現在、医療系のファミリアが大急ぎで冒険者の身体検査を行っているらしい。
「たった3週間でここまで、変わるのか……」
「物が変わるなど一瞬だ。一つ波が来れば、それに呑まれ元の形は消え去る。……体調は良いようだなグレイ」
「先生…………俺は、責任を取らないといけない。この手でセトを殺して、決着をつける。………その為に、どうか教えてくれませんか。先生が唯一……まだ教えていない事を」
先生との修行では、俺は様々な呼吸、様々な技を教えて貰った。しかし、一つだけ……全て教えられたからこそ分かる謎があった。
「…………教える気は無かった。だがこの現状、致し方ない。グレイ……今から言うことは、お前が次に技を託す時以外は他言無用だ。それは…………」
そこから俺は、ただ黙って先生の話を聴いた。
「………………これが、全てだ。この短時間で、これらの莫大な呼吸や剣術を覚えたのは、歴代の記録を見てもお前ただ1人だろう。私は良い継子を持てた……ありがとう。そして、これは私の最後の頼みだ。私にはもう残された時間が少ない……」
相槌を入れる事すらせず、ただ黙って先生の一言一句をしっかり覚える様にした。その一つ一つが先生が俺に伝える最後の教えなのだと理解していたから。
先生は話終えると、先生の持っていた鬼殺関連の数多くある全ての書や、大量にある様々な物を渡してくれた。今までは、別に仕舞っていたらしい。
「先生……僅かながら今まで、ありがとうございます。……行ってきます、貴方に教わったこの技で、自分に託されたものを守る為、そして自分自身が強くなる為…………この手でセトの首を獲る」
俺は一度先生に頭を下げた後ベッド横に置いてあった、いつの間にか新調されていた黒の戦闘装束の上に、今先生から渡された物の一つ、背中に『滅』と入った黒のロングコートを着て部屋を飛び出した。
「皆、御館様、カグツチ様、私達の弟子は我々の意志を正しくついでくれるだろうか。グレイの中には深い闇が渦巻いている。僅かしか、見てない私には変えられん。見てくれてるか『富岡』『不死川』『我妻』『嘴平』『宇髄』『悲鳴嶼』『煉獄』そして先代達よ、どうかあの子が鬼とならぬ様……今後も見守ってくれ」
炎雷は部屋の窓から、阿鼻叫喚のオラリオの上に広がる、空を見上げるのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
部屋を出たグレイは、ひとまずアイズの部屋に行った。しかし鍵が掛かっており開ける事が出来ない為、扉の前で扉の向こう側に居るであろうアイズに呼びかけた。
「……アイズ、守ってやれずにすまない。あと数日で約束の2年が経つ。…………この事に収束がついたら、ロキに神の恩恵を刻んでもらえ…………行ってくる」
「………………うん」
たった一言、グレイはそれに、あぁと返事をし黄昏の館の中を、駆け抜け館を飛び出した。
現在、様々なファミリアの人が中央の摩天楼バベルに集結し、会議を行っているとホーム内に居た団員が言っていた。北のメインストリートを通り、バベルに向かう。暗黒期と言われる時であったとしても、メインストリートは笑顔があった。だが今はここまで血と煙の匂いがする。
己の知らなかった事とはいえ、自分の関与した事の巨大さが胸を締め付ける。そして自分が何も出来なかったのが一番イラつく。
「!……あれは」
前方の民家の住宅に入ろうとしている、闇派閥であろう者が数名居るのが見えた。こんなにも簡単に、闇派閥の連中を見つけれる。闇派閥の数に、治安維持部隊が追いついていない証拠だ。
「ガネーシャとアストレアのファミリアは、今ここいらに居ねぇ!今のうちに金を稼ぐぞ!」
「うぃーす」
「そういや、ここら辺じゃないですか?」
「あぁ……確か、ロキ・ファミリアのホームか?」
闇派閥の連絡は、直ぐにでも扉を壊し住宅に入る直前だった。
「そ〜だな〜……今は第一級冒険者は何奴も居ねぇからなぁ〜……良し!次に行くか!アハハ!!」
ロキ・ファミリアのホームに手を出すと言った男まで目視10M、向こうは話や侵入に夢中で此方に気づく事すら無い。ホームに手を出すという事は、父さん達が託してくれたアイズにも危害が及ぶという事。
「……させるかクズ」
俺の大切な存在に…………手を出す奴は許さない。それが例え神でもだ。
男達の姿が、アイズの頭を掴んでいる憎きセトと重なる。
全集中・雷の呼吸ああ肆ノ型
俺を起点に、男達に黒い雷が襲った。
この型は雷の呼吸の技の中で、唯一の遠距離攻撃を可能とする技である。通常、雷の呼吸では黒い雷は出ない。然し、過去の使い手の中に、鬼に堕ち鬼の力と技を合わせた男がいたそうだ。後の鳴柱が、その力を再現させたのがこの黒い雷である。そして、鬼に堕ちた者の力も再現されている。
「痛え!!あ、あぁぁあ!!割れる?!体が割れて!!……」
「嫌だ……嫌だ!!嫌だ!!!嫌だ!!!た、助けてぇ!」
「な、何だよごれ!?だ、だずげ……」
「わ、割れてく!俺の体が割れてく!!!」
遠雷をくらった男達は、当たった所から身体が割れる様に亀裂が入っていき、最終的に完全に割れ絶命した。これが黒い雷の能力である。当たった所から身体が割れていくのだ。
グレイは、その死体達を横目に見てそのまま走り去って行った。初めて人を殺したというのに、顔色一つグレイは変えなかった。それだけ、グレイはキレているのか。否……あの時、村が壊滅した時にアイズが変わった様に、グレイの中にも変化が生じていた。それは人としては狂気に近い物だろう。もしかしたら、グレイの中で育ったモンスターにもその狂気が移ってしまっていたのかもしれない。
グレイの瞳に映るのは、自分の大切な存在に手を出し、この街に災いを与えた存在への圧倒的な殺意。そして、簡単に大切な存在に手を出され、それを防げなかった無能な自分への絶望だった。
口調が分かんねぇ〜……特にアイズの口調が。
ソード・オラトリアの原作持ってて良かったと思いました。小さいアイズって意外と喋るよね……あれはびっくりしたわ〜
お気に入りが250件突破しました!!ありがとうございます!!!今後も頑張りますのでよろしくお願いします!
感想、評価、お気に入り、よろしくお願いします!!
それでは、次回もよろしくお願いします!
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