一日中走り続けられる人間がいるだろうか?
夜の完全なる闇の中、しっかりと走ることができるだろうか。
いや、できない。
――今のマーレならできる気がすごくするが、普通の人間は無理だ。では、馬はどうかというと、馬もできないらしい。
「それでは、朝またここに来ますので、良いでしょうか。なに、馬車とあなたは私が召喚したものが守っていますので」
「わかりました。それではまた朝に」
エ・ランテルにつく前に野営することになったのだ。
リアルではできないキャンプに正直心浮かれていたのだが、モモンガさんに「アルベドを戻さなきゃいけないし、一旦ナザリックに戻って朝ここに来ましょう」と言われてはそうするしかない。
まあ、野宿よりナザリックのベッドのほうが寝心地は何倍もいいはずだし仕方がないか。
なに、野宿は冒険者になればまたいつでもできるか。
――リアルキャンプとかちょっと憧れてたのにナ―。
釣った魚を木の棒でさしてパチパチいう火を囲んで内緒話するとかいいよナー。
そういうとこ、モモンガさんは真面目だなあと思った。
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まあ楽しかったかーとモモンガさんと別れてスキップしながら第五回層に戻ると、冷水を浴びせられたように、一瞬にして浮かれた気分は消えた。
領域にある住居に入ると、そこには表情を浮かべていない姉がいたからである。
「やべっ」
これは、姉ちゃん――ぶくぶく茶釜の件を考えなくてもわかる。
約束した門限を超えて友達と遊び呆け、夕食を友達の家庭で頂いてきて帰ってきたときの反応である。
本当に生き物なのかと言いたくなるくらいに感情が消えたそれはそれは恐ろしい光景である。
しかし、自分はペロロンチーノの経験を十全に活かすことができる。姉の扱いに関しては人生と同じ長さの経験があるのだ。
どんとこいである。
「あああ、あの、お、お姉ちゃん……その、あの。べ、別にモモンガさんといっしょだったから、し、しんぱいはその、ないというか、なんというか、そのあの、えっとぉ……」
子供の頃から全く進化がなかった。
「しんぱい、したよ」
「あ、あうん」
「いきなりいなくなってさ。おいたかったのに、セバスはだめだって言って教えてもくれないし」
まあ、人間の村にコキュートスとかが現れたら混乱必須である。そして、ついてくるなと言わなければこの忠誠心の塊の守護者たちは全員で村に押し寄せただろう。
うん、仕方がない。
「だ、だいじょうぶだよ。僕たち強いし!」
「――でも、他の御方みたいに、いなくなっちゃうかもしれないし」
「そ、それは。でも、」
「ペロロンチーノ様は死んじゃったわけだし」
「うぐう」
確かに、実際わかってから見ると楽勝だったが、突入まではどの程度危険かもわからない場所だったのだ。
なのに追いかけることを禁止されたのだ。心配も仕方がないかもしれない。
「ご、ごめんなさい……」
「マーレのくせに……」
ギュッと抱きしめられる。
エンリのそれと違って、柔らかさをあまり感じない抱擁。
けれど切実さを感じる強い力に、痛いと言い出せず、添えるように抱きしめ返すのが精一杯だった。
「まあ、ペロロンチーノ様でもあるんだから、大丈夫か」
「う、うん」
「お腹空いたし、ご飯食べようよ」
十分くらいそうしていると、ぱっと体を離される。
そこにいたのはいつもと同じおねえちゃんの姿。
そこも、どこか翌日しっかりといつもとおりの朝食を用意してくれた姉ちゃんに似ていた。
肩を手で触ると、少し湿っている。
心配かけさせちゃった。少しだけ申し訳ない気持ちになった。
まあ、その気持がいつまでも続かず、何度となく「愚弟」と呼ばれ続けた自分ではあるのだけど。
**
「ってなんであんたがいんのよ」
「いたら悪いでありんすかぁ?」
部屋に戻ると、そこには同じ階層守護者である、シャルティアが待っていた。
「悪いに決まってるでしょーが。部屋に帰りなさいよ。たくさんのしもべが待ってるでしょうが」
「ヴァンパイアブライドたちでありんすね。妾は今日は帰りんせん」
「はー?」
「だって、愛しいお方、ペロロンチーノ様がいるんですもの。伽を務めるのも務めでありんす」
伽……務め……実用系のエロゲー並みの展開の速さに、ベッドに寝転んでいたシャルティアに視線を向ける。
ペロロンチーノは自動着せ替え機能もないのに、無駄に大量に衣装をプレゼントしていた。
胸を持ち上げるような腕組みに、パットがない今、大きく隙間ができていたが、それでも、ペロロンチーノが全力を注いだだけあって、最高の美がそこにあった。
幼さが残るその美貌とは裏腹に、ヴァンパイアの抱える退廃的な淫らさを微かに香らせていた。
「ちらっ」
慌てて抑えられたアウラの指の間から覗いてやばいと思った。
リアルシャルティアやばい。
「ふふーん、ペロロンチーノ様の目は正直でありんす」
「マーレだから! いいの!? こいつ、マーレなんだからね!」
んー、と人差し指を顎に当てる動きはとてもあざとい。
でも可愛い。さすがシャルティアである。
「もとより男性守護者の中では一番おいしそうであったし? ペロロンチーノ様でもあるなら、バッチコイでありんす」
「ぐぬ、ぐぬぬっ」
けど、自分のNPCとするってなんというか、なんていうか。
うーん。
自作小説を読み返して興奮するようなというか。
シャルティアは可愛い。世界一級にかわいい。
最高の娘! ――うーん、娘か。娘なのかな。
正直エロゲーでは娘も行けていたはずなのだが、これは姉が行けない理由と同じで、できてみると対象外になるという感じなのだろうか? 姉と違って完全に肉親ではないので、義理の娘という感じで――あ、そう思うと行けるような気も――
「あ、でも、ぼ、僕まだ精通してないから」
「え、そうなんでありんすか? うーん。できないなら仕方がないでありんすねぇ……」
「ほらほら、出ないならしょうがないでしょ! 諦めなさい」
「むう。精通したら必ず報告しておくんなんし」
一番は私でありんすからねええと叫んで去っていくシャルティア。彼女が去ると同時に吐かれた姉のため息とともに、いつもの二人に戻っていた。
「さっ、もう寝ようか」
「え……あ、うん」
いつもの二人に戻っていた(強調)
10話にしてようやくシャルティアが!
しかし、次の見せ場は遠いのである……
そしてGW気分で土日過ぎてた!
中々更新できずすみません。期待するのは?
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ダイジェストでもいいので完結
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別に書いているのが終わったらしっかり更新