マーレをペロロンしちゃお★   作:もこもこ@

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016 ニニャの気持ち

 

 初めて彼女──いや、彼を見たときに思ったのは、可愛らしい、でした。

 

 ダークエルフのチーノ。

 

 彼は、それこそ貴族だけがもつ高価なお人形のように美しく、僕にとっての理想の女の子に見える──少年だった。

 

 **

 

 徐々に実力をつけつつある、シルバーの冒険者、漆黒の剣に所属するつ、男のマジックキャスター、ニニャ・ザ・スペルキャスター。

 それが僕だ。

 

 

 ──嘘だ。

 

 僕は本当の性別をチームにも偽っている。

 冒険者はガラの悪い男が多いから性別を隠す人間はいないわけじゃない。何日も街から離れる冒険者という職業は、溜まりやすい男の性欲から体を要求されることが多々あり、それもあって隠すことが多い。でも、僕が性別を隠すのは別の理由だ。

 

 ニニャを名乗る前の僕はよくある村のよくある村人の一人だった。姉が一人の家庭で、農民の両親を手伝って生きる、普通の人間だった。

 優しく美しい姉は村でも人気者で、いずれ村長の息子の嫁になるだろうと言われていて、僕自身それがとても誇らしかった。

 

 けれど、姉は村に訪れた貴族に見初められて無理矢理に連れ去られてしまった。

 よくあること──そういえばそうなのだろう。

 けれど、権力を傘に、妻でもなんでもないただの愛妾として連れて行った。

 下卑ためをしていて、姉が嫌がる様にすら興奮していた。

 

 仕方がないよ。

 村人たちはそういった。

 同しようもないんだ

 兄になるはずの村長の息子はそういった。

 諦めてくれ。

 親であるはずの二人はそういった。

 

 ナゼ? 

 ナゼこんな理不尽を受け入れなくてはいけないの? 

 

 領主の悪癖はよくあることで、何度となく繰り返されていた話だった。メイドという名目で屋敷に連れて行かれ、好きにもてあそばれては奴隷として売り払われるそうだ。

 

 王都に商売に行った村人が、奴隷になっていた娘を見たと言っていた。だから、きっと姉も好き放題もてあそばれて捨てられるのだ。

 

 きっと、幸せになって、贅沢な暮らしをしているのだと、そう想像する余地すらないのだ。

 

 だから僕は髪の毛をむしるように切って、名前を捨てた。

 姉の……ツアレニーニャからニニャと名前を分けてもらって、村を出た。力が欲しかった。貴族から、悪から姉を取り返す力が欲しかった。

 

 けれど、村人が力を得る方法なんて、貴族に見込まれるか、冒険者になる以外にない。

 貴族にすがって姉を取り戻すなど吐き気がする。

 だから、僕には冒険者になった。

 

 男の冒険者になった。

 

 髪の毛を切り、女を捨てた。そうすれば貴族に見出されることもない。

 

 **

 

 結果を言えば、僕は恵まれていた。

 良い師匠に出会い、良い仲間と巡り合った。

 師匠は僕以上に小さく、仮面とローブを身にまとう変人の上、遊びで教えてやるとひどい相手であったが、魔法習得のタレントを持っていたこともあり、あっという間に冒険者として一人前の力を持てた。

 

『いつか私の領域までこい』

 

 そんな風にいう師匠に追いついた感は全然なかったが、このチームと一緒ならいずれ……アダマンタイト級にだってなれるはずだ。

 

 冒険を繰り返しながら、みんなで力を合わせて、乗り越えて、力をつけて、更に前に進もうと頑張る日々。

 

 カッパーだったのは今や昔。

 シルバーになったのはあっという間だった。

 漆黒の剣というみんなをまとめる共通の目標があって、みんな強くなりたいと思ってるからだろう。

 

 いつかきっとチカラをつけることができる。

 そしたら姉を迎えに行くことだってできる。

 そんな夢をいだきながら毎日を生きていて、彼に会ったのはそんなある日だった。

 

 可愛らしい、人だった。

 エルフというのはそもそもからして見目の整っている存在だというが、チーノはそんな領域になかった。

 

 絶世とか、神の作りたもうとか、美しい、素晴らしいをなんて表現すればいいかわからないけど、シミひとつない、赤ん坊以上に整った肌。左右の一変の狂いもない顔の作りと、神秘的な色の違う瞳。

 そのくせ、人懐っこい、けど、どこかいたずらっぽいその表情が近寄りがたさを打ち消していた。

 

 人は自分にはないものに惹かれると言うけれど──

 

 僕は自分の荒れた肌、何度も潰れて厚くなった手のひら、長くなるたびにむしるように切った髪の毛を思い出す。

 

 なのに彼は僕に近づいてきてニコッと笑ったんだ。

 天使──女神かな?? 

 

 会話の中で、彼が新米冒険者であること、自分は少年で、女のカッコをしているのはダークエルフの衣装であることを教えてくれた。

 

 驚くほどに気さくな態度に、僕はいつの間にか楽しくなった。

 彼ともっと一緒にいたいな、って思っていて、いつの間にかメンバーを紹介していた。

 

 だって、一緒に依頼を受ければもっとずっと一緒にいれるかもしれないから。

 

 

 




姉を連れて行った貴族への恨みを持ち村を旅立つ。
希少なタレントを元に、自分を鍛え、冒険者として鍛える。
一人前になれたところに訪れる美少女エルフ! しかも自分に興味をもって話しかけてきた上に
デートまで。

んン~~、ニニャがなろう系主人公の道を……!?
これはそのうち「可愛い女つれてんじゃねえかよお」と絡まれますね。

中々更新できずすみません。期待するのは?

  • ダイジェストでもいいので完結
  • 別に書いているのが終わったらしっかり更新

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