マーレをペロロンしちゃお★   作:もこもこ@

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003 にがさんっ、お前だけは……!

 

 その後、マーレはアウラをちらっちら見ながら、

 

「第六階層守護者、アウラ・ベラ・フィオーラ。御身の前に」

「お、同じく、第六層守護者、マーレ・ベロ・フィオーレ。御身の前に」

 

 と、ややどもりながらも忠誠の儀をこなした。

 驚くほどに高い忠誠心に晒され、緊張を強いられ続けたモモンガの荒んだ心をは困惑しながら一生懸命こなす小さな子供の姿に癒やした。

 

 ――だが、男だ。

 

 というより、中身はエロゲー大好き成人男性だった。

 きぐるみマスコットの中の人を知ってしまった子供のように、癒やされた心はずたずたに引き裂かれた。

 おのれ、ペロロンチーノ。

 

 しかし……。

 様子を見るに、マーレがペロロンチーノであることに気づいているのはモモンガのみのようである。

 

 あれほどギルメンを至高の御方と崇める彼らが、体こそ守護者のものであっても、中身がペロロンチーノなのに普通にしていられるだろうか。

 いや、いられまい。

 

 気になるのは、マーレの『今までモモンガさんはメッセージを無視していた』と認識している点だ。

 

 当然、モモンガにはマーレから話しかけられた認識も無視した認識もない。

 そもそも、彼らはNPCだったのだから、できるのはプログラムされている行為のみ。

 自由に話しかけたりできるはずがない。

 

 だから、マーレにペロロンチーノが宿ったのはゲーム終了時、この異変が起こった瞬間というのが正確なところで、マーレの設定になにかそういった仕掛けがされていた、というのが一番可能性が高いだろう。

 

 自分がアルベドの設定をいじったように、マーレを誰かがいじったのだ。

 ペロロンチーノ本人だろうか? それならなにやってるのだと言いたいが。

 

 

「皆、お、面を上げよ」 

 

 モモンガの一言で一斉に頭が上がる。一糸乱れぬ素晴らしいシンクロだ。

 それが軍隊を前にした一般人のようにビクリと体を震わせる。

 

 マーレを見ると、こっそり口が曲がっていた。微笑んでいた。

 いやあ。モモンガさん頑張ってるなあとかぁるーい笑みを浮かべていた。

 その態度に青筋を立てる。

 

(ペロロンチーノォ! お前もこっちに来るんだよォ!)

 

 自分だけ愉快で気軽な守護者ライフを送るなど、許されない。

 ギルドアインズ・ウール・ゴウンは平等なギルドなのだ。

 平等にしなければいけない。ウム。完璧な理論である。

 

「よく集まってくれた。感謝しよう。さて、現在ナザリックは原因不明の事態に巻き込まれている。だが、一つ、皆に喜ばしい事実を伝えよう」

 

 ナザリックに異常事態が起こっている事自体は、急な各階層の調査に皆、薄々感づいていたようだが、喜ばしい事実にはみな心当たりが無いようだ。

 マーレ自身も不思議そうに首をかしげている。このっ。

 

「ペロロンチーノさんが帰還した」

 

 瞬間。

 時間が停止したように静まり、わっと喜びの声が上がる。

 

「ほ、ほんとうですか? モモンガ様!」

「そうだとも」

「ぺ、ペロロンチーノ様はどこ、どこに!? モモンガ様!」

 

 身を乗り出し、喜びに顔を緩め、頬を染めるシャルティア。

 その様子に、自分の判断に間違いはないと確認する。

 

「それでは、ペロロンチーノさん、皆に説明を。さあ、前に、――マーレ!」

 

 その言葉に守護者すべての目がマーレに向く。

 皆からの視線に、つうっと冷や汗を頬に浮かべれうろたえるマーレ。

 モモンガを上目遣いで見つめてくる。可愛いが、容赦はすまい。

 

『ほら、ペロロンチーノさん、前に出て自分の状況と、ペロロンチーノであることを宣言してくれればいいですから』

『うぐっ、モモンガさんみたいになるんですか? ヤダなあ』

『一人だけ楽な立場なんて駄目ですよ。さあ、腹をくくってください』

 

 そのメッセージにようやく覚悟が決まったのか、マーレはゆっくりとした歩みで前に進むとくるりと守護者たちに向かい合う。

 

「今まで内緒にしていてごめん。俺は、ペロロンチーノは、マーレに生まれ変わった。そう、俺はナザリックを去ったんじゃない。本当はみんなとずっと一緒にいたんだ」

 

 真偽を確かめるように、モモンガに視線を向ける守護者たちに、しっかりとうなずく。

 確信は持てずとも、それで信じることにしたらしい。

 

「リアルのことはみんなも少しは知っているだろう? そう、俺たちギルメンが帰っていた世界だ。そこでは、俺達は……そうだな、プレイヤーという名の人間種なんだ。俺も、モモンガさんも、ユグドラシルでは無敵の力があっても、リアルでは、剣で胸を貫かれれば死ぬような生き物だ。

 ――だから、ここに来れなくなるある日、テロリストの自爆テロで、俺は吹き飛ばされ、瓦礫に埋もれて……だくだく流れる血に体の熱が消えていって――俺は死んだ」

 

 周囲に苛立ちと憎しみの気配が満ちる。

 ぎりりと歯を鳴らず彼らに、ビビりそうになるモモンガだったが、ペロロンチーノさんの話は衝撃的だった。

 そして、全てに納得が行く気がした。

 

(彼は裏切っていなかった)

 

 ナザリックを去っていくものの中には、リアルの夢を追う者だったり、ヘロヘロさんのように、リアルに苦しんでしょうがなくだったり、理由は人それぞれではあったが、それでも、ひと声かけてから旅立っていったのだ。

 

 巣立っていったのだ。ユグドラシルしかないモモンガにはできないここを飛び立っていく彼らを、送り出してきたのだ。

 寂しいと思いながらも。

 

 だからこそ、仲が良かったのに自分にも、周りにも何も言わずに去った彼には胸の奥に棘が刺さっていた。

 

 だから、彼らと同じように、憤った。眼の前に犯人がいれば死が救いだと思うほどに痛めつけていただろう。

 

「――仕返ししたい気持ちはあるけれど、リアルに行けない以上何も出来はしない。でも、きっとたっちさんみたいな優秀な警察が犯人を捕まえてくれたと思う。そう思ってる」

 

 思えば、そのくらいから、じんわりとした絶望の這い寄るリアル世界で、安全に暮らすアーコロジーへの不満から、テロ行為が少しづつ活発化仕出していた。

 

 なにせ、モモンガはその日暮らしの下層民であり、リアルよりユグドラシルでの生活を現実に思っていた彼には関心が薄かったから。

 

(たっちさんは、だからINできなくなったのだろうか)

 

 家族を守るためにも、今以上に頑張らなくてはいけなくなったと告げる彼を思い出す。

 

「死んだと思った俺が目を開けると、目の前には姉ちゃんが……ぶくぶく茶釜さんがいた。『ゴメンね、もう来れない。幸せになってね』そう言って去る姉ちゃんがいて……声をかけることもできなかった。

 それから俺はペロロンチーノであるより前に、マーレだった。だから、許可なくギルメンに話しかけるなんてできなかったし、ギルメンの助けなく、自分がペロロンチーノだって証明することができなかった。そもそも、創造主がそうあれと言ったからペロロンチーノになったふりをしているんじゃないかとも思ったから」

 

 実際どうなんだろうか?

 モモンガから見て、彼はペロロンチーノそのものである。

 そもそも、リアルのことや、テロのことなど、マーレに知る由もない。彼はユグドラシルの存在なのだから。

 

『感覚的には自分の前世がペロロンチーノだって気づいた、みたいな感じですねー。やべー、エルフになってる―。いや、なってるというか、ずっとそうだったっけ。みたいな感じです』

 

 ふむ。

 実際にモモンガも、自分が人間だったということを思い出そうと思わなければあまり意識しない。

 もとからオーバーロードだったような気持ちになるのだから、きっとソレと近いのだろう。

 

「でも、モモンガさんが、あなたはペロロンチーノさんだと言ったから、本物なんだと思う。けど、同時にマーレでもあるんだ。きっと皆も、モモンガさんやギルメンに感じる至高の方々のオーラを俺には感じないと思う。だから、今まで一緒に接してきたことを不敬だったとか思わず、これからも仲良くしてほしい。以上だ」

 

 サラリと敬わなくていい立場に行こうとするマーレに強かさを感じつつ、あれを弟気質というのか、楽しいポジションにいつの間にか居る彼に懐かしさを感じたのだった。

 

 




黒幕は茶釜さんだったのだっ!


--追記--
誤字報告ありがとうございます。
ついスライムの印象に引っ張られてぷくぷくしちゃうのです。
すみません! 至高の御方!

中々更新できずすみません。期待するのは?

  • ダイジェストでもいいので完結
  • 別に書いているのが終わったらしっかり更新
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