【本編完結】原作に関わりたくない系オリ主(笑) IN ダンまち   作:朧月夜(二次)/漆間鰯太郎(一次)

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更新は書き溜めが尽きるまで。
基本原作沿いメインでは無く、ネタが思いついたら書くスタイル。
あと下品な地の文があるからごめんなさいね。


本編
光の戦士(笑) オラリオに立つ


「ほ、ほら、ライト君? そろそろダンジョンに行った方がいいんじゃないかな? その、そろそろお金もないしさ?」

「………………」

 

 女の言葉に男はじろりと顔だけを向けた。

 何とも非常に不満気だ。

 

 ここはヘスティアファミリアのホームという名の廃墟である。

 元は教会だったが、上物はもう使い物にならず、地下の部屋のいくつかが無事。

 そこで彼女らは細々と生きている。

 

 ここオラリオは冒険者の街。

 つまり一攫千金を狙う猛者の群れがひしめいている欲望の街。

 で、彼女らはその底辺に蠢いているザコだった。

 

 現在は半地下にある部屋の中でリビングとして使われている比較的マシな部屋では、主神であるヘスティアが、ソファーに大股を拡げて座る青年を必死に説得しようとしていた。

 小柄ながらメリハリのありすぎるボディ。

 そして清楚な白を基調としながらも、太腿や胸の谷間を強調したあざといドレス。

 

 それをさりげなーくアピールしながら、ヘスティアはライトと呼んだ青年ににじり寄っている。

 その姿は完全に新人キャバ嬢が必死に固定客を獲得する為に、一見の客に同伴をねだる様に似ていた。

 しかし男の反応は冷え切っていた。

 やらせてくれないキャバ嬢など用は無いとばかりに。

 

「ええ……面倒臭いなぁ。オレもバイトで稼ぐからさ、ダンジョンとか危険なのやめようぜ」

 

 ライトはチラっとヘスティアの谷間を一瞥するも、直ぐに煩悩を払うかの如く首を振り、まただんまりを決め込んだ。

 どうやら完全に拒否という訳でもないらしい。

 

「も、もーーーっ! キミは強いだろーーーー! どうしてグータラするのさ!」

 

 もう怒ったぞ! プンプン! 的なあざとい感じで怒りを表す主神。

 ライトの胸に縋りつき、ぽこぽこと叩きながらも、チラッと上目遣いで顔色を窺う所は流石である。

 ただしライトの怠惰をなじるその発言は、彼女にとって酷いブーメランだった。

 

 時間を少し遡ろう。

 ヘスティアはこの迷宮都市オラリオに降臨した神様の中では相当に新参だ。

 実際このファミリアが結成されたのは2週間ほど前だ。

 

 と言うのもこの街は、天界で退屈した神々がこぞって降臨し、ファミリアなる眷属を集めたサークルを作っている。

 大いなる力を有する神々だが、地上では権能を封じるという縛りを持って活動している。

 それがルールなのだ。

 

 その代わりに神の血で眷属にした己の子には恩恵という人外パワーが現れる。

 それを持って冒険者はしのぎを削っているのだ。

 その様はシマ争いをするヤクザの如し。

 

 さてそんなオラリオの神様事情がある中で、ヘスティアは何をしていたか。

 それは彼女の天界からの神友であるヘファイストスの所に転がり込んでいた。

 ヘファイストスのファミリアは、ダンジョンアタックをほとんどせず、鍛冶により産みだす作品で名を知られている。

 そこは火と鍛冶の神の面目躍如か。

 

 地上にやってきたヘスティアは、生来の呑気な性格からか地上の現実を甘く見ていた。

 ────いや、舐めきっていた完全に。

 

 どうにかなるだろう……そう、明日から本気出すと息巻くニートと同じ理論である。

 明日やろうはバカヤロウである。

 それは神とて地上で生きるなら同じなのだ。

 

 ────ファミリア結成? ボクには楽勝っすよ(笑)

 

 そんなノリでいたヘスティアだったが、現実は甘くない。

 ヘファイストスファミリアのホームに居候しながら眷属集めに奔走……はそんなにしていない。

 何となくメシを食いながら、ダラダラと居着いていただけだ。

 

 その様子を例えるなら、ニートが漸く重い腰をあげて母親から小遣いをせびり、ハロワ通いすると言いながらパチンコ屋に通う姿に似ていた。

 実際にヘスティアはヘファイストスに借金をこさえた。

 とんでもない額の。

 

 これには流石に仏のヘファイストスもキレた。

 もう出ていけ。お前の面倒は見切れん!

 そんな感じで追い出された。

 

 それでもヘファイストスは最後の慈悲の心とばかりに、自分が管理している土地の中から、廃墟だが辛うじて住める元教会を斡旋したのだ。

 ヘスティアは思った。

 ネチネチと嫌味を言われるくらいなら、ここに住める分マシだなと。

 まあホームさえあるならどうにかなるだろうとほくそ笑む。

 控えめに言ってクズである。

 

 ただし眷属もいない為に収入が無い。

 結局それもヘファイストスに泣きつき頼んだ。

 彼女のコネからじゃが丸くんの屋台のバイトを斡旋して貰ったのだ。

 それでどうにか日々の食事にはありつけた。

 

 給料は安いが、余ったじゃが丸が貰える。

 ならええやん。最高やで。

 そう思ったヘスティアは一体なんの為に地上に降りたのか、コレガワカラナイ。

 

 しかし流石にそこはゼウスの姉か。

 幸運にも眷属を一人ゲットできた。

 それがライトだ。

 

 では続いてライトの事を少し語ろう。

 彼はいわゆる転生者である。

 とは言え昨今流行の社蓄でもニートでも無い。

 中の人の年齢はおっさんだが。

 

 彼は独身だったが、善良な人間であり、友人も多かった。

 平凡で退屈な男だったが、それなりに幸せな人生だったろう。

 詳しい事は割愛するが、地球を管轄とする神々の戯れで、ベタなテンプレ転生の様な流れで、ランダムに選ばれた犠牲者が彼だ。

 

 神々の娯楽の為に意味も無く殺され、チートを与えて別の世界に送り込まれたのだ。

 しかもそのチートが酷い。

 彼の趣味は色々あったが、大昔のゲーム、つまりレトロゲーを掘り返してやるというのがある。

 その時の彼は休日で、前の日の夜からFF3をやっていた。

 もちろんリメイクではなくFC版である。

 

 その神は面倒臭いからと、そのゲームのジョブをランダムで1つ。

 死んだ時点で持っているアイテムを全部と言う能力で与えた。

 幸い選ばれたのは最強職とも言える忍者だったのが救いだろうか。

 

 彼はクリア後も延々とレベリングをするタイプのやり込みプレイヤーだ。

 アイテムも豊富にあったし、アイテム増殖バグを利用して手裏剣もしこたま持っていた。

 なのでそう言う意味では物騒なオラリオで戦力的なアドバンテージを持った点はまあいいだろう。

 

 だがしかし真っ赤な忍者装束で人通りの多い中央広場にいきなり落とされたのは酷い。

 どう見てもリアルニンジャスレイヤーにしか見えないが、あまりの不気味さに誰も話しかけてこない。

 居た堪れなくなった彼は、アイエエエエエエ……とメンポの下で呻きながらどこかに走り去ったのだ。

 

 そんな彼が辿り着いたのは西地区北端のメインストリートだ。

 どうみてもスラムっぽい場所で、廃墟の教会を見つけて逃げ込んだのだ。

 ここなら暫くいても大丈夫そうだ、そう考えて。

 

 そこにいた。

 ツインテールのあざとい神様が。

 キミは誰だい? 急に話しかけられたライトは、アイエエエエ……とHRSつまりヘスティア・リアリティ・ショックを起こして倒れた。

 あまりに目まぐるしい状況の流れに彼の精神は限界に来ていた様だ。

 

 ────しかし目が覚めると、彼の背中に謎の文字が刻まれていた!!!

 

 ヘスティアの論法はこうだ。

 迷える子羊が目の前にいる。

 話しかけたが疲れからか彼は意識を失った。

 これは処女神として救うしかない!

 ならば眷属にしてあげようじゃないか。

 

 結論、ヘスティアはクズ、はっきりわかんだね。

 

 目を覚ましたライトに、彼女は説明した。

 ファミリアとかオラリオとかの事情を。

 因みにライトの名前は、光の戦士から取った。

 彼を殺した向こうの神が、彼のパーソナルな情報を消していたのだ。

 自分は確かに日本人のサラリーマンめいたオッサンだったという記憶は残っているというのに。

 

 故に名前が分からない。困った、じゃあFFと言えば光の戦士だな。

 なるほど、ならば光……光、うんライトでいいか。

 そう言う流れである。

 

 因みに彼の元の姿はリセットされており、銀髪で白い肌の青年になっている。

 向こうの神はその辺も面倒臭かったので、適当にルーネスの見た目にしたそうな。

 しかしライトの中の人はリメイク版を知らないのでルーネスの名前が思いつかなかったのである。

 

 仕方ないね。オッサンだもの。

 

 こうして紆余曲折を経たが、一応ヘスティアファミリアは出来たのだ。

 ところがだ、話を聞いているうちにライトが嫌な事を思いついた。

 というのも彼はここがFFなんか関係ない世界だとすぐに気が付いたからだ。

 

 神様? ファミリア?

 …………ダンまちじゃん!

 しかも目の前の神様がヘスティア?

 ベル君どこだよ! そう思った。

 

 彼は結構原作小説が好きだった。

 むしろ書籍化前のWEB版からのファンだった。

 掃き溜めみたいな量産型異世界チート小説だらけの中で、きちんと主人公の挫折と成長を描いた珍しい作品だと彼は思った。

 

 ハーレム云々はあまり好きじゃないが、ベルとヘスティアの関係性に不覚にも泣いてしまった事は山ほどある。

 そう、彼はベルとヘスティアのカップリングこそ至高と考えるタイプの男なのだ。

 

 そこでライトは恐る恐る聞いてみた。

 時系列が分からないと状況が判断できないと。

 怪物祭っていつ頃です?

 え? 来週くらいじゃないかな?

 駄目じゃん……ベル君いないんだが……。

 彼は絶望に暮れた。

 

 序盤の山場と言うか、ベル君の最初の大きな試練だ。

 このシーンは泣ける。

 弱いくせに頑張っちゃうベル君と、それを心から信頼する神様。

 

 でもこの時期にベル君がいない。

 この事実は大きい。

 つまり自分は、もしかするとベル君ポジにいるのでは?

 しかも冗談みたいな理由でここにやってきた忍者が? いやニンジャが。

 

 これはひどい。

 それならモブ冒険者で、何かこういい感じのファミリアに自分で所属させてくれよ(絶望)

 

 彼は思う。

 今後ヘスティアとどういう関係性になったであれ、何かこういい感じの距離感になったとしたら、ネトラレみたいで嫌だと。

 とまあ……こういう事情があり、冒頭の様にダンジョンアタックを拒否していたのだ。

 

 実は彼、何度もダンジョンには行っている。

 せっかく転生したんだし腐ってても仕方がないと、どの程度戦えるか試したのだ。

 それに好きなラノベの世界であるし、ニンジャであっても戦えるなら自分も体験してみたい、そう思うのは当然の帰結なのだろう。

 結果、初日に12階層までスイスイと進み、あまり見かけないレアモンスターであるインファント・ドラゴンに出くわし、あっさりと殺して帰ってきている。

 

 あまつさえ帰り道に5階層ではぐれミノタウロスに遭遇し、スリケン一発で撃破している。

 FF3において忍者は最強。それは古事記にも記されている。

 それもFC版ならオニオン装備などの一部の装備品以外は全部装備出来てしまうというチート野郎だ。

 その上、コマンドアビリティの【なげる】で使える手裏剣のダメージがエグい。

 故にどれほどダンジョンのモンスターが強かろうと、くらやみのくも以下なら余裕と言うことだ。

 

 そんな彼が恩恵と共に発現したスキルは【クリスタルの加護】である。

 その内容は、光の戦士は次元の壁を越える。

 

 ────その偉業はいつまでも色褪せる事はない。

 

 そんな説明書きがあったが、要はくらやみのくもを倒せるようなステータスをそのまま継承しますよって意味らしい。

 因みにレベル表記は文字化けしていた。

 そりゃそうだ。FFのカンストレベルなのだから。

 それを見たヘスティアは神の集会は暫く出ないぞと青い顔をしていた。

 

 なので彼が問題なく戦える事は実証済みなのだ。

 彼は最初、ダンジョンに潜っては魔石をガンガン拾って生活費を確保した。

 だがミノタウロスを余裕で撃破したシーンをロキファミリアのくっ殺系剣士に見られていた。

 それを彼女から聞いた小人の団長の親指がキュンキュンうずいた。

 

 そうなると当然、強さに対してはガチ勢のあの娘は興味を示す。

 どうしてそんなに強いの等と言葉足らずの質問を連呼。

 こいつはヤベーとばかりにライトは迷わず【とんずら】を使い逃げた。

 

 あそこに関わるとロクな事は起こらないだろうことは確定的に明らか。

 まして自分はベル君じゃあないのだ。

 因みにジョブは忍者固定なのに、今まで覚えたアビリティは使える様だ。

 良かったねライト。

 

 つまりNTR感云々もあり、ダンジョンにいると主要キャラと顔を合せそうだから嫌だという理由でライトはダンジョンに通うのを嫌がったのだ。

 しかしヘスティア、眷属が働かないと金がヤバい。

 これではファミリアを作った意味が無いじゃないか。

 ましてライトは強そうだ。なら稼いでほしいなー、そう思うのだ。

 

 ここにきてあざとさの権化であるヘスティア、最終手段にでた。

 具体的にはライトの横にするすると移動すると、女の女である象徴の向かい合う山脈で彼の腕を挟み込む様に抱きつくと、少し潤んだ瞳でライトを見上げたのだ。

 普段がグータラな彼女でも、ガワは最高級である。

 そんなヘスティアの本気にライトは思わずごくりと喉を鳴らす。

 

「ラ、ライト君? も、もし今週頑張ってくれたら、週末にボクのその、おっぱい揉んでもいいよ?」

「やりましょうっ!!!」

 

 凄まじいレスポンスでライトは答えた。

 その早さはツ〇ッターでフォロワーの無茶ぶりを数時間で叶えろと部下に命じる鬼畜大手携帯キャリアの経営者の様だ。

 

 とにかく解決したようで何よりです。

 それにしてもNTRは嫌だとは何だったのか。

 とにかくこうして、異聞ダンまちは始まるのであった。

 

 

 




ベル「(ギャグ時空には参加したく)ないです」

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