【本編完結】原作に関わりたくない系オリ主(笑) IN ダンまち   作:朧月夜
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インテグラ「ウォルター、奴ら私の部下を喰っていた……絶対に許せない。この館から生きて帰すな」
ウォルター「かしこまりましたお嬢様。ですがここはベル、貴方に行って貰いましょう。できますね? ヒーローを目指しているのなら」
ベル「……………………」コクリ


ダンジョンでデモンストレーションをするのは間違っているのだろうか

「突然だが諸君、私の話を聞いて欲しい」

 

 抑えめのバリトンでライトは口火を切る。

 すると向かい側に座るヘスティアは心底不安そうな顔、通称SF顔でライト見た。

 

「だ、大丈夫かいライト君? あれほど拾い喰いしちゃあダメって言っただろう?」

「ライト様が私とか言ってます……びょ、病気ですかね!? ライト様、正気に戻ってください。あ、リリの胸揉みますか?」

「んむ、是非揉ませて貰おう」

 

 キリっとした顔のライトの手が素早く伸びる。

 

「んっ、んんんんぅ……ちょ、ちょっとどうしてボクの胸を揉むんだい!? リリルカ君のを揉みなよ!」

「それは後でたっぷり揉むからいいのだ。それより神様が私の事をどう思っているかよーーく分ったからな、これはその意趣返し。やられた事は……倍返しだッッ!!」

「ちょ、駄目だよぉ、そこはホント駄目なんだってばぁ!?」

「チッ、この神様、メスの顔してやがるです……」

「リリルカ君、顔が怖い怖いっ!」

 

 相も変わらずグダグダであるがヘスティアファミリアの面々が一堂に会していた。

 というかいつもと変わらぬ朝食を皆で囲んだ後、話があるからとライトが皆を呼び止めただけだが。

 

 ライトはまだ外も明るい朝だというのに、どこかの人類ポカン計画を任されている司令官の様なポーズで語り始めた。

 と言っても直ぐにグダり、憤慨したライトが主神の乳を揉むといういつものテンプレとなったのであるが。

 

「まあいい、話の腰を折るんじゃあない! つまり団長として声を大にして言いたいのだッ! 何故っ、団員が、増えないのかとっ!」

「いやまあ、そりゃあね……? 団長であるライト君の悪名がね?」

 

 やれやれ、何を分り切った事をとばかりに笑いながらヘスティアがリリルカを見れば、彼女は目を逸らしていた。

 危機管理能力の高さ、これがリリルカアーデの真骨頂である。

 

「まあっ! そう言う側面も無きにしも在らずだが、一番はヘスティア神の知名度、恐らくそれが低いッ!」

「うわ、うるさっ!?」

 

 ライト、ここに来てヘスティアの発言を、大声を持って上書きし、無かった事にする作戦である。

 

「そこでオレは考えた」

「あ、私はもうやめたんだね」

「乳揉もうか?」

「ごめんなさい。ボクが間違っていたよ……」

「まったく、これだからロリ巨乳は……まあいい、つまりはこの状況を打開する策を練ったのだ!」

 

 ババーン! と効果音でもしそうな勢いで、ライトは立ち上がるとそう叫んだ。

 そしてまた座る。

 

「まあぶっちゃけるとだ、金は正直売るほどある。そっちの方面での実績は実際高い。そうだろう?」

「まあそうですね。未だにライト様にテコ入れしてほしいという依頼が多いですし。今にも潰れそうな店とか」

「そうだ。なのでオレというか、商業系ファミリアであるという部分はある程度の認知はされているんだ。だのに何故来ないか、結局コレって冒険者はやっぱ冒険したいんやなって」

「あー……そういう。確かにそうかもしれないねえ」

 

 ライトが言うのはシンプルだ。

 冒険者ってのは分かりやすい強さを信仰しているのだと。

 故にオッタルが畏怖されているのはそういう事なのだろう。

 或いはフィンなどが顕著か。非力な筈の小人族がオラリオ最大派閥の団長なのだから。

 

 逆に商業ならば、どこかでモンスターと対峙するという前提が無ければ、そもそもファミリアに所属する必要も無い訳だ。

 そんなライトの意見になるほどと頷くヘスティアとリリルカ。

 

「で、原因がそれだとして、ライト君はどうしようって言うんだい?」

「そうですね、そこをクリアするとなると、もしかして……」

「うむ、いち早く察知したリリ隊員には5点をあげよう。ぽんこつ神はー2点」

「ええーーっ!!!」

「やったーっ!!」

 

 そのポイントが何になるのかは誰も知らない。

 

「まあつまりだ、満を持してダンジョンに潜るのだッ! そして人目が多い所で階層主とやらをボッコボコにする。結果、キャーライトさんステキー! 抱いてー!! とまあこうなる」

「なんだいそれは! 煩悩だらけじゃないか!」

「そうですよライト様! リリという者がいながら……」

 

 そこでライト、渾身のドヤ顔をしながら、チッチッチッと指を振る。

 いちいち腹が立つリアクションである。

 

「リリルカくーん、焦っちゃあダメだ。知る人にはスゴイハヤイ赤い人との異名を持つオレが万が一苦戦する事などあり得ない。そうなりゃ当然注目されるだろうし、女冒険者からは熱視線が来るだろうよ。そこを責める訳にはいかんわな。だって将来有望な相手を掴めば安泰なのだから。だがっ! ビシーっとオレは言い切るね。オレには既に心に決めたステディがいるのサ……ってね!」

「やだ、超カッコいいですライト様ァ……」

 

 キメ顔でそう言ったライトに目を輝かせたリリルカが縋る。

 ただ冷静に考えると、複数の異性とねんごろになっている時点で腐れ外道なのだが。

 その辺は英雄色を好むで流しておかないと、ベル君の立つ瀬がないだろう。

 

「あのさぁ……この茶番はいつまで続くんだい!?」

「まあ待て。横道にそれるのはもはや、ヘスティアファミリアの伝統だと言える。つまり神様がぽんこつなのが悪い」

「ええ……酷い責任転嫁だぁ……」

「それはそれとして」

「切り替えもはやーい!」

「とにかく目立つモンスターを狩る事で必然的に名声はあがる。と言ってもオレはリリやティオナとグータラしている日常は手放したくないっ! 故にまずはメンバーを増やし、中層くらいまでは安全にいける程度には訓練をする。その後! オレとリリは商業系担当、そして新人の中で有望な奴をダンジョン系担当とするのだ。結果、どっちにしても名声は保てる。まあ時折出張ってオレがヤベー奴を倒せばいいだろう」

「うう……何かこう言ってる事は凄い納得できるんだけどね。何故か釈然としないよ。ってあうあうあうあう────」

「失礼な事を言うのはこの乳かっ! こいつめ! こいつめ! 柔らかすぎっ!」

「や、やめろォ!?」

 

 こうしてライトによる見世物的ダンジョンアタックを行う事が決定したのである。

 

 ☆

 

「いや駄目ですっ」

「ほーらほらほら、可愛い顔なのにツンツンしなーい」

「馬鹿にしてるのですかっライト氏」

「いやーだってダンジョン入るだけじゃん」

「ならもっとそれらしい格好をしてくださいよ。ピクニックですかっ」

「それを言われるとアレなんだけど、これには深い深~~い訳があるんですわ」

 

 久しぶりにギルドにやってきたライトとリリルカ。

 どうやら今日、茶番、いや見世物アタックをするようだ。

 

 驚く事にライト、いつものニンジャスーツ姿では無い。

 銀髪イケメンを晒している。

 普通なら踏み台転生者的な容姿なのだが、ここオラリオでは原色の髪色など普通にいるので問題無い。

 

 ライトとしては素顔を晒して大活躍をすれば、キャーカッコイイ! と評判が集まると思っている。

 故に身軽な姿で来たという訳だ。

 だがそれがエイナの逆鱗に触れた。

 なるほど、ジーンズに白いカッターシャツ、実用性の無いお洒落系ブーツでは正気を疑われても仕方がない。

 

 しかもリリルカを膝の上に乗せながら、さながら仲睦まじい親子ムーブをしている。

 乗ってる方も満更でも無いが、それでいいのかリリルカアーデ。

 エイナがキレたのは、そのリリルカの「ライト様、今日はリリが腕によりを掛けてサンドイッチを作りました! 後で食べましょーね!」のセリフがきっかけである。

 故にピクニックかと突っ込まれたのだ。全くその通りである。

 

 ライトとしては鎧をつけてもつけなくてもそう変わりはないので、なら高速移動をしやすい軽装の方がラクと言うだけだ。

 けれどエイナの、いやオラリオの常識からすると、基本的には相手の攻撃を受けきれる防御力は無いと厳しいというのが常識なのだ。

 前衛が受けて、アタッカーが殲滅、つまりはMMORPG的なパーティプレイが前提である。

 

 ライトの意見はあくまでも自身の力を前提とした、廃人のソロプレイである。

 そしてここまでのライト、たしかにレアモンスターをヤったりはしているが、名声を得る程の活躍をあまりしていない。

 ティオナに懐かれたきっかけとなったあのロキファミリアの遠征、あれは50階層以降の難敵を単騎で翻弄している時点で恐ろしい事なのだが、ロキファミリアとしてはパーティーが決壊したなど汚点になる事を喧伝する訳も無い。

 結果、あの事はギルドもきちんと把握していない。

 故にライトが大丈夫と言ったところでエイナに理解は出来ないのだ。

 

 今回のライトは、他人に見せる為にダンジョンに向かう。

 なのでターゲットはウダイオスを考えている。

 人目に付きやすい18階層で黒いゴライアスと戦えれば早いのだが、如何せんアレは原作におけるイレギュラーなので期待出来ない。

 あれはダンジョンの中で神様が存在をアッピルした結果でしかないのだ。

 

 原作にはあそこにヘスティアもヘルメスもおり、物語の流れでああなった。

 なら次点としてウダイオスである。

 ウダイオスは見た目のインパクトも抜群である。

 それに37階層というのがライト的には良い。

 

 何故ならその辺を通れる連中はニュービーではあり得ないし、かと言ってロキファミリア程トップでもない。

 頭打ちになった連中が上を目指すのに狩場にしている可能性が高いエリアと言える。

 

 ウダイオスは大型で、スパルトイを取り巻きに呼ぶ。

 本体はほとんど動けないし、攻撃範囲も狭いが、スパルトイはレベル4相当のモンスターだ。

 つまりソロで倒せる相手ではない普通は。

 

 アイズがそれをやってのけてはいるが、決して楽勝と言う訳でも無い。

 原作における描写はあくまでもフィクションであり、ここは現実なのだ。

 故に描写されない部分では、アイズとて苦労はするのである。

 単純に彼女の場合は、スキル自体が汎用性の高い物だというのもあるだろうか。

 

 ライトは系統としてはアイズと似た様な物だ。

 戦闘スタイルがというより、自己完結型と言うか、連携でミックスアップするタイプでは無い。

 なのでエイナとライトの意見は噛みあわないという訳である。

 

「時にエイナよ」

「……なんですか」

「ジュージュー苑の焼肉を知っているかね?」

「あ、知ってます知ってますっ! 同僚と行こうとしたんですけど、全然予約が取れなくて……

 

 ────解説しよう。ジュージュー苑とは、1か月程前から突如オラリオ北区画にオープンした、高級なレストランである。

 丁度バベルから北に向かうメインストリートを20分程歩いた先にある。

 そこでは古今東西の最高級の肉を集め、これまでオラリオには無かった、専用の隙間の開いた鉄板の上で、食べやすくカットされた肉を焼いて食べるのだ。

 加えて、ジュージューのたれなるソースに付けるとそれはそれは極上の味わいだと言う。

 当然客単価もかなり高く、中堅冒険者でも躊躇する価格帯だ。

 しかしそれも含めて、オラリオのVIPがこぞって通う人気店である!

 

 エイナの反応を見てライトがニヤリと笑ったっ。

 攻め時はいまだ、そう言う凄味を感じる。

 

「……エイナよ。実はあの店、このオレが噛んでると言ったらどう思うかね?」

「えっ!?」

「フフーン! ではリリルカ君、この頑固なハーフエルフ君に説明をしてやってくれっ」

 

 ライトのセリフにリリルカは立ち上がると(と言っても膝の上だが)、どこからか眼鏡を取りだし装着した。

 知的に見える感じの奴である。

 どうやらライトの秘書モードのつもりである。

 何故かそこはかとなくドヤ顔をしている。

 

「はいです。エイナさん、あの店のオーナーは以前、西地区で料理店を営んでいたんですが、親族が抱えた借金の保証人にされており、店が取り上げられました。そして彼はライト様に相談し、富裕層をターゲットとした新感覚の肉料理の店、つまり焼肉ジュージュー苑をオープンしたのですっ! ライト様の優れた頭脳から繰り出されるアイデアの数々っ! 今ではオラリオいちの高級肉店として地位を確立しましたっ! つまり! ライト様はあの店の仕掛け人として、それなりの影響力をお持ちなのですっ!」

「なん……ですって……」

 

 驚愕のエイナ!

 リリルカは説明に満足したのか、眼鏡をしまうとそそくさと娘モードに戻った。

 

「つまりだなァ~エイナ職員。貴様がイエスと言うのなら、このライト、貴様に優待券を進呈する用意があるのだよ!」

 

 何故か子安っぽい感じでビシっと決めるライト。

 ごくりと唾を飲みこむエイナ。

 じっと目を閉じ何かに耐える様な苦悶の表情。

 

 天使エイナ「そうよ、エイナ。あなたは誇り高きギルド職員でしょうに。彼らの無謀を水際でせきとめ、生存率をあげるのが貴方の仕事でしょ! だからきっぱりと撥ねつけるのよっ! 誘惑に負けたらだめっ」

 

 エイナ「そうね、そうしましょう。ここはキッパリと────」

 

 悪魔エイナ「まあ待ちなさいエイナ。考えてもみて。ライト氏はこう言ったのよ? そう優待券、と。つまりっ! 予約だけにとどまらず、無料で、無料でっ! あの最高のお肉が食べられる。この意味、聡明なあなたならわかるわね? それに今月のお給料はどれくらい残ってる? 貴方、ソーマ’s シャングリラに何回通ったと思っているの」

 

 エイナ「ダメよ、ダメダメ、誘惑に負けたらっ。そうよね、天使のわた────」

 

 天使エイナ「たしかに、そうなると話は別よね。優待券、つまり客単価が最低でも7千から1万5千ヴァリスと言われている店で無料で食べられる……? 正しさを求める天使としては悪魔の意見に賛成である。いいことエイナ、ライト氏は非公式意見ながら、あのロキファミリアが一目置く存在よ? つまり……」

 

 天使&悪魔「「イエスと言っても何も問題はない。な に も 問 題 は な い 」」

 

 エイナ「何も……問題はない……何も問題はない……何も……」

 

 ここでライト、キリっとした顔で答えを促した。

 

「ではエイナ職員、許可を貰えるね……?」

 

 エイナは陥落した。

 

 

 

 ☆ 

 

 

「いいかリリ、オレがウダイオスを倒した時、そうだな魔石をパキーンと割ったタイミングでこいつを2つ3つ空中に放るんだ」

「了解ですっ。でもこれ、危なくないんですか?」

「いやどえらい危険だぞ。巻き込まれたら可愛いリリなら即死レベルで」

「ちょ、こ、怖いんですけどっ」

「でもな、何故か使った人は大丈夫なんだよなぁ」

「…………ほ、ほんとですか?」

「いやマジで。オレもやってみたもん。ここ来た最初の頃とか」

「ほへー、なら大丈夫そうですね!」

 

 ライトとリリは作戦の最終確認を行っていた。

 37階層に潜り込んだ彼らは、物陰でしばらくサンドイッチを食べつつ様子を窺っていた。

 別にピクニックでは無い。

 

 単純にウダイオスが現れるのを待っていた。

 暫くするとウダイオスが現れたのだが、まだ誰もギャラリーがいない。

 なのでライト達は息を潜めながら誰かが来るのを待っていたのだ。

 

(あ、ライト様、結構な団体様が来ましたよ)

(ほんとだ。木とかで良く見えないが、20人くらいいるか? これはチャンスだ)

(ええ、慎重そうに索敵をしてるようですが、皆さんがこっちを見ていますね)

(よし、リリ。オレは行く。オレの雄姿を見ててくれ!)

(ええ! では倒した後はお任せくださいっ!)

(おうよ!)

 

 巨大なウダイオスは鈍重であまり動けない。

 だが範囲は狭いが強烈な攻撃手段がある事と、取り巻きとして無数のスパルトイを召喚するので危険だ。

 そのスパルトイもただの骨じゃあない。

 ギルドではレベル4相当の強敵として認知されている。

 それがワラワラと沸くのだから恐ろしいのだ。

 だが背後に視線を感じながら、ライトは大胆不敵にもウダイオスの前にでた。

 

「やぁやぁ我こそはあの偉大な竃の女神”ヘスティア様”が率いる世界一素晴らしいファミリアに所属している美しい冒険家ライトッ!!! ウダイオス、お前がいると危険が危ないっ!!! だから…………オレが倒すッ」

 

 完全にジョジョ立ち、それもワムウっぽい感じのままライトは口上を叫び、そしてチラッっと視線を背後に向ける。

 

(感じる、感じるぞ……凄い見てる……フフフッ完璧だ)

 

『GUAAAAAAAAAAA』

 

 スパルトイが無数に現れた。

 そして見た目よりもずっと早く動き、ライトを取り囲んだっ!

 スパルトイは一斉にライトに殺意をぶつけるのである。

 

「ハッ! 笑わせるなよ! お前らの様なザコ、これで十分だ。来いっトンファー!!」

『~~~~っ!?』

 

 ライトが叫びながら持ち物からトンファーを取りだした。

 背後からは息を飲む気配がする。

 そして華麗にクルクルとトンファーを躍らせると、

 

「ホッ!」

『ギャー』

 

 鋭い蹴りでスパルトイは爆散。

 

「ハッ!」

『マー』

 

 きりもみ回転しながらのチョップ!

 

「これで終わりだっ!!」

「ゲーッ!」

 

 トンファーを空中に投げ捨て、最後の一匹を残像が残る速さでスープレックスで沈めた。

 ライトがネックスプリングで華麗に立ち上がると、彼の両手にスタッっとトンファーが握られる。

 この間わずか30秒程である。

 

 そしてビシーっとウダイオスを指さすと、ライトはニヤリと笑った。

 

「どうしたどうしたウスノロが。怖くて声もでねえかぁ? なら貴様はこれで終わりだ。せめて一瞬で殺してやろう……」

 

 そしてライトはトンファーをしまうと、虹色に輝く鈍器を取りだした。

 その名は全ての棒である。

 棒とあなどるなかれ。これは攻撃力こそ大したことは無いが、75%の確率で徐々に石化するというバッドステータスを与える恐ろしい武器なのだ。

 それに加え、火・氷・雷・風・地・聖という闇以外の属性が付与されている。

 つまり、全てとはそう言う意味である。

 ここに25%の確率で石化を進行させるゴーレムの杖を同時に装備するのがゲームでのセオリーだが、ライトは敢えて見栄えを重視し、全ての棒だけを選択する。

 

 物陰の方では息を飲む気配がする。

 それ程にライトのロッド捌きは見事だった。

 くるくると回転させながら、無駄に演武の様な動きをしている。

 動けないとしても待ってくれているウダイオスさんには涙を禁じ得ない。

 そして、

 

「やーーーーーーっ!!」

 

 上空に華麗に飛び上がったライトが、脳天唐竹割りの要領でロッドを一閃。

 ドンッというおよそ人間が出してはいけない類いの轟音がした。

 そしてライトは、

 

「~~~~~~~~~~~~ッ!?」

 

 声にならない声をあげながら地面を転がっていた。

 あっさり石化が決まった結果、硬い物を金属の棒で叩いた事になる。

 つまり手がしびれて動けなくなった。

 何をやってんだライトォ! とヴェルフがいたら怒鳴ったかもしれない。

 

「やーーーーーーーーっ!!」

『GYAAAAAAAAAAAAAAA…………』

 

 そしてむくりと起き上がったライトは、恥ずかしさに赤面しながら何事も無かったかのように、パンチで石化したウダイオスを倒した。

 すかさずライト、飛び上がるとムーンサルトばりの回転をしながら泡のように消えていくウダイオスを背に着地。

 さらにリリルカが潜む茂みに向かってバチコーン☆と渾身のウインク。

 

「(や、や~~~~~!!)」

 

 リリルカは両手に抱えるアイテム、その名も【チョコボの怒り】を放ると、

 

 ヒュ~~~~………………階層が揺れたッ!!

 解説しよう。チョコボの怒りとは、敵に投げつけるだけでフレアの魔法が炸裂するという便利アイテムであるッ!

 

 そしてライトの背後が真っ赤に爆発した。

 そう、特撮ヒーロー御用達の、敵を倒して爆発演出である。

 彼は渾身のドヤ顔。腕組みして仁王立ち。

 完璧に決まったのである。

 

(アカン……耳が聞こえん。まいったな、フレアは規模デカすぎたか……)

 

 至近距離で耳をやられていたっ!

 だが、森の中から駆け寄ってくる人影多数。

 

(そうだ。いいよっこいよっ。早くこっちにきてオレを讃えるのだッ!!)

 

 ライトはこの後に来るだろう称賛の嵐に胸を躍らせている。

 そうだ、この為に面倒な仕掛けをしたんだ。

 わざわざ魔石ごと破壊して。

 だが、

 

「わーーーっライトすっごーい!」

 

 やってきたのは見慣れたロキファミリアの面々だった。

 最初に飛んできたのは語彙力の低下したティオナだ。

 ライトに飛びついて頬ずりしている。

 

 そしてわらわらと囲まれるライト。

 チッ、やるじゃねーかテメーとベートに褒められハイライトが消える。

 リヴェリアなど、今度は本格的に遠征に混じらないかと勧誘してきた。

 そして、

 

「いやぁウダイオスが見えたから他のファミリアを上層に避難させたけど、ライト、君がいたなら問題なかったようだね」

 

 ロキファミリア団長、フィン・ディムナだ。

 小さいくせにいい感じに斜めに立ち、カッコよい角度でライトに微笑む。

 その横でティオネの目がハートマークになった。

 

 どうやらロキファミリアは例の未踏破階層へのチャレンジ中だったらしい。

 しかし他の中小ファミリアの人間も見かけたので、気をきかせて誘導したという。

 その、よかれと思ってやった結果、ライトの敵となったのだ。

 ワナワナと震えるライト。

 なるほど、お前のせいでギャラリーがいないのか、そうかそうか。

 ライトの唇から血が滲み、キッと睨む!

 

「おまえーっ! ロキファミリアがなーっ! ギャラリーをなーっ! ゆるさーん!!!」

 

 そして盛大に涙を流すとリリルカを小脇に抱えて走りさった。

 ぽかんとする一同。

 

「えっと……僕が何か悪い事でもしたのかな……?」

 

 フィンの言葉に応える者はおらず、ただシンクロしつつ首を傾げた。

 結局、遠征の最中に思いがけずライトに会えてご機嫌なティオナの「ライトっていつも変だし気にしなくていいんじゃない?」の一言で解散となった。

 

 そして盛大にくたびれ儲けのゼニ失いを地で行ったライトは、ふて腐れて数日引きこもったという。

 とは言え、その後何事も無かったかのように、「ヘスティアファミリアは少数精鋭の商業系ファミリアだ、いいね?」と開き直り、それまで以上に商売に打ち込んだという。

 

 ついでにダンジョンには二度と行かない宣言をして。

 

 

 




ヘルシング機関の兵士達をゴミの様に貪り食ったヤン。
暗がりの廊下が月明りに照らされるたびに、ドス黒い血溜まりを映し出す。
人間の身体がパーツ以下の肉塊となり散乱する光景に彼は心底満足した。

あれだけ騒がしかった廊下が静寂に包まれている。
屍人達もまた呻く事無く立ち尽くしている。

ヤン「あァ……?」

ヤンの耳にこつん、こつんと足音が届いた。

ベル「ああ、ここにいたか」

彼の目に映ったのは白。
この終末とも言える凄惨な光景に似あわない白だった。

一閃

何かがきらりと横切った。
次の瞬間、廊下を埋め尽くしていた筈の屍人が細切れになった。

ヤン「なっ、なんだオマエ」
ベル「……んっ。何でしたっけ? あ、そうだ。小便は済ませたか? 神様にお祈りは? 部屋の隅でガタガタ震えて命乞いする心の準備はオーケー? 合ってますか? 先ほど貴方が言ったセリフです。あと何でしたっけ? そうそう、自殺する時間はございません。だって貴方は僕が殺すのですから」

そしてベルは構えた。
師であるウォルター・C・ドルネーズにより与えられた彼の専用武器、特別な鋼にランチェスター大聖堂の銀十字錫を溶かした物でコーティングされた”対化物(フリークス)用短剣”を。

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