【本編完結】原作に関わりたくない系オリ主(笑) IN ダンまち   作:朧月夜

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本日投稿2本目
もう一本ありますのでご注意を


原作に関わりたくない系オリ主、まさかの覚醒? 急の1

「よォ、久しぶりだなァ春姫! これおみやゲエッ!?」

「ライト様!!!」

 

 ライトが随分と間を開けてやってきた遊郭で、馴染の春姫を揚げた。

 しかし彼が座敷に入った途端、そこに三つ指をついて待っていた春姫が、クラウチングスタートから最高のダッシュを決めた短距離ランナーの様に飛び出し、ライトの横隔膜を45度の角度からエグったのだ。

 ハグと言う名の人間砲弾である。

 

 その結果彼の手にあったスシが空を飛び、それはイシュタル・ファミリア傘下のヤクザ・オフィスに飛び込んだ。

 その結果ヤクザ・オフィスは爆発した。

 

 ────ザッケンナコラー!

 ────スッゾオラー!

 ────ナマッコラー!

 ────ヤメロー! シニタクナーイ! シニタクナーイ!

 

 

 春姫の目付け役であるアイシャは思う。

 あのライトって言ったっけ? 真っ赤で風変りな男サ。

 ただね噂だけは知っていた。

 春姫の奴がご執心なんだ、裏でも取ろうってのは当然だろう?

 

 いつも寂しそうに遠くを眺めてるあの子を一瞬でも笑わせた。

 なのに全然来やしない。

 頭に来るのも当然だろ?

 

 聞けばロキの所の連中が一目置いているとか、どこかの最強と一緒に飲んでたとか。

 そんな話が聞こえてくる奴がまともな訳が無い。

 まあ最近のオラリオで目立つ話があったら、その裏には必ずこいつの名前があるんだヨ。

 知ってるかい? ソーマファミリアってド腐れ連中。

 いまじゃいい意味で話題のファミリアだ。

 

 そんな奴が春姫を目にかけた。

 あたしにそんな資格はないのは分かってるよ。

 どうやったって、あたしは主神を裏切れない。

 けどね、だからこそ、密かに思うのは許してくれよ。

 あいつが、春姫を連れだしてくれるってサ……。

 

 それ程に春姫の落ち込み様は酷かった。

 

 ”こんぴらふねふね おいてにほかけてしゅらしゅしゅしゅ”

 

 毎晩夜空を見上げてライトに教わった唄を口ずさんでいる春姫の姿を見て、春姫が逃げない為の監視役であるアイシャなのに、すっかりとこの世間知らずな娘に情を移していた。

 故にもしまたライトが来たならぶん殴ってやると決意した。

 だが今のライトの姿を見て、ま、まあいいか(震え声) と思った様だ。

 

 と、っそんな茶番はさておき、久しぶりに春姫を買ったライトは、スシ────は無くなったので、結局前と同じくアイシャに金を渡し適当に料理を準備させた。

 

「はいライト様、あーーーんっ!」

「あーーーーーーーーーーーーーーーんっ!」

 

 ライトにより護衛としてつけられたヤマト・命。

 彼女は思った。

 ここまで本気で馬鹿になれる男がいたとは、と。

 因みに彼女はライトと目が合うと「ちゃ~んと仕事をしてるか?」と睨まれた。

 おっといけない、それなりに楽しい遊郭暮らしだと気を抜いていたヤマトは気合いを入れなおす。

 

 しかしだ、それはそれとして、だらしなく眦を下げながら春姫にあーんをされているライト。

 羞恥心を全て投げ捨てたライトの姿にヤマトは戦慄した。

 

「元気だったか?」

「はい、でも寂しかったです、……ありんす」

「廓ことば、覚えてたか。でも無理にしなくてもいいだぜ?」

「無理じゃないですっあっ、えっと、主さんはいけずでありんすっありんすっ!」

 

 食事も一通り終わり、膳も下げられた頃。

 窓から見える歓楽街の夜景を眺めながらライトはいつかの様に春姫の膝を枕に寝ていた。

 だが彼の言葉に春姫の瞳にこんもりと涙が盛り上がり、そしてツーっと落ちた。

 ぽかぽかと叩かれながらも、ライトは彼女の好きにさせた。

 

 春姫にとってライトとは、突然現れた未知のヒーローだった。

 特別何かをした訳じゃない。

 逆に特別な事を何もせず、ただ心から笑いたくなるような時間をくれた。

 

 暗鬱で、終わりが見えている。

 そんな自分に、ちょっとした光を見せてくれた。

 箱入り娘として育ち、許されぬ粗相をしたと勘当され、結果ここに売られてきた。

 

 イシュタルの眷属となり、恩恵を発現した春姫は、ウチデノコヅチと言う反則的な能力を扱う事が出来る。

 これは自分以外の他者の位階を一段階引き上げるという物だ。

 ステイタスが冒険者のヒエラルキーに関わるのは、当然レベルが1違うだけで大人と子供以上の力量差になるからだ。

 つまり春姫の持つ能力は、冒険者として色々な前提を無に帰す物なのだ。

 

 実際これを利用してイシュタルは敵対していた女神を天界へ強制送還に追い込んでいる。

 春姫のスキルによるレベルアップで、ギルドに登録している内容とずれを与え、レベル詐称の濡れ衣を着せたからだ。

 

 イシュタルが男も取らせる事も無く、春姫を飼い殺しにしている理由は、偏にそのスキル故である。

 故に春姫は決して身請けを許されないし、神に奉仕をさせられる為だけに存在している。

 それもあって春姫は、そのことも自分の罪であると重く受け止めている。

 

 とは言え春姫は純粋培養な箱入り娘だが、だからと言って馬鹿ではない。

 この遊郭に閉じ込められた後、考える時間だけはあった。

 自分をなじる父親が、果たして自分を愛してくれた瞬間はあっただろうか?

 考えてはみても何一つ思いつかなかった。

 既に期待する事を諦めている春姫は、その考えに至った事を悲しいとは思ったが、色々と腑に落ちたという思いの方が大きかった。

 

 ────なるほど、そんな風に割り切れる自分は大概薄情な女なのかもしれない。

 

 そう思ったところで、苦笑いしか出なかった。

 なんと自分は道化だったのだろう。

 父親の仮面に気付けば、当然あの理不尽な出来事も腑に落ちる。

 神に供える神饌を自分は食べた覚えが無い。

 それなりに信心深かった春姫は、いまになって漸く、あの不自然さに気が付いた。

 

 ────なんて馬鹿な女なのだろう。

 

 そう自嘲したが、それで諦めがついた。

 もういい。流れるだけ流れてみよう。

 その先に何があるかは知らないけれど。

 そう思った。

 

 ライトがその決意の矢先に現れた。

 春姫の鬱な気持ちを一切無視し、彼は呑めや唄えと笑った。

 変な言葉を言えと強要し、言えば可愛い奴めと頭を撫でまわす。

 

 そして散々楽しんだ挙句、膝枕をしながら眠った。

 彼は一切彼女に何かを欲しない。

 正しく遊女として彼女に接し、遊び方を教えてくれただけだ。

 

 ────お前はぽんこつそうだが、器量だけはいいんだから笑え。お前の気持ちは知らねえが、お前の笑顔でオレの気分が良くなるんだ。

 

 ふと目を開けたライトがそんな事を言った。憎たらしい言葉だ。

 自分が笑えるだろうか? 希望なんて何一つないのに。

 でもこの男は自分の笑顔が好きと言った。

 膝の上に乗る彼の頭の温もりがとても熱く感じる。

  

 春姫は考える。

 このぽかぽかとした気持ちはなんだろうか、と。

 もしかして、父親の温もりと言うのはこれの事なのでは。

 その正体は結局分らなかったが、春姫はこの男にまた会いたいと思ったのだ。

 

「そういやお前、御伽噺とか好きなんだろ?」

 

 ふとライトがそんな事を言った。

 泣き顔を見られたくなくて顔を隠していた春姫の目が丸くなる。

 

「ぐすっ、はい……」

「んじゃひとつ、語ってやろうか」

「はい、お願いしますっ!」

「ははっ、今泣いたカラスがもう笑った」

「むう……いけず、いけずいけずっ」

 

 アイシャは無性に壁を殴りたい衝動に駆られたが、アマゾネスの鉄の意思で何とか我慢した。

 ヤマト命は無性に壁を殴りたい衝動に駆られたが、強い武人の心で抑え込み、その結果明鏡止水の境地に至った。

 

「ある所に囚われの身になったお姫様がいた。わる~い伯爵のお嫁さんにさせられるんだ。それをとある泥棒が────」

 

 ライトが語ったのは、中の人が大好きだったルパン三世の名作だ。

 ニヒルに笑いながらも、命を張ってお姫様を救い、心を盗んだままどこかに消えた大泥棒。

 日本では老若男女だいたいが一度は見たことがあるお話。

 

 それを聞いていた春姫は、まるで子供の様に一喜一憂し、次は、次はと催促をした。

 そして、やがて。

 楽しい時間には必ず終わりが来る。

 

 明け方、ライトがそろそろ帰ると腰を上げた。

 今日の春姫は珍しく我儘を言った。

 帰らないでと。

 

 そんな彼女の頭をぽんぽんと撫でたライトは、腰に縋りつく春姫を立たせ、もう少し待ってろと言うと出ていった。

 その背中に向かって春姫は叫んだ。

 

 ────私は願ってもいいのか、と。

 

 ライトは一瞬立ち止まると、

 

「天下の大泥棒、ルパ~ン三世の信奉者、このラ~イトに任せとけぇ~」

 

 そうおどけて返事を返した。

 その声色は、結構似ていただろうと後にライトは自慢げに春姫に話したという。

 ちなみにライトのルパン像は山田〇雄派である。

 

 

 ★

 

 

 

 つまるところ、イシュタルがフレイヤに喧嘩を売った理由は、単純に言えば女の嫉妬それに尽きる。

 単純な女神の格と言う意味で考えるなら、イシュタルの方が歴史も古く、多くの権能を持つ事を考えれば、後発である北欧神話の女神であるフレイヤよりも上と考える事も出来るだろう。

 

 ただ逆に、人々の中での認知度と言う意味ではフレイヤの方が圧倒的に上である。

 何故なら古代メソポタミアの神話など、その手の研究でもしていなければ普通は知らないからだ。

 

 紀元前3000年まで遡るイシュタルの逸話は、この地域では最大の信仰を集めたという意味で考えればネームバリューもあるだろう。

 ただそれが現在まで続くかと言えばそうではないというだけの話だ。

 

 そもそもシュメールが描かれたのはギルガメッシュ叙事詩や、バビロニア創世神話のエヌマ・エリシュなどがある。

 これは存在する最古の叙事詩であり、その後ギリシャ神話を筆頭とした後発の神話に出てくる神々のモデルにもされている。

 

 けれども古い=認知度が高いという訳でもないのが曲者なのだ。

 つまりオラリオにおけるイシュタルが抱く嫉妬と言うのは、単純に男達に持て囃されるフレイヤが憎いという物だけではなく、おそらくはオラリオ内で形成される力関係において、自分よりも幼い神に自分が敵わないという現実を受け入れられない怒りがあるのだろう。

 

 それが嫉妬の炎と言う形でトリガーとなった。

 そしてイシュタルは動いた。

 配下の戦闘娼婦や高レベルの眷属……では無く、謀略と言う意味で。

 

 具体的にはフレイヤファミリアに関わる、冒険者以外の者に不利益が被る様に配下の者を動かした。

 フレイヤに傅く男神のファミリア等も含めて。

 イシュタルは力押しだけの女神では無い。

 むしろ愛と美、そして戦・豊穣・金星・王権など多くの神性を持つ女神だ。

 つまりフレイヤが持つ性質を全て彼女が持ち合わせている。

 

 故に謀略を持ってフレイヤを追い込む事にした。

 直接春姫を使わなかったのは、単純に中途半端に露呈すると力同士のぶつかり合いに発展し、その場合は眷属の質で分が悪いからだ。

 だからこそ本体ではなくその周囲を貶めた。

 

 直ぐに結果は出ない。

 しかしたがいに狡猾だからこそ意図には気付く。

 少なくともフレイヤは気付いた。

 そこからは根競べである。

 実際これは既に開戦された戦争だった。

 直接的な戦闘が行われていないというだけで。

 

 イシュタルが動いた結果、フレイヤの元には数々の苦情・苦言が集まる。

 フレイヤに近いというだけで嫌がらせに遭っているのだ。

 特に眷属が物を売ろうとすると安く買い取られた。

 ポーションと言った消耗品が今までの様に手に入らなくなったとか。

 ヘファイストスやゴブニュの武器をまだ買えないランクのファミリアでは、頼りにしていた零細の鍛冶屋が取引を断ってきたなど。

 

 イシュタルが狡猾なのは、これらの件に必ずフレイヤのせいでこうなっているという内容を密かに盛り込ませる所だ。

 故に切羽詰まった連中は、真偽等関係なくフレイヤを責めた。

 とは言えフレイヤはだったら関わらなくて結構とばっさり切り捨てたのだが。

 

 最終的にイシュタルが願うのはフレイヤの強制送還である。

 ならばどうするか。

 とにかく煽りに煽り続けて向こうに手を出させる事だ。

 強い者には責任が付き纏う。

 故に最強と名高いオッタルなどが傍若無人な態度を他人に見せる事は出来ない。

 

 畏怖が恐怖に変わった時、ギルドは最強と言えど、秩序を守るために動くだろう。

 恩恵による強さは絶対じゃあない。

 背中に刻まれた紋様を取り上げられた途端、積み重ねたステイタスは無に帰るのだ。

 だからこそ、フレイヤファミリアが武闘派の集まりと言う特性を逆に利用するのである。

 

 果たしてそれは実る所まで来ていた。

 確実に、イシュタルが放った毒はフレイヤを追いつめていた。

 その証拠に、フレイヤからイシュタルへ会談を申し込んできたのだ。

 それもイシュタルの本拠地である女主の神娼殿へ自らが来ると譲歩を見せながら。

 

 だがイシュタルは理解している。

 この女はもう限界に来ていると。

 器の大きさから有象無象の批判など毛ほども苦にはしないだろう。

 だが女神としての矜持から、フレイヤは自分を断罪したがっている。

 そう見抜いている。

 

 実際それはおおよそ正解だった。

 故にオッタルを筆頭とした第一級冒険者が丸腰で護衛として同行するという。

 第一級に得物の有無など関係ないだろう。

 それほどに暴力的なステイタスの恩恵があるのだから。

 つまり話に乗じてフレイヤは自分を殺しにかかると思っている。

 それでもイシュタルは護衛? いいだろう。常識の範囲で連れて来いと言い切った。

 

 そしてその時を迎えた。

 

 イシュタルは豪奢な神殿には大胆にも戦闘に特化した眷属は配置しなかった。

 唯一春姫と彼女を引率するアイシャがイシュタルの後方に控えるのみ。

 イシュタル本人は不敵な笑みを湛えたまま、玉座に静かに座する。

 

 そこに清楚なドレス姿のフレイヤがやってきた。

 その両脇にはダークエルフのヘグニとヘディンが立ち、後方には団長であるオッタルとアレンが油断なく控える。

 

「お待たせしたわね、イシュタル」

「ようこそ我が神殿へ。いつもの余裕はあまり無いみたいだが?」

「そうね、そうかもしれない。貴方の矮小さは知っていたけれど、ここまで品が無いとは思ってもみなかったわ」

「はっ、そこまで褒められると照れるではないか。本来、愛とは心行くまで獣の様にまぐわい、頭の中まで溶け合う程に味わい尽くす物よ。お前みたいに外面を取り繕い、魅了を抑えられずに男の心を狂わせる様な下品なマネはできないな。そんな物で得た愛などただの呪いではないか? のうオッタルよ」

 

 薄ら笑うイシュタルの目が舐める様にオッタルを見た。

 愚直な猪人の目が怒りに歪む。

 それを眺めイシュタルは心底楽しそうに莞爾と笑う。

 

「いい加減にしてくれないかしら? 茶番はもう結構。決着は今夜つけましょう。貴方も覚悟しているのでしょう?」

「覚悟、ねえ。一体それは何についてのだ? 話し合いがしたいというから招待はしたのだ。だから礼儀に則ってもてなしてやろうと待っていたのだ。ほれ見てみろ。宴の準備もしておったのだぞ?」

 

 真顔で言うフレイヤをせせら笑いながらイシュタルは隣室を顎でしゃくった。

 そこにはなるほど、彼女が言うように豪華な宴の準備が成されている。

 

 そこでふと、フレイヤは彼女の周囲を改めて見た。

 広間には無数の女たちがいる。

 中には裸体をさらし女同士で絡みあい、淫靡な香りをまき散らしている者さえいた。

 だが、戦える者はほぼ皆無。

 イシュタルの背後にいるアマゾネスくらいな物だ。

 それとてフレイヤの護衛の誰と戦っても瞬きをする間に屠れる程度。

 嫌な予感がした。

 

「失礼しますイシュタル様」

 

 するとそんな声が広間に響く。

 どうやらイシュタル配下の者のようだ。

 とは言え事務的な業務に携わる雰囲気を持った厚着の女だが。

 それを見てイシュタルが嗤った。

 

「おお、今は大事な客人が来ている所だがどうした、急ぎの用件か?」

「はい、実はギルドの方がやって来まして、重要なお話があるとか……」

「おお、おおっ! ギルドの用事と言えば無下には出来ないな、ここにお通ししてくれ」

「畏まりました」

 

 カツーン、カツーン……。

 

 静まり返った広間に足音が妙に響く。

 誰かがごくりと息を飲んだ。




短くてスマナイ……スマナイ……

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