【本編完結】原作に関わりたくない系オリ主(笑) IN ダンまち   作:朧月夜

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今回はハーレムについて真剣に考えてみるというテーマの真面目回です。
前半はおふざけなので許して下さい。
後半は愛についてきちんと考えています。


ボーイミーツガール、なにそれおいしいの?

 ◇◆ライト、謎の剣を手に入れるの巻◆◇

 

「…………うーーん。くっそ綺麗なんだが雰囲気がヤバそうな気もする」

 

 竃の館ではライトが一人、リビングに座っている。

 ただ何故か首を傾げながら、目の前のテーブルにある物をじっと眺めていた。

 

 そこにあるのは刀身だけの日本刀。おそらく太刀だ。

 長さは1メートルは無いだろう、80センチ前後か。

 細身だが反りが高く、踏ん張りが強い。美しい刀だ。

 雑に油紙に包まれていなければ。

 

 これはライトが先ほど、オラリオ外から来た人当たりの良さそうな狐人(ルナール)の行商人から買い上げた物だ。

 日課の金儲けの匂いを探した散歩の際、キャラバンが広場で市を開いていた。

 その中にいた狐人が気になって店を覗いた結果である。

 春姫が狐人だが、この種族はあまり多くいないと聞いていたので興味を惹かれたのだ。

 

 その子供にも見える商人が、これは遺跡から発掘されたが何故か誰も買ってくれないと嘆いていた。

 なので何となく、ライトが買ったのである。

 因みに価格は1万ヴァリスだ。

 これに関してはライトも狐人も武具の価値に詳しくないので、初めははした金で良いと狐人は言ったのだが、ならせめてこれくらいでと握らせた。

 

 そうして持ち帰った物の、どう扱えばいいか悩んでしまったのだ。

 ライトの中の人は生粋の日本人であるが、だからと言って日本刀に詳しいかと言えばそうではない。

 ましてや扱い方も知らない。

 

 一応ライトが保有する装備の中に日本刀や忍者刀はある。

 マサムネは実際に使用もした事があるし。

 けれどそれはあくまでもステイタスに裏打ちされた人外めいた膂力で振うだけで、彼が剣術を用いての事では無い。

 

 だが目の前にあるこの日本刀は、同じように扱っていい物では無い気がするのだ。

 それ故のライトの反応である。

 

「……うーん。ボヤいてても仕方ねえ。餅は餅屋ってか? プロに聞くか」

 

 結局ライトは思考を放棄し、その道のプロであるヘファイストスに相談をする事にした。

 そして実際に行ってみたのだが────

 

「…………これは素晴らしいわ。鋼を何千と折り返し鍛えた逸品というのは理解できる。けれどそれ以上にこれは、ある種の神造品に匹敵する気配を持つ。これを鍛えた鍛冶師は、おそらく”至った”のでしょう。これは単純な技術だけでは出来ない仕事よ。いい物見せて貰ったわ……じゃあね」

 

 恍惚とした表情で愛でた後、ふらふらと帰ろうとすらした。

 因みに彼女に声をかける前、ヴェルフを見かけたライトが彼に見せると「無理。今の俺じゃ触れるのも烏滸がましいわ」と言われた。

 だが、

 

「あっ、おい待てい(江戸っ子) 何帰ろうとしてんだよ」

 

 そのまま余韻に浸ったまま帰ろうとするヘファイストスを捕まえ、せめてこの可哀想な状態じゃなく、刀装をした状態にしたいのだと相談したら、雑に椿・コルブランドに言えと言われ、このいい気分を邪魔するんじゃあないと逆ギレされたライトである。

 

「ふむ、鍛冶師である手前にはもうすべき仕事は無いが、そうだな、この素晴らしき作品を見せて貰った礼に、手前が付き合いのある職人に依頼をしてやろう。拵えに希望はあるか?」

 

 と、割と好意的に話は進んだが、悲しい事に当人に知識は皆無なので、職人におまかせで頼むわ、と寿司屋の様なノリでライトはオーダーした。

 そして十日ほど後、

 

「…………これはやべえ。こんな物使えねえぞ怖れおおすぎてだな」

 

 やはりホームで独り、ライトは唸っていた。

 白木の箱に入った状態で届けられたのが今朝の事。

 ヘスティアはバイトに行き、リリルカはポーションビジネス。

 そして春姫は最近漸くまともなお好みを焼けるようになったので屋台を出している。

 故に独りな訳だが、この状態すらどこか作為的な物を感じ、ライトはキナ臭い顔をしている。

 

 さて目の前の刀だが、彼が購入した時とは別物になっていた。

 流石はレベル5の鍛冶師が抱える職人の仕事だと思わず目を瞠る。

 

 漆黒の漆が吸い込まれる様な錯覚を起こしそうな美麗な太刀。

 金の蒔絵や金物で装飾された、所謂飾太刀拵(かざりたちこしらえ)という実戦よりは儀礼用として貴人などが佩く際の様式だ。

 

 それを食い入る様に眺めていたライトは、ごくりと唾を飲みこむと、恐る恐る手に取った。

 

「うわぁ……すげえ……」

 

 スラリと鞘から抜いてみると、キインと刀身が振動した。

 おそらくそれは錯覚だろうが、ライトにはまるでこの刀が生きている様な気がしたのだ。

 それ程に圧倒的な雰囲気がある。

 かと言って人斬りの妖刀めいた邪悪な気配では無い。

 

「えっと、とりあえずアレをやってみっか……」

 

 そう言ってライトは太刀と一緒に届けられたお手入れセットから打粉をとりだすと、ぽんぽんと刀身を優しくはたいた。

 

「おお……ついに憧れの日本刀ぽんぽんをしてしまったぞ!」

 

 テンションが上がるライト。

 そう、日本刀はロマンであろう。

 ならば日本人の男子に生まれたなら、このポンポンはやってみたいと思うのは当然だろう。

 

 とは言え、本来日本刀の手入れは、目釘を外して鞘から抜いて油を塗ったり等もやる必要があるので、ライトがやってるのはただのいいとこ取りでしかない。

 けどやりたいんだものとはライトの言。

 

「はっはっはっ、よきかなよきかな。久しく手入れなどされていなかったからな。新しい主人は好ましい男らしいな」

「ナズェミデルンディス!?」

 

 知らない男がそこにいた。

 あまりの驚きに、ライトの滑舌は崩壊した。

 

 全くの気配も無いままに彼はライトの横に泰然と座っていた。

 柔和な笑みを浮かべて。

 青みがかったさらりとした黒髪。

 女性にも思える色白の細面。

 そして欠けた月をモチーフにした平安貴族を思わせる豪奢な装束。

 

「なぜ見てるも何も、主が俺に触れているではないか。ふむ、これもスキンシップと言う奴か? はっはっはっ! いいぞいいぞ、もっと触れて良し!」

 

 戦慄したライトは混乱の極みにあった。

 おもわずまたもやポンポンをしてしまった。

 すると余計に喜ばれた。

 なんだこれは!?

 

「え、もしかしてこの剣がアンタ?」

「んむ。そうだ。では俺の名は三日月宗近。まあ、天下五剣の一つにして、一番美しいともいうな。十一世紀の末に生まれた。ようするにまぁ、じじいさ。ははは」

 

 はははじゃないが。

 え、マジで?

 そう慌てるライトに、宗近と名乗る青年は手入れの方法を手ずからライトに教え、その後何事も無かったかのように「このそふぁというのはいい物だな」と寝てしまった。

 

 ライトには一応この三日月宗近の名前は記憶にあった。

 たしか東京の博物館で、日本刀の展覧が行われた際に見たのだ。

 天下五剣って相当ヤベーやつなのである。

 作られたのは平安時代だが、歴史の中で有名なのは秀吉の正室が持っており、その後天下が徳川に移ると、そのまま徳川将軍家の所蔵となったという。

 

 え、もしかしてコレ、ヤバいんじゃないのとライトは慌てた。

 だってこれ国宝に指定されてんじゃんと。

 そうして熟慮を重ねた結果、ライトが下した判断とは────

 

「知らなかった事にしよう。本人はじじいだって言ってんだ。じじいでいいだろコレ」

 

 その後三日月宗近の名は呼ばれる事は無かった。

 ヘスティア以下ファミリアのメンバーも、この柔和なおじいちゃんを気に入り、大層懐いたという。

 

 ただライトはそうでもなかった。

 なにせこのおじいちゃん。

 一人で風呂に入れない。

 朝起きるとボサボサの髪でうろうろしている。

 仕方ないので髪を梳いてやり、よく分からない飾りをつけてやる。

 

 その果てに彼が思ったのは「ガチのジジイじゃねえか!」であった。

 ただの介護じゃないかコレと。

 実際、彼がオラリオに慣れた頃、夜な夜なおじいちゃんは姿を消し、慌ててライトが探しに出ると、ミアの店にいたり、広場をうろうろしていたりと中々にワイルドだ。

 もちろんライトの「ただの徘徊じゃねえか!」のツッコミが冴え渡った。

 

 結局のところ、彼が何故現れたかと言えば、ライトが正しい姿に戻したからだ。

 とある世界で彼らは刀剣男士という存在で認知され、彼らは審神者(さにわ)という主人に従えられると、歴史を揺るがす時間犯罪者を討伐すべく、時間を遡行して戦うという。

 審神者は強い心で物に宿る魂を励起させるという。

 

 おそらくライトの熱きニンジャソウルに反応してしまったのだろう。

 それにしてもこんな異世界くんだりまで流れてきてしまうおじいちゃん。

 その存在すらも徘徊してしまったという所か。

 

 さてその後おじいちゃんがどうなったかであるが、基本的には刀の中にいる様だ。

 というかライトが泣いて頼んでそうしてもらった。

 何故なら刀剣男士は主人に懐く。つまり連れ歩くと嬉しそうにスキンシップをしてくる。

 結果、オラリオの街を歩く女性の皆さんからひそひそと腐臭のする噂話が流れて来た。

 これはいかんとライトは意地でも剣の中にいてくれと土下座をしたのだ。

 何というか用事があってギルドに赴いた際、あのエイナが意味ありげな表情をしてきたのが決定打となった様だ。

 

 ただまあ、美味しそうな食事があったりすると出てくる。

 それくらいは許した。

 だってお好み焼きは特に気に入ったらしく、春姫が歓喜したからだ。

 ただ悲しいかなこのおじいちゃんは食が細く、三口で満腹になるのであった。

 結果、処理するスタッフは以前のままである。

 

 

 

 ◇◆ライト、恋人ムーブについて考えるの巻◆◇

 

 

「ライト様、ちゃんと恋人としてリリをもっと構ってください」

 

 ライトはリリルカにそう言われた。

 今朝がたの事だ。

 目が覚めると抱き枕のようにしていたリリルカに気付き、何となく彼女のウェーブのかかった髪を撫でていると、くすぐったさに彼女も目覚めた。

 

 そしてむくりと二人は起き上がり、ウォークインクローゼットに向かい、互いに今日の服を選ぶともそもそと着替えた。

 その後厨房に向かうとまだ起きてこないヘスティアや春姫のために朝食を作る。

 

 因みにライトとリリルカは割と頻繁に一緒に寝ている。

 ティオナが来ていればここに加わる。

 最近だと春姫が皆さまだけずるいと交じってくる。

 

 完全にハーレム糞野郎である。それは間違いない。

 だがしかし、最初の頃とは違って、最近は特に男女の営み的なアレは無い。

 なにせ大概はライトがベッドに潜り込み、そこに誰かしらがやってきてベッドに潜り込むと彼に抱きつき、互いの温もりを感じ……その結果、速攻スヤァ……となるのだ。

 完全にパパと娘である。

 

 そして起きれば前述の様な行動で日常に戻る。

 そこでリリルカは気が付いたのだ。

 もしかしてこれ、倦怠期を迎えた熟年夫婦レベルの落ち着き様なのでは!? と。

 

 こう見えてリリルカ、割と乙女プラグインがインストールされている。

 なにせ語るのも憚られる暗黒期を経て今の幸せがあるのだ。

 そこに引き上げてくれたライトに恩を感じるとともに、それは次第に好意へと変化。

 その後さらに彼女に仕事と言う役割を与え、自分の存在意義を確立させたライトへの依存度は加速した。

 

 ならば、通りを歩く恋人たちの様なムーブがあっても良いのでは? リリルカは訝しんだ。

 あの褐色痴女やあざと狐はまあいい。

 自分が惚れたニンジャは、何せ規格外な男だ。

 器がでかく、だが次の瞬間何をしでかすか分からない危うさがある。

 ただ彼が起こす騒動の1つ1つは、たかが人間が戯れにやってのけるレベルで収まっていない。

 言わば願わずとも結果的に英雄の様な人間とも言える。

 

 そうなればリリルカ一人でこの色んな意味で評価が難しい男を支え切れないだろう。

 数々の修羅場を潜ったリリルカはリスクヘッジも上手いのだ。

 独占出来ないのは寂しくもあるが、かと言って放置すれば面白い事を見つけ、数年帰ってこないなんて事もありそうな気がするのだ。

 ならば数人の女で重しになればいいだろう、そう言う黒い打算もある。

 

 だからと言って、本質である乙女な部分は求めるのだ。

 普通の恋人的なアレを。

 そこで思い切って冒頭のセリフを本人に叩きつけたのである。

 

「なるほど、そう言われてみればズルズルとそんな関係になった気がするな……」

 

 そう言って彼は考え込んだ。

 因みにリリルカが男女の関係になったのは、夜な夜なベッドに潜り込んで、なし崩しに事に及んだからだ。

 リリを捨てないで下さい。安心できる証を下さいと涙ながらに情に訴え、自分を助けたなら責任は持つべき等と、理詰めで逃げ道を塞いだ結果である。

 

 因みにティオナは同じように忍び込み、ライトが違和感に気が付き目を覚ますと、ほぼ終盤だった。

 アマゾネス恐るべしである。

 ただ彼女の場合は発情期にならないと大人しいのであるが。

 

 そこでふとライトは考えてみた。

 もしかしてオレ、食われてばっかじゃないのか、と。

 ライトは別に彼女達が嫌いではない。

 むしろ女性としては相当にレベルが高いのは確かだ。

 それに日頃の関係性もあり、好ましく想ってはいる。

 

 だからと言ってろくでもない女性遍歴で多くを占めているライトの中の人の恋愛経験から言えば、オラリオで家庭を持って云々……とも今は考えられない。

 それに単純だが何もかもが新鮮に感じる異世界のオラリオ、そこでの生活が楽しいのだ。

 結果、守りの姿勢とも言える結婚云々はまだ現実的では無い。

 

 とは言えそれなりにまともに生きて来た成人男子であるライトであるからして、行為を行えばその結果子供が出来る事もあるだろうとは思っている。

 それはそれでいいとも思っているし。

 

 実際彼は日本でも同じように思っていた。

 結婚なんかしたくはないけど、出来たらすればいいんだと。

 責任をとると言うよりは、好きで抱いたんだから、相手が不安になっても困るしな、という思想で。

 

 なのでこの世界でも同じように思っている。

 それに日本に居た時よりも遥かに稼いでいる今、経済的な面でネガティブな要素は無いのだし。

 それにライトに子供が出来れば、おそらくヘスティアは喜ぶだろうと思っている。

 故に抱いた女の全員に子供が出来ればそれはそれでよし、というのがライトの考えである。

 

 倫理観が云々、確かにそう言うのもあるだろうが、周囲の人間からすれば、ライトの人柄や普段の素行を見ると、むしろ「あいつは如何しようもねえなあ」と呆れ混じりに笑われて流されるだけだろう。

 

 このライトの謎めいたおおらかさは、過去の彼を見れば割と納得できる。

 日本での勤め人時代。

 本人は周りに対してオレはグータラしていたいんだと公言する駄目社員を気取っていたが、大手企業でそれが許される訳も無い。

 

 何というか彼はそのふわりとした性格により、他者に嫌われ辛いという雰囲気を持っている。

 その事もあり、彼は社内の権力闘争とは離れた場所にいたのだが、それを咎められなかったのだ。

 おそらくその理由は人懐こい所にある。

 

 彼はたまたまエレベーターで乗り合わせた取締役に「おお、〇〇君、最近は活躍している様だねえ。どうだい? 今度銀座に面白い店があるんだ」と誘われた。

 ライトの中の人は飄々としながら派閥争いに加わらない曖昧な態度の男だが、こと仕事だけは有能だった。 

 修羅場の現場でも、切羽詰まった状態で彼に泣きつくと大概どうにかなる、そう言うユーティリティーな類いの有能さだ。

 そんな評判をその取締役は知っており、あわよくば自分の陣営に引き込めたら、そう言う色気で発した社交辞令である。

 

 これが一般的な社員なら「是非、その機会があればよろしくお願いします!」と嫌味にならない様に気を使いながら社交辞令を返す。

 

 だが彼は違う。社交辞令を真に受け、いつ行きますか? と満面の笑みで答える。

 まさかの返しにあわあわと慌てる取締役が予定日を言うと、きちんと当日に彼はやってきて、その店で心底楽しそうに酒を飲む。

 思惑を外された取締役だが、その姿に毒気を抜かれた。

 

 また別のお偉いさんが、「うちの家内は料理が得意でね。一度食べに来なさい」と言えば、やはり自宅にやってきて、心底美味そうに食べるのだ。

 奥様は大喜び。誘ったお偉いさんも苦笑いしつつ、結局は受け入れてしまう。

 

 一事が万事彼はその調子で、いつしかこいつは放置しておくのが一番おもしろいと、密かにマスコット扱いである。

 実際これはこの現代社会において稀有な才能だと思うが、本人は悪意の欠片も無く、おごってくれるから行く。面白そうだから行く。だって誘われているしと太平楽な様子なのが憎たらしい。

 

 だからこその彼の女性遍歴なのかもしれない。

 恋は熱く燃え上がる物……では無く、一緒に楽しい時間を共有し、そんな恋人の顔を眺めてると幸せな気分になる……という肉食なのか草食なのか判断がつけられないのが彼であり、根底にあるのは楽しい事が大好きという単純な物なのだ。

 故に情熱を求める相手には捨てられるか、利用される事になる。

 

 そんなライトであるから、結局リリルカに対して捻りだした答えは「明日一日、オレもお前も恋人だと認識して行動してみよう。いいな?」そう言う事になった。

 

 

 ────そして翌日。

 

 

 ヘスティアは今日はバイトも無く休みだった。

 ────どうしようかな? 一日のんびりとするのもいいかな?

 そんな事を考えつつ、朝食のパンを齧っていると、奇妙な光景が目に入った。

 

「……デメテルソースを取ってくれないか? ハニー」

「わかりましたライトさ、いや、えっとダーリン」

「!?」

 

 ヘスティアはとんでもない物を見た。

 ライトの横にリリルカがいる。

 これはいつもの事であり、特に珍しくも無い。

 

 だが今日は配置こそ一緒だが、距離が凄く近い。

 というか身体がくっついている。

 いやまあライト君だしそう言う事もあるか。

 おっぱい好きだしね、と一度は納得した。

 

 しかしだ。

 まさかのダーリン&ハニーである。

 今時こんな恥ずかしい呼び方をする恋人なんかいる訳も無い。

 たまにはライト君と普通の恋人みたいなデートとかできないかな? とか考えなくも無いヘスティアだが、それでもダーリン&ハニー呼びだけは勘弁である。

 

「ほーらハニー。ほっぺにソース、ついてるぞ♡」

「もーやだー! ダーリンに取ってほしいな?」

「しょうがないにゃあ、いいよ」

「キャッ♡」

「!!?」

 

 ウッソだろおい。正気かお前ら。

 ヘスティアは思わず出そうになった言葉を飲み込んだ。

 呼び名が恥ずかしいと胸やけを覚えた所にまさかのほっぺについたソースをペロリである。

 やばい、同じ空間にいるのが激しく辛い。

 

 ならば少々あざといがお好み焼き以外では割と常識人の新人、春姫に助けを求め……ようと思ったが、あの狐は”ヘスティア様、お好み焼きの新たな魅力を発見しました! それがミニサイズのお好み、言わば朝お好み焼き、そう! 通勤の皆さまに食べやすいサイズなのです! 略して朝ヤッキです!”と、とうとう気が触れたかと言う領域に達し、夜明けと共に出かけていったのだ。

  

 ええい、こんなキチガイめいた桃色空間になどいられるか! ボクは脱出させてもらう!

 心の中でそう叫んだヘスティアは、爽やかな朝だというのに酷い疲労感を感じながらリビングに逃げたのだ。

 

「…………んっ。ああ、寝ちゃったか」

 

 リビングではソファに寝ころんでいたヘスティアが寝オチしたが、空腹で目が覚めた。

 寝ぼけ眼で周囲を見ると、向こう側にライトとリリルカが見えた。

 まったく、朝のアレはなんだったんだ……そう思いつつ、彼らの会話を耳にする。

 

「ダーリン。これっ、ナァーザさんに教えて貰った店で買った枕なんです。お、お昼寝に丁度いいでしょ?」

「ふぅん? 表と裏で赤と青と色違いなんだな。でもま、ありがとなハニー」

(なるほど、呼び名は相変わらずだけどプレゼントとは見ててなんだか和むなー)

 

 薄目を開けて見てみれば、リリルカが可愛いく包装された袋から、すこし大きな枕を取りだしライトに渡した。

 なるほど、身長が大きいライトに合わせたらあの大きさって事か。

 そんな風に眺めていたヘスティアだったが────

 

「だ、ダーリン? さ、早速使ってみては、ど、どうですか?」

「お、おおう。せ、せっかくハニーがくれたんだし? つ、つ、使うのもあ、アリだな!」

 

 何故か二人ともそわそわとしながら明後日の方向を向いている。

 隣に座っているというのにだ。

 見れば両者ともに目が凄い速さで泳いですらいる。

 だのに何故か頬を赤く染めながら。

 そして、ライトは枕に頭を載せた────

 

(んっ? んんっ…………ちょっと待って。落ち着くんだボク。え、ちょ、あれを本気で使うカップル初めてみたよ……うわぁ……)

 

 寝たふりからどうにか自然に起きようと悩んでいたヘスティアだったが、枕の正体を理解し、結局はそのまま本気で寝る事にした。

 何故ならその枕にデカデカと書かれていた文字────【YES】が見えたからだ。

 

 そう、ヘスティアは知っていた。

 かつて神代の頃、夫であるゼウスの浮気に心を痛めていた妻のヘラ。

 なにせ彼の浮気はハーレム云々なんて可愛い物じゃない。

 気に入った相手が血縁者だろうが地上の人間だろうが関係ないのだ。

 

 そしてその娘が他人の物でも関係ない。

 ヤるためなら動物に化けても犯す。

 それが神代のゼウスである。

 

 それに頭を悩ませたヘラは、信頼する魔女に依頼し、アーティファクト級の効果があるマジックアイテムを作らせた。

 その名前が……【YES/NOマクラ】である。

 ヘラはこれをゼウスの好きそうな娘に下賜した。

 これはNOの方に頭を乗せて眠れば魔法的効果により、ゼウスが近寄れなくなるのだ。

 

 それはいつしか形骸化し、その後古代人達は夫婦の営みをする際の密かな合図としてこれを使ったとされるが、あまりにバレバレ過ぎて結局は廃れたという逸話がある。

 まさかそれが巡り巡って自分の可愛い子が利用するとは……。

 

 やっぱりゼウスってクソだわ。

 

 ヘスティアはそう思ったのである。

 因みにこの恥ずかしい恋人ムーブは、当人たちも辛かったようで、翌日から熟年夫婦ムーブに戻ったという。

 

 




前半は個人的な趣味で出してしまって申し訳ない。沙耶の唄を作った会社が出したブラゲーだってのにつられてだらだらやってます。
多分もう出さないのでご安心を。


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