【本編完結】原作に関わりたくない系オリ主(笑) IN ダンまち   作:朧月夜(二次)/漆間鰯太郎(一次)

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魔都にニンジャのスリケンを 急1

 

 ライトは独白する。

 

 自分は迷っていた、と。

 理由は倫理観と言う酷く曖昧なものを、改めて冷静に考えた時、己の中に確たる答えが無い事にがく然としたからだ。

 

 シロ達、つまりウラノスが言う異端者ゼノス。

 その在り方になんの根拠も無いのが問題なのだ。

 

 例えばマーベルシネマティックユニバースにおけるホモ・スペリオール、人間の染色体の23番目にX遺伝子やX因子を持つ人間がいる。

 彼らは突然変異を起こし超常的な能力を持つミュータント、或いはX-MENと呼ばれる存在になる。

 

 とは言えヒーローだけに限らずヴィランも中にはいる訳で。

 そうなると人間を味方をするヒーローと人間を憎み敵対行動をとるヴィランの対決構図ができる。

 だが人間の中の多くは、ミュータントを社会の一部として見る事が出来ない。

 つまりミュータント自体を疎外する。

 例えヒーロー側のミュータントの普段の素行がよく、人間社会の法に従って行動する理性的な集団であったとしてもだ。

 

 問題の根源は文字通りの意味での異端を受け入れられない意識。

 或いは急激な価値観の変化に対応できないという事に尽きる。

 これは何もわかりやすい見た目云々の話ではない。

 

 例えば地球の中世から近世の間では、大規模な宗教弾圧。民族弾圧があった。

 その時代は宗教と政治が密接にかかわっており、現代の様な三権分立は実現自体難しい。

 となれば為政者や権力者が民衆をコントロールする手段のひとつとして宗教があった。

 故に各宗教における聖典や聖書は、時代と共に書き換えられている。

 何故かと言えば信仰心が強い民衆には、教義がそのまま法になるからだ。

 

 そんな時代には、教義に反する物が異端として処断される。

 個人だけではなく、国全体が異端認定されれば、然したる理由が無くとも、戦争の口実にもなる。

 それは略奪行為すら肯定され、やられた方にとってはただの野盗の類いであっても、関係ない。

 要は正義の在り方すら、酷く曖昧な根拠によって決定されていたのだ。

 

 ライトがオラリオにおけるゼノスの扱いで一番迷いを感じたのは、この街を運営しているのは正確な意味での為政者ではない事だ。

 ここは地域最大の都市であり、壁に囲まれた箱庭だ。

 人口も多く、対ダンジョンの切り札でもある冒険者の街。

 経済はダンジョン産の魔石の流通が基盤にあり、それゆえにギルドが殆どの利権を牛耳っている。

 

 ただラキア王国という、その名の通り君主制を敷いた国も存在している。

 そう言った国は王権こそが重視され、その上で国家運営がされている。

 故にワンマンであっても、意思決定に根拠はある。

 

 それと比べても、オラリオの曖昧さが目立つ。

 ライトがこれまで関わった中で判断するなら、都市国家の中に都市国家がいくつも存在すると言った所か。

 つまりギルドが大枠で、各ファミリアがそれぞれ自治権のある集団。

 

 なぜそう思うかと言えば、主神のさじ加減一つで抗争がおき、神が死ねばその恩恵を受けていた者達の力は消える。

 それが例えばロキやフレイヤという、眷属達に影響力の高い者を揃えているファミリアだったなら、オラリオ内の秩序は一気に崩壊するだろう。

 

 ライトが関わった歓楽街の件もそうだ。

 あれがあのままフレイヤファミリアが暴れていたらどうなっただろうか。

 おそらくあの区画が更地になり、消える。

 

 そしてこの消えるという言葉の意味は大きい。

 歓楽街で客が一晩で落すヴァリスの量がいかほどか。

 おそらくカジノに次いで恐ろしい金額が動いているだろう。

 これがイシュタルという主神が強制送還された結果に起こる影響だ。

 

 これだけの流通が一夜にして消える。

 正気の沙汰では無い。

 故にライトは迷うのだ。

 このオラリオの秩序と言うのは、曖昧過ぎて危ういと。

 

 ライトが考えたのは近世でも普通にあった魔女裁判の事だ。

 例えば有名な所ではアメリカの東海岸の片田舎、セイラム。

 閉鎖空間に原理的なプロテスタント。

 アメリカと言う秩序よりも、村単位の秩序が優先される。

 そんな土壌でたかが未成年の娘の支離滅裂な証言が10人以上の処刑者を出した。

 

 娘は交霊術に参加し、以降奇行が目立った。

 医師はそれを悪魔憑きと診断した事で事は動いた。

 恐怖と疑心暗鬼は伝播し、結果行われた公平性の欠片も無い裁判で無実の人間が大量に死刑になったのだ。

 これは結局のところ、明確な悪魔の憑依という根拠は一切無く、集団パニックが暴走した結果に過ぎない。

 つまり普遍的な基準の無い秩序は、時としてこういう悲劇を産む。

 現代の成熟した法の網があるからこそ、それが明確な基準、物差しになり悲劇は限りなく抑えられる。

 ライトはこれに似た危うさをオラリオの秩序に感じているのだ。

 

 自分が抱えたゼノスの娘。

 ひょんな事から情が湧き、だが現在のオラリオではその受け皿が無い。

 なら今までの様に自分が何かを動かし、その受け皿を作れるのか?

 アイデアはある。だが最初だけ良くてもダメなのだ。

 異端を受け入れさせるには、それの根拠となる明確な理由がいる。

 それが自分に出来るのだろうか? それがライトを悩ませる事柄の全てだ。

 

 だが、ライトはここに来て初心に返る事にした。

 それは主に、ヘスティアからの自分を最後まで信じるという言葉と、彼が関わった者達の期待によってだ。

 自分には居場所がある。そう思うと、気付いたのだ。

 

 ────まあ、やってトチったら、そんとき考えりゃいいや。

 

 そんな風に。

 気持ちがリセットされた事でライトにスイッチが入った。

 

 ────オレの強みはなんだ。

 

 自問する。

 

 ────そうだ、商社で経験を積んだだろう。

 

 それがライトのバックボーンだ。

 ならば、

 

 ────マーケティングの基本に戻ろう。

 

 そう決めた。

 ここは感情や人々の理性に問いかけても無駄だ。

 イデオロギー、思想、ナショナリズム。

 そんな流動的な根拠で動いた時勢が長続きした例があったか?

 無い。

 

 活動家や扇動者が起こした旋風の結果おこるのは流行、ブーム。

 そしてブームは一過性でしかない。

 では世の中で一番強いのは何だ。

 個人の利益だ。

 

 人が動くのは、そこに少しでも自分の利益があるからだ。

 古代ローマの風刺的な詩人ユウェナリスが残した言葉に「パンとサーカス」と言う物がある。

 これは愚民政策を風刺した意味だが、民衆にパンつまり日々の食事と、サーカスつまり娯楽を与えておけば国政にあまり目を向けなくなるという意味だ。

 

 だが逆に言えばだ。

 大局的な政治云々よりも、人々は目先の事を重んじているという意味でもある。

 つまり今日明日の糧を確保する為に必死なのだ。

 極論、民衆が求めるのは安定であり、ならば政治のトップがどんな顔をしてようが、安定が確保されるならそれが名君なのだ。

 

 さてマーケティングの話に戻そう。

 かつてライトが携わっていたのは、海外からワインを輸入する仕事だ。

 世界にワインの産地は多くある。

 だが歴史深いワインには、例えば有名なボルドーの中にも無数の格付けがある。

 

 何故かと言えば同じ品種のブドウであっても、畑の土、斜面の角度、日当りの量、全てが畑単位で違い、その差が大きく味に影響するからだ。

 故に明確な格付けを行い、そこから弾かれたワイナリーも多くある。

 

 だが、恒常的に飲む目的なら、無名であっても美味い。

 それにそこがボルドー地区であれば、もうボルドーワインなのだ。

 こういう無名のワイナリーを畑単位で契約して輸入し、ボトリング、ラベルを国内でやれば、コンビニと提携した安価なワインとして売れるし、それでいて味も高水準、こういう事ができる。

 

 例えそのワイナリー後に格付けが上がったとしても、既に契約をしていれば、結果青田買いをした様な物で、今度はその格付けにちなんだ価格で売れる。

 結果損はない。

 

 この場合のマーケティングの基礎としては、前提として客に何かを提供してお金を貰うという事だ。

 そこに金を出してまで手に入れたいという価値を持たせ、自分だけが購入できるという満足感を与え、それらが定期的に購入するという需要がある事が主なポイントだろう。

 

 それらを広告宣伝、その分野の権威者への告知、諸々の認知を行っていく。

 勿論それは商品にたしかな信頼性があっての事だ。

 

 オラリオにおけるゼノスはどうすればいいのか。

 ライトの調べた事によれば、いや正確に言えばウラノスからの紹介で出会ったフェルズと言う魔術師との対話の結果がその主な情報源だが。

 まあそのゼノスはダンジョンの中で産まれ、とある階層で隠れ住んでいると言う事。

 

 産まれるきっかけはシロと同様で突然ぽとりと出てくる。

 ただ彼らはモンスターに襲われるため、ほとんどが死ぬらしい。

 だからシロがライトと出会った時に青あざだらけだったのはそう言う事だ。

 

 余談ではあるが、東地区にあるフェルズの隠れ家で話しこんだライトだが、顔を見せないとか恥知らずのメイガスでしょう? とローブをめくるという暴挙に出て、その結果出てきたのはただのガイコツ。

 小便をちびるくらいに驚いたライトが、思わず「あ、アインズ様ァ」と叫んだのは仕方がない。

 まあ彼は800年もの時を生きている不死者であり、その事で全身から肉が削げ落ちこの姿になった。

 故に背中が無いのでステイタスの更新も出来ないので、レベル4のままだという。

 

 ライトがぼそっと”骨に刻んだらいかんのか?”と言った事で微妙な空気になったが、シロを保護したライトに彼は友好的だった。

 さて話を戻そう。

 

 フェルズによると、ウラノスはゼノスを擁護している立場だという。

 フェルズ自身もウラノスが動けない分、実務を担当する立場だそうだ。

 ウラノスがゼノスを保護する名分として、ダンジョン内での未知の部分を探索させたり、ダンジョン内の異常を報告させたりと役割を持たせている。

 その事で何かのきっかけで表ざたになったしても、あくまでもダンジョン内であるなら、ウラノスとしても開き直れるのだ。

 

 ざっくりと言えば、おめーらの出来ない事をこいつらにやらせてんのや。

 それに文句言うなら、おめーらが命張って見てこいや。

 まだマッピングされてない場所の探索やぞ?

 せやから金もそんな出されへんし。

 それでもやるんかお前ら、オオン?!

 

 ま、こういう感じで。

 だが、ウラノスがライトに期限を切った理由が問題なのだ。

 実はゼノス、地上にちょいちょい出てくる。

 本人達が望んだ理由ではないにしても。

 そうなると秘密裏に処理する必要があり、もしゼノスが結果的に暴走したとする。

 その場合はウラノスの思いは別として、秩序を守るために機密保持がしやすい大手ファミリアを討伐に向かわせる事になる。

 大手とはロキとフレイヤファミリアの事であり、つまり彼らも異端者の存在は認知しているという事。

 

 そして二か月の期間の意味は、とあるファミリアによる異端者狩りにより、異端者の暴走が懸念されている事。

 そのファミリアは表ざたにならない様に、ある程度期間を空けて事に当たる事。

 ウラノスは二か月後に大規模な動きがあると見ており、そのタイミングで地上の異端者の処理を名目に、そのファミリアにロキ達をぶつけ、一網打尽にする心算でいると。

 

 ここに来てライトは、解決までの糸口を見た。

 フェルズには神秘というスキルがあり、それを含めた協力体制を築けたことで一気にブレイクスルーをしたとも言える。

 ならば、まず手をつけなければいけない事は決まった。

 

 そしてライトのメンポの奥がどろりと光った。

 

 

 ☆

 

 

 

 えっほ、えっほ、そんな掛け声と共に地下道を往くヘスティアファミリア。

 

「ライト様ぁ……臭いですぅ……」

「わ、私、倒れそうです……」

「この軟弱者ッ!!!!」

「ライトっち、なんで俺が叩かれたの!?」

「いや、そこはノリで」

 

 先頭からライト、リリルカ、春姫、トカゲのおっさんである。

 そうトカゲのおっさんだ。

 いや本人は若い感じのキャラだが、如何せんリザードマンである。

 故にトカゲのおっさんなのだ。

 

 フェルズとの関係を構築したライトは、早速シロを彼らの隠れ家に連れていった。

 それまでは建設中のNEWタケミカヅチファミリアホーム、オラリオ学園予定地、その地下室に居た。

 種明かしをすれば単純で、竃の館のライトの部屋がある地下エリア。

 実はそのさらに下に向かう階段があり、そこはオラリオの地下に走る巨大な下水に繋がっている。

 

 そしてオラリオ学園は同じ地区であり、既に基礎工事と一階部分は完成しているが、元々廃墟だったここにも、同じように地下下水への階段があった。

 結果、んじゃ寝るわ~おやすみ~と部屋に消えたライトは、そのまま地下道を抜けてシロを住まわせていたオラリオ学園の地下室で、朝方までキャッキャウフフと親子のスキンシップをしていたのである。

 

 なら最初から地下からそこに行けばいいのでは? と言う話だが、可愛い娘をうんこの流れる地下道なんか歩かせられるか! いい加減にしろ! という事らしい。

 

 それで異端者の隠れ家に行ったライトは、ここのまとめ役であるトカゲのおっさんことリドと語りあかした。

 それによると出来れば人間と自分たちが友好的になれたらいいな、という想いだ。

 そこでライトはそこにいた異端者を全員集め、オレに従ってくれるなら、少しずつ地上と関わる事が出来るように出来ると一席ぶった。

 だがそれには互いの歩み寄りは必須であり、少数派に過ぎないお前らは、最初は謂れのない中傷を受けるだろうし、一方的に我慢をする事も多い。

 しかしお前らはキレて殴りかかる事も一切出来ない。

 でも我慢の結果、いずれは必ずお前らは市民権を得る。

 

 長い長い話し合いの結果、彼らはライトに従う事を決めた。

 そうなればもう、面倒な事は何もないとばかりにライトは目いっぱい楽しんだ。

 特に異端者では古参の木竜のグリューに飛び乗り「オレはドラゴンライダーだ!」とはしゃいだ。

 イラっとしたグリューに尻尾でペシッと落とされていたが。

 シロも最初は戸惑ってはいたものの、直ぐに馴染んで嬉しそうにしていた。

 

 とは言えライトが帰ろうとすると、腰にしがみ付いて涙目で「……イかないデ」と言ったとたん、オレはここに住む! と座り込んでリドが慌てた。

 さて地上に戻る際にライトは、大量の石化武器と金の針を置いてきた。

 過保護全開だ。お前ら、シロに危害を加える奴らがもし来たら、この杖と棒でタコ殴りにしろ。

 別に倒さなくても集団で囲んで棒で叩けば勝手に石化するから、と。

 金の針はフレンドリーファイヤ用の保険である。

 因みにゴーレムの杖と全ての棒は全員セットで行き渡っている。

 

 そして現在、ライトがファミリアの仲間に協力を依頼し下水を行く理由は、

 

「おっ、そこの角を右だ」

「よしリリルカ、GO」

「了解です。えいっ!」

 

 竃の館から地下下水を経て、ダンジョンへの抜け道、フェルズの隠れ家へのルート、それをペンキでマーキングしているのだ。

 有事の際の移動や、異端者を運ぶ際などの為の備え。

 後は汽水湖側へ抜けるルートを確保し、最悪の場合、都市外への脱出ルートの把握でもある。

 

「いやしかしこうしてリドさんと話してみると、ライト様が言っていた意味がわかりますねぇ……」

 

 ふとリリルカがしみじみと呟く。

 

「はい、私もあの時は少し嫌な気分になりましたけど、今は理解しています……」

 

 それに春姫も同調した。

 

「ま、いきなりは無理だろうし、お前らの反応の方が普通だろうよ。ただまあ、オレの身の上はこの前話しただろう? なんでオレは人間しか知らねえんだ。だからああいう感想になる」

「異なる世界でしたっけ、全然想像もつかないです……」

「そらそうだ。見たことも無いのに言葉だけでイメージなんか出来ないだろうな。まあでも、価値観はやっぱ違い過ぎるんだ」

 

 ライトは協力を要請する際に、自分の事を全て彼女達に告白した。

 そもそもライトは楽観主義的な所があり、過去にあまり頓着しない。

 何故なら嘆いた所で現状が変わる訳じゃないからだ。

 

 故に面倒事を嫌って言わなかっただけで、それ以外に話さない理由はない。

 自分を慕ってくれるリリルカや春姫、そして信頼を預けてくれるヘスティア。

 ならゲロッちまった方が楽だ。

 その方が話しが通りやすいし、とライトは考えた。

 

 結果、結束は深まったように見える。

 そうなると動きは早かった。

 そうしてトカゲのおっさんを伴ったヘスティアファミリア、広大な地下下水道に、独自のルートの確保を終えたのである。

 

 

 ☆

 

 

「…………ア、アッ」

 

 その光景は異様であった。

 目を血走らせた男達が、下半身が蜘蛛の様な少女を囲み、下卑た視線を走らせる。

 

 その舐める様な粘着質な視線に少女は絶望に包まれる。

 既に何らかの薬のせいか身体は弛緩し、少女はもそりもそりと地面を芋虫の様に這うばかり。

 それすらも男たちの加虐心を煽るだけであった。

 

 噎せ返る様な性臭を漂わせ、男たちはいよいよ動き出す。

 少女の鎧を剥ぎ取ると、そこから現れたのは豊満な肉体。

 そして男たちは少女に殺到した────

 

「ったく、撮影している身にもなれっての。なんでこんな世界に来てホモビの撮影しなきゃいかんのだ」

 

 その前に呑気な男の声がした。

 反射的に振り返る男達。

 

 おかしい。ここはイケロスファミリアの息がかかったセーフハウスの筈だ。

 荒事に躊躇をしない冒険者達がいるというのに。

 

「ああ……あの連中か? へへっ、死んでなきゃあいいなァ?」

 

 男たちは声をあげる事も出来なかった。

 声の主は細身だが大柄な男だ。

 赤い不思議な服を着ているが、見えてる全てが黒い何かで上書きされている。

 その正体を知る男たちは黙るしか無かった。

 

 顔を隠している布の下で、恐らく男は嗤っている。

 手に持つ謎の光を発するマジックアイテムは気になるが、それ以上に気になるのは男の全身を覆うどす黒い返り血だ。

 男たちが何故それを瞬時に理解できたか。

 それは自分たちが異端者と呼ばれる存在をいたぶり尽して来たからだ。

 拘束し、暴行し、犯し、最後は殺す。

 それが彼らの性癖であり、行為の際の流血はスパイスだ。

 

 だが目の前の男のそれは、既に時間が経って黒く変色している。

 つまり返り血を受けてから相当時間が経過している事になる。

 あいつはレベル5だぞ、そう思うも、目の前に男がいる以上、つまりはそう言う事なのだろう。

 そして男たちの意識はそこで消えた。

 

「んじゃお嬢ちゃん。みんなの所に帰ろうかー」

 

 ────その夜、オラリオ東部のダイダロス通りにある古い建物が炎上爆発した。そして翌日、イケロスファミリアの主神が、団員同士の内乱に巻き込まれ強制送還され、団長のディックス・ペルディクス以下構成員は同士討ちにより死亡とギルドより発表されたという。

 

 それと共に、いくつかの貴族家から内部リークによる不正や人身売買の証拠が次々と現れ、結果没落の憂き目を見たという。

 それを情報誌で見たオラリオの住人達は、少しばかり盛り上がり、だが数日後には話題にも上らなくなったという。

 

 

 ☆

 

 

「しっかしすげえ建物だなぁ……」

「お待ちしておりましたライト殿。主神がお待ちです」

「あんがと。これつまらない物だけど皆で食べて」

「ありがとうございます。ではこちらへ」

 

 豪奢な建物。豪奢と言っていいのだろうか……。

 白い壁に囲まれたオラリオ南西地区のランドマークとも言える建物。

 タージマハルを彷彿とさせる様式だが、ドームのかわりに主神の巨大像がある。

 ライトは入り口を潜る際に一瞬顔を顰めた。

 

 ────これ、チンコの中に入ってるみたいやん……

 

 そしてライトは団長のシャクティの先導で、レッドカーペットの敷かれた豪華な廊下を抜けた先にある巨大な部屋に辿り着く。

 

「ライト様、話は通っておりますので、後はおひとりでお進みください」

「あいよ。んじゃノックしてもしもーし!」

 

 意気揚々とドアを開けた先で待っていたのは────

 

「俺がガネーシャだっ!!!!」

 

 KABOOOOOOM!!!!!

 ライトは疾風の速さでガネーシャの仮面を奪う。

 

「お、俺はガネーシャか……?」

 

 KABOOOOOOM!!!!!

 ライトは疾風の速さでガネーシャの仮面を戻す。

 

「俺が、俺がガネーシャだっ!!!!!」

 

 KABOOOOOOM!!!!!

 ライトは疾風の速さでガネーシャの仮面を奪(ry

 

「やめんか阿呆がっ!!!!」

 

 凄い怒られた。だがどうやらノリはいいらしい。

 そんなガネーシャにライトは笑った。

 

「ガネーシャ様よ、あんたのとこ結構財政やばいらしいね。一気に稼げるアイデアがあるんだが、少しばかり話を聞いちゃくれんだろうか?」

 

 こうしてライト、最後の仕込みが始まったのである。

 いきなりアポイントを取りに来た不思議な若者の勢いを見て、名乗りが小さかったかな? と謎の反省を始めたガネーシャと共に。

 

 




春姫「今デメテル様のカレー店でご飯食べてるんですけど、仮面を被ったインド人っぽい神様が入ってきて店内に緊張が走ってます」

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