劇場版クレヨンしんちゃん ちょー嵐を呼ぶ、黄金の聖杯戦争   作:ホットカーペット

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相変わらずの遅筆ですみません。
このペースじゃあ終わるまで一体何年かかるのか……。
ようやくFateらしい(?)キャラクター登場。
だが戦闘シーンはもっと先になる予定……。



第3話 彼らとカノジョの遭遇

 

 

――放課後。

 

学校では堅苦しい授業から開放された学生たちが、部活に勤しんだり友人と出かけたりと、それぞれが思い思いの日常を過ごす。

そんな中、別に積極的に他人を手伝おうとか道場の掃除を頼まれるとか、実は明日告白するんだ、写真もあったりして――なんてフラグになるような事もなく、青くて赤い槍の変質者がうろついているという情報を知った士郎は、尻を狩られてはたまらんと掃除を終えて大河の言うことに従い早めに下校することにし、綾子にひと声かけ部活動を早めに切り上げた。

 

途中、偶然春日部に用事があった一成と共に、二人は春日部へと向かう。

列車の中で今日の授業の事や、テレビの中の話題など他愛のない話をしつつ、二人は駅へと降りた。

そこで二人は思わぬ人物と出会うこととなる。

 

「おっす!

こんにちはさんです!」

 

「おう、こんにちは……って、しんのすけ?」

 

何やらこちらに向かってきた小さな影。

それは今朝の幼稚園の制服から、普段着に着替えたしんのすけの姿であった。

意外な場所で弟との再開に士郎は目を丸くする。

無駄に行動半径の広いしんのすけといえど、用がなければこのような遊ぶ場所もない駅前に、そうそう来ることはない。

 

「あ、生徒かいちょーの人もいる!

こんにちはです!」

 

「うむ、しんのすけか。

こんにちは」

 

士郎の隣にいた一成も、しんのすけと挨拶を交わす。

士郎の友人である一成と彼の弟であるしんのすけの間には、これまでも何度か面識があった。

 

その中でしんのすけは士郎の言葉から、一成の事を“生徒かいちょーの人”と呼んでいる。

幼稚園児が“生徒会長”という言葉の意味を知っているのかは定かではないが、“とにかく凄く偉い人”として記憶しているらしい。

 

「しんのすけ、なんでお前こんなところにいるんだ?」

 

「んーとね。暇だったから士郎にーちゃん迎えに来たんだゾ」

 

「ふむ、幼稚園児にして兄のお迎えをするとは、感心感心」

 

しんのすけの言葉を額面通りに受け取った一成は、わざわざ兄を迎えにきたしんのすけの行動に素直に感心する。

だがわざわざ迎えに来てもらった当の本人はというと、一成とは正反対の疑わしい目つきでしんのすけを見ていた。

 

「……とか言って、ホントはまた何かやらかして母さんから逃げてきただけじゃないのか~?」

 

士郎の視線は、疑惑を含んだ疑いありありの目。

まるでしんのすけの言葉を信用していない。

 

しかし、しんのすけのこれまでの行動を考えればそれも納得がいく。

というのも前述したとおり、基本的に遊び盛りのしんのすけが、(幼稚園児にとっては)つまらない駅前に来ることはまずない。

さらに言うなら今みたいに兄の見送りにくるような律儀な奴なんかじゃない――ということは士郎が一番知っている。

 

だのにしんのすけは目の前にいて、しかも自分の見送りに来たと主張する。

――となると、見送りは建前で、何かしらの要因により駅前に来ざるを得なかった、と予想したほうが自然なのだ。

 

「ホラ、怒んないから正直に言いなって」

 

「むー、失敬な!

そんな……まるでオラがしょっちゅうかーちゃんに迷惑かけてるよーな人の言い方して!

失礼しちゃうゾ!」

 

「「いやいやいや、それはない!」」

 

まるでコントでもしているように一成と士郎は同時に否定した。

野原家の嵐を呼ぶ幼稚園児は、常になにかしらの騒動をやらかしてはそのたびにみさえを困らしている。

士郎はもとより一成もその行動ぶりは把握しており、というよりも何度も騒動に巻き込まれた事のある身としては、誰にも迷惑かけていないというしんのすけの言葉に同意できるはずもない。

二人に揃いも揃って否定されむくれていたしんのすけであったが、そういえば、と冬木に住んでいる一成がこの場にいることに気が付いた。

 

「あれ? どうしてせいとかいちょーの人がここにいるの?

二人共どっかいくの?」

 

「ああ、実は私が少しばかり春日部に用事があってな。

士郎と行き先が同じだから同行しているんだ」

 

寺生まれの息子である一成は、学生ながらも学校のことだけではなく寺関係の仕事でも時折忙しくなる。

その用事の中には冬木の外に出ることもあり、そして今日は偶然にも、早めに帰る士郎と途中まで行動を共にすることとなったのだ。

 

が、しんのすけは共に行動する二人にあらぬ関係を邪推する。

 

「ほっほ~う……二人で、とな?

放課後に逢引とは……もしかして、二人はとっくの昔にそのような関係に?」

 

「「ちがう!

そんな訳ないだろが!」」

 

恋人疑惑を持ち出され、思わず大声で否定。

 

「しんのすけ、別に同性愛者を否定するという訳ではないが、私と士郎はそのような関係では全くないぞ?」

 

「うんうん!」

 

「確かに、私は野原には生徒会長として感謝している。

だが流石に恋愛感情までは持ち合わせてはおらんよ。

友情に近いものは感じているが」

 

「うんうん……って、え、な、なんだよ……急に褒めやがって。

そんなことされてもうれしくともなんともないんだからな!」

 

否定した、はずだが。

――だんだんと、状況が怪しくなってきた。

 

最初はしんのすけの誤解をとくための弁解だったはずが、途中から何故か一成は士郎を褒めはじめ、対して士郎はこれに反応し、これまた何故かツンデレし出した。

互いの間に何処となく、友情以上の何かが見え隠れしているのは気のせいだろうか。

そんな光景を見ていた言い出しっぺの本人はというと、冗談のつもりだったのにマジでいい感じの雰囲気が出来上がったこと、予想外の展開に戸惑っている。

 

(え……何この雰囲気?)

 

言い出しっぺのしんのすけ、これには戸惑いを隠せない。

本人はというと先ほどの発言は、本当に――心底冗談のつもりであったのだ。

だというのに何故か自分の兄は顔を赤らめている。

そして友人はそんな彼を誉めている。もしかしてこれは褒め殺し?

 

今朝のバスでも士郎が男が好きなのかとか話題に上がったことを思い出し、マジでマジっぽい雰囲気になり始めた二人を、しんのすけは青い顔で見ていた。

 

「ふ……二人共、本当に、その。

お付き合いしてるとか……そういう関係ではないんですな?」

 

「「そりゃあ当たり前だろ?」」

 

『何を当然』という表情で関係を否定する二人。

この時ほど兄の発言に信用性を感じられなかったのは初めてであった――としんのすけは後に語っているという。

 

「ね……ねーねー、ところでさー。

せいとかいちょーのひと、どっか行くんでしょ?

オラも一緒にいってもいい?」

 

「いや、ちょっと色々と回るからな。

幼稚園児には少しばかりきついと思うからな」

 

一成の用事は春日部の数か所を回るものであり、幼稚園児の脚力では辛い部分がある。

 

「えー、オラもいきたいー」

 

「コラしんのすけ、一成は俺たちと違って本当に大事な用事があるんだ。

邪魔しちゃダメだろ?」

 

「えー……オラが行けないってことは……お寺同士の裏談合でもするの?

それとも日本寺連合による日本転覆計画?」

 

「何を想像しているんだ君は!

私の神社は清廉潔白だ、何もやましいことはしてないぞ!」

 

「い、一成。

日本征服なんて馬鹿な真似はやめるんだ!」

 

「だから考えてないってーの!?」

 

一成のお寺が関与している計画はともかくとして、しんのすけはどうも一成と共に行動したがっていた。

駅前に来たことといい、なんというか、しんのすけの行動はどうも怪しい。

士郎がしんのすけに尋ねようと考え――。

 

「しんちゃーん、どこにいるのー?」

 

会話の最中、背後から自身を呼ぶ声が聞こえ、しんのすけは思いっきり震えた。

 

「ゲッ!!

ま、まさかここまで……いけない、二人共隠れてー!」

 

その声が聞こえた瞬間、しんのすけは思いっきり危険を察知した。

声の主がこちらに接近する気配を感じたしんのすけは、今この場にいては不味いとばかりに、慌てて駅前の茂みの中へ身を隠そうとする。

それどころか、その場にいた士郎と一成も一緒に引っ張り始めた。

 

「はっ?」

 

「ちょ、おいしんのすけ!

一体何を……」

 

「いいから二人共、早く早く!

どうなっても知らないゾ!」

 

小さな身体で必死に二人を引っ張るしんのすけ。

その、あまりに尋常ならざる様子につられ、狼狽えながらも士郎と一成も共に近くの茂みへと身を隠す。

駅前の茂みとはいえ高校生を隠すにも十分な大きさの植物は、潜り込んだ三人の体を完全に覆い隠す。

完全に緑の中に身体を隠した三人は、それぞれがその隙間から目を凝らし駅前の光景を見守る。

しんのすけがこれほどうろたえているのだ、一体何が起こるのかと身構えていると――先ほどの声の主であるしんのすけの友人である桜庭ネネの姿がそこにあった。

 

「……あれ?

あれって、ネネちゃんじゃないのか?」

 

「そうそう。

ネネちゃん……こんなところまで嗅ぎつけてきて、本当にしつこいゾ……」

 

「しーんーちゃーん?

どーこーにーいーるーのー?」

 

鬼やみさえが現れるのかとおもいきや、そこにいたのは、意外にもしんのすけの友人であるネネであった。

ネネは駅前をうろうろと、しきりに士郎の横にいるしんのすけの名を呼んでいる。

きょろきょろとせわしなく視線を動かしているその姿は、つまり――。

 

「……オイ、呼んでるぞしんのすけ?」

 

「オラしんちゃんじゃないもん。

しんのすけだもん」

 

しんのすけを探している、ということだ。

そのしんのすけはというと、呼ばれているにも関わらず一向に茂みの中から出ようとしない。

 

この状況から察するに、ネネはしんのすけを捜索していて、しんのすけはそんな彼女から逃げてきたほうなのだろう。

そしてわざわざ駅前まで逃走し、さらにネネはわざわざそれを追って駅前まで探しに来た。

 

「あれー?

おかしいなあ、しんちゃん、今朝はちゃんと幼稚園に来てたし、駅前に行く姿を見たって言ってたのに……」

 

茂みの中のしんのすけたちには気がつかないものの、よほど大切な用事でもあるのかネネは見つからないにもかかわらず全く諦める気配がない。

ふらふらうろうろと動きまわるが、一向に駅前から動かない。

 

「……しんのすけ、お前俺の迎えとか言ってるけど、実はただ単にネネちゃんから逃げてきただけだろ?」

 

「失礼な!

士郎にーちゃんをお出迎えするついでに、逃げ出してきたんだゾ!」

 

出迎えするついでに逃げるとか、どう見ても時系列がおかしいようにも思えるが……。

ともかくしんのすけはネネから逃げるためにこうしてわざわざ駅前まで来たことに間違いはないようである。

 

しかし、そうなると疑問が一つ残る。

しんのすけの行動である。

これで二人が実は片方が吸血鬼で片方がそれを狩るための真祖の姫君だったり、命をかけて殺しあう姉妹のような関係ならばその行動も納得できるものだが、目の前のネネを含め「かすかべ防衛隊」を名乗る彼らは普段から仲の良い友人関係にある。

別にここまでして逃げ続ける必要はどこにも感じられない。

 

「……しんのすけ、別に友人ならば逃げる必要はないのではないか?

ほら、あの様子ではただ遊び相手を探しているだけにも見えるが……」

 

「そ、そりゃあ……普段通りの遊びなら別にオラもいいんだけどさー……」

 

だが、隣のしんのすけは明らかにネネに対して強い拒否反応を示している。

しんのすけは言葉を途中で止めて、顔を青ざめながらちょいちょいとネネを指さした。

具体的に言えば、彼女の背後の部分に対して。

“見れば分かるよ”と言いたげな顔をしている。

 

普段はノリのいいしんのすけがここまで拒否反応を示している。

一体何があのしんのすけをそこまでさせてるのか、と不思議に思いつつ士郎と一成はネネの背後に目線を向け――。

 

「「うっ!?」」

 

二人揃って顔を思いっきりひきつらせる事となった。

 

 

ネネの背後、そこにはしんのすけの友人である風間、マサオ、ボーのおなじみの顔ぶれが並んでいた。

普段から一緒に行動している彼らがそこにいることには、特に疑問はない。

 

だが二人が驚愕したのは、彼らの様子にあった。

ネネのハツラツとした表情とは対照的に、後ろにいる三人の表情たるやまるで子供らしくない。

子供は風の子、とはいうがその表情は決して風のなかで遊ぶような生き生きとしたものではなく、逆に病人のようにげっそりとやつれこんでいる。

その姿は、まるで人生に疲れた大人のような完全に悟りきった表情だ。

 

例えるならば、まるで今から奴隷市場に売られようとしている奴隷のようなもの。

その集団の先頭を歩くネネは、さながら奴隷の主といったところだろうか。

時折三人がきちんと後ろについてきているかどうか確認している当たり、完全に主従の関係が出来上がってしまっている。

 

いまだ太陽が天高く昇っているというのに、風間以下三人の部分だけ、空気がどんよりと重くなっており真っ暗な空間が形成されている。

暗黒、カオス、絶望――そう表現したほうがいいかもしれない。

当然それは周囲にも伝搬しており、先頭で引っ張っているネネがなぜ気が付かないのか? というレベルのやつれ具合だった。

 

うろうろと辺りをやけにしつこく探すネネの後ろを、まるで風間たちは芋虫のように続いていく。

いったいこの幼稚園児たちに何があったのか? と冷や汗を流す士郎と一成。

 

――そして、二人は驚愕の理由を目の当たりにする!

 

「……あーあ、ここにもいないのかしら。

本当に何処行っちゃったのかしら、しんちゃん?

折角公園でボーちゃんたちと“リアルおままごとヴァージョン2”をやろうかと思ってたのにー」

 

「「…………」」

 

ぽつりと呟いたネネの声は、しかし近くの茂みに隠れていた三人にはしかと聞こえていた。

ネネの口から発せられた不穏な言葉にしんのすけは思いっきり震え、一成と士郎は思わず顔を引き攣らせた。

 

(…………り、リアルおままごとだとぉ!?)

 

(しかも……ヴァージョン2ッ!?)

 

リアルおままごと、しかもヴァージョン2。

その言葉に二人は戦慄し、同時にしんのすけがここまで逃げていた理由を今、完全に理解した。

 

 

『リアルおままごと』……その名の通り内容が非常にリアルな桜田印のおままごとである。

 

それは所詮子供のおままごと――等と、決して侮ってはいけない。

もし入ったら最後、それは決して逃れることはできない牢獄。

ネネの取り仕切るリアルおままごととは、幼稚園児がやる気分で参加するような生半可なものではないのである。

 

夫婦ごっこ?

お医者さんごっこ?

はたまた、結婚式ごっこ?

 

――否。

ネネ印のリアルおままごとは……真心皆無、やさしさ0%の愛憎ドロドロ入り交じった火サス顔負けのサスペンスドラマものなのである。

 

あるときはダブル不倫旅行中の中年夫婦。がばったり出会う修羅場。

あるときは、不況に生きる極貧夫婦。が夫が浮気する修羅場。

あるときは魔術師の家系のエリート男と、その従者に恋している彼の許嫁。が戦いの最中に許嫁が従者に恋するあまりエリート男をポイッチョする修羅場。

あるときは付きで行われた戦争において二人の英霊の間で揺れるマスター……等など。

 

そのリアルさ、えげつないまでに現実面を極限まで追求されたシナリオ。

人間の深い部分に存在する情愛や悪意をこれでもかと言わんくらいに混ぜあわせたようなストーリー。

 

その上、話題が学園モノやスポーツ系だったとしても、何故か途中から登場人物が修羅場に巻き込まれてしまうという構成。

リアルおままごと中ならば一切の妥協提言離脱を許さぬネネ無双。

 

この条件故に、しんのすけ以下友人たちはこぞってリアルおままごとに対して拒否反応に近いレベルの恐怖を抱いていた。

参加すれば楽しくもなくむしろ疲れるばかりで、誰もが不幸になるような遊びなど――だれがやりたがるだろうか?

 

事実、このおままごとをたった一度だけ経験した保育士志望の学生が、リアルおままごとがが原因で危うく道を閉ざそうになった事例もあるほどである。

 

それはもちろんここにいる三人――しんのすけの兄である士郎は言わずもがな、過去に一成もリアルおままごとを体験したことがあった。

その時のことは決して他人に語ろうとはしなかったものの、二人共一度見ただけでなぜあのしんのすけがそこまで嫌がるのかという事は、すぐに理解することができた。

 

しかも、今回はそれに加えて――

 

(ヴァージョン2?

なにが2なんだっ!?)

 

(前に見た時とて、あれほどまでに酷いおままごとはないと思っていたのだが……。

あれから何がグレードアップしているというのだ?)

 

前述したように、リアルおままごとは心も精神も胃も痛める大変人に悪い遊びだ。

ネネのおままごとの酷さは二人とも骨身に染みて感じるほどに経験している。

それがどういうわけか、レベルアップしてヴァージョン2として帰ってきた。

何がどう上がったのかは知らないが、回りからしてみれば大変迷惑極まりないグレードアップであることに間違いはない。

 

「ギロッ!」

 

(!!)

 

(んなっ!?)

 

(いかん!)

 

――不意に、振り向いたネネの鋭い視線が一瞬だけ、士郎たちと交わったような――気がした。

反射的に三人は茂みの中に身をひそめ、息を殺す。

対してネネは何かしらの存在を感じ取ったのか、つかつかつかと士郎たちに向かって歩き始める。

そして、その歩みは士郎たちの潜む茂みの目の前にて止まった。

 

士郎たちのほんのすぐ先、そこには今世界で最も恐ろしい幼稚園児がそこにいる。

 

「……おかしいわねぇ……今たしかにしんちゃんと士郎さん、あと誰だっけ……お寺の人の気配を感じたんだけど……?」

 

(け、気配を感じ取るなよ~……幼稚園児……)

 

(春日部の子供は……化け物か……!?)

 

人数どころか、誰だったのかすら感知するという野生児なみの感を働かせるネネ。

今此処で見つかれば、確実にリアルおままごと“ヴァージョン2”に引き込まれてしまるのは間違いない。

三人は息をひそめ、物音ひとつ立てずに目の前にいる少女に気づかれない様に気配を隠す。

 

――そんな彼らの祈りが天に通じたのか、ネネはついに彼らを見つけることをあきらめた。

 

「……あーあ、しょーがないわね。

こうなったら今日はしんちゃん抜きでリアルおままごとやりましょ。

それじゃあみんな、公園に帰って……

 

『リアルおままごとⅡ

ローマの休日は麗しのサブリナ、昼下がりの情事のパリの恋人。

緑の館の尼僧物語はおしゃれ泥棒』

 

やりにいきましょーか!」

 

「…………おー」

 

しんのすけの捜索を諦めたネネは、連行していた捕虜達だけでリアルおままごとを実行する事にした。

 

しんのすけがいないからこのままやめるんじゃないのか?――なんて、僅かに残った期待は完全に打ち砕かれ、背後の三人は激しく項垂れる。

ネネ本人のやる気は充分、その後ろの友人たちは力なく心底いやそうに追従。

というよりも本当に心底嫌なのだが、どうせここで反対意見を言ったところで黙殺されるか目で威圧されるかが目に見えている。

彼らに残された道はネネに従い、暗黒の世界へと旅立つのみなのである。

 

こうして、ネネたちは駅前からいつもの公園へと向かっていった。

その背後には相変わらず、風間らが取り憑いた相手が間違えて高名なお坊さんだった背後霊のような状態で続いていった。

 

――合掌。

 

 

ネネたちの姿が駅前から完全に見えなくなった事を確認し、三人はようやく茂みから身を出した。

 

「はー、危なかったー。

駅前じゃなかったら見つかってたかも……」

 

身体についた葉っぱを落としつつ、ネネに見つからずに済んだことにしんのすけは心底安堵する。

もしあの場で捕まっていたら、数時間はリアルおままごとから解放されなかっただろう。

そして、それは士郎と一成も同じ。

 

「……なあ、一成」

 

「なんだ、士郎?」

 

「…………ローマの休日、麗しのなんたら?

なんなんだろうな、一体……」

 

「題名からまるで内容が掴めないな……」

 

リアルおままごとに参加せずに済んだこともそうであるが、二人が気になったのは今日行われるおままごとの題名であった。

まるで映画タイトルをごちゃまぜにしたような、幼稚園児の考えたような題名ではあるが、あのネネのことである、きっとまた何かしらの映画を見て影響されたに違いない。

 

 

――余談だが、この後行われたリアルおままごとで何故か行きずりの観光客が訪れたローマにて、皇帝とアイドルとの間に略奪愛が発生することとなる。

坊主頭の観光客は絶叫して泣きながら逃げ出し、何故かアイドルに選ばれた児女が激怒しながらその後を追い、皇帝とその付き人が必死で諫めるというカオスな空間が形成された。

彼らの予言は、見事に的中したのである。

 

 

「大変だな、しんのすけ……」

 

「全くだゾ。

あーあ、あの様子じゃあ今日は風間くんたちとは遊べそうもないなー」

 

「え? なんでだ?」

 

「見つかったらネネちゃんにまず密告される」

 

「「えっ?」」

 

しんのすけ、風間、マサオ、ネネ、ボー。

彼らかすかべ防衛隊は、共に固い絆で結ばれた親友である。

だが、今この場においてしんのすけは彼らにとってまんまとネネから逃げおおせた裏切り者にしか過ぎない。

 

もし彼らに見つかったりしたら――

 

「それでー、次にオラをあの手この手で騙してネネちゃんの所まで連行して。

それでネネちゃんが裏で糸を操ってましたー、なんて事になるに違いないゾ」

 

それは決して誇張でもなく、遊んでいる最中、ボールを取りに行っていたらいつの間にか帰宅途中のサラリーマンになっていた、気がつけば役柄に引き込められていた――なんて過去に何度もあったくらいである。

かくいう一成や、この場にいない慎二や桜たちもまたそれで捕まった経験があり、あの時は士郎と共にさんざんリアルおままごとに巻き込まれる羽目となった。

その上士郎は後に謝罪として一斉に昼食を奢る羽目となり、慎二は丸一日魘されるわ大変であった。

 

「そ、そうか……大変だな……」

 

「幼稚園児の世界というのも、世知辛いものだ……」

 

単純そうに見えて意外に複雑かつ裏切り、悲しみのある幼稚園児の関係に、冷や汗を流した士郎と一成であった。

 

 

 

 

「じゃ~ね~、せいとかいちょーの人。

また明日~」

 

無事ネネから脱出できた士郎たちは途中で用事のある一成と分かれ、自宅へと向かう。

 

「士郎にーちゃん、そーいや今日は早かったんだね」

 

「ああ。なんでもここら辺で不審者がいるらしくてさ、藤ねえが言ってたんだ。

部活を切り上げて帰ってきたんだ」

 

幼稚園児であるしんのすけは、学生に比べると早めに帰宅できる。

一方の士郎は学生であり、さらに弓道部の活動や学校の用事などで遅くなることが多々あるため、夕方にもならない時刻に帰ってくることはあまりない。

今日は不審者の警告があったことで早めに帰れたのであり、こうしてしんのすけが駅前でばったり士郎に出会えたのも偶然にすぎない。

そういう意味では、こうして二人で帰ることは結構珍しい事であった。

 

「ふーん……。

ねーねー、フシンシャって反宗教的な人のこと?」

 

「それは“信じない人”の事。

俺が言ってるのは、“見るからに怪しい人”ってことだ」

 

「ほーほー……見るからに怪しい人……」

 

「そ。しんのすけも気をつけろよ。

青タイツ被って赤い槍持った見るからに怪しい奴なんだからな?」

 

不審者についてしばらく考えていたしんのすけは、一言呟く。

 

「それって組長先生も?」

 

「オイしんのすけそれ絶対に本人に言うんじゃないぞ?

言ったらあの人多分泣くからな?」

 

意見には心底同意するが、士郎はしんのすけに絶対に他言しない様に釘を打った。

 

組長先生――本名、高倉文太。

物腰が柔らかく非常に心優しい性格なのだが、それと対称的に明らかにヤクザそっくりな顔をしている、しんのすけの園の園長である。

 

その性格は非常に温厚で、まさしく人格者。

子どもたちを愛し、そして時には愛するゆえにしっかりと叱ることもあるという、子供好きな、理想の延長である。

そういう点では、本当にいい人なのであろう。

 

――だが。

天は二物を与えず、と言うが神様は彼に両極端なものを与えたらしく、その心優しさと引き換えに外見は完全に考慮の外に置かれていた。

なにせ、その容姿がヤバすぎるのだ。

元々色黒な肌に髪型は天然パーマ、そしてサングラスを愛用。派手なスーツを着ている上に顔面には過去の事故の傷跡まである。

加えて、生まれついての鋭い眼光はまさしくヤクザそのものだ。

 

本人はこれまで生きていて一度も警察に(関わることはあっても)お世話になるようなことは一度もない……らしい。

だというのに、顔のおかげで初対面の人間はまず彼をヤクザと間違える。

次に幼稚園児の園長だと分かると、半数の人はまず嘘ではないかと疑い、さらに半分は幼稚園児を隠れ蓑にして……と考えてしまう。

残りはと言うと、立派に働いて更生したんだなぁ……と勘違いするのである。

 

こうまで恐れられる顔だというのに、本人は温厚で臆病で泣き虫、という。

もし面と向かって貴方の顔は不審者級ですよ、なーんて言った日には絶対に泣く姿が容易に想像できる。

最も、それを否定出来ないほどに確かに不審者級なのだが。

 

「ふーん……オラそのフシンシャに会ってみたいなー」

 

「おいこら、そんなこと言ってると本当になっちゃうぞ。

もし園長連合みたいな人たちに出会ったらどうするんだ?」

 

「う……それは嫌かも……」

 

園長連合、というのは大阪で遭遇した全国の幼稚園の園長達が集合した時の出来事である。

 

皆園長と同じく非常に善人であるのだが――顔が非常に怖かった。

というよりも、どこぞの人造人間を運用するような司令だったり、名前に“13”なんてつきそうな暗殺者っぽい人に顔が似てる園長までいたのである。

 

「ハハハ、そうだろ?

平和が一番、一番!」

 

「……士郎にーちゃん相変わらず面白みのない答えだゾ。

まるでとーちゃんみたい」

 

「え……そうか?

まあ毎日愚痴に付き合ってるからなー……もしかして、伝染っちゃったかも?」

 

「モ~。足の匂いまではうつさないでよー。

一人だけでも大変なのに」

 

「ハハハハハハ」と二人で笑い合う。

帰り道、弟と交わす他愛のない会話……それは、彼の普段通りの日常。

 

――だが、しんのすけの言葉がフラグになったのかは知らないが、二人はこの後に本当に不審者に出会うこととなる。

 

 

 

時間はしばらく経過し、我が家も大分近くなりはじめた頃。

 

二人の進行方向の先、道路の中央に人がぶっ倒れていた。

両手両足を四方に広げ、大地に大の字でうつ伏せ状態のその女性は、ぴくりとも動かない。

 

「あ、士郎にーちゃん、そこ人が倒れてるゾ。

危ないよ」

 

「ああ、気をつけるよ」

 

道路に人が倒れている、ということについて。

二人は“倒れた人物を踏まないよう”に、脇を通ってナチュラルに素通りし。

 

「…………って何ぃ!?」

 

事の異常性に気が付き慌てて引き返した。

 

しんのすけの言葉通り、そこでは女性が大の字で倒れていた。

閑静な住宅地とはいえそこは車通りが皆無というわけでもなく、もし発見が遅れていたら、危うく引かれていた可能性もあるだろう。

 

「あっぶね!

倒れてる人なんて普段通りのことだから思わずスルーしそうになったぜ!」

 

「別に慣れることでもないでしょ」

 

「細かいことは気にするな。

っと、それよりも……」

 

春日部じゃあ誰かが路上で倒れることは日常茶飯事……という訳ではないが、別段珍しいことではない。

士郎は路上に倒れている女性の容体を確認する。

 

「……よかった、まだ息はあるみたいだ!

見たかんじどこも怪我して無いみたいだし、大丈夫っぽいな?

それにしても、ひき逃げ?

じゃなさそうだよな……タイヤ痕とかないし……」

 

幸いにも女性には息があり、衣類にも傷らしい傷もついていなかった。

人が無事なのは幸いであったが、問題はなぜ彼女が倒れていたという事だ。

 

路上に倒れている時点でまず考えられるのがひき逃げの可能性である。

しかし、テレビであるようなブレーキ痕などは道路には確認できず、女性の体にも車に衝突したらしいような傷らしい傷はどこにも見当たらない。

衣類の汚れ具合も殆ど無く、自動車に轢かれたというよりは、女性がその場に倒れたと考えたほうが正しいだろう。

 

――そして、倒れている事以上にその女性には不審な点がもう一つ。

 

「……なんでこの人、今時ローブなんか纏ってるんだ?

青タイツとか紫ローブとか、春日部じゃこんなのが流行ってるのか?」

 

士郎が気になったのは女性の格好について。

女性が身に纏っていたのは冬用のセーターといった防寒具や士郎のような学生服でもなく、身体を覆うような形で纏うタイプの、紫色のローブだった。

 

確かに寒いとはいえ、通常女性が纏うような衣類ではない。

というよりも、ファッションに敏感な女性が、こんな恰好で外を歩いている姿なんて見る事すらないだろう。

だが、実際に目の前にいるその女性の格好はまるで、古い魔法使いが現代に現れたかのようなちぐはぐな格好であった。

 

一体なぜこの女性はそんなローブを着用しているのか?

疑問は尽きないばかりだが、新たな発見をしたのは、しばらく周りをちょろちょろと周っていたしんのすけだった。

 

「……あれ? 士郎にーちゃん、この人なんか書いてるゾ。

ほら、ここんとこ」

 

「え? ……あ、ほんとだ。

何か書いてあるな……」

 

しんのすけの言葉に視線を移してみると、女性の右腕の部分に何やら文字が書かれている。

倒れた人間、その近くにある文字――ということは。

 

「これってもしかして……シャイミングソーセージ!?」

 

「それを言うならダイイングメッセージ。

別に光り輝く食べ物じゃないぞしんのすけ。

どれ、何々……?」

 

何かしら伝えたい事でもあったのか、道路には赤い液体で書かれた文字が連なっていた。

赤い液体、そしてその傍で倒れている女性。

そこから連想させられるのは――人間の血液。

もしや見えない範囲で何かしらの怪我でもしているのか、頭脳が大人な子供名探偵とかでよくある明らかにあからさまなダイイングメッセージなのかと思いつつ、恐る恐る文面に目を通し。

 

「うっ!?」

 

そして、士郎はその内容のあまりの酷さに思いっきり顔を引き攣らせた。

 

 

『――無念無念まさしく無念。最後にできることならばイイ男と手をつないで死にたかった。

まともな恋愛もできずに死ぬなんて、悔やんでも悔やみきれない。燃えるような情熱的でハートフルな恋愛がしたかった。

食事にも誘われたかったしナンパとかされて奢られてみたかったしおしゃれもしたかったし六○木にも行きたかったしホストに死ぬほど金を貢いでみたかった。

合コンにも行ってみたかったカラオケにも行きたかった妊娠したかったエステにも云々……(以下あまりにも長すぎるので割愛)』

 

 

――そこには、遺言と呼ぶにはあまりにも長ったらしすぎる文章が道路に延々と残されていた。

死の間際に書かれたものとは思えぬほどの長文で、しかも内容はダイイングメッセージなどではなく、恋にあぶれた女性の恨みつらみがびっしりと書かれている。

よほどこの女性はこの世に未練があったのか、それとも出会いがない事への恨みが募っていたのだろうか。

おまけに何処で調達したのか、よくよく見れば書いている文字は血ではなく右手に握りしめられている赤マジックであった。

 

「な……なんだコレ?

これじゃあ遺言じゃなくて、単なる主婦の願望じゃねーか。

うっわ細か~……まるで模様みたいだな」

 

内容も酷いものだが、道路に隙間なくびっしりと描かれた文字の集合体は、いかにこの女性の過去がすさんだものであったかを如実に表している。

きっと彼女の過去は士郎たちが想像できないほどに凄まじいものだったのであろう。

 

実際、彼女の過去は想像もできないほどにすさまじい生涯なのだが、メッセージにはこれっぽっちも書かれていなかった。

書かれていたのは、自らの欲望とこの世のカップルに対する恨みつらみばかり。

 

というか、何もこの状況でこんな道路に書かなくとも……。

と、女性の心の内側というものを垣間見た気がして、二人は激しく引いていた。

 

「うっわ……これはひどいゾ。

ハァ~~、しかも書いてるのが母ちゃんとまったく同レベルじゃん。

なんだかオラ、心配して損した気分……」

 

「俺もだ……」

 

何かしら物騒な事件に巻き込まれたかと心配していたら、ふたを開けてみればただ単に出会いが無かった不幸な独身女性が行き倒れていただけであった。

何事もなかったとはいえ何ともアホらし過ぎる結末に、二人とも脱力する。

とはいえ、このまま女性を放置しておくわけにもいかない。

 

「ところでさ、士郎にーちゃん。

どーするこの人?」

 

「あ、そういえばそうだよな。

う~~~~ん……」

 

今の今まで忘れていたが、目の前の女性は救助が必要な人間なのである。

たとえそれが事故ではなく単なる行き倒れだったにせよ、それでも目の前に人が倒れていることに代わりはない。

応常識的観念から言えば、ここで選択肢としては“助ける”というコマンドを選ぶべきなのであろう。

 

しかし、しかしだ。

士郎としては、赤マジックで遺言のようなメッセージのような愚痴のようなものを書くような人とぶっちゃけて言うとあんまり関わり合いになりたくなかった。

だからといってそのまま見捨てるという選択肢も、一応人道的な意味合いでは選ぶわけにもいかないだろう。

いやけれども例え正義の味方だったとしても、正直に言うとこのおばさんを助けて何かしらの関わりをもつというのも……。

 

「なんというか、あんまり関わりたくないけど……。

とりあえず警察と救急車くらいは呼ぼうぜ。

見た感じ事故っぽくはないし、どうやら行き倒れっぽいしな……」

 

事故の可能性は一つもなく、どうせ長い遺言書くぐらいの気力はあるのだから事件性はないだろう。

そう判断し、後のことは公務員に任せようと近くの公衆電話まで向かおうとする。

 

そこで不意に、ぴたりと士郎の動きが止まった。

 

「……!?」

 

「どったの士郎にーちゃん?」

 

突然動きを止めた兄にしんのすけは訝しげな表情を向ける。

しかし、士郎は答えようとせずに顔をひきつらせながら、“足首に感じた違和感”に視線を向ける。

 

――そこではがっしりと“ナニカが士郎の足首を掴んでいた。

 

士郎の足首を掴む、細い指。

がっちりと掴んで離さない、白くほっそりとした腕。

それは、先ほどまで道路に倒れていた紫ローブの女性へと繋がっていた。

 

「こ、こいつ……動くぞぉ!!」

 

先ほどまで微動だにしていなかったというのに、その女性はまるで得物を見つけた虫のように素早い動きで士郎の足首を拘束した。

が、足首を動かしたままで停止。

しんのすけが近くにあった枝で女性をつんつんとつつくが、女性は打って変わってぴくりとも動かない。

 

「気のせいだゾ、気のせい。

きっとシゴコーチョクってやつだゾ」

 

「死んでねえっての!

いったいどこでそんな単語を覚えてるんだよ……」

 

幼稚園児にして変な方面で博識な弟の将来を心配する。

第一硬直しているならば、動きすらしないのだが。

 

なんというか、女性から不穏な気配を感じ取った士郎は足首を掴んでいる手を外そうと腕を伸ばし――。

 

 

――がしり、と今度は手首が掴まれた。

 

 

「「!!!!!」」

 

二人の表情が一気に凍りつく。

 

――今、間違いなく動いた。

それは士郎の勘違いでも幻覚でもないことは確かであり、(動いたよな?)(うん、動いたゾ)と二人は視線で会話をする。

死後硬直とかそういう問題ではなく、確実に意思を持って動く生命体である。

 

そして、女性は士郎を確実に捉えている。

何故捉えているかは分からないが、士郎はその時、まさしく女性にとっての得物であったのだ。

 

――女性はブツブツと小さな声で呟いているのが、二人の耳に入った。

 

「……せっかく見つけた、若い男……。

ぴっちぴちの高校生……。

その上魔術師となれば、逃がしてなるものか……。

逃してなるものか……」

 

それは小さいながらも、やけに耳に迫る声であった。

 

士郎の手首を掴んでいるほうとは反対の手が、大地をつかむ。

うつ伏せの状態から、手足が四方に伸び上がり、まるで蜘蛛のように身体が浮き上がる。

四つん這いの状態からゆっくりと身体を起こし、ふらふらとしながらも立ち上がる。

 

 

「決 し て 逃 が し て な る も の く わ ぁ ぁ ぁ ぁ ッ !」

 

 

その声は――まるで地獄の底から響くような声だった。

 

 

 

「「うわああああああ!

喋ったあああああああ!!」」

 

 

 

後に、衛宮士郎としんのすけ、そして女性――『キャスター』。

この三人の『最悪の出会い』とまで言われ笑い話となり、キャスターにとって過去最悪の黒歴史となる、恥ずかしい出会いが。

 

 

――そして。

この時、彼女との出会いを以って、野原一家の聖杯戦争が始まったのだ。

 

冬木で行われた“はず”の、聖杯戦争。

それは冬木の聖杯に留まらず、地球を。

そして人類の過去、現在、未来を賭けた巨大な戦いが――いま、幕を開けたのである。

 

 

 





――園長連合
連合かどうかは忘れちゃったけど、幼稚園の組合で大阪に集まったときのお話。
『大阪で食いだおれるゾ』より。
あの面々と同席したら多分作者は泣くと思う。

アニメじゃコミカルだけど、実際リアルおままごとを体験したらトラウマものだと思う。それにいっつも付き合う春日部防衛隊の面々は凄いなぁ。
キャスターさんはよくあるテンプレ。この作品ではものすごい残念仕様となってます。ただ、原作でも家庭っぽい願い事してた人なので野原家とは凄い絡ませやすいと思う。
あと外伝とか入れてみたいなあ。


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