魔法日本皇国召喚   作:たむろする猫

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失墜

日本皇国海軍第5艦隊第10戦隊旗艦【大江】

 

シナツヒコ(対物索敵レーダー)に感!数350!魔力反応及び速力よりロウリア王国のワイバーンと思われる!」

「350騎のワイバーンか、凄まじい数だな。ふむ、流石に今のクワ・トイネ艦隊では厳しいか。艦長!我々も参戦するとしよう」

「はっ!戦列に加わるぞ!全艦戦闘速力!クワ・トイネ艦隊へ通達も忘れるな!」

 

隊司令山内准将の命令により、後方にて待機していた【大江】以下第10戦隊5隻は飛来するワイバーンへの対処と、ロウリア艦隊攻撃中のクワ・トイネ艦隊合流する為速力を上げた。

 

「【大江】より【オオムギ】へ、接近中のワイバーンへの対処はこちらで行う。貴艦隊はロウリア海軍攻撃に集中されたし」

《【オオムギ】より【大江】了解。援護に感謝する》

 

【大江】達5隻が【オオムギ】達3隻に並んだ頃、接近していたワイバーンが対空魔弾の射程に入った。

 

「対空戦闘用意!」

「対空戦闘よーい!」

 

甲板のハッチが開きその中に収められた対空魔弾の銃口が空を睨む。

 

ードイツに「魔法の弾丸」と言う民間伝承がある、それは一度放たれれば百発百中の魔弾。

その伝承を元に作られたオペラが「魔弾の射手」だ。大まかに言えば、青年が悪魔と契約し絶対に外れない弾丸を6発と、悪魔の意図した所に当たる1発の弾丸を手に入れるというお話。

そしてそのオペラを下地に(・・・・・・・)かつて第三帝国で作られた【魔法】が「対空魔弾」だ。

この対空魔弾は当初の思惑通り、対空目標に対して非常に効果的な魔法として完成した。

しかし、どちらかと言えば「呪い」の類として完成したこの魔法は、モデルとなった「魔弾の射手」の欠点まで再現してしまった。

則ち、6発までは敵に対して命中するが、7発目は自身か味方に対して命中してしまうのである。

当初対策として7発では無く、6発だけ装填した発射機構が考案されたが何故か魔法は発動せず、実験の結果7発装填していなければならない事が判り、開発者である第三帝国では最終的に最後の7発目は発射しない、という取り決めがなされた。

ただしこの方法では発射機構そのものが再利用出来ず、丸々交換しなければならないと言う弱点がある。

 

第二次大戦後、この魔法の術式を鹵獲した日本皇国とイギリスも、散々に苦しめられたこの魔法の導入に力を注いだ。

イギリスでは殆どそのまま採用し、使用後の発射機構を聖水で浄化するという方法を取っている。

ただし艦載型などは取り外し交換してと言う手間が掛かる事と、1基につき6回使う(6発を6回撃ち尽くす)と限界が来ると言う問題を抱えている。

対して、研究途中で魔弾を発射する度に「呪い」が蓄積していく事に気が付いた日本は、発射機構に「梓弓」を組み込み発射の度に蓄積される「呪い」を祓う事で寿命を延ばしている。

ちなみに「梓弓」が元々巫女が神事などで使うものであった事から、女性の手によってしか発動しない為、日本皇国軍において対空魔弾を運用するのは女性士官の役割になっているー

 

「敵ワイバーンの魔力波形入力!対空魔弾発射用意よし!」

「対空戦闘、撃ち方始め!!」

「うちーかた始め!サルヴォー!!」

 

【大江】以下5隻から、梓弓を組み込んだ弩弓状の発射機構から撃ち出され、バレル内の物体加速術式に加速され音速を超えた127mm炸裂弾(魔弾)が次々と打ち上げられる。

ロウリアの兵士は海の上に居る者も空の上に居る者も、誰一人としてその事に気付く事が出来なかった。

もっとも、気付く事が出来たとしても対抗手段を持たない彼らでは、何の意味も無い事だったが。

 

 

 

彼等は悠々と空を飛んでいた。

空を埋め尽くさんばかりの350騎ものワイバーン!

この軍勢を持って滅ぼせない敵など存在しない!

敵主力艦隊を叩くため出撃したロウリア王国の竜騎兵は誰もがそう考えていた。

海軍からの情報には要領を得ない所もあるが、所詮相手は船だ。

我々が空から襲い掛かればひとたまりもない、海軍はどうやら苦戦しているようだが、海軍が苦戦するその相手を殲滅すれば大戦果間違いなしだと。

 

だが、現実は彼等にとって残酷であった。

 

➖ドパァン!➖

 

「は?」

 

編隊の先頭を飛んでいた25騎が唐突に弾け飛んだ。

 

《なっ!?何が起こった!!》

《解らないっ!!ヤツらとつぜグギャッ》

《またやられた!!同じ数だ!!》

《くそっ!何処かに敵ワイバーンが居る筈だ!!探せぇ!!》

 

一度に25騎、その後一泊置いてまた25騎、次々と戦友達が落ちていく。

彼等は待ち伏せを受けたものと考え、周囲にクワ・トイネのワイバーンが居るものと考え目を凝らしその姿を探す。

クワ・トイネのワイバーンではここまで飛んで来られない、という事は考えない。実際に攻撃を受け仲間が死んだ、それは即ち敵が居るという事に他ならない。

 

だが、どれだけ探しても見当たらない。

高度差で有利な位置を取られたと考え上に目を向けた者達は、敵の姿を捉える事が出来ずにただ太陽に目を焼かれ、次の瞬間には弾け飛んだ。

彼等が居もしない敵を探す内にもキッチリ25騎ずつ、25頭のワイバーンと25人の竜騎兵の命が奪われて行く、あまりにも呆気なく、あまりにも単調に。

 

そうして、その数を半数以下にまですり減らされた彼等が、命からがら海軍艦隊の後方上空に達した時、漸くソレの姿が目に入った、光の翼を広げ空に浮かぶ巨大な船の姿が。

 

《なん、なんだ!?なんなんだ!アレは!》

《まさかッ!?アイツにやられたのかッ!?》

《そんなバカな話があってたまるか!!》

《だったら他に何にやられたってんだよ!!》

 

巨大な空飛ぶ船は8隻居た。

その内小麦色の3隻が海上の海軍を攻撃している様で、それらより上に居る青色の5隻は何もしていない様に見える。

 

《あの小麦色の奴をやるぞ!!》

《青い奴はどうする!?》

《先ずは味方を攻撃してるヤツらからだ!!青いのはその後嬲り殺してやるッ!!》

《よぉし!続けぇ!!》

 

彼等は味方海軍を攻撃している3隻、クワ・トイネ艦隊に目をつけそちらから撃破しようと、攻撃を集中させる為出来る限り密集隊形をとる。

 

それが命取りとなるとも知らずにー

 

 

➖斬!!➖

 

 

クワ・トイネ艦隊を攻撃しようと上昇したワイバーンは真っ二つになり、その残骸はロウリア艦隊に降り注いだ。

 

 

 

「クサナギ引き続き照射、殲滅しろ」

「アイサー!クサナギ引き続き照射します!」

 

「剣砲クサナギ」それがロウリアのワイバーンを斬り裂いた攻撃の正体だ。

[神代三剣]の一振り「草薙剣」の伝承を元に作られたこの【魔法】は、草薙剣を模した両刃剣を媒介に刀身の直線上に存在するものを薙ぎ払うという凶悪極まりないもので、鋼鉄の鎧に身を包んだ戦艦すら斬り裂いて見せるその威力に、各国は建艦構想の尽くを変更せざるを得なかった。

科学の徒であった共産圏が海ではより強固な防御能力を有した戦艦を求め、空ではより早く飛ぶ事の出来る攻撃機を求める原因を作ったのもこの兵器である。

欠点は使用時に馬鹿みたいに魔力を食う事で、速射砲並みの連射は行えない事だ。

 

巡航艦・駆逐艦を問わず艦底部に半内蔵するの形で配置されているソレが今、刀身を露わにしてその切っ先をロウリアのワイバーンへと向けている。

 

「魔力充填よし、術式回路正常作動!照射準備よし!」

 

剣が輝く

 

「クサナギ第二射照射!てぇっ!!」

 

一瞬輝きが一際大きくなり次の瞬間にはフッと消え失せる。

それと同時に又しても複数のワイバーンが切り裂かれ、血肉の雨となった。

 

 

 

何が起こったのか、それが分からなかったのはロウリア王国のワイバーン隊だけで無く、彼等の到着を心強い援軍だと盛り上がったロウリア王国海軍も。

ある程度日本の兵器について知っているつもりであったクワ・トイネ艦隊ですら、何がどうなっているのか理解できず、思わず砲撃の手が止まってしまっていた。

 

ただ、一つ分かる事は

この空からロウリア王国の誇るワイバーンは残らず駆逐されたと言う事実だった。

誰もが悟る、

 

ワイバーンは空の王者では無くなった、と。

 

そしてクワ・トイネとロウリア双方の指揮官は同時に声を上げる!

 

「全艦回頭!!撤退だ!撤退しろ!!」

「全艦撃ち方再開!!ロウリアを殲滅しろ!!」

 

双方の艦隊は同時に動く。

海上の艦隊は一斉に回頭を始め、いち早くこの戦場から逃げ出そうとする。

だが相当焦っている様で、回頭中にぶつかったりして数十隻か航行不能になり、それに巻き込まれたシャークンが座乗する旗艦が撃破された事も重なり、更に混乱が大きくなる。

上空の艦隊はそこに、狙いやすくてありがたいとばかりに次々と砲弾を撃ち込んで、片っ端から沈めていく。

とは言えクワ・トイネ艦隊の主砲は巡航艦【オオムギ】の連装砲2基も、駆逐艦【デラウェア】【マスカット】の単装砲1基ずつも、そのどちらも実弾砲である為携行弾薬数の問題もあり、多めに積み込んで来たとは言え流石に4,400隻全てを沈め得るものでは無い。

 

「提督!間も無く弾薬が底を尽きます!」

「よし!第10戦隊に砲撃への参加を要請しろ!」

「はっ!」

 

そして、クワ・トイネ艦隊からの要請によりロウリア艦隊への砲撃に参加した第10戦隊の駆逐艦4隻は、その主砲収束魔力砲(要するにビーム)でもってロウリアの軍船2・3隻纏めて吹き飛ばす。

 

やがてクワ・トイネ艦隊の弾薬が尽きた事もあって、全力逃走を開始したロウリア艦隊への追撃は行われなかった。

 

8対4,400と言う、一見後者が圧倒的有利に見える海戦はしかし、少数の側であったクワ・トイネ公国/日本皇国連合艦隊の勝利に終わる。

 

クワ・トイネ艦隊の水兵達は、下っ端から最高位の者まで、全員が歓喜に震えていた。

確かに日本皇国の助けはあった。

使用した兵器を用意してくれたのも、その使い方を教えてくれたのも、現状では脅威と言えるワイバーンを退けた力も、確かにどれも日本だ。

 

それでも、そうそれでも!

この海戦の主役は間違い無く自分達だった!

クワ・トイネは自分達の力でロウリアを退け得る程の力を確かに身に付けつつある!

 

「クワ・トイネの未来は明るい」

 

歓喜に震えるミドリの肩を叩きながら、パンカーレはそう思わずにいられなかった。

 

 

 

 

砲撃姿勢のまま止まったクワ・トイネ艦隊の足下で、漸く追い付いてきた第2艦隊と日本皇国の水上艦(沿岸警備隊)によって、漂流しているロウリア兵の救助が始まっていた。

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