魔法日本皇国召喚   作:たむろする猫

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魔法

日本皇国における【魔法】の開発は日本の神話、そこに登場する神の権能やエピソードを模倣し再現する事によって行われた。

 

何故魔法の開発において神話の模倣と言う選択が成されたのか、公式発表では「【魔法】の開発過程【魔力】の研究に於いて、無理に現在の科学技術に合わせるのでは無く、()()()()()()を作り出した方が効率的であると判断された為」となっているが、非公式な話として

 

「我々は導かれる様に神の権能の模倣を行った」

 

と、当時の研究者の1人が証言したと言う話がある。

あくまでも噂話程度のものなのだが、その証言を行なったと言う研究者が魔法開発の第一人者として知られる人物であった事もあり、この証言を元にした主張がある。

 

「魔力再発見説」

 

それが現在魔法学会やネット上で主張されている。

主張の内容はそのまま「人類は【魔力】を始めて発見したのでは無く、太古の昔使っていた物を改めて発見したのだ」と言うものである。

その主張が根拠とする所の一つが上記の証言であり、結果として神の権能の模倣を行った事により、同時期にに魔法研究を始めたイギリスよりも先に【魔法】の実用化に至った事実である。

 

「我々の文明の発展する前に存在した所謂超古代文明は【魔法】を使用していた文明だった。その文明が何らかの理由で滅んだか【魔法】力を失った際に、未来の子孫などが再び【魔法】の力を得た時、それをスムーズに物に出来る様残したものが神話である。そして、それを資料に魔法開発を行った事によって、想定していたよりも容易に【魔法】の開発を行う事が出来た」

 

と言うのが魔力再発見説の主張である。

この説が始めて発表された際、世間ではまともに相手にされなかった。

当時から「アトランティス大陸」だとか「ムー大陸」だとかと言った、所謂超古代文明の話はあったが幾ら何でも荒唐無稽な話である。そもそも古事記にしろ日本書記にしろ編纂された時期はどちらも西暦に入ってからの事で、超古代文明文明と言える様な時代では無い。

もっとも説の支持者によると大切なのは「神話の内容」そのものであって、言い伝えられてきたそれを纏めたものでしか無い古事記と日本書記自体は関係無いと言うのが反論であった。

なんにせよ再発見説支持者の扱いは長年、陰謀論者と同じ様な扱いだった。

 

ところが、長年の間単なる空想として扱われていたこの説は近年、有力な説として注目されてきている。

と言うのも、超古代文明の証拠とも言えるものが発見され出したのだ。オーパーツや時代が特定出来ない遺跡などが超古代文明の魔法遺物では無いかといわれている。

オーパーツとは場違いな工芸品と呼ばれる、発見された地層等の時代では作り出せない筈のものであり、今までその用途は全くわからないものが多かった。

ところが魔法技術の進歩により、それらが【魔道具】であると言う事が分かった。

また遺跡に関しても、描かれた壁画や彫刻が【魔法陣】であると判明し、「遺跡そのものが大規模な【儀式魔法】の為の【魔法陣】では無いか?」と考えられている。

 

そして、日本皇国が異世界へと転移する2年前、超古代文明の決定的な証拠とも言えるものが南極で発見されていた。

 

即ち冷凍遺跡の発見である。

 

南極が北極と違いその分厚い氷の下に大陸を持つ事は1820年、ロシアの探検家によって判明していたが、2年前の日英共同チームによる探知魔法を使った調査によって氷の下で、魔力に対する反応が確認された。

更なる調査の結果、魔力に反応があった地点を中心に半径15キロにも及ぶ巨大な円形都市の遺跡が発見された。

 

この発見に再発見説支持者は「超古代文明、古代魔法文明の存在を裏付ける確固たる証拠だ」と大いに歓喜した。

それまで彼らの学説を否定してきた学会も、この発見以降“手の平を返して”とまではいかないが、頭から否定出来ない状況になった。

何せ物的証拠が出て来てしまったのだ。

これが「氷の下の遺跡」だけであれば「まぁ超古代文明は存在したね」で済ませられるのだが、発見のきっかけとなったのは探知魔法に反応した魔力に対する反応だ。

調査によれば「反応したのはなんらかの【魔法陣】もしくは【魔道具】で、僅かな反応だけで起動しなかったのは探知魔法の魔力に反応した為と考えられる」との結果が出ている。

 

その後、氷の下を探る専用の術式まで開発した英国によって、冷凍遺跡が「自然地形では無く完全に人工物であり、その構造に【魔法陣】的要素を認める」「また、魔力に関する反応を観測した結果、多数の【魔道具】も残されているものと考えられる」と発表された事により、正体不明の古代魔法文明の存在は確固たる全世界に認められる事実となった。

 

この事から、「神話に隠されたギミック」は別として、神話で描かれる神は古代の魔法文明の人々であり、彼等の権能とされるものは彼等が使用していた【魔法】である可能性は限りなく高いと考えられる様になった。

再発見説の否定派としても否定しようにも、「事実として神の権能の模倣が()()()()()()()()()以上、絶対に有り得ない」と言えない状況にある。

 

つまり、遥か昔神の神罰から逃れる為、大規模な転移魔法を使用したと言う古の魔法帝国が、()()()()()()()()()と言えなくも無い訳である。

もっとも、記述にある「未来へ転移した」と言うのが事実であれば全く別の魔法文明である可能性の方が大きいと考えられる。

 

 

 

「以上が日本皇国の見識であります陛下」

 

神聖ミリシアル帝国謁見の間にて、第三文明圏から帰還したペクラスは日本皇国との会談によって得た情報を皇帝ミリシアル8世へと報告していた。

 

「つまり日本皇国は転移国家であり、彼等の魔法技術は彼等の世界の神の権能の模倣であり、彼等の世界の古の魔法帝国の様な存在とは関わりがあるかも知れないが、少なくとも我等が言う所の古の魔法帝国とは関係が無い可能性の方が高いと言う事だな?」

「はっその通りであります」

「ううむ」

 

ミリシアル8世にとっても、神の権能の模倣と言うのは到底信じられないものだった。

だが、報告を行なっているペクラスの眼差しは真剣そのものだし、そもそも皇帝たる自身に対して、虚偽の報告は行わないだろう。

直接日本人から話を聞き、その内容が真実であろうと判断したからこそ、報告しているのだ。

それに加えて、

 

「(この空に浮かぶ巨大な軍艦......これが、海軍艦艇等と同じ様に量産されたものとは。発掘品を何とか稼働させようとしている我が国よりも、技術力は上と見るべきか)」

 

彼の手にはペクラスの持ち帰った日本皇国遣パーパルディア艦隊が、離水し上昇する様子を写した魔写があった。

それだけで無く、ペクラスは日本の大使の好意によりミリシアルが誇るミスリル級魔導戦艦よりも巨大な戦艦へと乗船したと言う。

 

「ペクラスよ、日本の戦艦はどうであった?」

「はっ、詳細の説明まではしてもらえませんでしたが、全長と主砲に関しての情報は得られました。それによると、戦艦【アキツシマ】の全長は325m、主砲は51cm連装添火高収束魔力砲が4基8門との事です。また、戦艦として決戦距離にて自己の主砲の直撃に対する防御力も保有しているとの事です」

「その収束魔力砲と言うのは何だ?」

「はい、何でも魔力を収束し純粋な破壊エネルギーとして放つ兵器で、日本皇国海軍の全戦闘艦艇に口径は違えど採用されているとの事です。また、この兵器は権能の模倣では無く、完全に1から()()()()()魔法であるとの事です。

会合地点がパーパルディア領であった為、残念ながら実射を目にする事は出来ませんでしたが、アキツシマ艦内にあった資料映像にて、以前装備していたと言う46cm砲の発射映像を見せて頂きました」

 

そこで一旦言葉を切り、深呼吸をすると続ける

 

「その様子はまるで、対空魔光砲を主砲クラスにまで大型化したものの様に見えました」

 

ペクラスは-シン-とその場が静まり返る音を聞いた気がした。

それほどまでに静まり返ったのだ、そして次の瞬間。

謁見の間は怒号に包まれた。

 

ある者は悲鳴を

ある者は否定の声を

 

ペクラスは仕方がない事だと思った、自分だって映像を見た時その光景に唖然として、朝田大使に肩を揺すられるまで固まっていたし、今は皇帝陛下すら目を見開いて固まっている。

 

特に動揺しているのは海軍関係者と魔帝対策省関係者だ、前者はそんな化け物が本当に存在しているのだとすれば現状で世界最強のミスリル級魔導戦艦ですら歯が立たないと言う恐怖から。

後者は自分達ですら再現に四苦八苦している飛行する軍艦を量産していると言う事と、主砲クラスの対空魔光砲と言うもはや理解の外側にある兵器をあろう事か生み出したと言う事に。

 

数分間混乱が続き、漸く復活した皇帝によって場は収められた。

 

「ペクラスよ、これから我が国はどうするべきだと考える?」

「はっ、誠に遺憾ながら我が国の技術は古の魔法帝国の技術の再利用に過ぎず、新たな物を創り出している日本皇国に劣るものと考えられます」

 

周囲から非難の声が上がるが、ペクラスはそれを無視して続ける。

 

「さすれば日本皇国とは友好的な関係を築き、その技術を少しでも手に入れるべきと考えます。幸いにして日本皇国も我が国との国交の樹立や技術交流には前向きで、更にはかの国は造船業を国家産業としており、我が国への航空艦輸出も今後の交渉によってはあり得るとの事です」

 

今度はあちこちで息を飲む音が聞こえる。

航空艦の輸出、表面だけを見れば国内の造船業に打撃を与えかね無いが、購入した航空艦の魔法術式の解析が出来れば自国でも生産が出来る様になるかも知れない。

 

「良かろう。ペクラスよ何としても日本皇国と友好関係を築くのだ、必要であればかの国を新たな列強として迎え入れて構わない」

「はっ!必ずやご期待に応えてみせます」

 

皇帝の聖断は成された。

以降神聖ミリシアル帝国は日本皇国との国交の樹立、技術交流や軍事交流を含めた同盟関係の構築へと邁進する事になる。




2013年に衛星ランドサット8号が南極で、遺跡らしきものを撮影したとか言う話が有りましたね確か。





あと、ラヴァーナルって元々別な世界から来たっぽいらしいですね?

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