魔法日本皇国召喚   作:たむろする猫

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このお話から新章となります。


新世界進出
アルタラス


日本皇国にとって造船業は重要な収入源である。

高速の旅客船は世界シェアの半数を占めていたし、軍用艦艇も魔法同盟陣営において広く採用されていた。

 

それが異世界へと転移した事によって、全ての販売先を一気に失う事になってしまった。

これはとんでもない損失である。

建造途中であったもので、海軍艦艇や国内向けのものは問題無いが、他国からの発注により建造していた分に関しては引き渡し先が無くなってしまった、これは由々しき事態だ。

完成間近であったもので、民間向けの物は発注済みで建造待ちであった分に回し、同盟国向けの軍艦も次年度の予算から支払う形で海軍が引き取り、着工して直ぐのものや未だ建造が始まっていなかった分に関しては一時的に凍結する事で対応している。

因みに、クワ・トイネ公国とクイラ王国へ引き渡された6隻はここから捻出されていた。

 

ただ、一時的にはこれで良いかもしれないが、問題は販売先を失った事により以降の発注が国内のみに限定されてしまう事である。

そうなってしまえば収益はガタッと落ちるし、失業者も多数出てしまう事になる。

その分のリソースの幾らかを【高天願】の建造へ回しているが、限度がある。

 

故に日本皇国は現在、国家を上げて新世界の各国へ対する艦船のセールスを行っていた。

 

 

 

日本皇国東京都航空都市武蔵野

帝国造船第一建造ドック

 

 

ー常識が音を立てて崩れて行くのは一体何度目だろう?

 

アルタラス王国王女ルミエスは目の前の光景に日本の地にやって来てから、何度目とも知れぬそんな感想を抱いた。

そこには鋼色の液体で満たされた縦200m×横50mのプールが有った。

プールの上部、空中に書いてあるのか全く解らないが、複雑な構成の魔法陣が浮かんでいる。

その魔法陣が赤い光を発したかと思えば、鋼色の液体の方にも変化が起こる。

魔法陣に呼応して赤く光ったと思えばゆっくりと、一部がせり上がり出す。

 

「ご覧頂いている様に、我が国の造船過程において、基本的な船体の製造には全く人手を必要としておりません」

 

案内に付いている帝国造船の職員が、「此方をご覧下さい」と大きなモニターを指差す。

各国の使節団はモニターの存在と、そこに映し出された映像に驚きの声を上げるが、映像が進むにつれ段々と静かになって行く。

そこに映し出されているのは目の前で行われている建造を早送りした映像だった。

右上に表示されている日数が3日目となった時光が消え、幾分か水位の下がった鋼色のプールには巨大な力船の船体が浮かんでいた。

 

まるで船が鋼色のプールから生えて来たかのような光景、ルミエスは自身が王国の代表としてや王族としてどころか、そもそもうら若き乙女がしちゃいけない様な顔になっているのが分かった。

だが誰もそれを咎めない、と言うか気付いてすら居ない、だってアルタラス王国の使節団もそれ以外の国の使節団も、ルミエスと同じ様な顔をしていたから。

 

「この様にして製造された船体は自動的に次の作業スペースへと移動させられ、そこで人の手によって船体内へと別ラインで作られたパーツが取り付けられます。そして同じ様に別ラインで製造された艦橋を接続して塗装を施せば完成となります」

 

最早おどろきを通り越して意味不明だ。

 

ー[アメノマヒトツノカミ]それがこの造船に使用されている【魔法】だ。

術式名の由来となった天目一箇神は製鉄・鍛治の神である。

そしてその神の名を冠するこの術式は大規模な魔法陣こそ必要とするものの、自在に金属を操る事ができる。

建造の手順はこうだ、

1・先ず鋼鉄を[アメノマヒトツノカミ]の単体稼働によって液状化させる。

2・次に液状化した鋼鉄に魔力を混ぜ込む。

3・魔力を含ませた液状鋼を建造ドックへと流し込む。

4・建造する艦艇の設計図を重ねた[アメノマヒトツノカミ]の魔法陣を起動させる。

5・船体・内装・艦橋・武装と言った風に別々に製造されたパーツを接続、機関を配置して内装を整える。

 

言ってしまえば巨大な艦船模型を作っている様なものだ。

 

実は機関-魔力炉の配置と生活の為の内装を整える以外の作業を完全に自動化する事も出来るのだが、雇用の確保の為にも各パーツの接続などに関しては人が行う様にと定められているー

 

『ご覧頂いた映像は今製造されている船体と同じ物になります。この船体は中型輸送船で完成までには3日間、その後の別パーツを合わせての建造には更に3日を要します。またこのサイズの船ですと建造に関わる工員は30名程となります』

 

ルミエスを始めこの世界の人々には全く想像も付かない話だった、彼女達の常識では造船というのは質の良い木材の確保・加工から始まって、大勢の船大工が関わり、そして時間が掛かるものだった。

それも全長180mもの巨大な船(説明を行った者は中型輸送船と言ったが、この世界の人々からすれば十分に巨艦だった)の建造に合計で6日しか掛からず、建造に関わる人員も50人にも満たないなど、はっきり言って何故そんなことが可能なのか全く理解出来ない。

 

 

アルタラス王国はフィルアデス大陸南方にある島国で、人口1,500万人程の王制国家である。

位置的には第三文明圏の外側に位置し、国家のクラスとしては文明圏外国として扱われているが、その国力と文明水準は通常の文明国と遜色無い。

と言うのも、国内に世界有数の魔石鉱山を有しているからで、そこから産出する魔石で世界中、それこそ文明圏外国や文明国のみならず、列強国との取引を行なっているからである。

世界が違えど、資源国が豊かなのには変わらない。

 

そんなアルタラス王国であるが、その位置と国を豊かたらしめている魔石鉱山の存在によって、第三文明圏の列強国パーパルディア皇国に狙われている。

現状は技術との交換に屈辱的と言える要請を飲んでいるが、それもあくまでも僅かながらとは言え技術が手に入るからだ。

しかし、その領土拡張の野心を隠そうともしないパーパルディアが、いつその牙を剥くか分かったものじゃない。

 

だからこそ、アルタラスは常に対パーパルディアを考え力を付けようとしており、他の文明国圏外国が持ち得ない魔導戦列艦の配備や、風神の矢と言った独自の兵器の配備も行なっている。

もっとも、それらは「パーパルディア皇国軍を破る為」と言うよりも、「パーパルディア軍の侵攻に対し、無視できない程度の流血を行わせる能力を有することで、本格的な侵攻を躊躇させる」事を目的としている。

最初から勝利を捨てている様な方針だが、列強国であるパーパルディア皇国と文明国程度の国力を持つだけの文明圏外国であるアルタラス王国とでは、最初から戦争での勝利を諦める程の国力差がある。

アルタラス王国にとっての勝利とはパーパルディア軍を破る事ではなく、侵攻を受けない事だ。

 

そんな状況で日本皇国と出会えた事は幸運だった。

 

 

アルタラスにやって来たのは日本皇国と神聖ミリシアル帝国の駆逐艦2隻で、パーパルディア行きの帰りの事であった。

日本が駆逐艦1隻のみを分派したのは単純にパーパルディア相手と違い、戦艦を含む艦隊での来訪は過剰で有ると判断されたのと、道案内と取次を兼ねて外交官を乗せたミリシアルの駆逐艦が1隻、同道してくれたからであった。

もっとも、ミリシアルの駆逐艦がやって来た事や日本皇国の紹介が非常に友好的なものであった事から、別の意味でアルタラスをビビらせる事になったのだが。

 

とは言え、世界最強の国家である神聖ミリシアル帝国が太鼓判を押す日本皇国との出会いは神の思し召しとすら言えるものだったと、友好のための使節として日本を訪れたルミエスは思った。

 

 

 

そんなルミエスは帝国造船の造船所見学の後、ホテルへ向かう使節団と別れ別の場所に案内されていた。

 

その場所とは皇居、そして彼女を招待したのは眼前に佇む白と朱の、一見フェン王国の女性服に似た装束を見にまとった、同じ年頃か少し下位に見える少女、まるで精巧に作られた人形の様に整った容姿を持つ彼女は

 

「ようこそおいで下さいましたルミエス皇太女殿下。わたくしは日本皇国国王が長子、壱夜と申します。本日は突然の招待にも関わらずお越し頂いた事感謝致します」

 

そう、日本皇国の皇女殿下であった。

宮内府経由で外務省からアルタラス王国の使節団に、同じ年頃の王女が居ると知った壱夜は同じ様に国政に関わるルミエスと会ってみたいと、ルミエス側が問題無ければ是非お茶にお誘いしたいと招待し、ルミエスが是非にと答えた事で、この会合が実現したのであった。

 

「アルタラス王国皇太女ルミエスと申します、本日はお招き頂き有難うございます壱夜殿下」

「どうぞおかけ下さい、本日は我が国のお茶をご用意致しました。お口に合うとよろしいのですが」

 

促されルミエスが椅子に腰掛けると、控えていた侍従がお茶の注がれたティーカップを静かに配膳した。

澄んだ緑色のお茶だ。

 

実はルミエスが招待に応じると言う連絡が入ると、大喜びして張り切ってお茶の席を立てようと準備を命じた壱夜であったが、えらく上機嫌な様子の娘にどうしたのか尋ねた皇后に、西洋文化に近い文化で日本文化を知っている外国人なら兎も角、全く知らない相手にいきなりお茶席で正座させるのはどうかと言われ、泣く泣くテーブルでのお茶会に変更していたりする。

お茶席はまたいずれという事で、テーブルでのお茶会には納得したものの、緑茶と和菓子を出す事は譲らなかったのだが、湯呑みも使った事など無いのでは?となり結局ティーカップ で緑茶を出すと言う

なんとも違和感ある形になってしまっている。

 

「ほぅ。っ申し訳ありません、何とも落ち着く感じがしたもので、つい」

「いえ、お口にあった様でなによりです」

 

壱夜は緑茶を気に入った様子のルミエスに嬉しそうに微笑む。

恥ずかしそうにしていたルミエスだったが、ふとある事に気がついた。

 

「壱夜殿下はどうして瞳を閉じておいでなのでしょう?」

 

そう、壱夜の目はずっと閉じられている。

思えば最初から開かれていなかった。

 

「そうですね、先ずはせっかくお越し頂きながら瞳を閉じたままである事を謝罪致します、申し訳ございません」

「いえ…その様な」

 

別に咎める意図などなく、ふと疑問に思って尋ねてしまっただけのルミエスは壱夜の謝罪に慌てるが、続く言葉に

 

「わたくしが瞳を閉じているのは見えなかったり、悪かったりといった訳では無くその逆なのです。今もルミエス殿下のお顔はしっかりと見えておりますよ」

「え?」

 

目が点になった。

 

 

「わたくしの瞳に付いて御説明する前に、“種”としてのわたくしの事をお話し致しましょう。

ルミエス殿下は我が国にお越しになられてから、【鬼人】の者とはお会いになられましたか?」

「はい、我が国の使節団を、ご案内下さった外交官の方が鬼人のお方でした」

 

ルミエスの返答に頷くと続ける

 

「では鬼人の額に角がある事はご存知とは思いますが、その色は覚えておいでですか?」

「......たしか、黒色であったかと」

 

ではわたくしの角をご覧下さいと自身の額を指差す

 

「紅い角」

「ええ、その通りです。わたくしは鬼人の中でも【紅鬼】と呼ばれる存在なのです」

 

お茶を一口、口を湿らせて続ける

 

「我が国と言うより、地球の人類が魔力を持つ訳では無いと言うのはお聞きになられたと思います」

「はい、ですが壱夜殿下は」

「その通りです、わたくし達紅鬼は魔力を保有しています」

 

基本的に地球人は魔力を有している訳では無く、魔力を扱う手段を有しているだけである。

日本の鬼人やイギリスのエルフは普通の人と比べ、魔力への親和性が高く魔力運用能力が高いが、それでも魔力を有している訳では無い。

しかし、何事にも例外と言うのは存在し【紅鬼】と【ハイエルフ】がその例外で、彼等は魔力を有している。

 

「魔力を保有しているのが、2つある紅鬼の特徴の1つです。そして、もう1つが【固有能力】の保有です」

「固有、能力ですか?」

 

いまいちピンとこない様子で首を傾げるルミエス、

 

「はい、より正確に申し上げれば1人につき1つ、()()()()()()()()()()()()()()魔法を使う事が出来るのです。そしてそれらは現在の我が国の魔法技術では()()()()()()のです」

「??」

 

余計に分からなくなってきた。

魔法陣を必要としない魔法は聞いた事が無い。

量産が出来ないと言うのは誰でも使えるように出来ないという事だろうか?

 

「量産が出来ないと言うのは即ち、その魔法の発動にいったいどの様な術式を組み、どの様に魔法陣を描けば良いのかが分からないと言う事なのです。技術的に再現が出来ない、故に【固有能力】と呼ばれています。そして、わたくしの瞳もその1つなのです」

「壱夜殿下の瞳がですか?」

 

壱夜はルミエスの疑問に頷くと、片目だけ開く。

開かれた瞳は紅い輝きを放っていた。

 

「わたくしの能力は【魔眼】と呼ばれるものの一種で、その能力は“ありとあらゆるモノを見透す”と言うモノです」

「ありとあらゆるもの見透す、ですか?」

 

開いていた瞳を再び閉じる

 

「“ありとあらゆるモノ”それには遠方や遮蔽物の向こう、未来や過去、そして人の思考すら含まれます」

「ッ!?未来と過去が見えるのですか!?」

 

思わず声を上げたルミエスに、壱夜は深く頷き答える

 

「はい瞳を開いている状態でなら。ですから、普段はこの様に瞳を閉じています、誰だって頭の中を覗かれるのは気分が良く無いでしょう?わたくしはこの状態でも見ようと思えば景色を見る事は出来ますから」

 

二の句が継げないとはこの事か。

エモール王国が空間の占いと言われる“予言”とも言える占いを行なっていると聞くが、それも豊富な魔力を有する竜人族の中でも優秀な者が数十人集まって行うものの筈だ。

それを1人で行えると言う事か。

それに、思考が見えると言うのなら、彼女相手には何一つ隠し事が出来ない事になる。

 

無論、壱夜の言ったことが全て真実とは限らず、ブラフと言う事もあり得る。

しかし、ここは外交の場と言う訳では無い。

姫が2人、お茶会をすると言うのは王室外交の気はあるが、それにしても外交を考えるならば「未来と過去を見れる」と言う情報だけで良い筈だ、人の思考が見えるなど態々言わずに隠していた方が有利だ。

 

瞳を閉じていれば思考が見えないと言うのも、事実かどうか分からないが、「しかし」とルミエスは考える。

 

「お話し頂きありがとうございます、壱夜殿下」

「いえ、隠し立てする事は誠実では無いと、そう思ったものですから」

 

やはりそうだ。

外交官としてそれなりに場数を踏んでいるルミエスの勘が告げる、眼前の少女は「外交慣れしていない」と。

聞いた話では内政家としては優秀だが、本格的な外交の場には出た事が無いと言う。

あくまでも王室の交流程度のもの位なのだろう。

外交交渉と言った、言葉での戦争を経験した事が無いのだと思う。

今話したのは一重に「後から知られて嫌われたく無い」からだと、どこか不安そうな顔に書かれている。

彼女は只々、ルミエスに対して誠実であろうとしているだけだ。

 

「壱夜殿下、1つお願いがあるのですが」

「なんでしょうか?」

 

何を言われるのか、もしかして嫌われたのか、と不安そうな顔が微笑ましくて、思わず笑みが溢れる。

ルミエスは優しげな笑みを浮かべて告げる

 

 

「私とお友達になって頂けませんか?」

 

 

 

 

アルタラス王国使節団の帰国後、日本皇国とアルタラス王国間の国交の樹立と軍事同盟の締結が発表された。

主な交易品はアルタラス側が魔石を日本側が魔法技術を。

また軍事同盟に基づいて、アルタラスへの航空艦の輸出も決定され、新世界向けに新規設計された航空戦列艦の初期ロットの輸出先も、アルタラス王国に決まった。

それはパーパルディア皇国の脅威を考慮してのものだった。

ただし、裕福なアルタラス王国とは言えど、日本皇国製航空艦を幾ら廉価な航空戦列艦とは言え、一気に数を揃える事は難しい。

そこで、先ず海軍旗艦として航空艦を1隻購入し、徐々に航空戦列艦を増やして行く事になった。

また其れまでの繋ぎとして戦力増強の為、既存の魔導戦列艦を日本の技術で強化する事と決まった。

 

それから、アルタラス王国の王女ルミエスの日本皇国への留学も決まり、日本皇国皇女壱夜の通う大学へと編入する事になった。




お気に入り登録して頂いている皆様、
評価を付けて下さっている皆様に感謝を。

皆様の応援のおかげで、無事1つの章を描き切る事が出来ました。
日本皇国の新世界での戦いはまだまだ始まったばかりです。
というか原作と違い日本はまだまともに“戦争”をしていません、ロデニウス戦役での主役はあくまでもクワ・トイネとロウリアでしたから。

日本皇国はこの先、主体となって戦争をするのか?
直近としてはパーパルディア皇国は?
その先のグラ・バルカス帝国は?

もし少しでも気になりましたら、この先もどうぞお付き合い頂きます様、お願い致します。
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