魔法日本皇国召喚   作:たむろする猫

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ふたつの皇国・1

パーパルディア皇国皇宮パラディス城で御前会議が開かれていた。

会議の内容は「日本皇国について」。

現在最優先とされるのは第3外務局隷下の監察軍による、フェン王国懲罰の折に起こった日本皇国との戦闘に関してだ。

 

日本を文明圏外の極東の蛮族だと決め付けていた者達ですら、「監察軍東洋艦隊の全滅」と言う事実からは目を逸らさないでいた。

何せ東洋艦隊に対して行われた勧告は全て、監察軍司令部にも届いていたのだから。

第3外務局長であるカイオスが直接通信用魔法具での通話中、強力な魔導による割り込みが行われた。

以降、こちら側からの魔信は届かなくなったが、余程強力だったのだろう、あちら側即ち日本皇国からの魔信は東洋艦隊のみならず、司令部にも届いていた。

 

『我が国は貴国の行動を交戦の意思がある宣戦布告であると認め、自衛の為の行動を取る事を宣言する』

 

との魔信が入って以降、日本側が魔信を行わなくなったのか通信用魔法具は沈黙した。

この事からカイオスと監察軍司令部は東洋艦隊が壊滅したか、そうで無くとも遠距離魔信が出来ない状態にあると判断した。

無論、「型落ちの装備を使っている監察軍と言えど、蛮族如きにやられる筈がない」と言う意見と言うか現実逃避もあったが、「ならば現時点で東洋艦隊からの連絡が一切無いのは何故なのか」と問われれば閉口するしかなかった。

事実として日本側の宣言以降、東洋艦隊からは一切の連絡が無く、こちらからの呼びかけにも全く答えない。

そうなるとやはり壊滅か連絡を行えない状態に有ると考えられる。

だが、東洋艦隊が母港としていたデュロの司令部からも艦隊帰還の報告が無い以上最悪を想定し、「一隻残らず沈められた」と考えるべきだろう。

 

「皇帝陛下御入室!!」

 

近衛兵の声に出席者全員が立ち上がり最敬礼を行う。

 

「よい、皆席につけ」

 

皇帝ルディアスの命に全員が席につく。

これで会議の出席者全員が出揃った。

 

会議の出席者は以下の通り

皇帝 ルディアス

皇帝の相談役 ルパーサ

 

第1外務局局長 エルト

第2外務局局長 リアス

第3外務局局長 カイオス

外務局監査室室長 イレーネ

情報局局長 エマスタイン

国家戦略局局長 アレクセイ

臣民統治機構長官 パーラス

 

パーパルディア皇国軍最高司令官 アルデ

パーパルディア皇国海軍最高司令官 バルス

パーパルディア皇国陸軍最高司令官 アルゴス

 

先進兵器開発研究所所長 ウルトヴァーム

 

及び各機関幹部職員複数、

 

参考人 レミール

 

錚々たる面子である。

パーパルディア皇国という国を動かす者達と言って然るべきメンバーだ。

 

「それではこれより御前会議を開始致します。今回の会議で取り上げる主な議題は『フェン沖海戦』に関するモノです」

 

会議の進行役を務めるエルトが口を開く。

エルトの言葉に会議のテーブルでは無く、部屋の隅にいるレミールがピクリと反応するが、それを気にせず続ける。

 

「ヴェンフルト第3外務局長、フェン沖海戦に関する報告をお願いします」

「はい。では皆様、お手元の資料をご覧下さい。去る中央歴1963年9月25日、我が第3外務局隷下の監察軍東洋艦隊は監察軍司令部が発令したフェン王国懲罰の為、中型竜母を含む22隻の艦艇とデュロより飛び立ったワイバーンロード20騎をもって、フェン王国の軍祭を強襲致しました」

 

エルトに促されたカイオスは立ち上がり説明を行う。

 

「この懲罰行動はこれまで文明圏外の蛮国に対して行われてきたものと変わらず、我が国の力を見せつける為のものでありました。故に、愚かしくも我が国の提案を蹴った()()()()()()()()()行われるもので、軍祭に参加する他国へと直接的な被害を与える予定はありませんでした。

しかし、攻撃当日となって本来の指揮系統を逸脱した命令が東洋艦隊へと行われ、あろう事か東洋艦隊指揮官ユリアス・フォン・ポクトアール提督はこの命令を受領、軍祭に参加していた日本皇国艦艇への攻撃を行ったものと思われます。

尚、これを断言できないのは現在に至っても東洋艦隊と連絡が付かず、確認のしようが無い為です。

ですが、直後の日本皇国の動きからも攻撃は行われたものと考えて、間違い無いものと思われます」

 

越権命令の下りで、複数の視線がレミールに刺さる。

 

「その後、監察軍司令部より私が直接通信用魔法具にて、東洋艦隊ポクトアール提督へと魔信を行なっていた際、フェン王国首都で軍祭の開催地であったアマノキからやって来たと思われる日本皇国海軍艦が東洋艦隊と接触、高出力の通信用魔法具による勧告を行いました。この勧告は日本魔信の魔導出力がこちらの物よりも強力であった為、司令部でも傍受する事が出来ました」

 

内容に関してはお手元の資料にと言うと、全員が資料に目を落とす。

そこには

『航行中のパーパルディア皇国監察軍に告ぐ、此方は日本皇国海軍である。先のワイバーン飛行隊による攻撃の意図を問う、直ちに停船し応答せよ』

『繰り返す、此方は日本皇国海軍である、直ちに停船し先の攻撃の意図を説明されたし』

『再度通告する。直ちに停船し先の攻撃の意図を説明されたし。返答がないもしくはこれ以上進撃を続ける場合、先の攻撃は宣戦布告であると見なされ、我が軍はそちらに戦闘の意思ありとして対応を行う』

『これ以上進撃を続けるのであれば、先の攻撃を宣戦布告とみなし交戦の意思ありとして対応する』

『我が国は貴国の行動を交戦の意思がある宣戦布告であると認め、自衛の為の行動を取る事を宣言する』

 

と記されていた。

 

「尚これらの呼びかけに対し、東洋艦隊側からの返信は有りませんでした。そして最後の宣言の後、巨大な爆音を拾って以降東洋艦隊からの連絡は途絶。今現在に至るまで東洋艦隊からの魔信も、艦隊が母港としていたデュロからの帰還の報告もありません」

 

そこまで話すとカイオスは座る。

カイオスが椅子に腰掛けるのと同時に、あちこちから囁き声が聞こえ始める。

報告の内容に関して隣同士で話あっているのだろう。

だがそのざわめきも、再びエルトが口を開くと収束する。

 

「第3外務局長、つまり監察軍東洋艦隊は壊滅したと?」

「デュロに数隻残ってはいますが、『艦隊』と言う括りで見るのであれば、壊滅したものと監察軍司令部では判断しています」

「壊滅、壊滅ですか、蛮族を相手に壊滅とは......皇国の恥ですなぁ」

「アルデ軍総司令、皇国の軍を司る役職に有るとは思えないご発言ですな」

「なんですと?」

 

監察軍を馬鹿にしたような発言をした皇国軍最高司令官アルデ・フォン・ブラキウムとカイオスが険悪な雰囲気になる。

アルデとしては文明圏外国相手に壊滅したなど、古い装備を使っている監察軍と言えどパーパルディア皇国の軍事組織として、あってはならない失態だと言う考えだし。

カイオスとしてはこの期に及んで日本皇国を蛮族扱いしようとする、アルデのその考え自体が理解できなかった。

第一に

 

「よろしいでしょうか?ヴェンフルト局長」

「何でしょうアードナー海軍司令」

 

そんな雰囲気を壊すように、海軍総司令官バルス・メルクル・アードナーが声をかける。

 

「東洋艦隊からは『攻撃を受けている』や『救援を求める』と言った魔信は無かったのですか?」

「ええ、有りませんでした。最も日本皇国がどの通信用魔法具に繋いだままにしていて、そのせいでこちらに届かなかったと言う可能性も、否定はできませんが」

「成る程、ありがとうございます。つまり、日本皇国には30騎のワイバーンロードと22隻の軍艦をモノともしない力があると。そう言う事ですな?」

「とは言い切れません。東洋艦隊の被害状況が解らない事と同じくらい、日本軍側の被害状況に関しても解ってはいないのです。圧勝したのか、それとも刺し違えたのか......」

 

とは言うものの、刺し違えたなどと言うことは無いだろうとカイオスは思っていた。

以前エストシラントに現れた日本皇国海軍艦、乗艦した【アキツシマ】は規格外の化け物であったし、それ以外も【アキツシマ】を作った国が作り出したものだ、大きさも巨大だったしその力も相当のものだろう。

そしてそう考えていたのはカイオスだけでは無い。

質問を行なったバルスもあの日、エストシラントの港で日本艦を見ていたのだ。

 

あんなものが相手では監察軍はおろか海軍であっても怪しい

 

それがバルスの考えだった。

生憎と彼はカイオス等とは違い、例の資料映像は見ていないが、長年海軍で生きてきた者としてそう判断していた。

まず第一に相手に対する攻撃手段が、現在の皇国海軍の戦列艦には存在しない。

今の艦載魔導砲に仰角を付け、空を狙わせるなど夢のまた夢の話だ。

そうなってくると期待するのは竜騎士だが木製帆船ならば兎も角、どうも完全に鉄製に見える日本艦相手に、導力火炎弾がどれほど効くか解ったものじゃないし、そもそも空を行く船だ、「空を飛ぶ敵」に対する対策が無いなどとは考えられない。

 

「ふむ、ヴェンフルト局長。必要ならば東部に展開する艦隊から戦力を抽出し、交戦海域の調査を行わせますが?」

「申し出は有難いのですが、それは悪手と言えますアードナー司令」

「どう言う事でしょう?」

 

バルスとしては既に相手は移動しているであろうが、残骸程度は見つかるだろうし、それを確認すれば東洋艦隊がどうなったか判るだろうと判断しての申し出だったのだが、

 

「このタイミングでの皇国海軍の派遣は、更なる戦力の投入と見られら可能性が極めて高いと考えます。なにせ日本は一連の事態を我が国による宣戦布告と捉えています。宣言では『自衛のため』としているので今すぐに軍事行動に移す事は無い、そう考えられますが、ここで東洋艦隊が“先遣隊”であったかの様な行動をとる事は、彼等に宣戦布告が行われたと確信させる事に繋がりかねません」

「むぅ」

 

そう言われれば納得できる。

公的な宣戦布告の交付が有った訳でも無く、東洋艦隊からそう取れる発言も無かった様だし、宣言を見るに東洋艦隊への攻撃は現実的な脅威の排除と捉えるべきだろう。

となると、今日本皇国はコレが本当にパーパルディア皇国からの宣戦布告だったのか、それとも何か別の意図があったのかと考え、こちらの出方を伺っていると考えらる。

そこに監察軍よりも上位の装備を配備している皇国海軍が、徒党を組んで迎えば彼等は、「やはり宣戦布告であった」と確信するだろう。

 

「仮にその日本が宣戦布告と捉えたとして、我が皇国軍が負けるとでも仰りたいのですかな?ヴェンフルト局長」

 

納得してうんうん頷いているバルスを横目で睨みつつ、アルデがカイオスに噛み付いた。

何言ってんだコイツ的な視線が3つの外務局関係者や、海軍関係者から向けられるが彼はそれには気付かない。

 

「監察軍を預かる身では有りますが、軍事に精通している訳では無いので、専門的な判断が出来るわけでは有りませんが、少なくとも日本皇国の海軍力に関して言えば、神聖ミリシアル帝国の外務大臣が自国と同等、あるいは上回ると判断した事は存じ上げています」

「なっ」

 

あちこちから息を飲む音が聞こえる。

世界最強の国家の要人が、例え軍事の専門家では無かったとしても、他国に弱みを見せてはいけない人物である外務大臣が、自国よりも上かもしれないなどと認めたというのは、衝撃的だった。

因みに、ペクラスがカイオスにそう語った訳では無く、思わずこぼしたのを聞き逃さなかっただけである。

カイオスとしては語って聞かされるより、思わず漏れた本音である方が信憑性が高いと思っているので、この事はおそらく間違いの無い事実であろうと認識している。

 

「バカな、文明圏外の蛮族がそんな力を持つはずがー「彼等は転移国家なのだ」レミール様?」

 

否定しようとしたアルデを部屋の隅から来た声が遮る、レミールだ。

 

「彼等は異世界から転移して来た国家だ、我が国から見て東、今まで何も無いに等しかった岩礁海域に国土ごと」

「その様な事がありましょうか?転移国家などと、そんな馬鹿げた話が」

「では彼等の力をどう説明する?我が国が誇るフィシャヌス級戦列艦や超F級戦列艦を軽々と上回る巨艦を平然と空に浮かべ、搭載された魔導砲は我が国の物より巨大だ。それに彼等は“天の浮舟”すら持っていた。まさか、資料に目を通していないとは言うまいな?アルデ」

「そっそれは......」

 

実は読んでいなかった。

日本皇国がエストシラントへと訪れたあの日、アルデは皇帝ルディアスの聖都パールネウス視察に同行しており、エストシラントに居なかった。

その為後から日本皇国に関する資料を渡されたのだが冒頭、日本皇国がフィルアデス大陸の東方に位置する国家だと記述された所だけを読んで、「態々東の果ての蛮族の新興国家の資料など読まなくてもいい」と判断したからだ。

 

「レミールよ」

「はい陛下」

 

アルデを詰問するレミールに、ここまで沈黙を保っていた皇帝ルディアスが声をかける。

 

「お前が日本皇国なる国の力を正しく把握していると言うので有れば、何故越権行為を行い攻撃を仕掛ける様な真似をした?ポクトアール供が本当に壊滅していた場合、お前の命令の所為で死んだとも取られかねんぞ?」

「はっ、それは重々承知しています。私はあの日、日本皇国がこのエストシラントを訪れた際、日本皇国と神聖ミリシアル帝国による会談の場に居合わせました」

 

レミールは長机の端、誰も座っていなかったルディアスの正面へと移動すると、彼の目をしっかり見つめ話し始める。

 

「最初こそ、皇国の地で会談を行いながらも、まるで我々がいないかの様に話に没頭する2国に対し、怒りすら覚えました。

それは日本の招きで彼等の軍艦に乗船するまで続いていました。

ですが、乗船した船、戦艦【アキツシマ】と呼ばれたあの巨艦に一歩足を踏み入れた時、その怒りが小さくなっていくのを感じました」

 

一旦言葉を切り、深く深呼吸をする。

 

「その時、私は心のどこかで......彼等を恐れ始めたのだと思います」

 

 

 

 

 

 

 

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