魔法日本皇国召喚   作:たむろする猫

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北の大地へ・2

「よし少尉、まずはメイン炉から起動させろ」

「了解。一号魔力炉起動させます」

 

日本皇国陸軍機巧ゴーレムパイロット、二橋少尉は開かれたコックピットハッチから覗き込む機付長の指示に従い、乗り込んだ機体の一号魔力炉を起動させる。

 

➖キィィィン➖

 

僅かな振動と甲高い音。

計器の魔力炉の稼働状態を知らせるモニタが正常な緑に点灯する。

 

「一号魔力炉起動確認」

「起動確認。魔力炉の安定稼働問題無し」

 

モニタに表示される魔力炉の稼働率は50%--アイドリング状態だ。

起動した魔力炉は今、少量の魔力を精製し機体全体に循環させているところだ。

 

「続いてサブ回せ」

「二号三号魔力炉起動」

 

腰部にマウントされた二基の推進器用の小型魔力炉を起動させる。

 

➖キィィィン➖

 

メインと同じ様に甲高い音と共に魔力炉が起動する。

 

「二号三号起動」

「起動確認、バーナー吹かせ」

「了解、バーナー点火」

 

➖ゴォォォ➖

 

二基の推進器が噴射口から炎を吐き出す。

元々丙型機巧ゴーレムで使用されていた水中推進用の推進器はウォータージェットであったが、二橋少尉の乗るこの機体ではジェット推進に変更されている。

 

《推進器正常稼働確認》

 

機付長のインカムに他の整備員からの報告が入る。

 

「よし、推進器正常。続いて[アメノトリフネ]抜錨」

「[アメノトリフネ]抜錨します」

 

[アメノトリフネ]--日本皇国が保有する空を飛ぶ為の術式。

これまでこの術式が使用されて来たのは航空艦が中心で、機巧ゴーレムでは乙型用の簡易飛行ユニットは存在したが、機体に組み込まれるのはこの機体が初めてだ。

 

「[アメノトリフネ]抜錨」

《[アメノトリフネ]起動確認、光翼形状制御正常作動確認》

「光翼形状制御確認了解」

 

従来であれば起動と共に光翼が広がる[アメノトリフネ]であったが、日本皇国はこの頃漸く光量は抑えられないものの、ある程度の「翼の形」の制御に成功していた。

この機体では本来横方向に広がる光翼を後ろへと流し、背部のコーン状のパーツから光が溢れ出る様に見せている。

 

「よし少尉、ハッチ閉じろ」

「了解」

 

機付長が身を引くのに合わせてコックピットハッチを閉じる。

コックピット内は計器のモニタが僅かに光っている程度で薄暗い。

 

《GS-X01起動せよ》

「GS-X01起動します」

 

通信機越しの指示に従い、魔力炉の出力を上昇させる。

ゆっくりと循環していた魔力が、速度を上げて機体中を駆け巡る。

 

《GS-X01起動確認。最終確認を行う》

 

 

 

中央暦1639年11月

 

日本皇国が主宰するグラメウス大陸開発、その第一段階である大陸南部の制圧は順調に進んでいた。

現在グラメウス大陸からトーパ島へと続く地峡の入り口を塞ぐ形で建築された要塞【ポラリス】*1を起点に、地峡の先の大陸南端部の完全制圧が行われている。

 

懸念されていた魔物の存在であるが、今の所大した脅威にはなっていない。

ゴブリンは日本皇国陸軍と、“数”を求めて動員されたロウリア兵の歩兵装備で十分対処できたし、オークもランチャー等を使えば問題は無かった。

神聖ミリシアル帝国の部隊やパーパルディア皇国の部隊でも、ゴブリンであれば然程苦戦すること無く倒している。

オークに関してはパーパルディアは少々損害を負った様だが、ミリシアルの方は多少苦戦したものの今のところ犠牲は出ていない。

自分達だけがオーク相手に損害を出した事が恥だと思ったのか、パーパルディアは本国に連絡してワイバーンロードやリンドブルムを投入しようとしていた様だが、そもそもそれらの種の生存に適さない気候である事もあって、上手くは行っていないらしい。

 

さて、肝心の地下資源についてだが、今のところ川で砂金が見つかった程度の報告しか上がっていない。

その砂金もおそらくは北に見える山脈から流れて来たものと考えられており、南端部の次はその山脈の制圧が行われる予定だ。

 

そうなると、未だ姿を見せない地下資源よりも「お互いの装備」の方に目が行く事になる。

 

 

 

要塞【ポラリス】日本皇国区画の会議室、そこでは日本皇国軍グラメウス大陸派遣軍の総司令官の野坂中将以下、派遣軍の幹部達が集まって【新大陸開発協定】へと参加しているロデニウス三国を除く他国、特に“列強”である神聖ミリシアル帝国とパーパルディア皇国の装備に関する調査報告がなされていた。

 

「では、報告を始めてくれたまえ」

「はっ了解しました。では皆様お手元にお配りした資料をご覧になりながらお聴き下さい」

 

野坂中将の開始の言葉に従い、国防省防衛装備局の坂上少佐が立ち上がる。

 

「まず、この報告はあくまでもそれぞれの部隊を観察して得られた情報であり、多分に推測を含む事を念頭に置いて頂きたいと思います」

 

ミリシアルは同盟国で、パーパルディアとも表面上は友好的ではあるが、さすがに兵器に関する情報を開示してくれる程の仲では無い。

今回報告されるのは情報部の人員が両国の部隊の戦闘を観察して得た情報を、坂上少佐達国防省防衛装備局からの出向員が分析したものだ。

 

「では最初にパーパルディア皇国から報告します。パーパルディアが現在グラメウス大陸へと派遣しているのは主に陸軍からなる部隊です。

主力はマスケット銃を装備する歩兵と携行用魔導砲を運用する砲兵となっています」

 

正確にはマスケット銃装備の兵士も魔導砲を運用する兵士も、パーパルディア陸軍の中での区分は単純に歩兵なのだが、編成に関して確認はしていない為、日本は後者を砲兵と認識していた。

 

「パーパルディア陸軍の主力たる地竜リンドヴルムや、彼らが空の王者と豪語するワイバーンロードが投入されていないのは、この2種が生物であり、変温動物で有るが為にこの北の地には合わず、運用に支障が出ると判断されたものと思われます」

 

コレもパーパルディア部隊が正直に話した訳ではなく、トーパ王国にワイバーンが居ない理由を尋ねた時に知った情報からの推察だ。

 

「よって、パーパルディアに関する主な報告はマスケットと魔導砲となります。

まずマスケットからですが、コチラは我々の知るマスケット銃とほぼ同じと考えられます。

前装式で射程は凡そ100〜300メートル程、回収できた銃弾は球形で線条痕は無かった為に銃身にライフリングは施されていないものと考えられます。

使用されている火薬に関しては少なくとも黒色火薬でない事は確かで、点火にも火縄等を使っている様子が見受けられない為、雷管式かあるいは魔法式のものである可能性が高いと考えられます」

「魔法式と言うと、我が国の小銃などに使われている[加速術式]の様なものかな?」

「いえ、発砲の際に発火炎が確認されていますので“何か”を燃焼させているのは間違い無いかと。解析チームでは属性魔石を利用したものでは無いかと考えています。これですと、火縄は勿論雷管を叩くための撃鉄も必要無く、銃手が魔力を流すか引き金を引く事で魔力供給される仕組みとする事が可能で有ると分析しています」

 

詳しくは資料に記載されているが、解析チームはパーパルディアの使用しているマスケットに撃鉄らしきものが存在している事から、「撃鉄が落ちる事によって発火の為の術式が完成するか、あるいは雷管式の様にその衝撃そのものが発火の為のトリガーとなる」と考えている。

 

なお、使用されている火薬については属性魔石火薬では無いかと考えているものの、その方式が爆発を発生させる魔石が組み込まれているのか、魔石そのものが爆発するのかは判っていない。

 

「続いて魔導砲ですが、コチラも大きさこそ大きくなっていますが、前装式な事や火縄が確認できない事から、マスケットと仕組み的には変わらないものと考えられます。

射程は凡そ1km、使用されている弾頭はマスケットと同じ球形で、同じくライフリングは確認できません。

威力に関してはゴブリン程度であれば数匹纏めて吹き飛ばす事が出来、オークに対してもそれなりのダメージを与えられる様です。

もっとも、後者に関しては当てられればの話ではありますが」

 

パーパルディアの魔導砲は砲身が短く照準器なども無い為、狙って当てるなどと言う事はまず不可能だ。

射程1kmと言うのも「飛んでいって当たれば威力を発揮する距離」でしか無く、どうにか狙って当てられる距離まで引き付けて撃つ/密集している標的に叩き込む/数撃ちゃ当たるの精神で大量に並べて飽和攻撃をする、と言うのが基本的な運用方法だ。

 

パーパルディアが主に相手している()()である文明国では魔導砲の運用に至っている国は少ないし、文明圏外国に至ってはその存在すら知らない事も多く、軍勢の鼻先にでも叩き込んでやれば恐れをなして大混乱を起こすのが常で、5・6匹のゴブリンが吹き飛ばされた程度では怯みもせずに突っ込んでくる魔物相手にはその常識が通用せずに、少々の被害を出している。

 

「運用方式についてですが、マスケット兵は所謂戦列歩兵の様な運用方式では無く、3人ひと組をまた3組用意し良く引きつけ組み毎に代わる代わる撃つ、と言う方式を採っておりさらにそのマスケット兵を守る兵が配置されています」

 

これに関しては日本の知らない所だが「今回の戦場においては」と言う枕詞が付く。

戦列歩兵は人間の軍相手なら威力を発揮するが、それは相手が陣形を組んでいるからだ、魔物は群れているとは言え人間の軍よろしくしっかりとした陣形を組んだりはしない。

それこそ【魔王】が復活して魔物を統制でもしない限りは。

 

だからパーパルディア部隊の指揮官は部隊を再編し、3人組を3つ纏めて1つの部隊とし3人づつ魔物の小集団を良く狙って撃つ部隊と、それを守る槍持ちの兵という方式をとっている。

また、中規模集団に対しては並べた魔導砲での砲撃の後、マスケットで攻撃すると言う方式とし、大規模集団に関しては「次弾発射に時間のかかる自軍では対処は難しい」と割り切り、日本部隊やミリシアル部隊に任せると言う方針だ。

 

無論、その状況を面白くは思っていないが、生態的な問題とは言え本国がワイバーンロードやリンドヴルムの投入を許可しない以上、現状を甘んじて受け入れるしか無いと言う判断だ。

 

「ふむ、パーパルディア皇国は仮にも“列強”とされる国家、その程度は当然か?にしてはミリシアルと大部差がある様だが......」

 

同じ様に“列強国”とされていても、神聖ミリシアル帝国とパーパルディア皇国との間には相当な技術格差が有る事は、詳しく報告を聞かずとも良く観察していれば判る事だった。

何せこのグラメウス大陸に部隊を派遣して来た手段からして、パーパルディアが造風による自走を行なってはいても木造帆船なのに対し、ミリシアルは形状からして日本のものに近い形をした金属製の船だった。

 

「では、続けて神聖ミリシアル帝国に関する報告を行います。

ミリシアルは列強第1位の国家とされる事もあり、先程閣下がご指摘された様に同じ列強であるパーパルディアを大きく引き離しています」

 

その分かりやすい例が先程上げた艦船であり、

 

「前装式マスケットを使用するパーパルディアに対し、ミリシアル歩兵が持つのはセミオート式のライフルで、回収できた弾頭もライフル弾で線条痕も確認できました。

装弾数は8発で、おおよそM1ガーランド小銃に相当するものと思われます。炸薬に関してはパーパルディアと同じ様に魔法式と思われます」

 

流石は列強第1位と言ったところか小銃性能においても、パーパルディアを大きく引き離している様だ。

もっとも、彼らの持つ小銃の形状が性能的に同一と思われるM1ガーランド小銃に似た形では無く、自動小銃に近い形状をしているくせにセミオート式小銃だという日本から見れば意味不明な事になっているのだが。

 

 

 

要塞【ポラリス】神聖ミリシアル帝国区画 会議室

 

軽い報告会と言った様相である日本皇国と違い、此方の会議室はお通夜の様な沈んだ様子であった。

 

「まさか、あの情報が全て本当だったとは」

 

神聖ミリシアル帝国グラメウス派遣軍司令のチョーク少将は何とか絞り出したと言った様子でそう呟いた。

彼以下の派遣軍司令部は事前に日本皇国に関する情報を開示され、現在ミリシアル政府が把握している限りの軍事力について説明を受けていたのだが。

 

「誰が信じられると言うのだ、ミスリル級よりも巨大な船が空を飛ぶ上に、垂直に上昇下降するなどと......」

 

正確には日本の航空艦は空を「飛んでいる」のでは無く、魔法で作られた仮想の海を「航行している」のだが、彼らと言うかミリシアルはそこまでは知らない。

 

正直言って少将達は日本に関する情報を完全には信じていなかった。

態々軍務大臣と外務大臣が出向いて来て行われた説明だった為、全てを否定すると言うわけにもいかなかったが、世界最強の国家の軍人であると言う高い誇りを持つ彼らに、極東の文明圏外の名も聞いた事のない様な新興国の軍が自分達と同レベル、あるいは超えるかもしれない装備を保有しているかも知れないなどと言う事は、受け入れ難い事であった。

 

半信半疑で口には出さないが、軍務大臣と外務大臣の気は確かかと思いながらグラメウスの地を踏んだ彼らは一瞬にしてプライドを打ち砕かれた。

 

「日本軍の装備について、わかっている事は?」

「あくまでも情報部の見聞きした範囲で、ではありますが」

 

チョーク少将に問われ、情報部のライドルカが立ち上がる。

 

「先ずは海軍艦艇から。事前の講習会でもあった通り、彼らの軍艦はその悉くが空を航行します。その仕組みに関しては判明しておりませんが、彼らの軍艦が航行している時に発している“光の翼”が関係していると考えられます」

「魔帝対策省が管理している()()とは違うモノなのかね?」

「詳しくはご説明出来ませんが、全く違うものであると言えるでしょう」

 

チョーク少将の疑問に、魔帝対策省から出向して来たワールマンが答える。

チョーク少将の言うアレとは古の魔法帝国の遺物で、今魔帝対策省が必死になって戦力化しようとしている兵器の事だ。

機密事項の塊な為、例え相手が軍の高官であっても詳細を語る事は出来ないが、実のところこの場において1番ショックを受けていたのは間違い無くワールマンであった。

 

発掘兵器は確かに強力だ、世界最強たる帝国が保有するのに相応しい兵器だ。

だが問題が無い訳でもない。

ひとつは空を飛ぶ巨大兵器であり、様々な強力な装備が搭載されているが故の燃費の悪さ。現状の稼働実験だけでも相当な予算が吹き飛んでいる。

ひとつは何よりもその兵器が()()()()であると言う事、つまり自分達で作り出した訳では無い。

発掘された数こそが絶対数であり、数を増やすには現状新しく発掘するしか無い。

時空遅延式魔法と言う対象をそのままの状態で保存する魔法がかけられていた為、ほぼ損傷も劣化も無い状態で発掘されたのも悩みの種であった。

同じく発掘品をレストアして使用している天の浮舟は、綺麗な形で残っているものが少なかった為内部構造を確認する事ができたが、こちらはなまじ綺麗な状態で残っていたが為に、その希少性から()()()()()()()()()()()()分解等を行う事は許され無かった。

 

その為内部構造に関しては不明なままであり、建造に使われたと思われる技術力の高さからも「量産化は夢のまた夢」と言うのが現在であった。

ただ他国が到底対抗できるような兵器では無い為、それでも切り札としては問題ないと考えられていたが。

 

「仕組みは兎も角、あのようなモノが当然のように量産されているというのは、間違い無く脅威であろう」

 

チョーク少将の言う通りだ。

ミリシアルですら、発掘品を解析してなんとか使えるようにするのが精一杯であると言うのに、日本皇国は自ら生み出し量産している。

敵対する事になった場合の脅威は勿論「列強1位の座」を脅かす脅威であると言える。

 

「攻撃性能や防御性能に関しては現状航空艦が直接戦闘を行う場面がない為残念ながら不明ですが、少なくとも回転砲塔を搭載しているのは間違い有りません」

 

魔導砲の時点で列強や一部文明国しか保有していないが、回転砲塔となるとミリシアルとムーしか保有しておらず、それだけでも少なくともパーパルディアやレイフォルよりも性能が上の魔導砲を有すると判断できる。

 

「航空艦に関しても問題ですが、性能が判明しているモノとしては歩兵の小銃の方が問題であると言えます。彼らの小銃は形状こそ我が国のモノに近しい形をしていますが、我が国のモノを圧倒する連射が可能で、装填はクリップでは無く箱型の物を交換して行っている様です」

 

日本側の会議でも挙げられていたが、ミリシアルの運用する小銃はアサルトライフルに近い形をしているくせに、セミオート式という有様だ。

これは例に漏れず元となったのが古の魔法帝国の遺物であり、自動装填の機構を自力で再現出来なかった為、装填機構ごと簡略化してセミオート式として完成したという背景を持つ為である。

 

「射程に関しては?」

「は、およそ500〜600m程かと」

「そちらでも負けているか......」

「それだけで無く、日本軍の歩兵は携行可能な魔導砲を保有しており、それを使用していとも簡単にオークを駆除しています」

 

はぁ

と、誰ともつかずため息を吐く。

 

だか日本に関する報告はまだ終わらない。

 

「続いて日本が【機巧ゴーレム】と称する大型兵器に関してです」

「......アレか」

 

全長10m程の大型ゴーレムで、日本皇国の保有する機甲戦力であると言う触れ込みだが。

 

「我が国の陸軍の秘密兵器と言える2足歩行兵器よりは小柄ではありますが、装備する兵器は日本歩兵のモノを大型化したと思われるもので、その攻撃力は圧倒的です。そして、やはり量産兵器であると言うのが1番の問題でしょう」

「我が国では本土防衛、それも帝城を守るものとして運用しているの様なモノを12機も派遣して来る、と言う時点で彼らにとってアレが通常兵器であると言うのは間違い無いのだろうな」

 

ここでもミリシアルの兵器の多くが、自ら生み出したものではなく古の魔法帝国の技術をリバースエンジニアリングして使用していると言う事がついて回る。

世界基準では高度な技術ではあるが、やはり完全に理解して使いこなしている訳では無いと言うのが痛い。

 

「認め難い事ではありますが、日本皇国の技術は少なくとも軍の装備に関しては、我が国を上回るものと考えるべきかと」

 

「軍の装備」と限定したのはライドルカの精一杯の強がりであった。

 

 

要塞【ポラリス】より北に30km程行った地点に、日本皇国陸軍の偵察部隊が居た。

 

「げぇ、うじゃうじゃいやがる」

「ザッと見ただけでも、5,000を下回らない感じですかね?下手すりゃ万に届くかも」

 

双眼鏡を覗く彼らの視線の先には魔物の大群が居た。

ただの“群れ”であれば問題はそれ程大きくは無いのだが......

 

「アレは“群れ”なんかじゃ無いな」

「ええ、あれは完全な“軍”です。ヤツラ統率されてやがる」

 

そう、南下する大量の魔物は「偶々纏まって南に向かっている」と言う様子ではなく隊列を組み行進していた。

 

「ゲームやら漫画でお馴染みのゴブリンキングやらオークキングでも出たか?」

「ゴブリンにオーク、それから見た事ないヤツにオークよりゴツい赤とか黄色のヤツまで。どっちかと言うと【魔王】じゃないっすかね?」

 

顔を見合わせる。

彼らも事前にここグラメウス大陸に関する話を聞いていた。

あくまでもお伽話だと思っていたいたのだが......

 

「いやいやいや、うっそだろ!?そんな事あるのか?」

「いやでも、現状の状況的には!」

「取り敢えず本部に通報だ!判断はお偉方にやって貰おう」

 

 

 

 

*1
北極星 参加している米海兵が星型の要塞を北の大陸にある事からそう呼んでいたのが広まった


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