魔法日本皇国召喚   作:たむろする猫

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間話・御転婆なお姫様達

➖ガァァンッ!!➖

 

突進の勢いが乗ったランスとそれを弾いた長刀がぶつかり合う音が響く。

そのまま弾かれる様に距離を取る灰色とオレンジで塗装された二騎の機巧ゴーレム。

 

場所は日本皇国陸軍富士演習場

 

〈〈素晴らしいです。今日初めてお乗りになったとは思えない程です、()()()()()〉〉

〈〈そう言う()()()は流石ですねっ〉〉

 

そこで2人のお姫様が機巧ゴーレムに乗ってぶつかっていた。

どうしてこんな事になったのかと言うと、ルミエスの好奇心が原因であった。

元々ここ富士演習場では、アルタラス王国で設立される予定の機巧ゴーレム運用部隊、鉄騎兵隊が訓練を受けていた。

 

その訓練を視察に訪れるルミエスを壱夜が案内する事になったのだが、大地を駆ける機巧ゴーレムの姿を見たルミエスが、操縦に関して興味を示し何をどう思ったのかポツリと一言

 

「操縦してみたいなぁ」

 

と呟いた。

 

それを耳聡く聞きつけ、ルミエスが機巧ゴーレムに興味を持ってくれた事に殊更喜びを見せた壱夜によって、空いている訓練機が用意されそうになったのだが、ルミエスには彼女の運動音痴っぷりを良く知る彼女の護衛騎士であるリルセイドの必死の説得。

壱夜も壱夜で、比較的頻繁に実機を乗り回している壱夜ならともかく、他国の王女に怪我でもされたら大事だと焦った護衛を兼ねる侍従の女性、千草(近衛軍士官の紅鬼)による説得が行われた。

 

「でっ殿下?その、殿下は機巧ゴーレムをご覧になるのは、初めてになるわけですし。それに、そう!ゴーレムの操縦には適性が必要だと!伺いました!!([ホウキ]*1にもまともに乗れなかった貴女があんなものいきなり操縦できる訳ないでしょう!?)」byリルセイド

 

「殿下、機巧ゴーレムの操縦は訓練兵でもいきなり実機を使用はしません。ここは一先ずシミュレータで擬似体験して頂くのは如何でしょう?(子供の頃から[ホウキ]感覚で乗り回していた貴女とは違うんですよっ!?)」by千草

 

 

当然、副音声の方はお姫様2人には聞こえてはいなかったが、まぁ確かに最初から実機を動かすなんて事は余程の事が無ければ無い。

流石の壱夜とて最初はシミュレータから始めた(実は勝手に動かそうとして怒られた)

ルミエスだって一応、自分の運動能力の事はキチンと把握している。

むしろどうして突然「乗ってみたい」などと言い出したのか、自分で自分の言葉に驚いていたりもする。

 

そんなこんなで取り敢えずシミュレータでとなり、用意されたシミュレータで壱夜の操縦で一先ず動きを体験した後、実際にルミエスが動かしてみる事になったのだが、結果として大半の人の予想を裏切る事となる。

 

実機で2人が模擬戦をしている事からも、察しが付いているとは思うが、そうルミエスは機巧ゴーレムの操縦に関して、高い適性を叩き出したのだ。

これにはアルタラス側は全員驚いた。

それこそ当事者であるルミエス自身も。

 

アルタラス側の反応で、何となくルミエスは運動が苦手なんだろうと辺りを付けていた日本側もこの結果には驚いた。

約1名とてもいい笑顔の壱夜を除いて。

 

その後、シミュレータでの模擬戦(相手は勿論壱夜)を経て「じゃあそろそろ実機で」と自然な流れの様に実機搭乗へと移行しようとしたお姫様2人。

流石にその日は時間も無かったのでまた後日となった。

できればそのまま忘れて欲しいと言うのが周りの大人達の本音だったのだが、残念な事にしっかり覚えていたお姫様達によって、今日の実機搭乗が予定にねじ込まれたのであった。

 

 

「驚きました。いえ、その、貴女方の反応からルミエス殿下は運動がお得意では無いものと思っておりましたから」

「あ、いえ。間違いなくその通り、の筈なのですが......」

 

管制室から模擬戦を見守っていた千草とリルセイド。

千草の遠慮がちな言葉にリルセイドが答えるが、その声音には隠しきれない困惑があった。

 

〈〈では壱夜様!これはいかがですか!!〉〉

 

ルミエスはそう言うと、搭乗する機巧ゴーレムに流れる魔力を変質させる。

 

「ルミエス様?一体何を?」

「ッまさか!?」

 

ルミエス機が手にしたランスに、変質した魔力が渦巻く様に集まる様にリルセイドが首を傾げ、千草が驚愕の声を上げる。

 

➖轟!!➖

 

ルミエス機のランスから勢い良く炎が噴き上がる。

 

「あれは、ファイアーランス?」

「ゴーレムの[魔力回路]を利用した[攻勢術式]の発動。まさかこれ程とは」

 

機巧ゴーレムは[魔法]による産物ではあるが、その武装はザ・魔法と言った様なものでは無く、機巧ゴーレムサイズに大型化された重火器や近接戦装備だ。

機巧ゴーレムが開発された当時、[魔法]によって直接攻撃する今日で言うところの[攻勢術式]はまだ開発途上であった。

その為最初期の機巧ゴーレムは機関砲を腕に取り付けて武装としていた。

[攻勢術式]の開発後、武装として[魔法]を採用しようと言う動きはあったものの、その頃に成ると[対魔装甲]などと言った「魔法に対抗する為の技術」も進歩しており、大した威力を持てなかった初期の[攻勢術式]ではそう言ったものに減衰させられ、十分な威力が得られ無い可能性もある*2とされ、結果として機巧ゴーレムの武装としてはサイズアップした歩兵装備の様なものに落ち着く事となった。

 

のだが、それは機巧ゴーレムに乗った状態では[攻勢術式]が使用出来ないという訳では無かったりする。

 

機巧ゴーレム胸部に搭載された[魔力炉]によって精製された[魔力]は、全身に張り巡らされた[魔力回路]を伝って機体全体に行き渡り、機体の動作と構造強化を行う。

その[魔力回路]を利用して、パイロットが使用できる[攻勢術式]を機巧ゴーレムで使う事が出来るのだ。

 

当然、簡単な事では無い。

 

と言うのも[魔力炉]で精製される[魔力]と、個人で運用できる[魔力]は別物とまでは言わないが“質”が違うのである。

それは[魔力]を“運用”する日本人でも、[魔力]を“保有”しているこの世界の人類でも同じ、と言うよりこの世界の人々の方が[魔力]の個人差は大きい。

そして、[魔力炉]で精製され[魔力回路]を流れる[魔力]の量は人が使えるものより遥かに多く、[魔法]を発現させる前の[魔力]には大きい物と小さい物をぶつかり合わせれば、大きい方に飲み込まれるという性質がある。

 

つまり川の激流の様に流れる、質が全く違う[魔力]の中に、自分の[魔力]を流し込み、かつその激流に飲み込まれる事なく[魔力回路]を利用して、[攻勢術式]を発動するのに必要な「術式回路](魔法陣)を形成し、その[術式回路]に機体の[魔力]を流して[魔法]を発動する必要があると言う訳だ。

 

要するに何が言いたいのかと言うと、これは普通ベテランの中でも才能がある者が使う様な高度な技術で、初めて機体に乗ったルミエスが教えられてもいないのに使用できる様な技術では無い、と言う事だ。

実際リルセイドと千草以外にも見学していた日本皇国陸軍富士教導隊の隊員は驚愕しているし、アルタラス王国鉄騎兵隊の隊員に至っては唖然としている。

 

 

〈〈ふふ、ふふふ、本当に、ええ、本当に素晴らしいですわルミエス様っ!!〉〉

 

そんな中、唯一()()()()()()()()()()が上がる。

勿論の事、対峙する壱夜だ。

 

〈〈その様な事をなさるのであれば、わたくしも応えない訳にはいかぬではありませんかっ!!〉〉

 

その声と共に、壱夜機の魔力も変化する。

ルミエスのそれより淀み無く、壱夜機が手にもつ長刀に[魔力]が集まり、そして

 

「黄金の剣?」

「殿下!?いけませんっ!」

 

黄金に輝く剣

日本皇国軍が世界に誇る理不尽魔法[クサナギ]だ。

無論、機巧ゴーレムそれも訓練機に搭載されている[魔力炉]からの[魔力]を利用して発動している為に、膨大な[魔力]を精製する艦艇用[魔力炉]を使用した艦載のものと比べれば、威力は遥かに弱いのだが、機巧ゴーレムを防御ごと斬り裂く程度ならばわけない。

 

壱夜の技量で、相手がタダの素人であれば武装を狙って斬り裂く事は難しい事ではない為、そこまで心配する必要は無いのだが。

素人とは思えない程の技術を持っているとなると逆に危ない。

しかも、相手は日本軍の新兵では無く他国のお姫様で、王位継承権1位の王太女というおまけ付きだ。

何かあっては国際問題になる。

 

 

〈〈参ります!!〉〉

〈〈きませい!!〉〉

 

炎の槍と化したランスを構えたルミエス機が突撃の態勢を取り、壱夜機は黄金の剣を上段に構えて待ち構える。

 

グッとルミエス機の四脚に力がこもり、いざ飛び出さんとしたその時。

 

〈〈そこまでっ!!!〉〉

 

〈〈ッ!!〉〉

〈〈キャッ!〉〉

 

咄嗟にアナウンスマイクに飛び付いた千草によって静止された。

 

〈〈両殿下、もう十分に動かれた筈です。これ以上は以降の予定に問題が生じかねません、ここまででおやめになっては如何でしょうか?〉〉

 

思った以上に、なんならシミュレータよりも生き生きと動いたルミエスにテンションの上がった壱夜によって、いつの間にか模擬戦となってしまっていたが、最初はただ「実機で動いてみる」と言うだけだった。

 

〈〈いつの間にか熱くなり過ぎてしまっていましたね〉〉

 

あははと苦笑混じりに言うルミエス。

 

〈〈はい。お恥ずかしい限りです〉〉

 

壱夜も同意するが、その声音はどこかつまらなそうであった。

 

 

 

 

 

あの後、壱夜は「機会があれば再戦を」とルミエスにねだったが、アルタラス王国を取り巻く情勢がそれを許さなかった。

パーパルディア皇国によるアルタラス王国への理不尽な要求により、アルタラス・パーパルディア間に戦雲が立ち込めた事が原因だ。

アルタラス王ターラ14世の命令によって、戦時体制へと移行したアルタラス王国軍は、日本皇国の教導の下錬成中の航空艦に加え、機巧ゴーレムを運用する部隊、鉄騎兵隊も本国へと召集した。

 

その際、ターラ王は娘ルミエスに日本皇国に残る様にと伝えたのだが、ルミエスは1人安全な場所にいる事をよしとせず、鉄騎兵隊と共に祖国防衛の為帰国する事を選んだ。

 

 

そして今、ルミエスは壱夜から贈られた機巧ゴーレムに搭乗し*3、鉄騎兵隊を率いてパーパルディア軍を待ち構えていた。

 

 

 

 

 

*1
空飛ぶ箒 日本皇国における自転車みたいなもの

*2
因みにこの頃既に[魔力砲]は完成していたが、消費魔力がバカ高く、機巧ゴーレムに搭載された[魔力炉]では到底賄えなかった

*3
娘がまさかそんな物に乗れると思わなかったターラ王は、その姿に卒倒した

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