魔法日本皇国召喚   作:たむろする猫

51 / 52
マ・ハーヨコ防衛戦

〈〈全艦に告ぐ、我がマ・ハーヨコ防衛艦隊はこれより、敵艦隊に対して突撃を敢行する。

我等の役割は混乱している敵艦隊を引っ掻き回し、更に混乱を大きくすることだ。

我等が敵の混乱をより大きくすれば、それだけ南下中の航空艦隊が仕事をし易くなる

如何に日本海軍の援護が有ろうとも、犠牲無くして済む事は無いであろう。

我々の、はたしてどれ程が生きて戻れるかも分からん。

であればこそ、私は戦友諸君に頼まねばならない。その命、どうかここで使って欲しい。〉〉

 

「「「アルタラス王国万歳!!!」」」

 

〈〈全艦突撃せよ!!〉〉

 

【シディ】を先頭にマ・ハーヨコ防衛艦隊は混乱の最中にある、パーパルディア艦隊へと突撃する。

 

「前方よりアルタラス王国海軍ッ!!」

「出て来たか!!おいッ攻撃用意をしろッ!!右回頭ッ砲戦用意!!」

 

彼等の姿を認めたパーパルディア艦隊の先頭の方にいた戦列艦達が、バラバラに動き始める。

しかしそれは、統一された意思の下での行動では無く、混乱の最中「最も早く敵を沈めればそれを持って自身が全体の指揮官となれる」と考えた各艦長の独断によるものだった。

 

「敵艦隊前衛の戦列艦が回頭ッ!!こちらに艦腹を向ける様子ッ!!砲撃準備と思われる!!」

「よしッ!敵の度肝を抜いてやれッ!!奴らは俺たちの攻撃が届きやしないと思ってる筈だ!!」

 

彼我の距離は間も無くパーパルディア側の艦砲の射程に入ると言った距離。

従来ならば、アルタラスで豊富に採れる魔石を利用した兵器である「風神の矢」や、魔石で得た富で揃えた魔導砲のどちらもまだ射程には届いていない距離だ。

しかし。

 

「風神の神弓に風神の矢を装填!攻撃用意!!」

 

元々風神の矢という兵器は先端の鏃に爆裂魔法を封入した魔石を用い、中間部分に設置された螺旋形状の帆に風神の涙からの風を当て、射程距離を伸ばすというものだった。

発射方式は通常のバリスタという事もあり、射程が伸びているといっても精々が射程2km程度しか無かった。

日本の技術を用いた魔導戦列艦の改装計画が出来た時、船体と魔導砲の改装に加えて、風神の矢を誘導できないミサイルみたいなものだと捉えた日本側はその改良案も提案した。

 

その改良案にアルタラス海軍が飛びつき、そうして生まれたのが「風神の神弓」だ。

従来のバリスタから大きく形を変えること無く、新型魔導砲にも採用された日本の実体砲にも使われている加速の術式を使用し、有効射程を倍以上の5kmまで伸ばし、ついでに速度も上がっている。

さらに鏃を魔石そのままでなく鉄で覆う事によって、上がった速力と相まってかなりの貫徹力を持つに至り、日本のメーカーによればパーパルディア艦船の木造の船体の上に貼った装甲程度であれば貫通して、内部で爆裂魔法が炸裂できるであろうとの事だ。

 

「風神の矢攻撃用意よし!!」

「撃てぇぇッ!!」

 

ーバシュゥゥッ!!ー

 

引き絞られた弓に弾かれ、加速術式によって加速を重ねた風神の矢はとてつもない速さで敵艦を屠らんと飛び出した。

 

 

「アルタラス艦隊より飛翔体!!」

「なにっ!?魔導砲か?」

「いえっ敵艦は此方に艦首を向けたままです!おそらく艦首の大型バリスタによる攻撃かと!!」

「ふんっなんだ威嚇のつもりか?」

 

アルタラスの魔導戦列艦も、性能が低かろうと形状としてはパーパルディアの魔導戦列艦と変わらず、魔導砲を撃とうと思うと相手側に舷側を向ける必要がある事に違いは無い。

第一魔導砲を仮に艦首に配置していたとしても、アルタラス如きの魔導砲がまだ此方の砲撃すら有効打にならない距離で撃ってきた所で、少々の威嚇にしかなりやしない。

「魔導砲ですらそれなのだから大型のバリスタなんぞ」と、見張りの報告を聞いた誰もが思った。

 

ーズダァンッッ!!ー

 

「なッなぁッ!?」

「砲艦【ラッツィ】被弾!!」

 

その時砲撃のために舷側を向けていた砲艦の一隻が運悪く被弾、そして

 

ードドォォォンッー

 

「ああ、そんなッ」

 

運の悪い事に砲撃の為アルタラス艦隊に舷側を向けていた為、砲列甲板に風神の矢が飛び込みそこで鏃の爆裂魔法が炸裂。

その爆発が魔導砲の火薬に引火、大爆発をおこし吹き飛ばされたマストが空高く舞い上がった姿に、彼等の楽観的な考えは粉微塵に吹き飛ばされた。

 

 

「敵砲艦一隻撃破!!」

 

「おお」と感嘆の声が上がる。

今までであれば「一矢報いれれば」という程度であったのが、一隻とは言え撃破せしめたのだ、艦隊の士気は大いに上がった。

もっとも、中には撃破出来たのが一隻だけだという所に、苦い顔をしている者もいた。

 

「命中は1発だけか」

「威力は兎も角、命中率に関しては据え置きですから」

 

風神の矢は改良されたとは言え、それはあくまでも発射能力の強化のみであり、自動装填装置も無いので一回一回人力で装填し、レーダーなんて搭載していないので射手が目測(望遠鏡有り)で狙って撃つ。

その為残念ながら連射なんて出来ないし、命中率もそれ程よろしくない。

むしろいきなり一隻食えただけ十分過ぎる戦果だ。

 

「兎も角、あるだけ撃ち続けよ。まぁ当たらんでもいい、此方が奴等の懐に入り込むまで砲撃をさせない様牽制できればそれで良い」

「はっ」

 

 

実の所、風神の矢は魔石を使い捨てるという事もあって、いかに魔石が豊富に取れるアルタラスであっても数をそこまで大量に用意できる訳では無い。

その為まともに当てられないというのは問題ではあるのだが、初撃にて一隻を撃沈せしめた事実はパーパルディア側に相当な動揺を与えており、それを成した攻撃が飛んでくる事で砲撃準備に乱れが生じているのは間違い無かった。

 

ドドーン!ドドーン!と海面に水柱が立ち、運悪く被弾した砲艦や戦列艦が傾く。

 

「なっ何なんだ!?コレは!!?」

「何故だッ!?何故蛮族如きの攻撃がこうもッ!?」

 

パーパルディア反乱艦隊の誰にとっても理解し得ない状況が続く。

艦隊首脳陣は軒並み居なくなり、各艦の最高位者である艦長達ですら何が起こっているのかが、全くわからない。

何故、蛮族の攻撃、それもバリスタなんぞの攻撃でこうも容易く皇国の魔導戦列艦が沈むのか。

上が混乱していれば当然下の水兵達も混乱するし、何より輸送艦に詰め込まれた陸軍兵士の混乱は大きかった。

彼等は海戦の事なんてこれっぽっちも知らない、あくまでもお客さんにしか過ぎない存在だ。

「もう間も無く蛮族の領海に入り、奴等の海軍を蹴散らすだろう」という情報程度は指揮官達には伝わっていたが、実際に起こっている事はどうか。

 

蛮族を蹴散らすどころか此方が蹴散らされているでは無いか

 

竜母達はいきなり爆発するし。

空から光が降り注いだかと思えば戦列艦が爆発する。

そして極め付けに、蛮族の艦隊が突っ込んできて攻撃してきたと思えば、戦列艦や砲艦が爆発していく。

頭がおかしくなったのかと思いたくなる。

 

「一体何が起こっているんだ?俺達は蛮族の国に攻め込んで、それを蹂躙しに来た筈だろう?」

 

陸軍指揮官の誰かがポツリとこぼしたその言葉は、反乱派の将兵全員の疑問と困惑を表したものだった。

 

 

 

「風神の矢!最後の斉射終えました!!」

「よろしい!!では全艦に通達!!敵艦隊の中に突っ込むぞ!!速力を上げろぉ!!」

「ヨーソロー!!」

 

【シディ】を先頭に、更に速力を増したマ・ハーヨコ防衛艦隊がパーパルディア反乱艦隊の陣形の中に入り込む。

艦隊の前衛で砲撃準備をしていた艦は幾つもの落伍艦を出し、そしてその事態に対する大きな動揺のため動けない。

マ・ハーヨコ防衛艦隊は一切の反撃を受ける事なく敵の懐に入り込む事に成功した。

 

「全艦!魔導砲砲撃始めッ!!指示は待たんで良いッ!!各艦毎に装填が済み次第撃って撃って撃ちまくれぇ!!」

「右も左も、前も後ろも敵!敵!敵と!!的が選り取り見取りで大変よろしいですなっ!」

「ああ!我らの訓練は十分に終わっているとは言えんッ!外す心配が少なくて結構!結構!!」

 

➖ドドン!➖

➖ドドン!➖

 

マ・ハーヨコ防衛艦隊は兎も角目についた敵艦相手に、撃って撃って撃ちまくる。

当然各艦毎の狙いの振り分けなんてされていないので、狙われる敵艦はバラバラだ。

運良く一隻からも狙われない艦もあれば、数隻から馬鹿みたいに集中放火を浴びる艦もある。

そうなった艦は悲惨で、従来通りの球形砲弾では無く椎の実型の砲弾は、パーパルディアの魔導戦列艦の薄い鉄板装甲を突き破り内部で炸裂、1発でも最悪なのに複数から狙われたせいで複数発が炸裂し、その爆発が自身の抱える爆薬に引火、跡形も無く消し飛んでしまった。

 

 

「何をしているッ!!蛮族にこれ以上好きにやらせるなァッ!!反撃だッ!!撃ち返せッ!!」

「ッお、お待ちください!!この状況で撃てば味方に!!」

 

反撃せよという艦長に砲術長が待ったをかけるが、鬼の形相をした艦長に胸ぐらを掴まれる。

 

「ではお前は!このまま蛮族に好き勝手させると!?そういうのか!?」

「いえッ!!その様なつもりは有りませんッ!!ですがッ!統制もせずに各艦毎に自由に撃てば!最悪味方に更なる被害を齎す可能性があります!!」

「そんな事は分かっているッ!!だがヤツラの数を見よッ!!大した数では無いッ!!ならば早々にカタを付ければ味方の被害は少なく出来るッ!!違うかッ!?」

 

そんな光景が艦隊のあちこちで見られた。

中には艦長と砲術長の立場が逆な艦もある。

敵艦隊の砲撃に晒される味方の犠牲を致し方無いものとし、周囲の艦で完全に包囲して逃げ場を無くしてから一網打尽にするか。

それとも、自身の攻撃が味方を沈める可能性を呑み込んだ上で、早々に決着を付けるか。

 

どちらにせよ被害が出るし、こうして言い合っている間にも、敵の攻撃による被害は増える一方だ。

 

➖ドドン!!➖

 

「あっ!!」

「くぅッ!!」

 

その時、一隻の砲艦が砲撃を行った。

覚悟を決めた艦長による指示かそれとも、痺れを切らした砲術長の指示か、あるいはその逆かも知れないし、もしかすると我慢が効かなくなった砲手による独断であったのかも知れない。

 

➖ドカァァン!!➖

 

そうして放たれた砲弾はマ・ハーヨコ防衛艦隊の戦列艦の一隻に吸い込まれるように当たった。

 

「戦列艦【ペトート】被弾ッ!!落伍しますッ!!」

「【ペトート】より旗信号!!『ワレ、戦列ヲ離レル。戦友諸君の武運ヲイノル』!!」

「良く戦ったッ!!」

 

1発放たれてしまえば、あとはもう連鎖的にパーパルディア反乱艦隊による砲撃が始まった。

 

➖ドドン!➖

➖ドドン!!➖

➖ドドン!!!➖

 

一隻数十もの魔導砲からなる砲撃だ。

百発百中とは行かなくとも、ほぼ全方位を囲まれている状態での砲撃で、マ・ハーヨコ防衛艦隊には直ぐに被弾する艦が出る。

 

「【トレッタ】【ベルーン】被弾!!足行き止まるッ!!」

「あァッ【カラフェル】がぁっ轟沈しましたぁッ!!」

「足を止めるなッ!!進み続けろッ!!」

 

次々と落伍艦が出るがマ・ハーヨコ防衛艦隊は止まらない。

空から正確に降り注ぐ日本艦隊からの砲撃によって開かれる開口部に飛び込み、こじ開けて進み続ける。

 

 

「マ・ハーヨコ防衛艦隊、損耗率50%ッ!!」

「司令、流石に止めるべきでは?」

 

レーダー上に映るマ・ハーヨコ防衛艦隊が数を減らして行く様子に、【神通】艦長の玉川大佐が18戦隊司令の榊准将に進言する。

 

「うむ。【シディ】から救援の要請は来ていないんだな?」

「は、今のところ何も」

「ではこのまま、彼等の行き道を開く事を続けよう」

「しかし......」

 

玉川艦長の懸念も最もだ。

敵の数は多いが[魔力]が精製できる環境であれば弾切れを気にする必要は無く、敵艦はどれもこれも1発当たるかもしくは掠らせる程度でも、撃沈ないし戦闘力を喪失させる事ができる。

 

数が多く殲滅に時間がかかり、その内にやられてしまうというのなら、いっそ間に駆逐艦を割り込ませればいい。

収集したデータから予想されるパーパルディアの魔導砲の威力ならば、[ヤタノカガミ]を展開する必要もないだろう。

 

つまり、救おうと思えばいつでもマ・ハーヨコ防衛艦隊を救う事ができるのだ。

「できるのに見捨てた」そう言われて批判を受けるのは勘弁だ、と言うのが玉川艦長の正直な意見でだった。

 

「艦長の言いたいこともわかるさ。が、我々はあくまでも『邦人保護』という名目の下、ここにいて戦闘を行なっている」

「矢面に立つのはアルタラス海軍でなければならないと」

「そもそもからして、先制で竜母やら大型戦列艦を殺ったのも、グレーと言えばグレーだろう。禁止されてはいなかったから何か問題になる事は無いだろうが」

 

18戦隊の行動は邦人に何らかの危害を加える可能性がある』パーパルディア反乱艦隊から『邦人を保護する』事を言い訳にした、防衛行動としての行動だ。

その行動自体マ・ハーヨコ防衛艦隊にとって、敵があまりにも強大であるからこそ歓迎されているが、裏を返せば「マ・ハーヨコ防衛艦隊は戦力として当てにならない」と言っている様なものだ。

 

そもそも日本皇国とパーパルディア反乱派は、現時点において別に戦争状態にある訳では無い。

しかも日或軍事同盟での「参戦」に関する条項に関して、今尚「アルタラスから宣戦布告したのか、パーパルディアから宣戦布告したのか」で外務省は揉めているらしい。

まぁ、おおかた「パーパルディア反乱派を()()()()()()()()()事で危険な武装組織としアルタラス王国防衛の為に同盟に基づく戦力派遣を行う」と言う形に落ち着きつつある様ではあるが。

 

「政治の話ですか......」

 

政治で死ぬ兵士が増えるなど、と玉川艦長はため息を吐く。

 

「そう、政治の話だ。最も?我々の出る幕は無くなった様だがな」

 

 

➖バシュゥゥ!!➖

 

 

戦場に1条の光線が走り、数隻のパーパルディア反乱艦隊の艦隊が文字通り吹き飛ぶ。

日本皇国製収束魔力砲による攻撃だ。

だが、それは今まで攻撃を続けていた日本皇国海軍18戦隊から放たれたものでは無い。

彼等は戦場の東側に布陣している。

今の砲撃は()()()のものであった。

 

 

〈〈こちらアルタラス王国海軍航空艦隊旗艦【エルム・アルタラス】。我等航空艦隊はこれより戦闘に参加す〉〉

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。