五等分の姉   作:プラム2

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書きたくなったので書いてみました。


1話

 

 

 ドッペルゲンガー現象。

 この世界には自分そっくりな人間が自分を含めて三人存在しており、そのうち二人が出会うとたちどころに死んでしまう現象を指すらしい。

 

 なんとまあ胡散臭い、信憑性の欠ける眉唾の現象である。

 この現象を信じるのならば俺はUFOだってトラックに牽かれれば異世界に行ける現象だって信じてやるさ。

 

 誤解されないよう言っておくと、これは決して俺がオカルト全般を否定しているわけではない。

 むしろUFOや異世界の存在、なんならムー大陸やアトランティスだって存在してもいいとは思ってる。

 実際がどうかは別として。

 

 

 では、何故ドッペルゲンガーだけを強く否定するのか。

 

 怖いから?

 

 否。

 

 

 答えは簡単だ。

 だって俺生きてるもん。

 

 

 

 なんせ自分そっくりのドッペルゲンガーになら二人どころか産まれてから毎日五人出会っているのだから。

 

「六海(むつみ)ー?どうしたの朝から憂鬱な顔しちゃって」

「なんでもいいけど、早く朝食作るの手伝ってよね」

「あっ、お茶もお願い」

「おはよー!」

「ああ、もう寝癖がついてますよ。ほら直してあげますから」

 

 部屋からリビングに出ると、早速声をかけられる。五人同時に。

 毎朝のことながらなんて騒がしい。

 

 それぞれが思うままにリビングでくつろいでいるが、顔に視線を向けると驚くべきことに五人全員が同じ顔をしている。

 表情が同じといった話ではない。

 言葉通り顔の造りが全員同じなのだ

 違うのは髪型ぐらい。

 

 何も知らない第三者が見たら、まず自分の目を疑い、その後に頬でもつねるだろう。

 なにせ、同じ顔が五人ーーいや。第三者から見たのなら、同じ顔が六人もいるのだから。

 

「……おはよ。元からこういう顔だっての。で、了解。すぐに支度するけど、お茶ぐらい自分でやってくれ。あと寝癖は後で直すからいい」

「「ええー」」

 

 面倒なのでまとめて返事すると一部からブーイングが起きるが知ったことではない。

 

 

 そう、我が家の姉弟は一卵性多胎児の六つ子である。

 ちなみにであるが、日本における双子の出生率ですら100人に一人と言われているそうだ。

 三つ子以上からは世界的にも珍しいとのことで、正直俺達六つ子の姉弟は世界中に報道されてもおかしくないのではないだろうか。

 今のところ何処のテレビ局からも取材のオファーは来てないが。

 少なくともアニメの題材としてはいいネタになるだろう。

 あれは全員男兄弟であったが、六つ子のアニメを六人で見た記憶がある。

 ……もう、わかんねえなこれ。

 

「二乃、メニューは?」

「洋」

 

 神様も意地悪なことに長女、次女、三女、四女、五女の流れで産まれたのだから、次も女で六女とすれば良かったものの、何故か六番目に産まれてきたのは男の子。

 決して自身の性別に文句があるわけではないが、これに関しては文句の一つぐらい許してほしい。

 きっと我が家を見守る神様は一人っ子に違いない。

 そうでなければ五人姉妹に男一人というのがどれだけ肩身が狭くなるかわかったろうに。

 

「目玉焼きは私固めでねー」

「私は半熟」

「任せるね」

「出来れば別々に二枚」

「「統一しろっ!!」」

 

 この様に全員同じ顔ではあるが、性格や好みまで同じというわけではない。

 幼い頃は性格まで似ていたのだが、成長するにつれそれぞれの個性が生まれてきた。

 

 例えば長女の一花は兄弟で一番大人っぽいし、次女の二乃は圧倒的に料理が上手い。

 三女の三玖は誰よりもクールで、四女の四葉は兄弟屈指の運動神経の持ち主。

 五女の五月はトップの食よーーではなく、真面目。

 そんな中六番目とはいえ一応長男の俺は自分で評価するのはあれだが、よく言えば器用貧乏。悪く言えば中途半端といったところではないだろうか。

 

 ナンバーワンよりオンリーワンとはよくいったものだ。

 

「ほら、先に半熟組から受けとってけ」

 

 引っ越したばかりでまだ慣れないキッチンに苦戦しながらも無事二乃と供に朝食を作り上げ、六人で食べ始める。

 ちなみにリクエストには律儀に答えている。

 

 家族団欒。憩いの場……ではあるのだが、やはり男一人と言うのは心苦しい。

 女三人寄れば姦しいとはよく言ったもので、そこに+二人となれば尚更だ。

 

「学校には午後までに到着すればいいみたいだし、もう少し寝ててもよかったかも」

「じゃあまだのんびりできそーね」

「あっ、私は食堂でランチしてみたいので先に出ようと思います。六海も行きましょう」

「……は?いや、行くなら一人で行けよ」

「いーきーまーしょーよー!」

 

 隣にいる五月が駄々をこねる。

 食事中に身体を揺らすんじゃない。

 というより食堂なら明日から幾らでも行く機会はあるというのに、どれほど食堂を楽しみにしているんだ。

 

「わっーたっての!行けばいいんだろ行けば」

「はいっ!」

「……反抗的な態度が目立ってきたけどなんやかんやで従順よねアンタ」

「従順って言い方はやめてくれ……」

 

 と、何故か俺まで早めに学校に向かうことになってしまった。

 まあ、五月一人先に行かせるのも少々不安であったたので、ちょうどいいといえばいいのだが。

 

「でも二人とも時間までにはちゃんと職員室には来るんだよ。いい?」

 

 今まで面白そうに会話を聞いていた一花が念を押してくる。

 確かにここの学校、強いては理事長には無理を押し通してもらった恩もあるので、これ以上遅刻などして迷惑はかけられない。

 二年とはいえ、中途半端な時期に六人もの転校を認めてくれたのだから。

 しかも名ばかりとはいえ一応の編入試験でも、あんな結果の俺達を。

 

 

 

 結局他の四人より先に家を出て、五月と二人で新しい学校の食堂にやってきた。

 盛況のようで学生達で賑わっている。

 

「おうどんに……海老天を二つ。それといか天にかしわ天にさつまいも天も。あっ、あとプリンもお願いします」

「はいよ」

「……そば一つ」

「はいよ」

 

 五月にしては控えめな量だなと一瞬でも思ったあたり俺はもう駄目かもしれない。

 

「水飲むよな?汲んでくるわ」

「お願いします。私は席を取っておきますね」 

 

 一旦別れ、俺は一番近くのウォーターサーバーの列に並ぶ。

 金をかけている学校なだけあって食堂も綺麗で広い。

 食堂に来るまでに軽く校舎等も見て回ったが、大学顔負けの校舎であった。

 あの父親は一体六人も入学するのに幾ら使ったのかと考えようとしたが、どうせ頭が痛くなる金だろうし直ぐにやめた。

 

 二人分の水を汲み、周囲を見渡す。

 俺も五月も制服が当日に間に合わなかったので、まだ転校前の学校の制服のままだ。

 なので目立つはず……と、すぐに五月の姿を見つけた。

 どうやら無事に席は確保出来たよう……だが。

 

「なんでいきなり相席してんだ」

 

 二人席の正面には既に見知らぬ男子生徒の後ろ姿がある。

 俺の席はどうしたマイシスター。

 

 しかしながら転校初日。しかもクラスに紹介される前に早速異性と食事とは五月もなかなかやるな。

 とりあえず写真をパシャリと。

 姉弟RINEに送りつけておく。

 

「よし」

 

 満を持して五月と名も知らぬ男子生徒に近づく。

 是非とも彼にはこのまま五月と仲良くなって頂き、ブラコンを卒業させて頂きたい。

 それが叶わなくても友達が出来ることはいいことだ。

 うちの姉弟は仲が良い反面、やや閉鎖的なところもあるからな。

 人の事は言えんが。

 

 ただ近づいてみて分かったが、どこか険悪な雰囲気の様な……。

 というか男の方は五月を会話するどころか視線すら向けずに何かプリントを見ながら黙々と食事をしている。

 

 

「い、五月?」

「六海!待ってましたよ!さあ、ほら早く隣に」

 

 声をかけた瞬間何がそんな嬉しいのか輝かんばかりの笑みを浮かべて隣の席を叩く五月。

 その急変っぷりに目の前の男も目を点にしている。

 

「あー……もし邪魔なら別の席探すけど」

「とんでもありませんっ!私としては当然六海と食べたいに決まってるじゃないですか!それをこの人がーー」

「あんたが勝手に俺の前に座ったんだろうが」

「むむむ!」

 

 水を汲んでいる間に何があればここまで初対面の相手と険悪になれるのだろうか。

 これ以上余計なことを言うと何が油になるかわからないので、大人しく五月の隣に座る。

 

「ああ、もう。またそれだけしか頼まかったんですか?ほら、私の海老天あげます」

「いいって」

「ほら、あーんしてください」

「……イチャつくなら余所でやってくれ」

 

 ごもっともである。

 ただその言い方だと俺と五月がカップルの様に聞こえるので、そこは姉弟のスキンシップと改めといてほしい。

 

「ごちそうさまでした」

「ええっ!?」

 

 ようやく俺も食べ始めようとすると、目の前の男は逆に食べ終えた様子。

 彼のトレイに目を向けると、そこには俺に負けず最低限の空食器しか残ってない。

 というか、その皿の感じだとご飯と味噌汁に何かの漬け物だけだったんじゃないだろうか。

 現代っ子がよくそれで足りるものだ。

 

「お昼ご飯それっぽっちでいいのですか?私の分少し分けましょうか?」

「満腹だね」

 

 あんな険悪になりながらも、食事に関しては聖母のような慈悲深さを見せる五月。

 何故その慈悲深さをもっと早く出さないのだろう。

 まあ、断られているのだが。

 

「むしろあんたが頼みすぎなんだよ。太るぞ」

「ふとっ……!」

 

 その通りではあるが、流石に女性相手に無神経な発言。

 その豪速球っぷりに五月は言葉を失ってしまう。

 

 豪速球を見せつけた豪腕投手は誰かから連絡が来たようで、携帯を確認するとフォローもなくそのまますたこらと食堂を出ていってしまった。

 ……えー、っと。

 

「なんなんですかあの人は!もう知りませんっ!」

「どぅどぅ」

 

 私、怒ってます!と誰が見ても分かるぐらい頬を膨らませる五月。

 結局自己紹介すらせずに終わってしまったな。

 というか、これは俺がフォローしなければいけないのか……?

 

「ほら、海老天やるから機嫌なおせって」

「元々私のですっ!!」

 

 フォローミス。

 

 

 学校には数百人の人間が集まるのだ。

 その中にはどうしても自分と合わない人間だって出てくる。

 仕方ないことさ。

 そういう相手とは適当に付き合うか、関わらないかに限る。

 そうその時は思ったのだがーー

 

「中野五月です。どうぞよろしくお願いします」

「……中野六海です。姉諸々よろしくお願いします」

 

 俺達の自己紹介に教室がざわつく。

 六人全員で転校してきた以上、覚悟していたことだが、こうして同じ顔の人間が実際に二人並べばそうもなるだろう。

 

 こうなるのが嫌だったので、せめて姉弟バラバラのクラスに別れたかったのが、まさか五月と被るとは。 

 むしろ五月一人としか被らなかったと喜ぶべきか。

 クラスを知ってから嬉しそうにする五月を前に黙るしかなかったが、せめて心の中では愚痴らせてくれ。

 

 教壇に立ち、生徒達から好奇の目で見られる中、気付いてしまった。

 生徒達の中、唯一見覚えのある男子生徒の存在に。

 

 目が合う。

 

 その顔からは驚愕……と、何故だが後悔が感じられる。

 理由はわからないが、同情はする。

 俺もあんな別れ方をして、こうして再会するのは予想外だった。

 ただ六分の一を引き当てた彼の運が悪い。

 

 

 ああ、神様。

 八つ当たりかもしれんが言わせてくれ。

 

 アンタ、俺のこと嫌いだろ。

 

 

 

 




六海……年頃の男の子らしく絶賛反抗期中。考えも若干すれている。

一花……六海の反抗的な態度も「男の子だなー」と笑って受け流す。
二乃……手が足りない時は何かと六海を呼ぶ。反抗期?なんだろうと関係なく弟は姉の言葉には絶対である。
三玖……六海の反抗的態度は一種のツンデレと認識している。
四葉……反抗期?よくわからないけど六海をよく外に連れ出す。
五月……六海の反抗的態度のため最近は弟分不足。
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