五等分の姉   作:プラム2

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10話

 

 

「な ん で !コイツがこの時間にウチに来てるのよ!」

 

 勉強会後、一度解散した俺達はいつも通りに帰宅。 

 のんびりとくつろいでいたところで荷物を纏めた上杉が予定通り来訪してきた。

 二乃だけが状況を理解出来ず頭に?マークを浮かべ、戸惑いを隠せずにいた。

 

 万全の状態で試験に挑むのなら試験までの間泊まった方がいいのだが、上杉の親父さんが夜も家を空ける日があるとのことで、まだ小学生のらいはちゃんを夜一人にするにはいかない。

 そのため一週間丸々とはいかず、泊まれる日だけ泊まることとなった。 

 俺はらいはちゃんも一緒に泊まればいいと言ったのだが、流石に悪いと上杉に断られた。

 ちくしょう。悪いことなんて何もないわ良いこと尽くしだわ。

 

「というわけだ!今日から試験までみっちりいくからな!」

「部外者が何勝手に話を進めてんのよ!そもそもコイツだからって以前に、こういうのは普通全員に、断りを入れるもんでしょ!」

「今入れてるじゃん」

「遅いわっ!!」

 

 

 ひとまず話があるということで全員にリビングに集まってもらった。

 

 上杉がいると実にテンションの高い二乃である。

 いつも以上に突っ込みが冴え渡っている。

 けれど、ここで引くわけにはいかない。

 

「じゃあ多数決で決めようぜ」

「いいわよ。ーー分かってるとは思うけど上杉は数に含まないからね!」

 

 滅多にないが、俺達姉弟の中で意見が対立した場合は民主主義に乗っ取り多数決で決議を行う。

 今回も何一つ疑うことなく二乃は俺の提案を受け入れた。

 この時点で俺は勝利を確信する。

 

「それじゃあ上杉の宿泊に反対の人ー」

「はいーーって、なんでよ!?」

 

 裁判長(俺)の声に手を挙げたのは二乃のみ。

 二乃としては全員はないにしても何人かは反対に手を挙げると予想していたのだろう。

 甘甘である。

 

「そんじゃあ賛成の人ー」

 

 すると今度は二乃と上杉以外の全員が手を挙げる。

 

「賛成多数ということで」

「まっ、待ちなさい」

「異議の申し立ては挙手でお願いします」

「やかましいわ!」

 

 俺がこのまま勢いに任せて押しきろうとしたが、それを許さない二乃。

 実に往生際の悪い姉である。

 

「五月!アンタいいの!?この何しでかすか分からない男が家に泊まるのよ!それに一花も!どっちでもいいなら反対しなさいよ!」

 

 三玖と四葉に言っても無駄だと分かっている二乃は同じ反対派だと思っていた五月と、中立派であった一花を取り込もうとする。

 が、時既に遅しである。

 

「いやー賛成しないと部屋の掃除は二度としないって言われたら、ねえ?」

「六海が今度のお休み一日お出掛けに付き合ってくれると言ったので!」

「買収済みかい!!」  

 

 勝敗は舞台に立つ前から決まるものなのだよ。

 中野家家庭裁判は見事閉幕。

 一度多数決を受けた以上、頭ごなしに反論出来ずにいる二乃の肩を優しく叩く。

 

「まあ、あれだ」

「……なによ」

「勉強会は二乃以外の全員で楽しくやってるから気にせず好きなように過ごしててくれ。もしかしたら笑い声とか部屋まで聞こえちゃうかもしれないけどその時はごめんな!」

「ぐ、ぐぐぐっ……!」

「……勉強会にまで付き合うって言ったつもりはないんだけどなあ」

 

 唇を噛み締め、悔しさを露骨に見せる二乃。

 一花がボソッと何か言ったが俺は何も聞いていない。

 限界が来たのか「もう勝手にすれば!」と全員に怒鳴るように言ってから、ドスドスとモビルスーツの様な足取りで部屋に戻る。

 

「お、おい六海。あんな二乃を煽るようなことしてどうすんだよ。アイツにも勉強してもらわなきゃーー」

「上杉はさ、二乃ってどんな奴だと思う?」

「は?なんだよ急に」

「いいからいいから」

 

 脈絡のない俺の質問に戸惑いながらも、少し考えて言う。

 

「気が強い」

「あはは、よく見てんな」

 

 ぱちぱちと拍手を送る。

 その一言で6人の誰かか分かる的確な言葉である。

 

「まあ、あれだよ」

「なんだよ?」

「気が強い奴ほど寂しがりやってもんさ」

 

 そう言った瞬間、2階からバンッと強く扉が閉まる音が聞こえた。

 姉達を見ると皆も展開が読めていたのか特に表情は変えていない。

 上杉だけが何事かと驚いた様子で2階を見上げる。

 

 すると程なく先程同様下の階に迷惑がかかりそうな足取りで二乃が1階に降りてきた。

 そして俺達から少し離れた椅子に座り、これまた荒々しく手に持っていたものを机に置いた。

 

「二乃、お前……」

「なによ。アタシが何処で何しようがアンタには関係ないでしょ」

 

 机に置かれた物を見ると、一番上にはファッション雑誌が置かれているものの、その下には何科目かの教科書がはみ出て見える。

 本当に素直じゃない姉である。

 

 予想通り過ぎる展開に思わずクスッと笑ってしまう。

 周りを見ると皆も微笑ましいものを見る目で二乃を見ている。

 その視線に耐えられなかった二乃がまたしても叫ぶ。

 

「もうっ!なんなのよニヤニヤと!勉強はどうしたのよ勉強は!?」 

「だってさ、せんせ」

「よ、よーし!なら始めるぞ!」

 

 上杉の号令と共に周りを見渡す。

 そこには不本意での参加も数名いるが、確かに全員が勉強のために揃っていた。

 転校前では信じられない光景である。

 恐らくそれは他ならぬ上杉の影響なのだろう。

 これが良い方向に働くか悪い方向に働くかは分からない。

 けれど、今は6人全員がいる。

 それだけでも満足である。

 

 

 

 

「で、俺は何処で寝ればいいんだ」

 

 数時間後、眠気やら疲れやらで集中力が途切れたことで勉強合宿初日は終了となった。

 んー、と背中を伸ばしたり、ぐてー、と机に伏したりと皆見るからに疲れ切っている。

 協力したものの、これが試験日まで続くと考えると少し気がまいりそうだ。

 

 で、泊まるとなった以上、当然上杉の寝る場所を決める必要がある。

 決めるといっても女5人男1人暮らしの我が家に男が泊まるとなれば選択肢は限られている。

 当然、俺の部屋だ。

 ただ上杉が来てから気づいたんだが、余分に布団がないんだよな。

 まあ、幸いにも部屋のベッドは二人ぐらいなら余裕で寝れるスペースはある。

 明日にでも上杉用の布団は用意するとして、今日だけは我慢してもらうとしよう。

 

「それはいけません」

「五月?」

 

 何故か五月が口を開く。

 何か妙案でもあるのだろうか。

 

「客人であり、わざわざ泊まってまで授業をしてくれる上杉君に狭い思いをさせていいと思いますか?思いませんよね?上杉君には明日以降もしっかり教えて頂くためにベッドで一人ゆっくり寝て頂きましょうそれがいいです。えっ?そうなると六海が何処で寝るかですって?そうですねそれは困りましたね。なら部屋も隣と言うことですし六海は私のベッドで寝ましょう。ええ姉弟なので何も問題はありません。むしろ国から推奨されるべき行為です!」

「い、五月がついに上杉さんに優しく…!」

「いや、明らかに自分のことしか考えてないわよ」

 

 ……正直スルーしたい内容であったが、五月の言う事の一部はその通りである。

 俺は順番に姉達の顔を見比べて、決めた。

 

「三玖、今日だけ一緒に寝てもいい?」

「うん」

「なんでですかっ!?」

 

 身の危険をヒシヒシと感じたからに決まってる。

 一花は朝起きたらいつの間にか全裸になってるのでパス。

 二乃は普通に嫌と断るだろう。

 四葉と一緒のベッドだと寝相悪過ぎて床に落とされかねない。

 そうなると、三玖しかいない。

 

「うぅ……三玖にお姉ちゃんポジションを取られました……」

「取る前からお姉ちゃんだって」

 

 露骨に落ち込み、涙まで流す五月を一花が慰める。

 後は任せよう。

 

「後お風呂だけど、上杉は先に風呂入るか姉達の残り湯を楽しむのどっちがいい?」

「聞き方っ!」

 

 今の時間から一人ずつお風呂に入っていると、最後の奴はとんでもなく遅い時間になってしまう。

 一緒に入れる奴は一緒に入ってもらうか。

 

「それなら私と六海がっ!」

「はーい、一花さーん。5番さん連れてちゃってー」

「はいはい。ほら、いくよ五月ちゃん」

「ああああぁぁ……六海ぃぃ……!」

 

 首根っこを一花に掴まれ連行される五月をスルーしつつ、以降の風呂の順番を決める。

 決めたところで俺は先に上杉を部屋に案内する。

 上杉がウチに通うようになってからそれなりに経つが、部屋に招くのは初めてである。

 というか姉以外を部屋に招くことが初めてである。

 

「部屋にあるものは好きに使ってくれていいから。ゲームとかもあるけど……上杉はやらないか」

「ああ」

 

 物珍しげに俺の部屋を見渡していた上杉の視線がある一点に集中する。

 その視線の先には本棚があるだけなのだが、本棚なんてそう珍しいものでもないだろうに。

 

「いや、お前の部屋に本棚があるのが予想外で……。しかも何で医学書とかまであんだよ」

「失礼な。俺だって本ぐらい読むさ。まあ、その医学書とかはファザーのを本棚の見映えがよくなるって理由で借りてるだけだけど」

「やっぱ馬鹿だ」

 

 適当に座らせ、他愛のない会話をしつつ風呂の順番を待つ。

 いい加減眠気に負けそうになった頃、部屋の扉がノックされる。

 

「六海ー。風太郎くーん。お風呂空いたよー」

「だってさ。先に入ってこいよ」

「いいのか?」

「流石に客人をこれ以上待たせるのはな」

 

 姉達と違って上杉は長風呂とかしなさそうだし。

 上杉に一緒に入るかと提案はしてみたのだが、難色を示されたので断念。

 男同士なんだから風呂ぐらいいいと思うのだが、無理強いすることでもないので大人しく引き下がった。

 

「あー、上杉。風呂入る前に持ってきた制服とかは出しとけ。ハンガーにかけておくから。なんだったらアイロンもかけとくぞ」

「主婦かお前は」

 

 違う、と否定しかけたが、普段の俺の生活を振り替えると俺って主婦そのものじゃないか?

 いつだったか姉達にも似たような事を言われた記憶がある。

 

『んー、六海はいつでもお嫁に行けるね』

『というか女の立場がなくなるでしょ』

『結婚する必要ないんじゃない?』

『えっ!?六海お嫁に行くの!?』

『私なら大丈夫です!』

 

 人に家事をやらせておいて散々な言い様である。

 というか、えらい勘違いをしていたのと何言ってるのか分からない奴もいたが。

 

 ……少し自分の仕事を減らして他の姉達にもう少し振り分けるか?

 最初は余計に仕事が増えるだけになりそうだが、長期的に見れば俺も楽になるはずだし。

 

 そんな事を考えながら、上杉から預かった服をハンガーにかけようとする。

 その瞬間、上杉の制服のポケットから何かが落ちた。

 

「学生証?」

 

 普段からきちんと制服に入れているとは、流石は優等生である。 

 そう言えば学生証なんて開いてもなかった。

 

 どんなもんが書かれているのかとパラパラと捲ると、最後のページに辿り着いた。

 そこにはいかにも生意気そうな金髪の少年が目線を剃らして写っている写真が収められていた。

 その写真が半分に折られ収められていることに気付く。

 取り出して、残り半分を確認してみる。

 

「この写真は……」

 

 




六海……小さい頃は引っ込み思案で、誰よりも泣き虫だった。よく誰かの陰に隠れていた。本人は否定している。

一花……実は六海を泣かした回数が一番多い。「そ、そんなこともあったかなー?」と笑って誤魔化す。
二乃……今でこそ言い争いの回数は多いが、小さい頃はよく六海の手を引っ張っていたり世話を焼いていた。当時の六海からしたら余計なお世話であったが、今ではそれなりに感謝してる。
三玖……母に次いで六海がよく隠れていたのが三玖。そのため無意識ではあるが、今でも六海が姉として頼るのが三玖が多かったりする。五月ステイ。
四葉……泣かされた六海をよく慰めていた。優しくされた記憶が強く残っているため、四葉には何かと甘い。
五月……昔は六海の事が嫌いだった。
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