五等分の姉   作:プラム2

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誰も気付かないのではないかと怯えつつの投稿です。
久々のあまり文章やキャラの雰囲気に違和感があるかもしれませんが、ご了承下さい。


13話

 

 夕食を食べ終え、部屋に戻った俺は一人頭を抱えていた。

 

 まさかの一花の告白。

 一花にとって上杉はせいぜいからかい甲斐のある友人ぐらいだと思っていたのだが、一体何があって恋愛ごとにまで発展したんだ。

 

「どうすれば……一体どうすれば……!」

 

 最初は姉達にもっと周りに目を向けてほしいという気持ちからだった。

 それが上杉の性格を知っていく内に全く性格の違う上杉と三玖が付き合えば面白そうだなと思った。

 

 一花は「それは確かに」と笑って同意してくれてたんだ。

 それなのにまさか一花が上杉の事を意識するなんて。

 

「一花に協力するか、このまま三玖を応援するか…」

 

 三玖を勝手に焚き付けておいて今更裏切る様な真似は出来ない。

 だが三玖にだけ協力しておいて、頼んできた一花には協力しないというのは公平じゃない。

 俺達の間で誰か一人だけ優遇されるなんて事はあってはならない。

 

「だ、誰か……」

 

 一人で考ええていても、一向に解決の目処が立たない。

 姉のどちらかを選ぶことなんて出来るわけがない。

 ……なんだか俺が優柔不断のハーレム野郎みたいになっている気がするが、気のせいだと信じたい。

 

 ここは素直に誰かの力を借りよう。

 そう思ったところで、また悩みが増える。

 

「誰に相談すれば……」

 

 一花、三玖、あと上杉は当然の如く除く。

 そうなると残りの相談出来る相手は二乃、四葉、五月、ダディ、江端さんぐらいか。

 

 うそ、俺の相談相手少な過ぎ……!?

 候補が身内以外だと江端さんだけって。

 なんなら江端さんも身内だし。

 

 悲しい事実を振り払い、候補を絞っていく。

 挙げておいてなんだが、こうした相談にダディや江端さんは不向きだろいう。

 そうなると残りは姉三人の誰かだ。

 

 四葉……四葉にはこれ以上付き合わせられない。

 そうなると二乃か五月か。

 どちらも上杉に好意的ではない二人である。

 

 しばらく悩んだ末、俺は選んだ姉の部屋の扉を勢いよく開けた。

 

「ニノえも──ん!!」

「は?………って、キャアアアアアアアアアア!?」

 

 しずかちゃんの方だった。

 

 

「ノックって知ってるかしら?人類が考えた偉大な発明の一つなんだけど」

「……ずびばぜん」

 

 普通ならばラッキースケベだったのだが、姉相手ではアンラッキーでしかなかった二乃の着替え現場を目撃した俺は、笑顔で額に青筋を浮かべている二乃に正座で座らされていた。

 

「で、情けない声出して何の用だったのよ」

「相談があって……」

「相談?六海が?」

「ああ、実は……」

 

 事情を説明しようとした寸前で、思い留まる。

 いくら姉弟の関係とはいえ、勝手に人の恋愛事情を話していいものか。

 三玖に関しては全員察してるだろうが、一花は恐らくまだ俺以外には話していないのだろう。

 それを勝手に話すというのは……。

 

 ひとまず誰か特定出来ないよう濁して話すか。

 

「えーっと、なんだ。欲しい物が一つに対して欲しい人が二人いる場合どうすればいいかな」

「……なぞなぞ?」

 

 俺も言っててそう思った。

 

「いきなり部屋に飛び込んでおいて大雑把な相談ね……」

 

 呆れた様子の二乃はそうね、と少し考えてあっけらかんと言った。

 

「分け合えばいいじゃない」

「分けあっ!?」

 

 思いもよらない発言に驚愕を隠せない。

 な、なんてアダルトな意見を平然と言うんだこの姉は……!

 俺達6人の中で二乃だけがアダルティに育っていたというのか。

 

「私達今までそうやってきたんだから今回もそうすればいいんじゃないの?」

「た、確かに……って、俺、一言も皆の事だなんてって言ってないんだけど」

「六海が誰かに相談するほど悩む事なんて家族の誰かのことなんでしょどうせ」

 

 大人……!

 六つ子なのに今日の二乃はやたら大人に見える。

 やはりこういった男女関係については二乃に相談して正解だったかもしれない。

 

「でもそれで本人達が納得するか?」

「分け合えないものなの?それなら順番に使えば?」

「順番!?」

「な、何よさっきから馬鹿みたいなリアクションして」

「そ、それはあれか。日替わりとかでってこと…?」

「別に日替わりだろうが週替わりだろうが好きな時に使いあえばいいでしょ」

 

 平然と言う二乃。

 驚愕を通り越して何だか怖くなってきた。

 それとも他の姉達も同じ様な考えを持っていて、俺だけが固定概念に捕らわれているのか……?

 

 そうか……世間からは批判されるものかもしれないが、二乃の言う通り本人達が納得していればどんな形だろうと構わないのかもしれない。

 それに二人までなら両手に花で済むし。

 

 ……よし。なら俺は一花と三玖、二人が報われる様動くだけだ。

 そうと決まれば先に決めておかなければならない。

 

「ありがとうな二乃」

「別にこれぐらい何てことないわよ。でも結局何の話なのよ?五月あたりが誰かのデザートでも食べたの?」

「いや恋バナ」

「先に言え!!」

 

 その後「それなら話が変わってくるわよ!」と、好きな人を誰かと分け合うなんて絶対にあり得ない!やら、ラブコメでも最近見ないわ!と興奮気味に数分前の自分を否定し出した二乃を見てホッとしたが、結局何一つ解決しなかった事に肩を落とす俺であった。

 

 

「うう……」

「だ、大丈夫ですか?保健室行きますかいえむしろ行きましょう大丈夫私も一緒に行きますから!」

 

 翌日。

 教室では来たる林間学校に向けての班決めやら分担決め等の話し合いの場がHRの時間を割いて設けられていた。

 が、今の俺にはクラス委員長から発せられる言葉が何一つ頭に入ってこなかった。

 精神的に辛いからではない。

 僅か一晩悩んだだけで痛みだしたお腹のせいである。

 

 寝不足も重なり、今の俺は周りから一言目の「大丈夫?」と心配されるぐらいだ。

 

 昨日は結局役に立たなかった二乃との話の後も一人で考え続けたが何も解決策は出てこなかった。

 朝もお互いの気持ちを知らない一花と三玖はいつも通りなので、それがまた俺の胃を痛みつけた。

 

 机に伏し、痛みを堪える俺を見て勉強中だった上杉が珍しく話しかけてきた。

 

「なんだ。姉同様食い意地でもはったのか」

 

 嘲笑う様な言葉に俺より先に五月が反応する。

 

「……それって私の事言ってますか?」

「お前以外いないだろ」

「あ、貴方って人は本当にデリカシーというのが…!」

 

 まさに売り言葉に買い言葉。

 毎度にことながら飽きない二人である。

 何時もであれば適当な所で宥めるのだが、今日だけは事情が違った。

 

「一体誰のせいでこんな事になってると思うんだ……」

「そもそも一人だけ食べ過ぎなんだよ……って、何か言ったか?」

 

 上杉何も悪くないことは分かっている。

 姉達が勝手に恋心を抱いただけで、上杉からしたらいい迷惑かもしれない。

 

 それでも

 

 それでも

 

 当事者でもある上杉にああも言われればいくら俺でも多少はイラッとくるものだ。

 

「……なあ、上杉。やっぱりこういう行事ってのは楽しんだもん勝ちだと思うんだ」

「は?何の話──」

 

 だからだろう。

 らしくもなく子供じみた仕返しをしてしまったのは。

 

「委員長ー。上杉が肝試しの実行委員に立候補するって」

「本当かい!いやー助かるよ上杉君!」

「ちょっと待て!?俺は一言も──」

 

 慌てて上杉が声を上げるが、今まで誰もやりたがらず全く進まなかった件だけあって、これ幸いにと上杉の声を無視して委員長が話を進める。

 クラスメイトも口を揃えて上杉の立候補を祝福する。

 これではいくら上杉が嫌がろうが無駄だろう。

 民主主義の恐ろしさを垣間見た気がする。

 

「む、六海?なんだか怒ってますか?」

 

 俺の様子が違う事に気づいた五月がおろおろと狼狽える。

 思わぬ厄介事を任され戸惑う上杉の姿を見れたおかげで少し苛立ちも収まった。

 残った苛立ちを吐き出す様に俺は一人こう呟いた。

 

「ばーか」

 

 

◆◆◆

 

 

「な、なあ三玖。一緒に帰ろうぜ」

「六海?」

 

放課後。

俺は早速実行委員や役割などで残らなければならない上杉と五月を置いて、別のクラスの三玖の下を訪れていた。

 

勿論ただ一緒に帰りたいからという理由ではない。

突如形成された一花三玖上杉のトライアングラーをどうにかするため放課後まで考えに考えた。

考え抜いた結果、俺はとある作戦を思いついたのだ。

 

「六海から誘ってくれるなんて珍しいね」

「そ、そうかな?」

 

そんな作戦を知る由もない三玖は帰り仕度をしながら俺の誘いに嬉しそうな表情を浮かべる。

そんな表情を見せられると罪悪感が……。

 

そ、それでも俺はやらなければならないのだ……!

覚悟を決めるんだ俺!

教室を出て、並んで歩きながら早速切り出す。

 

「そういえば上杉だけどさ!」

「フータローがどうかしたの?」

 

上杉の名前を出しただけなのだが、心なしか三玖のレスポンスが早い気がする。

が、そんな事は関係ない。

作戦を実行する。

 

「アイツ休ミ時間ダケジャナク林間学校ノ話シ合イノ時マデ自習シテンダゼー。勉強ハ大事ダケド限度ッテモンガアルヨナー」

 

名付けて三玖の恋心を冷ます大作戦……!

少々心が痛むがある事ない事言って三玖に幻滅してもらおう。

 

「きっと違うよ」

「えっ?」

 

ガリ勉男子は嫌われる。

クラスの女子からの確かな情報で、まずは牽制がてらにと思ったのだが、予想していた反応とは違う反応が返ってきた。

 

「私達の家庭教師を始めてから自分の勉強時間が減ったんだよ。それでも時間を見つけて勉強してるんだよ」

「そ、それは確かに……」

 

上杉の事だから俺達が転校してくる前からああだったと予想がつくが、それでも三玖の言う事も確かだ。

今まで自分の勉強を割いて俺達の面倒を見てくれているのだから、上杉ならどこかで自分の分を取り返そうとするだろう。

 

「やっぱりフータローは凄い」

 

うぐぐ……!

何か更に三玖の中で上杉の評価が上がった気がする。

好感度メーターがあればハートマークで+5と出ていただろう。

ちくしょう。

これが某ナンバー2さんだったら「どんだけガリ勉なのよ。キモいわ」となり、話は簡単だったのに。

 

ま、まだだ!

 

「上杉サー、体育ノ時トカ酷インダゼ?体力ナサ過ギ。男ナラモウチョット体力ナイトネー!」

 

運動が得意な男子はモテる。

ならば逆に運動が苦手というより壊滅的な上杉は女子からモテない筈だ。

 

「そうだね」

「お、おう!」

 

2発目は上手く決まった。

そう思えたのは一瞬だった。

 

「でも」

「で、でも?」

「フータローは体力ないなりに頑張ってる。こないだも頼まれ事で忙しかった四葉をくたくたになっても手伝ってた」

「へ、へー」

「苦手なことだからって逃げずに立ち向かえるフータローは格好いいと思うよ」

「…………」

 

べった惚れじゃん。

もう何言っても評価上がるじゃん。

別のクラスなのにめっちゃ見てるじゃん。

 

「あっ、い、今のは一般的な意味で言っただけで、わ、私がそう思ってるわけじゃないよ?」

「ソウデスカ」

「……むぅ。さっきから喋り方変になるし、何か私に隠してるでしょ」

「ナニモナイヨー」

「あっ、また!」

 

今更何を取り繕うことがあるのか、無意識に言った上杉の惚気を慌てて一般論に差し替える三玖。

一般論を持ち出すなら上杉の評価は上がったりしない筈なんだが。

 

今の三玖の反応を見て、俺はこれ以上は無駄だと察した。

三玖の恋心は本物だ。

本人の中で何らかのきっかけがない限りはどうしようも出来ないだろう。

 

ま、まあ正直三玖の本気っぷりは作戦を実行する前から分かっていたのだ。

本命は次よ。

一花なら三玖みたいに全てを肯定的に捉えないだろうし、その恋心が本気か定かではない。

今の段階なら別のイイ男を紹介できればそっちに気持ちが移る可能性だってある。

まだだ……まだ終わらんよ……!

 

 

「六海、わざと風太郎君の印象下げようとしてるでしょ」

 

はいオワター。

それどころか作戦もバレた。

 

最初は「そうなんだー」とか「風太郎君らしいね」と成功かに思われたが、俺が話を終えた途端、柔らかな笑みを浮かべながら核心を突いてきた。

 

やばい……協力してくれと頼まれた矢先に裏切る様な真似をした俺を果たして一花が許すか。

否。死刑宣告を言い渡されてもおかしくない。

 

間も無く俺を襲う恐怖に身を震わせていたが、一花から放たれた言葉は予想外のものであった。

 

「あー……何かごめんね?私のお願いで変に気を使わせちゃったみたいで」

「えっ?」

「でも六海も変な所で律儀というか不器用だよね。きっと一人で色々悩んだ結果こんな変な事になったんでしょ?」

「えっ、えっ?」

 

俺を責めるわけでなく、むしろ自分に非があるような言い方。

お、怒ってないのだろうか。

 

「怒るわけないよ。私達の為に悩んでくれたんだから」

 

い、一花……!

普段は小悪魔的な言動が目立つが今この瞬間だけは天使に見える。

 

「それに協力してってのもそんな真剣に考えなくていいんだよ」

「あっ、そ、そうなの?」」

「ただ、ね」

「うん?」

「六海には風太郎君と2人きりになれる機会があればそれとなく誘導してほしいかな」

「ま、まあ、それぐらいなら?」

「ありがとう!あ、後、風太郎君って鈍そうだから、それとなく私の事をアピールしてくれたら嬉しいなー、なんて」

 

「ダメ?」と弟相手に可愛らしく首を傾げる一花。

俺相手では背丈が同じなため目線は一緒だが、これが上杉相手なら上目遣いになり更に破壊力を増すだろう。

……それでも上杉にはノーダメージだろうけど。

上杉砦ちょっと鉄壁過ぎやしませんかね?

 

それでいいならと一花のお願いを新ためて了承した俺は部屋に戻り、ホッと胸を撫で下ろす。

いつの間にお腹の痛みは消えていた。

 

でも一花も殊勝だよな。

お願いが2人きりになれる様手伝うのと一花の事を上杉にアピールするだけでいいだなん……て?

 

「…………あれ?」

 

それってほぼ全面協力と変わらなくない?

 

 

 

◆◆◆

 

 

「楽しみですね六海!」

「ああ、うんそうね」

 

その後、林間学校に向けて服を買いに行ったりなど、そこでも胃が痛くなりかけながらも林間学校当日を迎えた。

結局キャンプファイヤーの時上杉が誰と踊るかは決まっていない。

本当にもう時間がない。

どうすればとバスの出発時間迄一人考えていると、気付く。

肝心の上杉がまだ見えない。

 

「そういえば見当たりませんね。先に乗ってるんでしょうか」

「そんなはずは……」

「おーい、中野ー」

 

五月と二人で辺りを見回すが、それでも上杉の姿は見えない。

もう出発時間間近というところで、担任の教師が話しかけてきた。

 

「「はい」」

「……ああ、そういえばウチのクラスには二人いたか。あー……弟の方」

「俺ですか?」

 

同時に返事した俺と五月の顔を見比べて……見分けられなかったのだろう。

バツが悪そうな顔で俺を指名してきた。

 

「上杉だが妹さんが熱を出して欠席すると連絡があった。上杉と仲良かったよな?実行委員の代わりを頼みたいんだが」

 

 ……おいっ!!

 

 

 

 

 

 




以前までの後書きのおまけコーナーはもう少し勘を取り戻してから再開するか考えます
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