インフィニット・ストラトス 銀河は俺を呼んでいる   作:OLAP

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サブタイトルの由来は有名なあれです。


鈴だ鈴だ

 

クラス代表対抗戦が週末に控えた週の月曜日、一年八組の話題の中心はまさにソレだった。

 

「クラス代表戦まで一週間を切った。優勝候補は一組のセシリア・オルコット、そして我がクラスのクラス代表ヴィシュヌ・イサ・ギャラクシー」

 

優勝候補は二人に絞られている。その二人は共に代表候補生で専用機持ちだ。

 

代表候補生は四組にもいるのだが、彼女の専用機の制作は遅れているために今回の代表戦には間に合わない。

 

「期待してるよ、ギャラクシーさん!!クラスのために、そしてデザートのために!!」

 

今回のクラス代表戦の優勝商品はクラス全員分のデザート無料券なので、多くのクラスメイトはソレを求めている。

 

「はは………頑張ります」

 

代表のヴィシュヌはクラスメイトたちの迫力溢れる、デザートに飢えた獣の目で見られて少し引いている。

 

 

 

 

「一夏はいる!!??」

 

 

 

バーンッ!!と音がなりそうな勢いで教室の前の扉が開かれ、一人の女子生徒が教室に入ってきた。

 

髪型をツインテールに整えてある平均身長よりも小さな少女は、教室に入ってくるなり周囲を見回した。

 

教室に元からいた人たちは何が起きているのか事態をうまく飲み込めず、また一夏は窓際の席でヘッドホンを付けて目を瞑りながら上機嫌に音楽を楽しんでいる。

 

「……ん?」

 

「……あ!」

 

一夏はクラス全体が静まり返っていることに気がつき、ヘッドホンを外して目を開けた。周囲を見回し、少女が目に入った。

 

そして少女は窓際の席に座っている一夏に気がつき、思わず指差してしまった。

 

「鈴!!」

 

「一夏!!」

 

一夏は椅子から勢い良く立ち上がった。

 

そしてそのまま二人は近づいて、再会を喜ぶ軽いハグを交わした。

 

クラスメイトたちから黄色い歓声が響き渡る。いきなり教室に人がやってきたかと思ったら、この学園唯一の男子生徒とハグを交わした。

 

「何だよ鈴、お前もこの学校に来てたのか!?連絡くれりゃあ良かったのに」

 

「ちょっと本国の方で用事があって入学が遅れたのよ。今日から二組に編入することになったわ」

 

「そうか、まあ立ち話もなんだから席に座れよ」

 

一夏は誰も座っていなかった自分の隣の席に鈴を座らせた。

 

「ネットで色々見たぜ、流石は鈴だな」

 

「ありがとう、アタシもこの一年間タダで過ごしていたわけじゃないのよ。あの時言ったでしょ、『もっと凄くなる』って。それを実行したまでよ」

 

クラスメイトを置いてけぼりにして自分たちの空間に入り込んだ二人。

 

「……アレ?」

 

ここでようやくヴィシュヌは鈴が誰なのか気がついた。

 

凰鈴音、ISの操縦を始めてからたったの一年で中国の代表候補生に登りつめた天才少女。

 

彼女にはもう一つ顔がありそれは────

 

「キャアアアアアアア!!鈴ちゃんだァアアアアアアア!!」

 

「マジ鈴ちゃん!?ガチ鈴ちゃん!?リアル鈴ちゃん!?」

 

「え?誰?」

 

「ご存知ないのですか!?彼女は今中国で大人気の歌って踊って操縦できるスーパーアイドル系代表候補生、凰鈴音ちゃんです!!日本でも最近話題になってきています……先月の日本でのライブ行きたかった」

 

キャーキャーこと先ほどまでの沈黙とは打って変わってクラスメイトたちは一気に喋り出した。

 

「……有名になったな」

 

「まあね、この一年間は代表候補生になるだけじゃなくてアイドル活動もしてたからね」

 

「アイカツだな」

 

「……………まあ、そんなこんなで気がついたらこういうことになっていたのよ」

 

凰鈴音、一夏にとって一番の女友達であり彼女が出身国である中国に帰るまでは彼女も一夏達のバンドのメンバーだった。

 

中国に帰った一年間の間に代表候補生に上り詰めるだけではなく、アイドルとしても活動している。

 

つい先日、ライブも行った。

 

「ねえねえ織斑くん、凰さんとはどういった関係なの?」

 

一夏と鈴音が仲良く話しているのを不思議に思うクラスメイト達。

 

「え?ああ………なんだろうな。うん、うまく説明できねえな」

 

顎に手を添えて考える一夏、単なる女友達だと言ってしまえば簡単なのだが、本当にそれだけで済むモノなのかと思ってしまう。

 

「友達でバンド仲間だったのよ」

 

代わりに鈴音が答えてくれた。

 

へぇー、と頷くクラスメイトたちはそれ以上何も聞いてこなかった。

 

 

キンコンカンコンとチャイムがなり、朝のホームルームが始まるのを告げる。

 

「あ、それじゃああたしはクラスに戻るから、またあとでね」

 

鈴音は手を振りながらクラスへと帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日この日、IS学園の一年生達の大半はテンションが上がっていた。

 

今日からISを使用した授業で射撃訓練をおこなう。射撃訓練の最初は全クラス纏めて行われるために、最も大きなメインアリーナに全員集められる。

 

一年八組の生徒以外は織斑一夏を間近で見れる今日この日を入学の時から心待ちにしており、一年八組の生徒は織斑一夏が他のクラスの人間に見られるために早く終われと思っている。

 

一夏のIS操縦の腕前の良さは既に他のクラスに広まっており、あわよくば一夏に直接教えてもらいたいと思っている生徒もチラホラいる。

 

「あのー、織斑くん?織斑くんはいませんか?」

 

だが肝心の一夏の姿はメインアリーナの中には何処にも見当たらず、一年一組の副担任は慌てている。

 

「先生、凰さんの姿も見当たりません!」

 

「ええっ!?」

 

そして今日転入してきたばかりの凰鈴音の姿もどこにも見えなかった。

 

「あのバカ二人は」

 

一夏の姉であり、また凰の事もよく知っている千冬は頭を抱えていた。

 

彼女は一夏がこの授業にでない理由に心当たりがある。

 

「後で補習だな、コレは」

 

一夏が来ないとわかった一年八組以外の多くの生徒達のテンションは下がり、一年八組の生徒達は勝ち誇ったような顔をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「〜〜♪」

 

IS学園屋上、一夏はこの場所にいた。

 

アコースティックギターを弾きながら優しく歌を歌っている。

 

IS学園は周りが海で囲まれているために海風がよく吹く。特にこの屋上は心地のよい風が通り抜けてくれる。

 

既に授業は始まっているために完全なサボリだ。しかし一夏はそんな事を気に留める様子は一切なく、風を身体で浴びながら自分の世界に入り込んでいる。

 

「やっぱりここにいた」

 

屋上に上がるための扉が開かれ、凰鈴音が姿を表した。

 

どうやら彼女も授業をサボったようだ。

 

「最近調子はどう?」

 

鈴音は一夏に近づき、隣に座ると自然と肩を寄せた。

 

「歌に関しては問題ない。お前がいた頃よりも上手く──」

 

「──そうじゃなくて、そっちの方よ」

 

「………ああ、問題ない。この前も束さんに検査してもらったから、異常はないってさ。後何年かすれば検査も不要になる」

 

「………そう」

 

鈴音は今の一夏の身体がどうなっているのかよく知っており、その事を誰にも話してはいない。

 

「授業、サボって良かったの?」

 

「……さあ、大丈夫だろ。今日以外はサボってないし、動作の実技は満点だし…………そういうお前はどうなんだ 」

 

「あたしは代表候補生だからそういうの免除されるの」

 

ズルいと一夏は思ったが、自分がこの学園に入れているのもズルのようなモノなので何も言わなかった。

 

「こうしてると中学二年の時を思い出すわね」

 

鈴音にとっては中学時代、特に日本での最後の一年間になった中学二年生の時はとても楽しい時間だった。

 

ノリと勢いで仲良し四人組でバンドを組んだかと思ったら、勢いそのままにお世話になる事になるライブハウスに突撃して演奏を聞かせた。

 

他にも全力で青春を楽しんできた。

 

今思えばかなり無茶をしたモノだと鈴音は思った。

 

「来週実家に帰って、そのままライブハウスで歌うことになってるけど、来るか?」

 

一夏達のハンドの中で、鈴音の役割はサブボーカル兼ギター。最初はギターをうまく弾けなかった鈴音であるが、一夏によるマンツーマンレッスンのおかげで上手に弾けるようになった。

 

「良いわよ、あたしも弾や数馬と会いたかったし………どうせその後はあんたの家で夜通し遊ぶんでしょ?あたしももちろん行くわ」

 

「オーケー、後であいつらに連絡しとくわ………歌うか?久しぶりに」

 

一夏はギターを小さく持ち上げて鈴音に聞いた。

 

「良いわよ、それで何を歌うの?」

 

鈴音が聞くと一夏は無言でギターを弾き始めた。

 

そのメロディーを鈴音は知っている。というか知らないはずがない。

 

この歌は一夏や鈴音のバンドが始めてメンバー全員の力を合わせて作った歌だからだ。

 

その時のことも良い思い出だ。

 

みんなで一夏の家に泊まり込んで、完成させた思いで深い歌。

 

「〜〜♪」

 

「ーー♪」

 

鈴音がメインで歌い、一夏が彼女の歌に合わせてハモりを入れる。

 

今この場所だけは二人だけの空間だ。誰にも邪魔をされることなく歌を歌える。

 

数分間、フルで歌い、ようやく歌が終わり一夏が最後にギターの弦を弾いた。

 

「…….また、上手くなってるな」

 

「それはコッチのセリフよ」

 

互いに実力を賞賛し合う。

 

 

 

「────そこの授業をサボっている不良少年と不良少女、お姉さんとちょっとお話しない?」

 

何時の間にか屋上にはもう一人生徒がいた。いつやってきたのかはわからないが、恐らく二人が上機嫌で歌っているうちに入ってきたのだろう。

 

「……あんたもサボってね?」

 

「……そうね。でも一夏、そういうのは言わない方がいいわ」

 

今は授業中であるため、この場にいるということは目の前にいる彼女も授業をサボっている事になる。

 

「……更識楯無さん……でしたっけ?生徒会長でロシアの国家代表の」

 

「あら、知ってたの?」

 

やってきた彼女の名前は更識楯無、IS学園の生徒会長でロシアの国家代表。その他にも肩書きがあるみたいだが、ここでは割愛させてもらう。

 

「この前偶々テレビで特集してたから、そこで初めて知った」

 

「………そ、そう」

 

喜んで良いのか、それともそれまで知られていなかった事を悲しめば良いのか楯無はわからなかった。

 

「それで、何のようですか?俺たちは今一年ぶりの再会を喜んでいる最中なので、できれば早く用事を済ませて欲しいのですが」

 

楯無の方を見る事なくギターを弄っている一夏、彼は楯無の事に興味がないようだ。

 

 

 

「お姉さんと戦ってみない?」

 

 

 

楯無から出された提案を聞いた一夏は顔を動かさずに視線だけを楯無に向けて直ぐに元に戻した。

 

「嫌だ」

 

「あら、どうして?国家代表と戦える機会なんて滅多にないわよ。将来、織斑先生みたいにモンドグロッソに出るなら経験してたほうが良いと思うけど」

 

楯無は一夏の将来の事を勝手に決めつけてしまっていた。彼も彼の姉と同様に国家代表になりモンドグロッソの頂点を目指すモノだと思っていた。

 

「そもそもそんなモノに出る気は一切ないですから。姉さんが目指したからといって俺が目指さないといけない理由には成りません。俺は俺で、姉さんは姉さんですから、そこは見誤らない」

 

意外だと楯無は思ったが、顔には一切出さなかった。

 

「だったら、どうしてあんなにISの操縦がうまいのかな?君の動きは明らかに国家代表のソレよ。何処で練習したの?」

 

楯無は撮影したビデオで一夏の動きを確認しており、実力の高さを知っている。少なくとも数回乗った人間の動きではなかった。

 

「え?束さんのところですけど」

 

「…………隠す気はないの?」

 

「隠す?何故?俺と束さんは昔から仲良しですから……リハビリのためにISに乗っていたんですよ」

 

「リハビリ?それって──」

 

「おっと、それ以上は秘密ですよ。人には秘密が必要ですからね。貴方も何か秘密があるんでしょ?」

 

楯無は一夏に対して僅かに警戒を示した。彼が何処まで彼女のことを知っているのか、何処までも知っているのかそれとも何も知らないのか全くわからない。

 

「どうしてお姉さんに秘密があるって思ったの?」

 

「秘密のない人間はいませんからね、単なる勘ですよ。まあ、その反応と貴女の音から判断すると大きな秘密を持ってるようですね」

 

ジャランジャランとギターで音を優しく鳴らし続ける一夏、彼は既に楯無との会話に興味を持たなくなっているのかもしれない。

 

弦の張りを微調整しながら最適解を探す。

 

「……………そう、それじゃあ最後に一つだけいいかしら?」

 

「ご勝手に」

 

「貴方の専用機、アレは一体何?」

 

つい先日、一夏の専用機である『炎華』の情報が全世界に解禁された。

 

「何って言われましても、単なるISですよ」

 

明かされた情報は機体のスペックと搭載されている機能の極一部、なのだがそれだけでも世界は度肝を抜かれた。

 

「あの異常なスペックは何なの?」

 

「俺は専門家じゃないんでわかりませんよ。作った奴に聞いてください」

 

スペックは現在の最新鋭機である第三世代型ISと比較しても倍以上の性能差が存在している。

 

「それは篠ノ之束博士にってこと?」

 

倉持技研が製作したことに表向きはなってはいるが、もちろん嘘だと皆が気がついており、裏に篠ノ之束が存在していると勘付いている。

 

炎華は全世界に向けて篠ノ之束が出してきた明確な技術力の差の証明のようなものであった。

 

「え?違いますよ。これ作ったの束さんじゃないですよ。束さんはコレの整備をしてくれているのであって、作ったのは別ですよ」

 

「え?」

 

読みが外れた。てっきり篠ノ之束が作り上げた機体だと思っていたが、目の前にいる一夏から否定されてしまった。

 

嘘をついている様子はまったくない。

 

今まで本当の事を話しているのだから此処だけ篠ノ之束が作ったものではないと嘘をつく理由はない。

 

(……じゃあ、誰が)

 

此処までの技術力を持っている人間を楯無は篠ノ之束以外知らない。というか彼女と肩を並べられるほどの技術者がこの世に存在しているのかも怪しい。

 

いくら考えても答えは出てこない。

 

「もういいですか?鈴、別の場所に行くぞ」

 

「わかったわ」

 

一夏と鈴音は立ち上がり、楯無の横を通り過ぎて出口に向かう。

 

「待って!」

 

大声を出して呼び止める楯無、一夏は大きく息を吐いてから振り返った。

 

「まだ何か用っすか?」

 

「貴方のIS、いつから持ってたの?待機形態らしきモノは、荷物検査の時に確認できなかったし、輸送されてきた形跡もない………いつから持ってたの?」

 

「そんなの最初からですよ、ずっと前から俺は持ってましたよ」

 

一夏はそれだけ伝えると立ち去り、屋上には楯無だけが残された。

 

「……わからない、彼が、わからない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この作品的に鈴音はアイドルにしなければと思った。後悔はしてない。
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