ちょっと2040年に翔んでクイズ一話リアタイしてきました

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2040年に翔んでクイズ一話リアタイしてきました
続くかは未定


この世にヒーローはいない。○か×か?

『問題!!』

 

 

空気は、張り詰めていた。彼はそれを好んでいた。

 

喧騒に包まれているはずの舞台と彼を集中力という名の壁が切り離し、しんと静まり帰ったそこで彼はにやりと口元を緩めた。

隣の誰かさんは冷や汗を流している。反対側の誰かさんは目をカッと見開いている。心臓の音すら聞こえる気がした……そこは極限状態だ。

 

 

『日本においてトマトは野菜ですが、フランスにおいては果物として扱われています。またアメリカは裁判の結果野菜として扱うこととなりました。そして……植物学的には、トマトを[野菜]と判断している。○か×か?』

 

 

迷いはない。彼は直ぐ様青いボタンを叩く。両隣は赤。

 

 

『正解は──』

 

 

隣から、唾を飲む音がした。彼はそれを聞きながらあくびを堪えた。

こんなものか。青年はバレないように脚を伸ばす。

 

 

『──×!! 植物学ではトマトは果物と定義されます!! 正解者は一人のみです!!』

 

 

勝った。また勝った。簡単な問題だ。

ドローンが飛んできて、彼の顔を撮影する。こうされるのも馴れたものだからと、彼は驚きもせずに椅子から立った。帽子を深く被り、目だけは隠してみる。

司会者が高らかに、彼の名を電波に乗せる。

 

 

『えー、ただいま!! Bブロック決勝戦進出者が決定いたしました!! 決勝進出者は……堂安 主水!!』

 

 

 

堂安主水(どうあんもんど)。それが彼の名前だ。今となっては、この国のほとんどがその名を知っている──最も、悪名としてだが。

 

外に出た主水は会場を少し離れ、ベンチに座る。そうした彼の前を、一枚新聞紙が転げていった。『堂安主水またもや優勝』──そんな記事だ。先週のものだろうか。はたまた去年? いつから有名になったかなんて彼は覚えていないし、また興味もないことだった。

 

 

「……腹へったな」

 

 

そう呟く。

空を見上げれば、秋晴れのいい天気だった。

 

 

「お疲れ主水」

 

「……?」

 

 

不意に、後ろからそんな声がした。

振り向けば、紺色のスーツの男が立っていた。主水は口元を緩める。

 

 

「ああ、龍治さん。お疲れ様です」

 

「今日も勝てそうかい?」

 

「もちろん」

 

 

そう言いながらスーツの男は、主水にペットボトルの水を差し出した。名前は石橋龍治(いしばしりゅうじ)という。主水はその顔を仰いで、ペットボトルの蓋を開けた。

 

 

「良かったんですか? 仕事は」

 

「最近は競合他社に大分持っていかれてな。暇なんだよ、仕事なくて。サボタージュさ」

 

「そうなんですか、ほどほどにした方がいいですよ」

 

「お前にだけは言われたくない」

 

 

そう言いながら龍治は主水の頭、帽子を小突く。そのまま彼はその肩を擦り、一つため息をした。

そうしたのも当然だった。何しろ……主水は無職である。

 

 

「にしても、お前も変な生活してるよなぁ。職も、家も持たないで、あちこちのクイズ番組に顔を出しては優勝して、賞金をかっさらっていく……そんなん続けてたら、いつか出禁食らうぞ?」

 

「いや、そんなことは──案外あるかも、しれないか。今日も優勝しますから」

 

「はは、コイツめ」

 

「そうなったら、海外進出でもしますよ。……とにかくお金、必要なんですよ。死ぬほどね」

 

「……そうだな」

 

 

主水はまたペットボトルの水を煽った。遠くの方で、誰かが主水を指差している。無視した。

一から積み上げる必要がある定職についている暇などない。罵られようと、謗られようと知ったことではない。自分に出来る最大限の利益を叩き出す……それが彼のスタンスだ。

 

 

「でもお前、今日の大会の優勝商品って何だか分かってないんだろ?」

 

「そりゃシークレットにされてましたから、分かるわけないですよ」

 

「まあそうか……そういえば、昼休憩だったな、今。どうする? 俺が奢ろうか」

 

「いや」

 

 

龍治はスーツのポケットに手を突っ込もうとしたが、それよりも早く主水が鞄を漁っていた。真っ赤な袋が出てきて、その中に弁当箱が顔を覗かせている。

 

 

「弁当貰っちまってて。乗りたいのは山々なんですが、アイツが怒る」

 

「良いじゃないか。俺も、弁当作ってくれる妹分が欲しいもんだ……じゃ、そろそろ行くかな。午後も頑張れよ」

 

 

龍治はそれを見て軽く微笑み、主水に背を向け、立ち去っていった。

主水はそれを見送りながらまたペットボトルを煽り、弁当箱を取り出す。そして蓋を開けて、思わずうへぇと顔を歪めた。

 

弁当箱の、その一面に米が敷き詰められていた。……ただの米ではない。半分が赤、もう半分が青に着色されている。そしてチーズか何かで、○と、×が描かれていた。

 

 

「……こんな弁当作られても、困るってもんですよ」

 

 

青い方の米を一口。

 

 

「マズっ、ミント味だこの米」

 

 

 

「……」モキュモキュ

 

 

ひたすらに、彼はミント味の米を掻き込んでいた。味を誤魔化そうとタブレット端末でニュースを眺めながら、なるべく舌に触れないよう咀嚼もそこそこに飲み下す。

落とした視線の先の方では、いくつかのニュースが浮かんでは消えていく。

 

『国立図書館にて爆発事件、犯人は不明』

『失踪したノーベル賞学者、行方は』

『高校生の知能低下について』

『南極観測船謎の沈没』

 

……そんなものばかりだ。

謎、謎、謎。不明、不明、不明。

時は2040年、未だにこの世界はそれで溢れている。近頃起こり始めた各地での事件……それもまた謎だ。

 

 

「困るんだよな、そういう時事ネタはクイズになりやすいのに……対策練らなきゃいけなくなる」

 

 

主水は帽子を被り直した。

さて、これらのニュースは何の問題に繋がるだろう。やはりオーソドックスにノーベル賞の歴史だろうか。教育? 図書の歴史という線もある。──彼は、『事件から何が産まれるか』にだけ興味を抱いて、『何故事件が起こったのか』には、てんで興味を示さなかった。

風が吹いて、主水の肩をささやかに揺らした。

 

 

 

『株式会社ダグラスプレゼンツ、QUIZ SHOW NEXT!! いよいよ佳境に入りました、決勝戦です!! この中で優勝した者が、こちら、シークレットな商品を手に入れられます!! では、各々の選手の紹介!!』

 

 

それから一時間としないうちに、主水はまた撮影の舞台に戻っていた。スポットライトが辺りを照らし、ドローンが辺りを駆け巡る。空から司会者の声が舞い降りて、電波に番組の様子が乗っていく。

馴れた光景だ、と主水はあくびを噛み殺した。右隣に座った回答者から明らかに敵意の込められた視線が飛んでくるが無視する。

 

 

『エントリーナンバー58、Bブロック代表!! 今日も看板を狙ってやって来た道場破り!! 堂安 主水!!』

 

「……おう」

 

 

またドローンが飛んできたので、指で軽く撫でてやった。すぐにそれはどこかに飛んでいって、代わりに問題がやって来る。

 

 

『それでは第一問。ジャンルは歴史。──問題!!』

 

「……」

 

『北アメリカ大陸に最初の入植者がやって来たの──

 

 

誰かが唾を飲む音がした。辺りがまた、緊張に包まれる。

 

──それと同時に、撮影現場のドアが大きく吹き飛ばされた。

唐突に鳴り響いた轟音は緊張を吹き飛ばす。上がる煙、軋む設備、ワンテンポ遅れて逃げ惑う人々。それに紛れて、主水は何かを見た。

 

 

『え、これ何です? え?』

 

「……なんだ?」

 

 

怪人だ。ごつごつとした、しかし丸みを帯びた、金属質の化け物だ。上半身は黄色、下半身は青に塗られたそれを、主水の人生で得た知識で、それを上手く形容するならば……まるで、フクロウのような。

フクロウの化け物……と呼んでしまえば途端に可愛らしく感じられるが、そんな暇はない。

 

怪人が腕を一振り。固定カメラが撥ね飛ばされ、セットの壁にぶち当たってめり込んでいく。

怪人が腕をまた一振り。スタジオの壁が砕け、貫通し、穴の向こうからぞろぞろと雑兵のような怪人が現れ出る。

 

 

「うわ、こっち来やがった……!!」

 

 

そしてその雑兵達が、まず手当たり次第に人々を襲い始めた。どこからともなく取り出してきた小銃の、その弾丸が主水の隣の参加者を撃ち抜く。

主水は慌てて回答席に身を隠す。頭上を弾丸が飛んでいった。

 

 

『こら!! 止めなさい!! あっこら放送室に入ってくるな!! あっちょ、おい待てほら、あ』ブチッ

 

 

飛んでくる音声も途絶える。辺りを見回しても、主水以外の人間で動いているものはない。

彼は一つ舌打ちをして……優勝商品を隠していた箱が砕けているのに気がついた。

 

弾丸が止んだタイミングを縫って彼はその商品を拾い上げ、また別の物陰に身を隠す。そして、商品を見た。

 

 

「……何だ? これ。ペンダント?」

 

 

──銀の鎖。そして、それに繋がれたクエスチョンマーク。

 

それだけだった。

 

 

「銀……じゃない。鉄だこれ。しかも宝石も見えないし……何だよ、ガラクタじゃねえか、金にもならねぇ」

 

 

主水は軽く鑑定をしてから、とんでもないガラクタにため息を吐く。彼の頬を弾丸がかすっていった。

 

 

「おおっと……これじゃ俺は、トラブルに巻き込まれだだけじゃないか。バカみたいだな」

 

   パァンッ

 

「まあいいや、どうせなら貰っていくか。俺の不戦勝になりそうだしな……そんなことより、逃げることを考えないと」

 

 

ますます彼は頭を縮めながら、少しの慰めにそのペンダントを首にかけた。どうせこれでは自分の不戦勝だろう。誰も文句は言うまい。

そして首にかけてから、また主水はペンダントのクエスチョンマークを摘まんでみた。

 

刹那。

 

白銀に、それが煌めいた。

煌めいて、光は彼の腰に纏わりつき──赤と青のベルトになって。

 

 

「──は?」

 

『ピコピコンwwwピコピコンwwwピコピコンwww』

 

「うるせぇ!?」

 

 

けたたましく鳴り響き始めた。

弾丸がすぐさま飛んできて、主水の隠れ場所をじりじりと壊していく。

 

 

『ピコピコンwwwピコピコンwwwピコピコンwww』

 

「おいおいおい待て待て待て、おい黙れ、ほら、ああもう!!」

 

   パァンッ パァンッ パァンッ

 

 

ヤバい。とにかくヤバい。何だこのベルト、目覚まし時計か? 主水の思考は一瞬で辺りを駆け巡り、しかしまた飛んできた弾丸の音で断ち切られる。

とにかくこの音をまずは止めたい。そう思いながら彼は腰のベルトをガチャガチャと引っ張ってみたり、揺すってみたり。それでも外れる気配はなく。

 

 

「外れないし……!! 何だ、どこかにリセットボタンでもあるのか?」

 

 

そうして妙にデカイベルトを覗き込んでみれば、丁度真ん中の薄い隙間の奥にスイッチが見えた。まさかこれが停止ボタンなのか?

つまりこれを押せば止まるかもしれない。そう彼は判断して、丁度いい薄いものを探し始める。

 

──手元に一つ、転がっていた。ベルトと似た色彩の、赤と青のクエスチョンマークを象った板。

 

 

「なにか薄いもの……これ使えば押せる気がしてきた……!! ほら!!」

 

   ガシャン

 

 

そして、その板を勢いよく差し込んで。

 

……しかし、音が止まることはなかった。

代わりに。

 

 

『ファッション パッション クエスチョン!! クイズ!!』

 

 

堂安主水の体が、二色の光の粒に包まれる。

そしてその粒が主水を覆うようにスーツを作り、鎧を作り、そして……彼の体を作り替えた。

 

主水だったものは、近くに転がっているガラス片、そこに写り込んだ己に絶句する。

 

 

「……はぁ?」

 

 

右半身は、赤。左半身は、青。顔はツルツルとしていて、額には巨大なクエスチョンマーク。

ふざけている。本当に何だこれは──そう思った瞬間に、彼の脳内に情報が入り込んできた。強引に、問答無用に。

 

体の動かし方。防御の取り方。そして戦い方。この体の名前は──

 

 

「ああ……そういうことか。仕方ない、面白いから乗ってやるよ」

 

 

彼は、今の自分の全てを閲覧し、そして立ち上がった。もう弾丸は怖くない。振り向き様に叩き落として、雑兵と、その向こうの怪人に目を向ける。

 

 

「何だお前は?」

 

「救えよ世界。答えよ正解──問題!!」

 

「……?」

 

「この世にヒーローはいない。○か×か?」

 

 

襲い掛かってくる雑兵達、それらを殴りながら彼はそう問った。最早ただの人間ではない彼ならば、雑兵程度は大したことはなく。

そして怪人が叫ぶ。

 

 

「○に決まっているだろう!!」

 

 

瞬間。怪人のその体を、青い稲妻が駆け巡った。プスプスと煙を上げながら、化け物は堪えきれずに膝をつく。また同時に、あしらわれていた雑兵達も爆散した。

 

 

   バチバチィ

 

「──!?」

 

「正解は×だ。何故なら、俺がいるからだ」

 

 

堂安主水だったもの。『ヒーロー』になったもの。彼の、名前は。

 

 

「……仮面ライダークイズ。それが、この体の名前、らしいな」

 

「そんなこと、どうだっていい!! ここでお前は闇に葬られるのだから!!」

 

「どうかな?」

 

 

両腕を振り上げて殴りかかる怪人。その攻撃を躱し、腹に一撃蹴りを入れるクイズ。怪人はよろめき、しかし踏み留まってクイズにカウンターを入れ。

両者にらみ合い、拳を構える。

 

 

「へぇ、タフなんだな。この面子のリーダーってところか」

 

「舐めた口を……!!」

 

 

そしてクイズは距離を保ったまま、また声を上げた。

 

 

「問題。お前の攻撃は当たる……○か、×か!!」

 

「○だ!!」

 

 

大きく踏み切って、スタジオの低空を飛行する怪人。その体躯はクイズを正確に捉えていた──筈だが、当たらない。クイズは近くに転がっていたビデオカメラを身代わりにして、スタジオの床を転がっていた。

また、怪人の体に電流が走る。

 

 

「正解は×だ。残念だったな」

 

「また──ぐはっ!!」

 

 

再び膝をつく怪人。今度は、立ち上がるのも儘ならない様子。

今だ。クイズは判断して、一旦ベルトから例の板を引き抜いた──そうすることでクイズの機能が解禁され、クエスチョンマークはエクスクラメーションマークに変質する。それがクイズの、必殺技のプロセス。

そして彼は、再びそれをベルトに挿した。

 

 

『ファイナルクイズフラッシュ!!』

 

「最終問題。お前は俺の攻撃に耐えられない。○か×か。はあっ!!」

 

「ぬ……!!」

 

 

飛び上がるクイズ。スタジオの中空にパネルが投影され、○と×が空間を踊る。怪人はまだ膝をついたまま、しかし両腕を構えて身構えた。

 

 

「×だ!!」

 

 

そしてクイズが、投影されたパネルを突き破る──○の方のパネルを、だ。

そして彼は勢いのまま、怪人の胴体を蹴り抜いた。

 

 

「クエスチョンキーック!!」

 

「──っぬ、ぬ……クイズ、クイズ……覚えたぞ、仮面ライダー……クイズっ!!」

 

 

獲物を中心に○と×が回転し、放電し……そして、怪人は限界を迎えて爆散する。

跡には、もう何も残っていない。戦闘、終了。

 

爆炎が収まるのを見届けたクイズは、元の姿に戻る。堂安主水の姿だ。首にはまだ例のペンダントが残っている。

 

 

「変身解除、と。……これが優勝商品だったんだな。随分物騒じゃないか」

 

 

そして、呟いた。またそれを摘まむ気にはなれなかった。

 

……唐突に、スタジオの向こうからガサガサと音がした。次にスタジオの穴だらけの壁、その一部が蹴破られて、怪人ともさっきの雑兵とも違う、別のアーマーに身を包んだ一団が現れる。

そして、流れるように主水を包囲した。

 

 

「止まってください、堂安主水」

 

「……おいおい、今度は何だ?」

 

 

 

両手を上げ、彼は周囲を見る。丸いヘルメット、頑丈そうな装甲に、太い右腕には銃口も見える。生身ではどうしようもない。

だがその一団はすぐに戦う訳ではないようで、その中の一人が銃口を下ろし、一歩主水へと踏み出した。

 

 

「インテッジ討伐の協力に感謝します」

 

 

女性の声だ。

敵意は無いらしい。主水は両手を下ろし、クエスチョンマークの板を懐にしまう。そうしながら、ヘルメットの中を覗き込んだ。

 

 

 

それから一時間としないうちに、主水はボロボロのスタジオから移送されて、どこかよく分からない施設の地下、剥き出しのコンクリートに囲まれた殺風景な施設の、その一室に連れ込まれていた。

さっきの女性が交渉を担当するのだろう、ヘルメットを外した彼女は一旦主水からペンダントと板を回収して、別の職員に分析をさせていた。

 

そして主水と女性は、テーブルを挟んで向かい合う。主水は知らない場所に連れ込まれた訳だが、冷静さをすぐに欠くということもなく、ただ相手の目を見据えていた。どこか、この場の空気がクイズを受けるときのそれに似ているからだろうか。

 

 

「あれ、インテッジって言うのか」

 

「はい。不定期に発生しては各地の機関を襲撃しています。我々GB財団は特殊警備隊を組織して警備に当たっていますが、たった一人で討伐した例は類を見ません」

 

 

GB財団。聞いたことは……無くはない。確か、スーパーコンピュータを作っているんだったか。

主水はそう思いながら、しかしその思考は読ませない。相手の瞳からはまだ目を逸らさず、威圧を込めて対峙する相手を見つめ続ける。

 

 

「それだけ、あれがヤバいってことだな?」

 

「はい。そうなります」

 

「そうか……で? あれの値段の交渉でもするかい? 欲しいんだろう? 俺は、値はたっぷり釣り上げるタイプだ。そうだな──」

 

 

主題はそこだ。

主水には分かっている。あれが大変なシロモノだということは。何しろ自分で使ったのだから間違いない。

そして、それが求められていることもすぐ分かった。戦力として欲しいのだろう、どんな外敵でも倒せるだろうそれを。……もしかしたら悪用されるかもしれないが、そんなことはどうでもいい。大切なのは値段だ。

しかし相手は、首をゆっくり横に振った。

 

 

「──いえ。我々も当初は買い取りを目的としていましたが。分析の結果、最初に使用した物しか起動ができないシステムだと判明しました」

 

「……そうか」

 

 

そりゃ残念だ。転売すら出来ないとは。

主水は考える。これから、このよく分からないブツをどうしようか。いっそ覆面レスラーにでも──そこまで考え始めた所で、それを打ち切るようにまた声が届いた。

 

 

「堂安主水。貴方を、我が財団で雇いたい」

 

 

その声に顔を上げる。

 

 

「給料は?」

 

「また、金ですか」

 

「……ああ。金がいるんだ。とにかく、沢山な」

 

 

相手がどんな顔をしようと知ったことではない。するべきことをするのみだ。

 

 

「分かりました。では、インテッジ一体討伐ごとに……五十万円でどうでしょう」

 

「百万だ。それ以下は受けない」

 

「足元を見て……良いでしょう。分かりました。百万ですね」

 

「乗った。その方が手っ取り早い……クイズ大会なんかよりもな」

 

 

そして主水は、不敵に笑いながら手を伸ばした。握手する。……契約成立。

無職、堂安主水の歴史が終わりを告げる。そして、仮面ライダークイズの物語が本格的に始まった瞬間だった。

 




次回、仮面ライダークイズ!! 第二問!!

ダグラス社に調査に向かう主水達!! 突然現れた謎のベルト、その正体とは?


「クイズとコンピューターは似ている。そうは思いませんか?」

「説明しろ。あの機械はなんだ」

「クイズドライバー。叡智を力に変換するもの」


しかしそこに再び現れるインテッジ!! 果たしてその目的とは? 主水はどうする?


「おかしい……アイツは、昨日倒したはず」

「覚えている!! 覚えているぞクイズ!!」

「さあ。君の戦いを見せてくれ」


問題!!
『ライダーとは怪物である。○か×か?』


Ca va(サバ)、仮面ライダー……私は縁田。このダグラス社の代表です」


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