オスト地区。帝都の東側に存在し、路地裏的な構造になっていて帝都の一般的な市民たちが暮らしている。
そんな道の一角に、まるで何者の家でもないようにレーグニッツ邸があった。
マキアスに招待されて、A班・B班共に家の中に入る。
カイトが無遠慮に感想を述べた。
「……思ったよりこじんまりしているな」
「父一人、子一人の一軒家だ。期待されても困るぞ」
「まあ、そこに僕たちが十人で押し寄せてるわけだしね」
男子陣は例によって荷物を持っている。近くの軽食屋で買ってきたフィッシュ&チップスだ。
マキアスが手を叩く。
「とりあえず、男子たちはテーブルと椅子をソファーの近くに動かしてくれ。僕は珈琲を淹れる」
「では、私たちは食事の準備をしましょう」
「ええ。どういうレイアウトにしようかしら……?」
あれよあれよと、ものの数分で準備ができる。早めにしないと料理が冷えてしまうのもある。
マキアスが律儀に十人分の珈琲を用意して、そうして五人がテーブルの椅子に、残る五人がソファーに座って食べ始める。ソファー組が若干狭いが文句は言わない。
第三学生寮でも十人全員が同時に集まるのは希だ。学生らしく世間話に花を咲かせ、わいわい食べる。
「確かにあのお店、かなり美味しいね。帝都に住んでたのに知らなかったよ」
「味がいいのは認めるが所詮はジャンクフードさ。冷めたら驚く程まずくなるのは変わらないんだが」
帝都組は帝都組でお互い新たな発見をしている。エリオットがマキアスの出身地区のことを知ってたりと学院にいる時から盛り上がっているようだったが。
リィンがマキアスに尋ねた。
「この珈琲は本格的で香りもいいな。買い置きでもしてるのか?」
「ああ、少し前に父さんがそうしたみたいだ。公務の合間に戻って休憩しているらしい。忙しい毎日での、ちょっとした贅沢なんだろう」
「ふむ、好感のもてる方だな」
ガイウスが、軽食をつまみながらカップをすする。
「珈琲は馴染みはないが……これは飲みやすいな。マキアス、調節してくれたのか?」
「ああ。カイト、ガイウスのものは甘めにしてある。フィーのはミルクも追加だ。どうだ?」
「申し分ない。ありがとう」
「ぶい」
「あの、オレもミルクくれない……?」
特に女子陣は、物珍しそうに家の中をくるくると見渡す。
「それにしても、帝都知事の息子とクラスメイトになるとも思わなかったけど、その自宅にお邪魔するのもてんで予想外だったわ」
「ええ、そうですね。そもそも入学前は帝国各地を巡ることすら予想外だったんですが……」
「まあ、そのうちアリサやエマ君の故郷にも行くかもしれない。今のうちに心の準備をしておくことだ」
「ふふ、それは私やリィンも同じだな」
料理は単純なもので、大量に買い込んでもあっという間になくなっていく。育ち盛りもいればしっかり食べる男子もいるし、女子だって特別実習の重労働下では遠慮はしていられない。
軽く手を拭き、まだ飲みきっていない珈琲を楽しむ。
フィーが目ざとく言った。
「あ、写真みっけ」
「おい、こらフィーッ」
マキアスの制止をするりと躱して、フィーは棚に飾られた写真立てに近づく。マキアスも少し疲れているのか、それ以上追わずにため息を吐くに留めた。フィーが他のクラスメイトと共有したくてうずうずとしている。仲間たちが目線だけで問いかけると、真面目な少年は諦めたように言うのだった。
「フィー、せっかくなら持ってきてくれないか」
「? ん、いいよ」
そうして、フィーはまず女子陣にそれを渡した。口々に反応が生まれる。
「わぁ……いいお写真ですね」
「マキアス、貴方可愛いじゃない!」
「昔は何とも言えぬ愛らしさを持っていたのだな」
「これが……こんなに頑固で口うるさいのになるとは」
「ええい、人の昔の写真で盛り上がるんじゃないっ!」
男子陣に回ってくる。カイトもそれを見た。
十年ほど前だろうか。日曜学校幼年組ほどの姿のマキアスがいた。眼鏡をかけているのは今と変わらず、幼い容姿にそれだからまた違った印象にも見える。子供が少し背伸びをしている風だ。
写真には三人写っていた。もう一人は父親であるレーグニッツ知事だ。さすがに今と風貌は変わらない。そして、もう一人今のカイトたちと同じ年代の女性が写っていた。親子の緑色の髪ではなく明るい茶髪、控えめにたっていて、柔らかい笑みをこぼしている魅力的な女性がいた。
「……ふむ」
ユーシスがわずかに声を漏らす。その音を遮るように、気ままにエリオットとガイウスが語る。
「あ、本当だ! マキアスが可愛いよっ!」
「ふふ、しかし今のマキアスと同じ落ち着きも見えるな」
「はぁ……味方でいてくれるのはガイウスだけか?」
リィンがカイトを見た。
「カイト、どうした?」
「あ、いや……いい写真だなって思ってさ」
そう言って、写真をマキアスに返す。
「カイト……貴方もしかして」
「うふふ、カイトさん?」
久しぶりにエマの丸眼鏡が光った気がした。まずい、この二人は女子でしかも察しがいい。
しかし言えない。少し、写真の女性の雰囲気がクローゼにに似ていたなど。言えば残る九人から集中砲火だ。
「そ、そういえば、この女の人はマキアスのお姉さんか?」
「似たようなものさ。父方の従姉でね。近くに住んでいたからよく遊びに来てくれたんだ」
カイトは苦し紛れに絶妙に話題を変えようとしたのだが、それはマキアスにとっても渡りに船だったようだ。早朝の彼のように、話に食いついてくる。
「男二人の父子家庭……色々と世話になってしまったな」
「そっか。マキアスがお姉さんに弱い理由ってところか」
「う、うるさいぞカイト! ……まあ、否定はしないよ」
ラウラが聞く。カイトの発言は無視しておいた。
「過去形ということは、もう家庭に入られたのか?」
見た目の通り美人だし、マキアスが慕うとなれば悪い性格でもないだろう。年齢を考えればラウラの言う通り結婚していてもおかしくはない、とも思う。
だが、そうではなく。
「亡くなったんだ。六年くらい前にね」
まるで、カイトがタイタス門の屋上で両親のことを話したような空気となった。いや、人数が倍であること以外は変わらない。昔のことを話そうとして、自分に縁のある場所に連れていったことも含めて。
近親者の死という、笑い話にはできないことを前に一同は沈黙する。ユーシスも黙っている。ここまでくればマキアスが何をしようとしているかもわかる。
「マキアスが……貴族を嫌っている理由だな?」
入学した頃からユーシスを筆頭に確執を生んできた。過剰なほどに声を大にして貴族を嫌っていた。そこになにか理由があるというのは、誰もが薄々理解していたことだ。
開放的なカイトや、徐々に心を打ち明けていく他のクラスメイトがいても、マキアスは頑なに何も語らなかった。
けれど。今は違う。
「本当は……こんな話誰にもするつもりはなかったんだ。だが、少しは吐き出そうかと思ってね」
カイトがⅦ組を型作る先駆けになろうとして。リィンが少しずつ吐き出して。フィー、ユーシス……と続いていった。昨日はエリオットがトールズ入りの経緯を語ってくれた。
「どうか、聞かせてくれ」
他ならない貴族のリィンが、そう言う。
「ありがとう」
まずマキアスが話したのは、家庭の事情と『姉』のことだった。
「母は僕が小さい頃にはもう亡くなっていて、でも近くに住んでいた『姉さん』が男所帯を世話してくれていたんだ。姉さんは僕より九歳年上で……美人で気立ても良くて、僕にとっては最高の女性だった」
写真に映る、控えめな美人。「僕にとっては」という言葉が、かえって誰にでも愛され憧れの的になるような印象がある。
「父さんも、姉さんのことをすごく可愛がっていて……一緒に住んでいたわけじゃないが、家族同然だった」
懐かしむように、愛おしむように。カイトもその気持ちに共感する。
「マキアスは……姉さんのことが、好きだったんだな」
「……どうだろうな。君とは違うよ。けど、憧れだったのは確かだ。自慢の姉さんだった」
ラウラが聞く。
「そのような人柄なら、周囲の者たちも放ってはおかないのではないか?」
「その通りだ。恋人がいたよ。貴族のね」
「え……」
「彼は──帝都庁に勤める父さんの部下にあたる人だった。伯爵家の後継という正真正銘のサラブレッドだ。貴族にありがちな傲慢さや尊大さは微塵もなくて、誠実な人だった」
昔の話で、初めて貴族の存在が出てきた。話し手がマキアスだから、どんな恨み辛みが聞こえるのかと思ったけれど。
「そんな彼は、父に紹介されて姉さんと知り合った。それで……身分を越えた恋人同士となったんだ」
マキアスが、ユーシスとカイトをチラリと見た。カイトはマキアスの一挙手一投足に注目していたから目があったが、ユーシスは自分の珈琲カップに口をつけるのみだ。
「正直、悔しくて仕方なかったよ。誰の目から見ても二人は仲が良くてお似合いで……姉さんが幸せそうだったから、僕も諦めるしかなかった」
そして、マキアスの父が仲人になる形で二人は婚約した。
普段からそうした話に赤面しつつ聞き入るのはアリサとエマだ。実際、ここまで聞くと恋人たちの幸せな話にか聞こえないが……。
「それからだよ……相手の実家が、伯爵家が露骨に潰しにかかってきたのは」
貴族であるリィンが、ラウラが言葉に詰まる。
「どうやら四大名門、カイエン公爵家との縁談が急に持ち上がったらしくてね。平民の娘を……
カイエン公爵を知るユーシスとカイトが目線をそらした。
「父さんの立場があったから露骨ではなかったけど、ありとあらゆる嫌がらせや脅しが姉さんに加えられたんだ」
女性としての幸せに共感していたアリサが、エマが口を抑える。
「彼を困らせたくなかったのか、父さんの立場を慮ったのか、姉さんは結局誰にも相談しなかった。ただ、ただ、ひたすらに耐え続けて──」
自らの命を絶ったという。ある時ふっと、驚く程にあっさりと。マキアスが、大好きな姉の変化に気づく前に。
「……そんなことが」
幸いにも家族に不幸がないガイウスだが、だからこそ想像を働かせて虚しさを感じる。
「僕と父さんが経緯を知ったのは、すべてが終わった後だった。彼は……最後の最後で姉さんを裏切ったらしい」
「……裏切った?」
呟いたフィーが想像する『裏切り』とは、どういったものなのだろうか。戦争において相手陣営に乗り替えた味方のことを考えるだろうか。
「ああ。彼は、姉さんに言ったらしいんだ。『愛妾として大切にするから我慢してくれ』って」
「……あいしょう」
「愛人と言えばわかるか?」
「っ……」
「姉さんがその言葉に与える
愛した人が、心を通わせたはずの恋人が、自分を同じように愛してくれない。同じ立場で見てくれない。少なくともマキアスの従姉にとって、それは世界に別れを告げるに等しい行為だった。レーグニッツ知事や自分の家族に頼ることもなく。
当時、帝都知事でなかったマキアスの父が、それまで以上に働き詰めるようになったのはそこからだったという。盟友と言われる鉄血宰相と協力して帝都庁の貴族派を排除し、そうして現在の地位についた。
そして、マキアスは今の姿に成長していった。
「これが……レーグニッツ家の事情さ」
沈黙。
ここまで話を聞けば、マキアスがどうしてあそこまで貴族を憎むのかが理解できる。良いか悪いかは関係ない。憧れた人を死へ追いやった男や価値観や文化。それを恨まずにはいられなかったのだろう。
マキアスは、聞かれるまでもなく語り続ける。
「僕は姉さんを死なせた敵を求めずにはいられなかった。相手の男に伯爵家、横槍を入れた公爵家。しまいには貴族の全て……貴族の文化や制度すら敵と思った……!」
カイトは特別オリエンテーリングの時と同じように、自分に当てはめてみた。
両親を死なせた敵を求めずにはいられなかった。帝国軍に軍人一人一人。しまいには帝国の全て。帝国に関わる存在すら敵と思った。
(……変わらないな。やっぱり、何も)
ただ、気づくのが早かったか遅かったかの違いだけだ。気づくきっかけがあったかどうかの違いだけだ。自分とマキアスは、何も変わらないと思った。
「そして……彼らに勝てるだけの力を必死になって追い求めてきたんだ」
ぐっと、その拳が握られた。
ユーシスが口を開いた。
「それで、お前はその力をつけることができたのか?」
「……ユーシス」
「いいんだ、リィン」
リィンの強い言葉をマキアス自身が制した。
「愚問だな、ユーシス・アルバレア。僕は特別オリエンテーリングで、君とどんな問答を繰り広げた?」
「お前は言った。『帝国には強固な身分制と明らかな搾取の構造がある』と。まあ、否定はせんが」
「……そんな風に言ったかもな。それは多少の誇張もあるが、事実だという考えは変わらない。でも……結局はそれだけだ」
「なに?」
「それは武器でもなんでもない。集めた知識は、貴族を倒すための力になんてならなかった……ユーシス、君に説得力ある言葉で返せなかったことが全てを物語っているよ」
「……随分と殊勝な答えだな」
「とっくにわかっていたんだ。ただの八つ当たりだったって。まあ、君の尊大さや傲慢さを許したわけじゃないぞ」
マキアスは、言葉こそ生意気だが態度は今までと違っていた。それは彼らしくなく、精一杯肩肘を張った笑みではある。けれど、逆にユーシスが驚く程度にはなかった言動だった。
「貴族や平民に関係なく、結局はその人なんだろう。相手の男は誠実ではあったが、愛する人を守り切れるほど強くはなかっただけだ。伯爵家も自分たちの利益を優先しただけ。公爵家は彼らが言うところの格を守ろうとしただけ」
マキアスは、Ⅶ組の全員を見渡した。
「平民だろうが悪人は悪人で、貴族にも尊敬できる人はいる。君たちに……それを教えられてきたからな」
「マキアス……」
嬉しかった。セントアークで、ラウラとフィーの戦術リンクが成功したことを聞いた時のように。
「これが現時点での、僕の偽らざる気持ちだ。……その、報告ぐらいはしようと思ってね」
許せなかったことを認めるようになるための苦しみ。それを少しは理解しているつもりだ。だからカイトはマキアスの進歩を、自分のことのように嬉しく思う。
たぶん、自分以上に貴族生徒も嬉しく思っている。リィンもラウラも。たぶん、ユーシスも。
他のメンバーも、マキアスのことを四ヶ月間見てきた。
ガイウスがユーシスに目を向けた。マキアスと真逆、平民を見下してきたパトリックを諌めた彼は、柔らかい笑みで言った。
「どうだ? ユーシス」
「ふん……」
ユーシスがカップを置いた。
顔を合わせれば喧嘩してきた二人。ガイウスが再びそんな空間を作り上げた。他のメンバーも迂闊なことを言えなくなる。
口を開けば煽り合いの二人。ユーシスが使う言葉は、「今更そんなことを理解したのか」とかの煽り返しになるのか、それとも珍しく「お前にしてはよく気づいたな」というやはり煽りもある優しい言葉なのか。
そのどれとも違った。ユーシスはソファーから離れると、同じように立ち上がったマキアスの正面に立ち塞がる。
「お前は俺に楯突いた。俺に『どちらが上か思い知らせてやる』と言った」
Ⅶ組発足の時だ。
「平民も貴族も境ない……その程度の答えで、俺に勝ったと本当に思っているのか?」
「……思わないさ。僕が貴族派にじゃない。
「それでいい。そうでなくては張り合いがない」
「……ふん」
「はっ……」
これでこそ、マキアスとユーシスだ。
二人が、そうしてまた座る。
「そうだ、ユーシス」
「なんだ? これだけの啖呵を切った後に付け加えるのは格好がつかないぞ」
「そうじゃない。アリスさんのことだ」
ユーシスとカイトが即座に理解して、数秒遅れて他のメンバーも理解した。
今のマキアスの半生。自分の姉が伯爵家と公爵家の意向に巻き込まれて、結果的に命を絶つことになった。
お互い思うところのあるユーシスとアリスの婚約の件は、マキアスにとっても他人事ではいられないんだろう。
「アリスさんとの仲……お互いに納得してないのなら、やめた方がいい。いい機会だから、言っておこうと思ってね」
マキアスの、ユーシスへの精一杯のフォローというわけだ。後悔のない道を選ぶようにと。
「……参考にはさせてもらおう。もとより黙っているつもりはない」
ユーシスもまた、昔のままではない。Ⅶ組に集められ、マキアスと喧嘩をして、リィンと語り合って、他のクラスメイトと心を通わせ、そうして四ヶ月間やってきたのだ。
素で偉そうなだけで、貴族にも平民にも元から差別意識はない。けれど目立つことを宿命づけられたユーシスは、差別意識がなくなるだけでは終われない。
公爵家の子息の戦いは、ここから始まるのだ。
「まあ、アリス嬢に関しては他に厄介な関係者もいるから俺も放っとけんしな」
お坊ちゃんらしい流し目を、ユーシスはカイトへ向けるのだった。
────
昼休みを終えて、再びⅦ組は実習活動を再開する。
午前中の時間で、すでに与えられた課題はいくつかこなしていた。マキアスの話もあり、Ⅶ組全体のモチベーションも上がっている。
さあ午後の残りの時間を頑張ろう──というところで、Ⅶ組全体のモチベーションが下がらざるを得ないことが起きた。
きっかけはレーグニッツ知事から来たⅦ組全体招集の通信だった。帝都にある宝飾店で盗難が発生したのだが、その解決役にⅦ組があてがわれた。
そしてその経緯だが──
『一、開封したもう一つのカードを、トールズ士官学院Ⅶ組に渡すこと』
『一、Ⅶ組がカードに書かれた我が試練に打ち勝つこと』
『Ⅶ組諸君、宝に至らんとするならば、全員で我が試練に答えよ。鍵は全て緋色の都とその寄る辺にあり──』
『いざ三手に分かれ、その集まりし力を存分に振るいたまえ。鍵を集めたまえ』
『追伸──我が宿敵の友たる騎士の参加は必須事項である。不参加の場合は《紅蓮の小冠》は即座に業火へとくべられる。久方ぶりの邂逅を待ち望むもの成──《怪盗B》』
「あのっ……ど畜生快楽主義変態怪盗紳士ぃぃぃ!!!!」
ガルニエ地区で、カイトの馬鹿みたいな叫び声が木霊することになる。
『サン・コリーズの店長殿へ。《紅蓮の小冠》は確かに頂戴した。ただし次の条件を満たせば無事にお返しすることを約束しよう』
『一、事件を鉄道憲兵隊並びに帝国軍には報せぬこと』
『一、開封したもう一つのカードを、トールズ士官学院Ⅶ組に渡すこと』
『一、Ⅶ組がカードに書かれた我が試練に打ち勝つこと』
『Ⅶ組諸君、宝に至らんとするならば、全員で我が試練に答えよ。鍵は全て緋色の都とその寄る辺にあり──』
『いざ三手に分かれ、その集まりし力を存分に振るいたまえ。鍵を集めたまえ』
『その彩りをままに。一、義務を果たす剣士たち。一、後ろを支えし民草たち。一、脚定まらぬ異邦の者たち』
『さあ、再会と邂逅の鼓動が奏でる輪舞曲を、緋の帝都で踊ろう。第一の鍵は──』
・義務を果たす剣士たち
イ『水晶の中の木漏れ陽』
ロ『赤い月の乙女を偲ぶ』
ハ『学び舎へ至る道』
ニ『戦乱を平定せし獅子の現在』
・後ろを支えし民草たち
A『帝都を支えし篭手──誰も見逃しはしない』
B『落ち行く太陽が憩う庭』
C『巡る思念の心臓部を眺めよ』
D『巡る思念の細血管──走れ』
・脚定まらぬ異邦の者たち
1『四燿の愛が悦ぶ音』
2『白き雛鳥の巣に一番近い場所』
3『世界が一歩進む場所』
4『紅燿石の十二時を望む場所』
『追伸──我が宿敵の友たる騎士の参加は必須事項である。不参加の場合は《紅蓮の小冠》は即座に業火へとくべられる。久方ぶりの邂逅を待ち望むもの成──《怪盗B》』