心の軌跡Ⅱ~重なる標~   作:迷えるウリボー

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62話 後日譚②

 

 

 カイト、サラ、クレア大尉。三人は情報の欠片をより集めていく。レイラ・リゼアートという女性の半生を。

 レイラ・リゼアートは帝国東部バリアハート出身の遊撃士だった。

 身分は平民。だが他の平民とは少々異なる事情があった。父親が《騎士階級》であった、という点である。

「騎士階級……? 公爵や男爵とは違うんですか?」

「ああ、カイトは知らないのか。公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵……その次の位の、土地や爵位を持たない階級でね」

「世襲の騎士家もいれば、名誉称号の非世襲の貴族もいます。ただ昨今の近代化や平民の台頭を前に、階級を捨てる家もあるようですが」

「レイラの家の場合は名誉称号ね。クロイツェン領邦軍の官職だったんですって」

 父親が領邦軍においてよく尽くし、それによって騎士階級の称号を受けた。領邦軍の平民にとってはある種尊敬される存在だったらしい。

 母親は弟カイルを産んだ後、早くに亡くなっている。父、姉レイラ、弟カイル。三人家族はバリアハートで過ごしていた。

「そんな家の事情だけど、レイラは領邦軍じゃなくて遊撃士の道を選んだ。あまりお父さんと仲が良くなかったんですって」

 平民として貴族に仕えた父親は家族を省みることがほとんどなかった。母親が亡くなってからもそれは同じで、弟カイルはレイラが育てたも同然だったらしい。

 そんな父親は百日戦役で殉職したという。

 幼心に父への憧れがあったのか、《騎士》という存在への執着もあった。レイラが得物として大剣を選んだのも、『民間人を守り支える』遊撃士を選んだのもそこに理由がある。

「レイラと私は、遊撃士になってから出会ってね。お互い筋の通し方も違うから喧嘩することも多かったけど……一緒に仕事をしていくうちに仲良くなったもんよ」

「なるほど、その話を聞く限り、彼女は帝国人らしい質実剛健さがあったのですね」

「サラ教官は不真面目の権化みたいな感じですしね。そりゃ仕事はちゃんとしてたんでしょうけど」

「二人共しばくわよ」

 レイラの遊撃士としての能力は優秀であった、と言っていい。サラのように史上最年少でA級遊撃士になったとか、諸外国で英雄的な活躍をしたとか、そういうわかりやすい伝聞はないが、一人の遊撃士としてバリアハートを中心に、帝国各地で民間人を護るために奔走していた。

「それと……やっぱりレイラの説明で外すことができないのは、《カイル君》のことよね」

 カイル・リゼアート。レイラの年の離れた弟で、レイラの後を追い遊撃士となった少年である。

 二年前の時点で十八歳。家族だったレイラへの憧れがあったのか。姉と同じ遊撃士の道を選んだ。やはり姉と同じく生真面目な性格だったらしい。

「サラ教官は、弟さんとの面識はあったんですか?」

「ええ。バリアハートに寄った時とかね。準遊撃士になったばかりだったし、実力ははっきりいって半人前だったけどね。頑張り屋だったから先輩や市民からも可愛がられてたわ」

 百日戦役後は家族がレイラ一人であったし、日曜学校などを除けば遊撃士協会に入り浸ることも多かったらしい。サラ以外にもトヴァルなど、多くの遊撃士とも面識があった。遊撃士の活動が制限される前であったし、カイトの知るリベールに近い活気ある支部の中で育ったのだろう。

「それって……」

「私、オリヴァルト殿下から君のことを多少なりとも聞いたことがあるけど。気付いた? カイル君と少し似てるのを」

「そう、ですね。オレも遊撃士協会に入り浸ってましたし」

「真面目かどうかは違うけどね」

「別にオレはサラ教官と違って馬鹿にされても驚かないですよ」

「あの、お二人とも話の続きをお願いします……」

 転機はやはり、二年前の帝国遊撃士協会支部連続襲撃事件である。

 帝国中の協会支部がジェスター猟兵団によって襲撃を受け、帝国遊撃士のみならず民間人をも震撼させた事件。この時、バリアハート支部もまた標的となった。そして正遊撃士の多くが調査のために出払うなか、支部に残っていた一人の準遊撃士の命が失われることになる。

「私は事件が発生したとき外国にいてね。しかもジェスターの親分……身喰らう蛇の足止めもくらってたからすぐに行けなかったから。後悔しっぱなしよ」

「……なにげに初めて知りましたよそれ。オレの知ってる執行者ですか?」

「え? あー、うん。もしかしたら知ってるんじゃない?」

「なんですかその生返事」

 いずれにせよ、カイル・リゼアートは襲撃により亡くなった。ジェスター猟兵団による凶悪な事件。あくまでその中の一人の犠牲者に過ぎないが、特に身内にとっての衝撃は強かったのだ。

「オレ、襲撃後のバリアハート支部に寄りました。そこでレイラさんとも出会った。その時のレイラさんは……あくまで普通の様子に感じました」

 カイトはその頃の様子を思い出す。あの時、他に受付のマルクス・ライズロアもいた。彼らからカイルの話は聞かされなかったので、レイラの心情を推し量ることはカイトだけでなくジンやアネラスにもできなかったのだ。

「私がレイラと再会したのは事件解決の後だけど……やっぱり、たった一人の家族を失った時の顔は酷いものだったわ」

 あの時点で、レイラは『帝国を離れる』と言っていた。そして二年後の四月、レイラは『外国から戻ってきた』と言っていた。

「私もそう聞いていた。でも帝国解放戦線に入ったことを考えると……それはブラフだったんでしょうね」

 クレア大尉が頷く。

「その通りでしょうね。元より闇に隠れて動いていただけで、組織自体は以前から存在していた。そもそもカイトさんが以前訪れていた二年前から既に合流していたのかもしれません」

「……」

 カイトは思い出した。ルナリア自然公園での戦いの時、Vは『最近仲間に入った一人がいる』と言っていた。それは、もしかしてレイラのことだったのか。

 いずれにせよ、ジェスター猟兵団の襲撃までレイラが遊撃士として活動していたのは事実だ。そこから何かがあり、レイラは帝国解放戦線に合流した。

 カイトはサラに尋ねた。

「あまり考えたくないんですけど、遊撃士だった頃からテロリストと繋がっていた可能性は?」

「さあ……考えたくないし、昔の彼女を知ってる私からすれば有り得ないと思うわ」

 やはり判明していないことが、動機の部分だ。

 帝国解放戦線は、明らかに鉄血宰相の命を狙っている。遊撃士が鉄血宰相によって帝国での活動を制限されているのは事実。実際にサラも怒り心頭であるし、カイトも無関心ではない。

 けれど復讐心に燃えるほどではない。

 サラが言った。

「やっぱり、カイル君のことは引っかかっていると思うわ。仲の良い姉弟だったもの」

「だから帝国解放戦線に?」

「もちろん、鉄血宰相はあくまであの事件を利用した側だからカイル君を直接に殺めたわけじゃないけど……」

 他人が空想するには、余りにも本人の心境を知らなさ過ぎた。

 ここから先は、本人に直接問いただす必要がある。テロリストとしての彼女を制し、対話の機会を作った後で。

「一つ、わからないことがあります。四月のパルム、今回の夏至祭。レイラさんの行動には、どんな意図があったのか」

 外国へ行くという謳い文句がテロリストとしての活動のための嘘だというのは、なんとなく察しがつく。実際、Gは四月の頃から徐々に過激に動き始めていたから、表舞台に現れ始めた時期も一致している。

 だが、レイラは元遊撃士。他のメンバーと比べて余りにも公に居すぎる。今となっては偶然とは思えなくなったパルムでの再会の目的はなんだったのか。

 サラは若干驚いたような顔をなった。

「わからない? カイト。理屈じゃないのよ」

「えっと……」

 サラからそう言われてしまえば、さすがにカイトも考えていたひとつの可能性に至らずにはいられなかった。

「自分から言うのが恥ずかしいなら、そこのお姉さんに聞きましょうか。どうなのよ、導力演算器の頭脳の持ち主さん」

 バトンを受け取ったクレア大尉が答える。

「翌五月にはセントアークの魔獣騒動がありました。ケルディックにいたらしきGの代わりにサザーラント州の見定めをしていた可能性はあります。ですが……」

 そうして、帝国の遊撃士ではないカイトを巻き込む理由が、この三人の中で共有される。

「カイトさんのことを、弟さんと重ねたのかもしれません」

 まるで確信を持った発言だった。

「あら、単なる推理じゃなさそうね。経験があるのかしら?」

「……まあ、これでも身内には兄も妹も弟もいたものですから」

 氷の乙女の私情か。気になりはするが、それよりもカイトはレイラとの関わりに意識が向く。

「オレのことを、弟さんと」

「ちょうど今の君くらいの年齢だったしね。カイル君の享年は。雰囲気は少し違うけど、君も《弟》でもあるわけでしょ。そういう空気って、一緒くたに感じるのよ。たぶん」

「オレは……どうすればいいんでしょうか」

 レイラのことを知るつもりではいた。だが急に中心人物にされてしまった気分だ。地下墓所で、震えてしまったことを思い出す。

 例えば王都グランセルの港でオルテガと戦った時、カイトは彼をなんとか説得することができた。それはオルテガの心情と同調したからこそできた説得だが、あくまでオルテガの愛憎の感情の外側にいた。

 今回は違う。自分は結局他人だが、それでもサラやクレア大尉が言うには自分はレイラの愛憎の内側にいる。

 自分が。レイラ・リゼアートというテロリストを説得しなければならない。それが、怖さを感じる理由の一つだった。

 サラは答えた。

「君がどうしたいか、でしょう」

 一言、あっさりとした物言いだ。

 けれどいつもの不真面目な教官ではない。そこには、五月の実習の前にカイトと話した真摯な空気がある。

「前にも言ったわ。君は重心の鏡写し。外側としての役割を担える。君が、君のやりたいように動けるの」

 重心の鏡写し。リィンと似ていて、それでいて明確に異なる存在。リィンにしかできないことがあるように、カイトにはカイトにしか成せないことがある。

「私も動くわよ。もちろん教官としての責務もあるけど、その中で出来ることを、一生懸命に」

「サラ教官」

 頼もしい言葉だった。

 思えば、リベールではエステルをはじめとした遊撃士の仲間がたくさんいた。

 帝国にはトヴァルがいることも知っているが、連絡はほとんど取れていない。

 だから、遊撃士の先輩がいる。これはカイトにⅦ組のクラスメイトとは違う頼もしさを与えた。

 そうして、先輩としての言葉を受け取る。ジン、アガット、シェラザード、他の沢山の先輩から受け取ってきた言葉と同じように。

「君もそうでしょ? その足でリベールの異変を駆け抜けて、その手で大事なものを守ってきたんでしょ?」

 カイトは頷いた。

「……はい」

 忘れていた。自分はずっと迷いながら戦い続けてきたのだ。その中で、自分だけの答えや強さを見つけてきたのだ。

 これからだって、それは変わらないのだ。

 いつしか、地下墓所で感じた震えは収まっていた。

 

 

────

 

 

 クレア大尉と別れたカイトとサラは、Ⅶ組と同流した。改めて、全員で招待されたバルフレイム宮に向かう。

 カイトの予想したとおり女子陣やマキアス、ユーシスから様々な反応があったが、サラが同席していたこともあって思ったよりも集中砲火はされなかった。

 緋の皇城の第二迎賓口。そこにはオリビエとアルフィン、そしてエリゼもいた。

「いや、君たちには本当に世話になってしまった。兄弟共々、士官学院に足を向けて眠れなくなってしまったくらいさ」

「私とエリゼなど、あのまま連れ去られていたらどんな目に遭っていたか……本当に、何度お礼を言っても足りないくらいですわ……!」

「私からもお礼を言わせてください。本当にありがとうございました」

 口々に感謝の言葉を述べる三人。内二人が皇族だけに、晩餐会で親しくなったとはいえⅦ組も恐縮せずにはいられない。

 緊張する者も多いⅦ組の中で、そこは年長者としてサラが落ち着いて答える。

「Ⅶ組設立のお礼をやっとお返しできたみたいですね。それにしても……帝国解放戦線、ですか」

 直前までレイラのことを考えていたカイトとサラにとっては、その組織名はまた別の意味合いを持ってい感じられる。

 アルフィンが神妙な様子で答えた。

「こういってはなんですが、不思議な人たちでしたわね。私たちを連れ去りながら悪意をあまり見せることはなく、それでいて内に秘めた激情にとり憑かれているような」

「姫様……」

 薬によって眠らされたアルフィンとエリゼだったが、その後はすぐに意識を取り戻し、医師より健康にも問題はないとの判断が下された。実際機会はあったにも関わらず、アルフィンを物理的に傷つけることはなかった。その恐ろしさはアルフィン自身がわかっていた。

 違和感を感じていたのはあの場にいたⅦ組の六人だ。

「『静かなる怒りの炎をたたえ、度し難き独裁者に鉄槌を下す』……彼らのリーダーの言葉です」

 その言葉にその場にいた全員が沈黙してしまう。

「皆さん!」

 皇城の奥に続く大廊下からセドリックの声が聞こえた。そのまま金髪の可愛らしい美少年が現れる。その後ろにはレーグニッツ知事もいた。

 近づく二人に、この場では大貴族に連なるユーシスが卒なく行動に出る。

「わざわざお見送りに来ていただいたのですか」

「ええ、お世話になったからには当然ですから。大聖堂に来てくださったユーシスさん、アリサさん、ガイウスさん、エマさん。そして姉の危機を救っていただいたカイトさん、リィンさん、ラウラさん、エリオットさん、フィーさん、マキアスさん。一人一人が、僕たちの命の恩人です」

「……もったいないお言葉です」

「お役に立てたのなら、こんなに嬉しいことはありませんよ、殿下」

 リィンとカイトが代表して答えた。

 レーグニッツ知事が前に出た。

「かなり変則的ではあったが、今回の特別実習も終了した。士官学院の理事として、まずはお疲れ様と言わせて欲しい」

「知事閣下も、混乱の中の陣頭指揮、お疲れ様でした」

 サラの言葉に革新派のナンバー2であるレーグニッツ知事は、優しく、それこそ息子を見るような目でⅦ組を捉えた。

「Ⅶ組の運用、立場の異なる三人の理事。色々思うところはあるだろうが、君たちには君たちにしかできない。学院生活を送って欲しい。それについては他の二人も同じだろう。殿下も、どうか安心いただければ」

「はは、わかった。もとより貴方については私も信頼しているつもりだがね。だが──」

 

「──どうやらお揃いのようですな」

 

 カイトの聞いたことのない声だった。

 落ち着いている、艶のある男性の声。しかし一声だけでわかる、人を惹き付けてやまず、慄かせてやまない覇気が感じられた。

 Ⅶ組のクラスメイトも、そのほとんどがカイトと同じく初めて聞く声だったようだ。

 その声の主はセドリックやレーグニッツ知事と同じ側から現れた。

 黒に近い茶髪の男性。この場で最も身長の高いガイウスに並ぶほどの背丈と、それに見合うがっしりとした体格。

 要人としての敷居をあげるためか、徽章やボタン、ファーなどの装飾品は多い。しかし貴族とは違い派手な印象を与えない黒基調のロングコート。

(この人が……)

 考えるまでもなく理解できた。この男が、鉄血宰相であると。

 帝国はおろかクロスベル入りする前からその存在を知らされていて、けれど今まで目にする機会がなかった、オリビエの()

「オズボーン宰相……!」

 セドリックが親しみのこもった、あるいは憧れたような声色となる。

 男は──鉄血宰相ギリアス・オズボーンは、まずは三殿下に目を向け恭しく一礼を捧げた。

「アルフィン殿下に於かれましてはご無事で何よりでした。これも女神の導きでありましょう」

「ありがとうございます、宰相」

 一言だけのアルフィン。苦手としているわけではない。ただ、やはり皇族の威厳や格式すら置き去りにする、凄まじい()()があるのは誰の目から見ても明らかだった。

(この人が、帝国の軍拡を押し進めて、遊撃士を排斥して、それで帝国解放戦線に……レイラさんに怨念を向けられている張本人)

 オリビエは言っていた。『君を反鉄血一派に仕立て上げる気は毛頭ない』と。

 だがリベールの異変を経験し、正遊撃士となって、そうしてトールズに飛び込んだ。そのカイトが初めてこの眼で見ることになったオズボーン宰相。カイトの親友であるオリビエが宣戦布告をした鉄血宰相。

 とても、楽観して眺められる存在ではなかった。

 オズボーン宰相はオリビエに向き直った。それによる水面下の火花を、恐らくはカイトのみが認識している。

「帝国解放戦線に関しては既に全土に手配を出しております。背景の洗い出しも始めていますので、オリヴァルト殿下もどうかご安心下さい」

「やれやれ、手廻しのいいことだ。これは来月の《通商会議》も安心ということかな?」

「ええ──万事お任せあれ」

 笑顔のオリビエとオズボーン宰相。空恐ろしいやり取りだった。

 そんな帝国政府代表と放蕩皇子のやり取りを無為に感じたのかはわからないが、オズボーン宰相はようやくⅦ組に意識を移した。

「失礼、諸君への挨拶がまだだったな」

 ガイウスを、エマを、フィーを、ユーシスを、マキアスを、エリオットを、ラウラを、アリサを見る。

 カイトを見る。

 そしてリィンに目を向ける。

「帝国政府代表、ギリアス・オズボーンだ。鉄血宰相という呼び名のほうが通りはいいだろうがね」

 アリサが「は、はじめまして、閣下」と引きつった笑みとなり、マキアスが「その、お噂はかねがね」とそれだけに留める。

 段違いの迫力だった。例えばガルシア・ロッシや赤獅子にVなどの大男と会ったことのあるカイトだが、彼らの雰囲気とはまったく違う。命のやり取りをしているわけでもないのに、心の奥深くを握られて身動きがとれなくなるような、そんな恐ろしさがあった。

「私も君たちの噂は耳にしている。帝国全土を股にかけての特別実習、非常に興味深い試みだ。これからも頑張るといいだろう」

 オズボーン宰相は学生たちから視線を外した。

「それと……久しいな、遊撃士。転職したそうだが、息災そうで何よりだ」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 サラの語尾が声色が怖いくらいに丁寧だった。

 Ⅶ組もサラの胸中は想像している。鉄血宰相に怒りをおぼえることも。

 そして、当の鉄血宰相は何喰わぬ顔で不敵に笑っている。サラの怒りなど、むしろ受けて立とうとしているかのようだ。

「ふふ、ヴァンダイク元帥は私の元上官でもある。その意味で私からも、ささやかながらさらなる協力をさせてもらうつもりだ。まあ、楽しみにしてくれたまえ」

 オズボーン宰相の真意もわからない。カイトのみが知っているオリビエとの対立構造があり、自分のことも多少なりとも知っているはずだ。それでいてなおこの余裕の態度を貫ける豪胆さ。『帝国の発展は鉄と血によってなされるべし』という謳い文句も冗談ではないのだろう。

 いずれにせよ、初めてカイトは、帝国の中枢とまみえた。

 帝国に来た目的は、一番には帝国を知ることがある。

 それでも、きっかけはオリビエの誘いだった。だから彼が警戒するこの人物を、自分はしっかりと見定めなくてはならないのだ。

「諸君らも、どうか健やかに。強き絆を育み、鋼の意志と肉体を養ってほしい。これからの──」

 自然、カイトの肩に力が入る。拳を握りこんで、鉄血宰相から目を離さない。

 例え一対一ではないとしても、時代の傑物との、これが最初の対話だった。

 男は、かつてカイトを希望に震わせた剣聖と同じ言葉で、けれど高揚ではない黄昏を予見させたのだった。

()()()()()に備えてな」

 

 

 

 






Result
今回の実習でカイトが再会した人(一般人も含め)
・クレア大尉
・フィオナ
・喫茶店店主ヘミング
・記者ノートン
・リシャール
・カリンカ
・モーリス
・ロイ
・怪盗紳士ブルブラン
・オリヴァルト
・エリゼ
・アリス
・レイラ・リゼアート
・G
・C
・V    以上16名

カイトが初めて出会った一般人じゃない人
・レーグニッツ知事
・蒼の歌姫クロチルダ
・セドリック皇太子
・アルフィン皇女
・テロリスト《S》

・鉄 血 宰 相



次回、新章……!
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