心の軌跡Ⅱ~重なる標~   作:迷えるウリボー

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64話 予兆~選択を越えて~③

 

 

 八月二十二日。自由行動日。

 今日の目覚めはいつもより遅かった。

「おはよう……ってカイト、君その格好はだらしがないぞ」

 私室の扉を開けたところでいきなりマキアスに説教された。今、カイトは寝巻きだった。

「カイト、貴方目が半眼なんだけど。なに、頭起きてる?」

 階段にきたところで後ろからアリサに追い抜かれてそんなことを言われた。反論の余地もなく半眼だった。

 ちなみに着替えないで寝巻きのまま食堂に行くことはないわけではない。フィーは四月の頃はよく()()だった。だからといってカイトのその行為がだらけていないとは言えないのだが。

 現在はシャロンが朝食を用意してくれているので、基本的に学生たちは席に座るだけでいい。それがやや過保護になっていると思わなくもないのだが、代わりに食器洗いは各自でやろうと決めているⅦ組である。

 また、食堂の席順に特に決まりはない。その日の気分だ。

 椅子を引いて席に座ったカイトは、隣にいたリィンにすぐさま心配された。

「カイト、大丈夫か? 寝癖もだが……いつも以上に死んでるな」

「……んー、そうだな」

 折りよくシャロンが尋ねてきたのだが、シャロンもカイトの様子を察する。

「あら……おはようございます、カイト様。本日は珈琲をお出ししますが、構いませんか?」

「構いませんよ」

「承知しました。朝のメニューも並べますので、少々お待ちください」

 既に食堂にいたのは、リィン、マキアス、アリサ、フィー、エリオット。ラウラとガイウスとミリアムなどは既に食べ終えて今日の活動を開始しているらしい。

 カイトを見るⅦ組の五人は、明らかに前日と違う様子の少年に対し声をかけあぐねる。昨日はカイトにしては学院から帰るのが遅かったし、その時から心ここにあらずなのにその理由を珍しくクラスメイトに話そうとしなかった。そこへ来ての今朝の寝ぼすけカイト。どうやって話題を振ろうか、という感じだ。

 そんなことをお構いなしにカイトに言葉の棘を指すのは、アリサであったり、たった今食堂に現れたユーシスくらいだったりする。

 彼はカイトを見るなり侮蔑した。

「おい。レグメント。今すぐ冷水を頭にかけてこい。そうでなければエリオットがオーボエでお前の鼓膜を舞台に演奏してやるぞ」

「とりあえずユーシスはオレに怒る時はレグメント呼びなんだね、うん」

「あの、ユーシス。それはちょっと僕も困るなぁ……?」

 帝都夏至祭開けのトリスタ。

 第三学生寮は今日も平和だ。

 

 

────

 

 

 午前中は久しぶりに保健室待機だった。先にトワに鍵を返してから、いつものベアトリクスの席に座った。

 夏場で学生たちも半袖の制服で、肌をよく見せている。その影響か部活動関連で保健室に来る生徒も多かった。

 フェンシング部のアラン。馬術部のポーラ。水泳部のモニカ。ラクロス部のフェリス……などなど。カイトは部活動も参加しないのと特別実習のカリキュラムで忙しいのもあって、基本的にⅦ組との交流が密なのだが、入学して四ヶ月も経てばたくさんの生徒と顔見知りにもなってきた。

 おかげで保健室待機も暇をしなくなってきた。基本的に報道紙を読むことの多いこの時間ではあったけれど、最近の記事はどこもかしこも西ゼムリア通商会議のことで持ちきりなので、若干読み飽きていたのもある。

 そうして今日の午前中は終わりだ。そして、午後はトワに会う約束をしている。

 リィンが旧校舎の調査をすると言っていた気がするが、今回は遠慮しておいた。先月の件もあったのでスルーはためらったが、朝の調子からして遠慮せざるを得なかった。自分も今の心境ではあまり集中できないだろうし、リィンから「無理はしなくていい」とも言われてしまった。

 朝食の時、集中できない耳で聞いた限りではリィンの他にユーシス、エリオット、エマ、ミリアムなどがメンバーになっていたような気がする。

 食堂で昼食をとり、カイトはその足で技術棟へ向かった。

「お、カイトじゃねぇか」

「クロウ先輩」

 ノックして、扉を開けて歓迎してくれたのは今やⅦ組の一員となったクロウ・アームブラストである。

「珍しく……もねぇか。お前さんはリィンに次いでここにくるもんな」

「部活動ない組ですからねぇ」

「くくっ、お前さんも慣れないねぇ。敬語はいいぜって言ってんのによ」

「でも、そう簡単には変えられないですよ。転入一週間でそれができてるのはユーシスとフィーぐらいじゃないですか」

「確かにな」

 軽口を言い合い、カイトは技術棟の中へ入っていった。

 クロウの『敬語はなしでいい』というのは、編入初日にクロウ自身が言ったことだ。特にリィンとカイトはクロウとの交流が深い。けれど他のⅦ組メンバーも彼との面識はそれなりにある。いきなり二年生が一年生のクラスに編入してきたなんて、ほとんどのメンバーはすぐに敬語を外せない。カイトの言った通り、お坊ちゃんのユーシスと野生児フィーは早々に敬語ではなくなっていた。というよりそもそもクロウに対して敬語ではなかった。

 リィンとマキアス、エマなどは未だ態度に困っている様子。他には、カイトとガイウスあたりは順応も早くクロウへの態度がフランクになりつつある。これも以前からのことで、まだ敬語そのものは外れていないけれど。

「あ、そうそう、今日荷物を第三学生寮に移すからな。手伝えよ」

「バイト代は?」

「俺様秘蔵の《ホットショット》でどうだ」

「いらねぇ」

「ぐっ……てめぇ、クロスベルにいたことがあるからって俺の聖典を罵りやがって」

 雑談は続く。そうは言っても別の人間もいるが。

「やあ、カイト君」

「お疲れ様。ARCUSの調整かい?」

 技術棟にいるのはクロウだけではない。アンゼリカとジョルジュがそれぞれの調子で声をかけてきてくれた。

「お疲れ様です、先輩方。今日は雑談に来ました」

「なるほど。歓迎するよ。仔猫ちゃんがいないのが残念だが」

「こらこら、アン。そういうのはやめなさい」

 変わらない先輩たちである。

「カイト君、お疲れ様ー!」

 トワもいた。

「会長、こんにちは。昨日はありがとうございました」

「ううん、少しでも落ち着けたのならよかったよ」

 今日のトワとは言葉少なげに意思疎通ができる。もちろん、昨日の通商会議の件を受けての話しだ。

 そんな二人の以心伝心が不可解に見えたらしい、クロウとジョルジュが怪訝な様子でカイトを見た。

「ん……?」

「やけに仲良しじゃねえか? お二人さん」

 トワがほとんどの生徒に愛らしい笑顔を向けるのはいつものことなのだが、試験班の四人ほどの絆を持っている生徒はそういない。強いて言うなら忠犬リィンがなかなかトワのパーソナルな領域に入りつつあることを知っているクロウたちではあったが。

「カイト君。さっそく話しちゃおうか」

「そうですね。色々聞きたいこともありますし」

 二人して目線を合わせ、カイトとトワは隣り合って座った。偶然にも、クロウ・ジョルジュ・アンゼリカと対面する形である。

 そしてトワが一言。

「私とカイト君ね、三人に報告があるんだ」

「えっ?」

「は?」

「……ゑ?」

 ピシッ……と音がした。

(あれ? なんか悪寒が……)

 と、カイトが身震いする。確かにここはジョルジュ特性の簡易冷房機もあって教室よりは涼しいが、それでも劇的なものではないはずなのに。

 気づいた。クロウは読んでいた雑誌を、ジョルジュは持っていたスパナを落としている。

 そしてアンゼリカの目が血走っている。

「そんな……トワが? 私のトワが……?」

「あの、アンちゃん?」

「許さないぞカイト・レグメント!! 私のトワを誑かしただとっ……!?」

 肩を掴まれたカイト。少年の頭がぐわんぐわんと揺れた。

「え、ちょっと待ってアンゼリカ先輩、何か盛大な勘違いをしているんだけど!?」

 拾った雑誌を丸めて、クロウがトワの頭を叩いた。

「つーか紛らわしいんだよっ! 結婚の挨拶かと思ったじゃねぇか!」

「ふぇ!?」

 ジョルジュもスパナを拾ってため息。

「席順もなんか家族会議みたいだったし。カイト君がトワを射止めるなんて、まさかの刺客が……って本気で思ったじゃないか」

「ふぇぇぇ!?」

 そう言われてから、カイトも気づいた。何も知らない、トワと仲の良い三人に対して、報告という言葉を使ったその状況は……。

「確かにそれっぽい……」

「もう! カイト君まで!」

 閑話休題。

「まったくもう……三人とも冗談が過ぎるよ」

「いや、紛らわしい説明したお前がちょっと間抜けなんだよ。ほれ見ろ、アンゼリカが煉獄に逝ったまま帰ってこねえじゃねぇか」

「うーん、戻ってくるまであと二十秒ってところだね」

「先輩方も変わらないっすね……」

 きっちり二十秒後、アンゼリカは息を吹き返した。

「──ブハァッ!? ハァ、ハァ……フ、フフ……やるじゃないかカイト・レグメント……ログナー家息女にして泰斗流を修めたこの私を、グフフゥ……ここまで追い詰めるとは」

「追い詰めたのはオレじゃなくてトワ会長ですけどね?」

「もう、だからこの話はいいってば!」

「トワ会長、この手の話に弱いんですね」

「だって……そんなの考えたことないし……」

「ま、いいか」

「カイト君は強いんだね、この手の話に」

「オレも強いってわけじゃないんですけど……って、その話はいいですから、もう話を進めましょうよ」

 閑話休題その二。

「……それじゃ、改めて、()()()の話じゃない真面目な報告です」

「おう」

「カイト君。その手の話はこの上なく真面目な話だ。それを冒涜するのは許さない」

「はい、アンは黙ってて」

「……」

 今度はトワが黙りこくってしまった。ちなみにアンゼリカは後ろ手で拘束されている。

「……今度のクロスベルで行われる通商会議。参加要請を受けたんです。オレとトワ会長」

 目を見開く三人がいた。

 カイトは昨日の話を、ガレリア要塞の件だけをぼかしつつクロウたちに説明した。

 オリビエの話も含め、トワは文官補佐、カイトは武官補佐としての立場が用意されていること。

「そして、トワはそれを決めたんだね?」

「うん、アンちゃんの言う通り。私にとっては滅多にない機会だし」

「そして、カイト君は悩んでいる、と」

「ジョルジュ君のもそう。カイト君には、たくさんの選択肢があるからね」

 試験勉強の時、あるいは導力バイク関係で色々話した時。カイトもトワも学院に来た経緯や理由を少なからず話している。だから、二年生たちも少なからずカイトの悩みの種を理解している。

 アンゼリカが言った。いい加減に真面目な空気だった。後ろ手は拘束されているままだが。

「これでも、一時期大陸を放浪したこともある。その検知から言えば……この選択は、ある意味君の精神性を表すようなものだね」

「先輩、それって?」

「特別実習で今までと同じように帝国を旅するのも、クロスベルに向かうのも、どちらもカイト君の行動理念に叶っている。帝国を知ることと、世界を知ること。それは君が何者であるかを示すことになるだろう」

「……サラ教官にも言われました。Ⅶ組のなかでのオレの立場は、オレが自由に決められるって」

 《重心の鏡写し》の話をした時のことだ。

「『帝国軍をよく知り、帝国のことを深く考えられるカイト・レグメント』になるか。それとも、『世界をよく知り、それを還元できるカイト・レグメント』になるか。果たして君の選択は?」

 カイトは考えた。

 無意識に、どちらかを選ぶのはもう片方を少し後ろにすることだと思っていた。自分にとってどちらも自分と同じくらい大切なものだから。

「アンの話と被るけど、付け足しておこうかな」

「たぶん、カイト君の答えはもう決まっているんじゃないかな? あとは回りの言葉をもらって少し、ほんの少し一歩を踏み出すことだけさ」

「……そう、ですよね」

 カイトは言った。

「例え特別実習の件があっても、オレの答えは半ば決まってた。クロスベルに行く……そしてそれを、オレの力に。Ⅶ組や、リベールで出会った人たちの力に」

 全ての国の、全ての人々を守りたい。そこにはⅦ組のメンバーもしっかり入っている。

 予想外だったのは、ずっと嫌っていたから、ここまで帝国に住む彼らを大事に思えるとは思っていなかったこと。仲間になれるとしても、親友になるとは思っていなかったこと。

 今の自分にとっては、ガレリア要塞か、クロスベルか。その二択で迷うことは、むしろそれだけⅦ組に向けている感情が確かであることを再認識することだった。昨日、サラやトワに言われたように。

「……わからねぇな」

「クロウ先輩?」

 ここで初めてクロウが口を開いた。カイトの悩みが真面目だからか、それともクロウも同じⅦ組に入ったからか、クロウもまた少し真面目な様子だ。

「……お前はⅦ組だろ。確かにクロスベルに行くのも手だが……お前が抜けたらⅦ組じゃねぇじゃねぇか」

「しかしクロウ、それではトワの周りに学院生がいなくなってしまう。トワを異郷の地に放ってしまうくらいなら、私は苦渋の選択でカイト君を同伴させることを選ぶ」

「お前もお前でわけのわからねぇことを言ってんじゃねぇよゼリカ。まぁ……トワを一人で行かせる心配もないわけじゃないけどよ」

 アンゼリカの頭を叩いたクロウは、ハァっとため息を吐いた。

「珍しいね、クロウがそんなことを言うなんて」

「クロウ君……ありがとう、心配してくれて。でも、私行ってみたいんだ。世界を知りたいから」

「……そりゃそうだろうよ。お前はどうしたって行くのはわかってるさ。だから反対しねぇんだ。意味がねぇからな」

 クロウの談では、逆にカイトには選択の余地があるから、反対のような態度を取っているのだろうか。

「外国出身でも、お前は確かにⅦ組だ」

「いや、それはさっきも聞きましたけど」

「お前がいなかったらフィーはどうなる?」

「フィーも最近は逞しく成長してますけど」

「誰がユーシス坊ちゃんとマキアスの喧嘩を諌めるんだ」

「むしろ喧嘩させとけばいいんじゃないです?」

「……いざという時のリィンを、どうするんだ」

「それは……」

 カイトとクロウだけが実感しているあの姿のリィンの話だ。

 別に自分がいなくても他の仲間たちがいるという思考と、確かにリィンを放ってはおけないのではないかという感情がせめぎ合う。

 けれど、これについてはそこまでの葛藤もなく前者が勝った。クロスベルを発つ時に、学んだ考えがあったから。

 パルムで仲間たちにさらけ出し、セントアークで女子二人の仲介をして。ノルドで助け合って、旧校舎でリィンのあの姿を知って。帝都では色々と自分の過去を知ってもらい、六人での戦術リンクを果たした。

 自分は、Ⅶ組にいなくてはならないのか。

 そして、クロウは紛れもなくカイトをⅦ組の一員としてくれている。

 カイトは笑った。

「嬉しいことを言ってくれますね、クロウ先輩」

「カイト……」

「なら、こう約束しましょう。クロウ先輩がリィンの面倒を見てください。先輩だって、Ⅶ組のメンバーなんですから」

「そりゃまあ……そうか」

「あのリィンをオレにしか任せられない。その理由があの時一緒にいたからっていうなら、クロウ先輩だって当てはまります」

 自分はトワを守ろう。隣にいれなくて、言葉尻りからも少しだけトワを心配しているらしいクロウの代わりに。

「ありがとうございます。クロウ先輩。おかげで決心がついた」

 ジョルジュの言った通り、最後の一歩を踏み出せなかっただけで、最初から選択を決めていた。

 その一歩は、クロウが押してくれた。自分がⅦ組の一員なのだと。仲間も自分を心配するだろうし、同時に信頼しているだろうと、理解したから。

「先輩もミリアムも来た、今のⅦ組は磐石だ。オレがいないからって揺らがない。そしてオレがクロスベル経験でを積んで帰ってきたら、Ⅶ組はもっと強くなる」

「……ちっくしょう、いい顔しやがるじゃねぇか」

 クロウはやれやれと眉尻を下げた。

 Ⅶ組への二人の編入生。ミリアムとは別の意味で距離感をつかみそこねているが、彼の能力や性格はⅦ組に知れ渡っていた。その分だけ信頼もできた。カイトにとっては旧校舎で一緒に死線をくぐり抜けた経験が大きい。

 彼は不足単位を満たせればまた二年生の授業に戻る。そうだとしても、やはりⅦ組の仲間なのだ。

「まったく、お兄さんは大変だぜ。後輩の背中を押さにゃならねえんだからな」

「頼りになる先輩、ですか。だったら同輩としてだけじゃなくて、ちゃんと先輩としての頼もしさを発揮してくださいよ?」

「言われなくてもやってやらぁ。約束だぜ、カイト。せいぜいお前の代わりにリィンを、Ⅶ組を守ってやる。だから──」

 バシっと、クロウはカイトの背中を叩いた。わざわざ机を回り込んで。痛いくらいに、しっかりと。

「お前はトワを護りきれよ。何があってもな」

 

      

────

 

 

 八月二十五日。クロウとミリアムも交えた実技テストを終え、いつものようにサラからスケジュール用紙が配られた。それをⅦ組十二人、全員で見た。

 

 

『八月特別実習』

・A班:レグラム

 班分:リィン

    ラウラ

    エリオット

    マキアス

    エマ

    ミリアム

 ※二日間の実習の後、指定の場所でB班と合流すること。

 

・B班:ジュライ特区

 班分:アリサ

    ユーシス

    フィー

    ガイウス

    クロウ

 ※二日間の実習の後、指定の場所でA班と合流すること。

 

・C班:クロスベル自治州

 班分:カイト

 ※西ゼムリア通商会議への参加とする。

 

 

「あら……これって?」

 一番最初に反応を示したのはアリサだった。彼女だけが特別なのではない。他の面々も、いつもと違う文面にわずかな戸惑いを覚える。

「教官、カイト……!? これは!?」

 マキアスが彼らしい様子で驚いた。

 ざわざわとどよめく仲間たち。驚いてないのは先に事情を明かされたクロウくらい。

 サラが一括する。

「はいはい、静かになさい! それぞれ説明してあげるから」

 そうして、頃合を見計らったようなタイミングでナイトハルトが現れた。やはりガレリア要塞についての説明の件で、カイトの件を気にしないように、あくまで冷静にⅦ組にレグラム・ジュライ特区の後のスケジュールの説明をしてくれた。

 そして現時点でできる全ての説明をし終えたらしい。ナイトハルトはサラへ目を合わせ、そのサラがカイトに顎で促した。

「──みんな」

 仲間たちがカイトに向き直った。カイトは、全員が見えるように立ち位置を変えて、できる限り全員を見つつ言った。

「……実は打診を受けてたんだ。クロスベル通商会議の参加要請が。武官補佐として」

「なるほど、お前が数日前に魂の抜けていたような調子だったのはそれが原因か」

「さっすが、ユーシス。ぐうの音も出ないくらいその通りだ」

 ユーシスに次いでリィンが尋ねた。

「もしかして、オリヴァルト殿下絡みか?」

「うん。オレがこの学院に来た理由。それと関わる部分で……誘ってくれた。まあ、学院に誘ってくれた時と似たようなものでさ」

 再三考えたことを、改めて仲間たちに告げた。

「正直、悩んだ。ガレリア要塞の件を抜きにしても、みんなと一緒に行けないことが少し寂しくて、オレ一人だけが抜けがけしちゃうのが申し訳なくて」

「カイト」

 ただ、一言だけのユーシスの相槌だった。それはどういう意味なのだろう。

「でも……オレは自分の目標と、何よりⅦ組(みんな)に恥じない、Ⅶ組(みんな)と一緒に成長できる自分でいたい。だから通商会議に参加して……成長してトリスタに戻ってくる」

 改めて、カイトは仲間たちの顔を見た。

「その……行ってきて、いいかな?」

 どんな返事をくれるかなんて、わかりきっている。学院生活、寮生活、特別実習。四ヶ月以上も一緒にいた。悩んで、困難にぶち当たって、壁を乗り越えてきた。

「君が()()なのは前から知っている。せいぜい、Ⅶ組の名に泥を塗らないようにしたまえ」

 マキアスがやれやれと笑った。

「心配しないでください。カイトさんの分も、精一杯実習をやり遂げてきますから」

 エマが純粋な笑顔で。

「任された。私たちもⅦ組として成長できるよう、全身全霊をかける」

 ラウラが頼もしく。

「レクターとオジサンによろしく! あと、お土産もいっぱい買ってきてね!」

 ミリアムが元気に告げた。

「俺の意見は変わらねえよ。しっかりトワのお守りを頼むぜ?」

 クロウは、数日前とは違う優しい顔つきだった。

「俺たちのことを慮って、大切な仲間が決めたことだ。行ってこい、カイト」

 リィンが、Ⅶ組の重心が、そう言ってくれた。

 ほら、やっぱり。トワが、何よりも自分が予想したように、仲間たちは驚きこそすれなんの躊躇いもなくせなかをしてくれた。

「……ありがとう! みんな、行ってくる!」

 最高の激励を受けて、カイトはクロスベルの地を再訪するのだ。

 

 

────

 

 

 その日から、もちろんⅦ組は大忙しだ。

 特別実習はいつも過密なスケジュール。加えてサラの趣味もあってか直前まで場所は教えられない。加えて今回はいつもより期間が長い上にガレリア要塞にも行く事になる。荷物の準備、実習地に関する知識の予習。実習開始まで残り三日。猶予はない。

 カイトも例外ではなかった。クロスベルへの再訪、会議参加国の情報収集、ミシェルたち遊撃士協会の人間への根回し。やりたいこと、やるべきことはたくさんあった。

 そして少年には、クロスベルへ出発する前に目下なさなければならないことがあった。

「頼む、アリサ! オレに指南をしてくれ!」

「はぁ!?」

 アリサの信じられない、という叫びがトリスタに木霊した。

 

 

 







オリ主が存在したり、原作と大きく変わる閃の二次小説だと、結構な確率で舞台がクロスベルの通商会議になるんじゃないか、というガレリア要塞君の不憫さ。

まあ原作よりもナイトメアになるよう頑張るからよぉ……


というわけで「????」改め……

第11章「通商会議~大陸繚乱~」


※時々活動報告などもあげているので、よければ見てもらえると嬉しいです~

軌跡本編のプレイ状況は? ※空零碧閃創黎

  • ・空から全作やってるぜ!
  • ・発売順じゃないけど全作やった!
  • ・初プレイ作品より過去作はやってない!
  • ・プレイ状況はまちまち(例:閃と空だけ)
  • ・軌跡本編? 知らんよ
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