心の軌跡Ⅱ~重なる標~   作:迷えるウリボー

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66話 8/29:西ゼムリアの行方①

 

 

 八月二十九日。まだ首脳陣の訪れる日ではない今日、カイトは各方面への挨拶周りや情報収集に当てる予定でいた。

 朝、カイトは遊撃士協会に顔を出した。そうしてスコット、ヴェンツェル、エオリア、リンとも再会を果たした。もっとも、彼らは遊撃士としてストイックなところがあるので再会の喜びもありつつ淡々としたものではあったが。

 特務支援課への顔出しをはじめとして回るべきところは多いが、聖ウルスラ医科大学を次の目的地とした。例によってアルス・A・アレスレードとの面会を果たす。

「お久しぶりです、カイトさん」

「よ、アルス。よかった……変わりなさそうで安心したよ」

 アルスとは市長暗殺未遂事件の前後で面会に来て以来だった。アリスと同じくたまに文通はしていたけれど、カイトも学院生活に忙しく以前の交流と比べると少なくなっていた。今回直接会うのもおおよそ五ヶ月ぶりだ。

「それが……トールズ士官学院の制服なんですね」

「ああ、そうだ。深紅の制服はオレたちⅦ組だけでさ。基本は緑か白だけど」

「どんな色であっても憧れます。トールズは帝国屈指の名門校ですから」

「そっか、そうだよな。アルスにとってはそう思うか」

「育ちはいっそのことクロスベル。ですけど、この体に流れているのは帝国の血筋ですから」

 アリスの弟であるアルス。《セイランド症候群》によって導力に対する拒否反応を示し、高度な医療施設での生活を余儀なくされた少年。

 世界は導力革命によって飛躍的な発展を遂げた。街中、専門施設、果ては街道にさえ導力器は溢れている。アルスにとって世界は煉獄のような場所なのかもしれない。

 カイトには、いくつかアルスに聞きたいと思うことがあった。

「《教団事件》の時は大丈夫だったか?」

「それが……」

 カイトがアルスを見てきた中でも、目に見えて嫌な記憶のようだ。

「病気が増悪した時のように調子を悪くしてしまって。マフィアの人たちが病院を占拠して、かえって導力器の効果が薄れたはずだったんですけど……」

 昨日ミシェルと情報交換をしたように、教団事件の最中病院はグノーシスによって操られたマフィアによって占拠されることとなった。また、病院の解放に尽力したロイドたちが言うにはその時マフィアはグノーシスによって魔人化(デモナイズ)──突如として人間の体そのものが悪魔のように変化した状態となったらしい。

(アルスの具合が悪くなったってことは、少なからず導力の影響が強かったってことだよな? それって……)

 少年の話を聞き、カイトは少し黙考してしまう。

 精神感応や操作、身体能力の異常な増加という常識を超えた効能を生み出したというグノーシスの影響なのか。

 生返事でアルスの話を聞いていると、少しいただけない感想が聞こえてきた。

「でも、ロイドさんたちや……(イン)という人が僕を危険のない場所まで送ってくれたんです」

「んぇあ」

 変な声が出てしまった。支援課はともかくとして銀の野郎、そんなとこにも噛んでたのか。

「どうかしたんですか?」

「いや……アルス、尊敬する人はちゃんと選ぼうな」

「? はい」

 わかってないらしい。仕方ない。

 ともかく、多少のアクシデントはともかく深刻な影響はなかったらしい。

 それとデリケートな話題なので口には出せないが、教団事件の首謀者ヨアヒムは、アルスの担当医でもあった。D∴G教団幹部司祭としての彼は相当に非道な人物で、秘密裏に患者にグノーシスを服用させていたらしいのでその辺も心配だったのだが。他の患者と比べてグノーシスの中毒症状もなかったようで、そこは安心した。

 アルスの話を聞くだけではなくて、カイト自身も自分のことを話す。リベール時代のことをアルスに話した延長のようなもので、トールズの話はアルスにとっても興味を引くものだったらしい。実習の話、帝都夏至祭の話、ノルド高原の話など。話題は尽きることはない。

 そんな中、アルスはこう言った。

「カイトさん、その……最近の姉のことを、ご存知ないですか?」

 

 

 

8/29

──西ゼムリアの行方──

 

 

 

「……アリスの?」

 来たか、とカイトは思った。

 数日前まで、下手をすれば通商会議以上に自分の精神を混乱させてきた人物だ。混乱しているのは自分に原因があるのだが。

 それが目の前の少年の姉ともなれば、必ず話にあがるだろうというのは誰でもわかる。なにせ、三人含めて親交を深めているのだ。

 アルスは思いもよらないことだろうけれど、カイトにとっては少し恥ずかしくて気まずい。けれどアリスのことについて話さなければいけないこともあった。だからアルスからその話題を振ったことは渡りに船で、それと同時に少しためらうような感覚を覚えた。

「オレも学院生活で忙しくて文通だけだった。けど先月辺りから顔を合わせる機会も多くなってさ」

「そうなんですね。僕も会えてはいないんですが、手紙の雰囲気にどこか違和感があって」

 アルスの言うそれはやはり、七月の頃の話らしい。アリスが自分に向けて『父親のしたこと』について話した時期と重なる。

「ちなみにアルスは親父さんとは会えてるの?」

「いいえ。父も忙しいみたいで」

 半ば予想通りの答えだった。

「アリスの雰囲気が……というと、具体的には?」

「僕は、姉にいつも迷惑をかけていると思います」

「アルス……」

「悲観じゃないですよ」

 なおもアルスは柔らかく笑った。

「でも、僕の病気があって、父のことがあって。姉には時間とか、色んなものを奪ってしまっている。だから……そんな自分でも何かの役に立てるようにしたいんです」

 アリスが弟のことを疎ましく思っている、とはとても考えづらい。故郷イステットからクロスベルまでの遠い距離を、少なくとも父親よりも頻繁に訪れている。弱冠十六歳の、まだ何者でもない、そして貴族の娘として生きてきた少女が、だ。そんな少女が弟のことを大切に思っていないとは、誰が考えるだろうか。

 だからアルスの想いは自責観念が強いと思うが、とはいえ彼のようなクロスベルに篭ってしまっている状況であれば仕方ないのかもしれない。

「教団事件で僕自身には何もなかったと伝えましたし。姉に何かがあるとすれば、たぶん父のことじゃないかと思うんです」

「……うん、そうだろうな」

 アルスは賢い。少なくとも、多数の同年代の弟妹たちを見てきたカイトはそう感じている。父親の性格のことも、時勢のことも、物事を外側から冷静に俯瞰している。

「父は僕のことを邪険にしているけど……それでも、僕にとっては確かに一人の父親なんです」

 父親の行動や性格を把握して、なおも父親への感情を向ける。彼はある意味で強い存在だ。

「姉にとってもそれは同じ……。だから、今姉さんは父のことで余裕がないんだと思います。だから」

 改めて、アルスはこちらをしっかりと見てきた。

「カイトさんが、姉さんのそばにいてくれたら安心です」

「……恥ずかしすぎるんだけど」

「姉さんからよく話は聞きます。僕のような家族でもなくて、女学院の友達でもなくて、でもそのどれでもない、カイトさんがいてくれたら……」

 そこからの言葉は続かなかったけれど。カイトはこう答えた。

「わかった。オレもアリスと『協力する』って約束したからな」

 

 

────

 

 

 病院から帰ってくると、もう時刻は正午近くまで迫っていた。

「やっぱり病院だけのためにクロスベルに来てるアリスってすごいな。バスだけじゃなくて、病院にも列車が通ったら便利なんだけど」

 クロスベル空港前までバスで行けたので、そのまま近い特務支援課に顔を出す。が、誰もいなかった。

「うーん、さすがに忙しそうだな。セルゲイ課長までいないとなると……」

 さて次はどこへ行こうかと思う。少し考えた後に思いつきで黒月かもしくは旧ルバーチェ商会に足を運ぶことを考えたのだが、却下した。

「さすがに単身で死地に潜り込むとかだめだよこれ。それより腹ごしらえだ」

 やはり遊撃士が最もよく利用する龍老飯店か。港湾区でクロスベル玄人らしくオーゼルの屋台に舌鼓を打つか。無難に中央広場のヴァンセットにするか。

「うん、久しぶりだし《モルジュ》に顔をだそう」

 西通りにあるベーカリーカフェだ。その界隈では有名なパン職人がいて、職人やその娘、バイトまでもがレベルが高い。

 ちなみにそのバイトはロイドの友人であるオスカーのことで、カイトも少しだが話したことがある。

 西通りはアパルトメントや雑貨屋など、クロスベルにおける中流階級の住人が多い場所だ。その分カイトも住人からの依頼で訪れることも多かったし顔見知りも多い。

 ブレッドやトーストも美味しいし、定期的に変わる創作パンの味が個人的には好きだったりする。そんなわけで、何を食べるのか吟味するのも楽しみの一つである。

「さーて、何を食べようかなぁっと」

 店内に入りオスカーに一声。トレイを持ちトングを装着し、麵麭(パン)を見定める狩人へと変貌する。そうして、棚に並べられた獲物を横に歩きながら見定めていく。

 マフィン、メロンパンなど……そして次に『極厚カツサンド!』と心の中で叫びながらそれに手を伸ばした時、まったく同じ商品に横からトングが伸びてきてカイトのトングと重なった。

「おっと……すみません、失礼しました」

「こちらこそ、失礼しました」

 小さな手、落ち着いた声。女性のものだ。

 カツサンドに自分と同じ速度で手を伸ばす女性なんて珍しいな、と思いながら顔を向けた。

 まず意識が向いたのがシスター服。これはまた珍しい。クロスベル大聖堂からわざわざここまで来たのか。

 そして次に桃色の髪の毛に注目してしまう。シスター服の女性がベーカリーカフェで男性が満足するような極厚サンドとは。

「どうぞ、オレは他のでも──ってリースさんじゃないですかっ!?」

 店内で盛大に驚いてしまう。他の客がびくりと震えるくらいには。 カイトの眼の前の女性──リース・アルジェントはそれでも表情を大して変えず、目を瞬かせて数秒の沈黙を作った。

「……カイトさん、ですか?」

「はい! お久しぶりですね! 影の国以来ですか!」

「すみません、目の前の宝物に夢中になっていて気づきませんでした」

「いやそれはいいですけど……いや、というかどうしてリースさんクロスベルに!?」

 リベールで共闘したケビン・グラハムの幼馴染みにして部下でもある女性。七耀教会の星杯騎士がどうして。

 ところがリースは再会の微笑も束の間、その瞳を真剣なものに変えた。

「カイトさん、余計な詮索はお互いなしにしましょう。ここでは、お互いに成さなければならない使命があるはずです」

「リースさん……それって、例の──」

「クロスベル随一のベーカリー《モルジュ》の極厚カツサンド、その他諸々。これを買い食さなければ、あらゆる人々に申し訳がたたないのですから」

「あ、うん。リースさんってそうでしたねそういえば」

 カイト以上の狩人の眼光だった。いっそ知人との再会なんてなかったくらいの態度だった。

 十分後、リースはホクホク顔で左手に大量にパンの入った袋を抱えつつ、右手でカツサンドを頬張っていた。

 シスター服で、カイトと一緒にクロスベル市内を散策しながら。

 シスター服で。

「なるほど、オリヴァルト殿下の伝手で帝国の学院に」

「はい、遊撃士は一時休業中なんですけど、今回は通商会議の随行団として来ることになったんです」

「それにしては早いクロスベル入りですね?」

「そこはほら、あの規格外のはっちゃけ皇子の差し金ですし」

「……理解しました」

 納得した様子で、リースはカツサンドを完食した。そして歩くのは止めずにすぐさま二個目に突入。さすがの腹ペコシスターだった。

「……正直、最初は制服でカイトさんだと気づきませんでした。以前は白基調のシャツだったと思いますが」

「やっぱりその印象が強いですよね」

「とても似合っていますよ。深紅の制服。以前よりも凛々しくなったと思います」

「えへへ、ありがとうございます」

 リースの言葉や声色は平坦なものだが──相貌は未だホクホク顔である──それが彼女の平常運転であるのは影の国の件で知っている。ケビンを介しての出会いと協力だったが、自分たちの間には確かな絆が育まれていることも。

「ところで、ケビンさんは?」

 リースはケビンの従騎士だった。影の国以前はケビンが好んで単独行動をしていたらしいが、本来騎士は複数人で行動するのが常。古代遺物(アーティファクト)絡みで動く聖杯騎士ならそれも当たり前だと思う。

 ところが、リースはやっと真剣な表情になってカイトに待ったをかけた。

「……再会は嬉しいです。ですがカイトさん、ここでは私の本職のことは内密にしてほしいんです」

 リースは現在クロスベル大聖堂に赴任しているという。そして聖杯騎士は普段巡回神父ないし巡回シスターを装って行動する。

 その言葉だけで察してしまった。クロスベルには古代遺物の気配があるのか。

 期待の特務支援課。中堅遊撃士に少年遊撃士、そして風の剣聖。東方系シンジケート、最強の猟兵団。七耀教会の星杯騎士までいるときた。そして明日には西ゼムリア各国の首脳陣がやってくる。

 増々クロスベルは混迷を深めている。これから、大陸はどんな時代を迎えるのだろう。

 不安はつきないけれど、カイトは笑顔を浮かべた。

「……わかりました。なんたって、オレたちは仲間ですからね」

「ありがとうございます」

 ケビンのこともリースのことも信頼している。いざという時は協力するし、助け合う。

 それは言葉に出さずとも、あの時影の国にいた仲間たち全員が想っている。そう確信できることなのだ。

「いざとなったら帝国にいてもクロスベルに飛んでいきますよ」

「ふふっ、承知しました。貴方の実力は折り込み済みですからね」

 立ち止まり、互いに握手し約束をする。いつか標が重なるその時のために。

 リースをクロスベル大聖堂まで送って、カイトは散策を続ける。そのまま歓楽街を通ってアルカンシェルを通り、公演に向けての練習をしていたイリアやリーシャにお目通りいただき、新人などの紹介もされた。久々の太陽の姫と月の姫は変わらずに元気だった。

 そのまま裏通りへ。正直、興味本位で少しだけ旧ルバーチェ商会に脚を運ぼうともしたのだが、以前よりも危険な気配を増した跡地周辺を前に、さすがに尻込みしてしまった。

 そうして数時間かけて各地区を周って現在の空気を感じ取ったところで、受け取ったばかりのENIGMAⅡにミシェルから『遊撃士協会に戻ってきなさい』と通信が来た。

 改めて遊撃士協会を訪ねる。そこにいたのは半ば予想通りの人物だった。

「来たか、カイト」

「お久しぶりです……アリオスさん」

 既にミシェルと話しているアリオス・マクレイン。クロスベルの守護神たる風の剣聖は、以前のままの真面目な風体でいた。

「共和国への出張でしたよね。お疲れ様です」

「お前こそな。単に依頼の積み重ねや戦闘における研鑽だけではない、実りある出会いを重ねたらしい」

 最後にアリオスと話したのはカイトがクロスベルを出発する、まさにその日だった。わずか五ヶ月だが、アリオスが言うような経験や出会いが多かった。

 風の剣聖にも、それがわかるか。

「通商会議の間だけではありますけど……新人として教えられるだけじゃない、アリオスさんの助けになってみせますよ」

「ふふ……今回、俺以外の四人は本会議中はクロスベル市郊外の哨戒を担う予定だ。会場に存在する遊撃士は俺とお前の二人……期待しているぞ」

「はいっ」

「さて、カイトとアリオスも来た。本命ももうすぐのご到着ね」

 カイトは疑問を投げかけた。

「ミシェルさん、本命って?」

 カイトも後々アリオスに会うつもりだったし、再会の席を用意するだけが目的ではないとは考えた。しかしミシェルの口ぶりからして、スコットたち他の遊撃士が来るわけでもないらしい。

 ミシェルとアリオスは言う。これから現れるのは今日のカイトの目的、つまり情報収集と挨拶の両方が叶うものだと。

「当然遊撃士協会(私たち)も諸々の情報網は掴んでるけど、それはあくまで点と点を浮きぼらせているだけにすぎないわ」

「黒月や赤い星座の行動、あるいは各国の随行団の構成などだな。それはあくまで立会人(オブザーバー)としての俺にしか与えられん。各国の情報網をあたっても結果は同じ……例えば二大国の目論見はわかりようがなかった」

 本来遊撃士は政治に対する不干渉の原則を持つ。通商会議はあまりにも政治的なイベントで、遊撃士に求められるのは会議そのものの安全保障のみ。あるいはどこかの国があまりにも非人道的な言動に対しては反応できるが、そんな可能性はないに等しい。

 結果、今日までの遊撃士協会クロスベル市部が持つ情報は限定的なものだった。それではあまりに心許ない。この都市にいるのは《赤い星座》なのだから。

 だから、とミシェルは続けた。

「今回は点と点を線にするのにうってつけの子たちの助けを借りるのよ。他でもない、政治的干渉が可能な彼らにね」

 その時、遊撃士協会の扉が開かれた。

 ここに至って、ようやくカイトも思い至る。気配で気づいた、とかの達人のそれではないが、少年も鍛えられた思考を駆使してその答えを得た。

「──ロイド! みんな!」

 言うまでもない。入ってきたのは特務支援課だ。

 先頭に立っているのはやはりリーダーであるロイドで、カイトを見て驚いている。

「カイト……!? 君か!?」

 カイトの顔を確かめ、そして目線がわずかに下に。

「おお……! 久しぶりじゃねぇか、随分と様変わりしたなぁ!」

 ランディも同様の反応だ。以前着ていた仕事着でないから、というのもあるだろう。

 彼自身は変わらない様子。それが、カイトに一息をつかせた。

 エリィも声をかけてくれる。

「お久しぶりね、カイト君。元気そうで何よりだわ」

「みんなこそ。一時解散したって聞いたけど……!」

 入ってきたのは五人。ロイド、エリィ、ランディ、そして残る二人。水色髪の少女がいない。

「そっか、ティオがまだなのか。それで……そっちの二人が──げっ」

 その二人を、正確にはさらに内一人の姿を目に捉えて驚愕した。

「私は《星見の塔》以来ですね。特務支援課準メンバー、ノエル・シーカーです!」

 まず、一人は以前共闘したノエル曹長。茶髪でショートボブの彼女は現在は私服を兼ねた軽装であり、警備隊服とは違って活発に見える。そういえばカイトやロイドたちと同世代だったか。

 そして問題のもう一人は。

「ふふ、久しぶりじゃない。また会えて嬉しいよ、カイト」

 ワジ・ヘミスフィアがいつもの笑みを浮かべてそこにいた。変わらずの美少年。変わらずの不敵な笑み。そして、カイトの主観として変わらずの鬱陶しいヤツ。

 不良グループのリーダーがまさかの警察入りである。

「ノエルさんはともかく…ワジが準メンバぁ?」

 ランディが頭をかいてエリィが困ったように笑った。

「あー、お前の意見ももっともだがよ」

「そうよね……普通はそういう反応よね」

「本当だよ。競売会にも参加してた不良ホストが警察入りってどういう神経してんだよおたくの課長はさぁ」

 ノエル以外の支援課とカイトはしっかり競売会に参加していたので人のことは言えないのだけど。

「フフ、僕みたいなのが警察で働けるんだからクロスベルもいいところになったよね」

「自分で言うんじゃないよ……」

 呆れるカイト。ロイドもワジの奇行はもう諦めているのか、同情の目線を向けつつ改めて久しぶりの再会に疑問符を浮かべた。

「カイトは? リベールに帰ったエステルたちとは違って、帝国に行ったって聞いたんだけど」

「ああ……そうだよな。先輩とミシェルさん以外には大して説明せずに行っちゃったし」

 帝国入りをオリビエから打診されていた期間は長かったが、それでも決意を固めた時期は入学間際、そこから記念祭の殺人的な忙しさもあって、その事情はほとんどの知り合いに直接伝えることができなかった。

 特務支援課もそれは同様らしく、彼らは遊撃士協会の人間からしか事情を聞かされていない。黒の競売会(シュバルツオークション)でガルシアと激戦を繰り広げ、そしてセルゲイの操縦するボートでエルム湖を渡ったのが最後の対面だった。

 だからカイトは気持ちを新たに、遊撃士とはまた違う信念を持つ一人の人としての立場を明らかにした。

 例え自分がその場にいなくても世界にはたくさんの同志がいるのだと。遊撃士とは違う立場でも自分は何かを護ることができるのだと。教えてくれたのは、他ならない特務支援課なのだから。

「改めて……トールズ士官学院特科クラスⅦ組所属、帝国通商会議随行団守護隊隊員、カイト・レグメントだ。よろしくな、みんな!」

 

 

 








空FC:マーシア孤児院の少年
空SC:ルーアン支部所属準遊撃士
空3rd:クロスベル支部所属正遊撃士
零:空3rdに同じ
閃Ⅰ:トールズ士官学院特科クラスⅦ組
碧:帝国通商会議随行団守護隊隊員

立場の変遷がなかなかに……

物語内容を知っている軌跡作品について……

  • すべて、最初は自分でプレイした。
  • 動画、その他メディアで知った作品がある。
  • 全て別媒体で知った(プレイ有無は問わず)
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