心の軌跡Ⅱ~重なる標~   作:迷えるウリボー

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第13章 激動の時代
88話 11/5:東へ①


 

 

 狭い山道の中、双頭の大蛇が牙をちらつかせながら襲いかかってくる。それを前転しながら躱し、少年は蒼色の波を纏った。

 反撃に銃を向けたが、それをする前に視界の外から放たれた斧槍の斬撃が大蛇の頭を一つ跳ね飛ばした。狙いを変え、新たな攻撃対象を見定める。

 アーツ駆動、│水砲撃《ハイドロカノン》。左から襲いかかる二足歩行の巨大カモノハシを水圧で吹き飛ばす。

 多重駆動、同時に駆動していたもう一つの波が収束。│絶対零度《ダイアモンドダスト》が、遠くで七耀の輝きを纏っていた│軟体魔獣《キャニオンドローメ》を、その反撃すらさせずに凍てつかせた。

 種の違う魔獣同士でも怒りはあるのか。背後から魔獣拳法でも繰り広げんばかりのヒツジンには背面撃ちで炎の弾丸をお見舞いしてやる。

 周囲の殺気が消え失せる。最後に、氷漬けとなったドローメが斧槍によって粉々に粉砕されたのを見届けた。

 戦闘終了だ。

「──こんなもんか」

 静寂。真冬の太陽だけが暖かみをもたらす山道で、魔法と銃で魔獣を倒した茶髪の少年──カイト・レグメントは呟いた。

 巨イナル影ノ領域ぶりの魔獣との戦闘だが、正直に言って大した脅威でもなかった。

 そんなカイトに声をかける人物がいた。斧槍で魔獣を屠った金髪の青年──ルーク・ライゼンだ。

「ほら、とっとと出発するぞ。暗くなる前にバーゼルに着いておきたいからな」

 落ち着いた──それでいてぶっきらぼうなルーク。カイトは今さら不機嫌にならず、冷静に返答して歩き出す。

「そうだね」

 カイトはⅦ組としてクロスベルの現状を確かめつつエレボニア帝国入りするために動き始めた。同時に遊撃士としてカシウスから請け負った依頼もあり、情報収集の後にR&Aリサーチ派遣員と合流することも目的に含まれている。

 そんなカイトの共和国での道行きを支えつつ、任務を補佐する役目がルークには任されていた。

 二人は昨日──11月5日に出発した。リベール南東、共和国との関所であるヴォルフ砦を通過。リベール−共和国の国境は山岳が(そび)えたっており、ハーケン門北の平原とは打って変わって自然の威容が待ち構えていた。クローネ峠を思わせる険しい山道だ。ただ整備された街道であり、通過は比較的安全だった。

 共和国側の関所では入国審査も受けたが、友好国だけあって帝国ほどの尋問は受けなかった。そうして共和国南西オージュ州に無事入れたはいいが、それでも山道が続く上に第一目的地である《バーゼル市》への距離は長い。山道の頂上付近で見つけた山小屋を借り一泊。翌6日に山を下り、現在は山道の終点まで来ていた。

 歩きながら、カイトはなんとなしに口を開いた。

「それにしてもヒツジンにベインコブラ……リベールの魔獣もいるんだな」

「というより、山岳周辺の生息分布なんだろ。ビルガッソや今のドローメはオージュ峡谷でもいるぞ」

「へぇ、さすがに詳しい」

「お前よりはな」

 カイトの言葉数は、彼を知る者からすればいつもより少なく感じるだろう。少なくとも、Ⅶ組や遊撃士仲間としゃべるような態度ではない。

 カイトとルークは、初対面では敵対していた。今はそのわだかまりもないが、思うところはあった。

 沈黙の後。

「その、オルテガ……さん、元気?」

「なんだよ、藪から棒に」

 ルークは笑った。

 オルテガ・シーク。元情報部特務兵、現R&Aリサーチ顧問。カイトとは二度敵対している。

 ルークは歩き続ける。カイトもついていく。

「情報部の中じゃ古株だったけど、まだまだ現役だよ。副所長も頭上がんなくて」

「副所長……ああ、カノーネ大尉か」

「カノーネ()大尉な」

 カノーネ・アマルティア。昔はエステルと共に女狐と罵っていたが、今では有能なキャリア・ウーマンだそうだ。リシャールを支えているのは変わらない。

 民間調査会社R&Aリサーチは、リシャールが所長となり興した企業だ。その経緯だけに元情報部の人間は多い。

 カイトとしては所長のリシャールとの交流が密だったせいで、会社の方を意識することが少なかった。

「今も、こういった諜報活動をすることが多いのか?」

「こんな緊急性の高い任務とか、諜報畑の仕事だけじゃない。市場調査とか、動向調査とか、そういったものがほとんど。情報部時代と比べりゃ気楽なもんだぜ?」

「そっか……」

 カイトの表情がどことなく柔らかくなった。

 影の国で、ルークもリシャールと同じような迷いや決意をかかえていたことを知った。いや、情報部でリシャールに付き従い、クーデターに参加したものの多くが同じ状況に立っている。

 それでも。ルークや、リシャールや、オルテガは、自分の道を邁進しているのだと知った。

 相槌の後、カイトもどう言葉をかけるべきか悩む。

「……」

 ルークも、特に何かを付け足すことはなかった。

 変化が生じたのは、平原道を抜け、オージュ峡谷前──クロイツェン廃道への分岐がある三叉路までやってきた時だった。

「嘘だろ? なんでここに人形兵器が?」

 オージュ峡谷の入口に構える、結社の人形兵器たち。大きな歯車を持ち、金属の体を浮遊させるゼフィランサス。ずんぐりとした体、両腕に機関銃を備えるファランクス。

 それらが三体ずつの計六体、峡谷道入り口を塞いでいる。

 近くの草むらに紛れたカイトとルークは思案した。自分たちならそこまで労せずに倒せる戦力だ。問題は、どうして結社の影のない共和国に人形兵器がいるのか、ということ。

 カイトの知る限り、結社は今帝国で活動している。怪盗紳士しかり、蒼の深淵しかり。

 ルークが斧槍を構えた。

「ま、例の結社は資金繰りでちょくちょく闇ルートに開発品を流してるらしいしな」

「ってことは……」

「ああ。恐らくは──」

 ここに放たれた人形兵器は、結社以外の組織によって動いている。

 いずれにせよ、放置できるわけがない。カイトは戦術オーブメントと双銃、そして魔導銃──ずいぶん多くなってしまった得物たちの調子を見繕う。

 だが、ルークに肩を叩かれた。

「え?」

「お前はさっきの魔獣で大規模アーツぶっ放したばかりだろ。ここは人生の先輩に任せろよ」

 カイトが呼び止める間もなく、ルークは一人体を晒して機械人形たちの前へ躍り出た。

 知能も意志もない鉄くずとの戦闘。ルークは口上もなにも語らず、覇気をためることもなく、移動中も当たり前にそうしていたのだというように、斧槍を構えている。

 機械人形たちが臨戦態勢となり、ルークへ銃口を向けた。警告もなく発射されたその連射は、ルークが一瞬前にいた大地を穿った。

 縮地のように接近したルークは、斧槍を袈裟懸けに振り上げた。ファランクスの右肩が斬り裂かれる。すぐさまゼフィランサスが後部の回転歯車をルークにぶつけてきた。数年前にリベールで現れた人形兵器たちだが、プログラムの更新でも受けているのか。行動に変化を感じた。

 ルークが弾かれる、ただ致命傷は避けた。うまく大地を転がって復帰する。近くには二体のゼフィランサス。

 ルークは斧槍を振り切った。沈黙は一瞬、飛ぶ斬撃が二体を巻き込む。余波が後ろに隠れるカイトのもとまで及んだ。

 ただ、一発で優位には立てない。斧槍使いの動きは大きい。一撃の隙に一体のファランクスがルークの背後を取っていた。頭部ごと前に突っ込む殴打だ。

 それを、斬撃を振り切ったままのルークは身体を回転させて受け流し、反撃を見舞った。それでゼフィランサスの一体が爆散した。

 その一連の動きを見てカイトは驚く。

(影の国の時よりも強くなってる。それに今の……《斬月》だ)

 それは八葉においてリシャールがカシウスから学んだ型だ。リシャールと共闘し、リィンと共に過ごすカイトはよく知っている。

 特務兵でも斧槍持ちは少なかったが、特にルークは苛烈な動きが目立つ存在だった。対して、彼と一緒にいるオルテガは滑らかで無駄のない動きだった。

 ルークは元々の力強さをそのままに、大ぶり故にあった隙がむしろ斬月のカウンターの契機となっている。

 結果、ルークは隙らしい隙を見せなかった。あっという間に人形兵器どもを蹴散らして、二人はオージュ峡谷道を行く。

 峡谷道は脇道にそれなければ高低の起伏こそ少ない。だが曲がりくねった道はそれなりに長く、やはり魔獣も多かった。

 これまでと同じようにその魔獣たちを倒して進む。

 はっきり言って、道中の魔獣たちはカイトとルークの二人にとって歯牙にかけない相手だった。カイトは《並戦駆動》と《多重駆動》を駆使して執行者並みの戦闘力を発揮しているし、ルークも大規模な攻撃はできずとも達人に近い体裁きを身につけている。移動のための疲労を考え、二人は前衛後衛を交互に担当しながら進んでいた。

「どうだよ。お前はカシウス准将と引き分けたっていうけど、俺だって役立たないわけじゃねぇだろ?」

 そんな風にルークが笑った。

「いや……正直驚いたよ。以前とは見違えたからさ」

「こっちは所長にしこたま鍛えられたんだ。情報部じゃなくなっても必死になるさ」

「そっか。やっぱり、戦闘技術も必要になるのか?」

「もう軍の工作員じゃないから必要はない。が、今みたいな情勢が来るってことは社員全員がわかってたさ」

 得意げに笑うルーク。

 カイトとしても頼もしく感じる。影の国で共に戦ったリシャールの意志が受け継がれているのかもしれない。

 知識や、力や、決意が。

 そして……

「やり残したこともあるからな」

「え、それって──」

「おっと、見えてきたぜ」

 カイトのまごついた言葉はルークに遮られた。カイト自身、口に出そうとしたものが曖昧だったから続けられず、ルークが顎で指した峡谷道の先を見ることになる。

「人形兵器が意図的に配置されている以上、純粋に街と街道を隔離するためって理由がしっくりくる。街も近いからな」

 山間に大きな都市が見えた。今自分たちが歩く場所と同じように、山々の間にすり鉢のように広がる都市。リベール、クロスベル、エレボニア、カイトが今まで旅してきた都市の景観とはまた異なっている。

「もう少し峡谷道を歩く必要があるが……日付が変わる前に到着できるな。工学都市バーゼルに」

 

 

────

 

 

 11月6日、夕方。バーゼルに到着した。

 工学都市という名は、リベールの工業都市ツァイスや帝国の鋼都ルーレを思い出させる。だが、ツァイスはZCFを除けば牧歌的なリベールの一都市。ルーレは他の四大都市より狭いが、上下2階層の鉄の都市。バーゼルはそれ以上に広く、大きく、雄大な山岳の麓にあって穏やかさを感じさせる。

「なんか……川の向こうとこっちで雰囲気が違うんだな?」

 峡谷道から市街に入ったカイトたちは、クロスベルのようなビルの群れに歓迎されることになる。それだけでなく、歩道と歩道の間には導力車が走る道路も整備されている。

 遠く見える場所には、レンガ基調の数階建ての家屋が並ぶ街並み。これは自分たちがいる場所とは全く違う空気感だ。

 ルークが答えた。

「こっちはヴェルヌ社や鉄道の駅もある新市街。向こうに見えるのが伝統的な職人街。どっちもバーゼルの見どころさ」

「なるほど」

「それでカイト、どうする?」

「うん、まずは休憩しよう。それと今の共和国は経済恐慌なんだ。素通りするにしても情報も集めたい」

「わかった、リーダー。なら職人街に行こう。いい宿酒場がある」

 二人は新市街から職人街へ移動する。

 宿酒場《石切り亭》。どこの街とも変わらず、酒場を兼ねる一階は広い。だが、中は閑散としていた。

 いや、それだけではなく張りつめた空気があった。

 ルークが店主に宿泊の手続きを済ませる間、カイトはそれとなく店員や客に聞いてみる。それでも、大したことは出てこない。「経済恐慌だから金回りが悪いのだ」としか答えてくれない。

 陽の光が落ち、導力灯の明かりがまばらに灯る頃。早めの夕食を済ませた二人は、夜の職人街に繰り出した。

 まだ、二人の間にはある種の気まずさがある。それは二人の仲の悪さを意味しない。二人の旅の理由が緊迫したものであるのは事実だし、それ以上に今のバーゼルの空気にあてられていた。

「経済恐慌……それでみんなが貧乏だから機嫌が悪いってわけじゃないよね」

「カイト、お前……」

「え?」

「クロスベルとか、トールズにいたのに経済を知らねぇのかよ。解像度低すぎないか?」

「う、うるさいな! トールズ、座学はレベルが高くてついていくのがやっとだったんだ」

「ったく……」

 ルークは肩をすくめた。

「株価暴落、企業倒産、落伍者増大……当然それもあるだろうが、准将や所長が言ってたじゃねえか。テロが起きてるって」

「あ……」

「空気が張りつめてるのは、それが理由だと思うぜ」

 ディーター()()()によるIBCの資産凍結、それによる経済恐慌やテロリズム。これが現在の共和国を包んでいる空気感。

 内戦のような眼に見える焔ではない。一見してだれもが普通に生活をしている──ように見えて、常に命を脅かされている不安感。

「それなら、確かにあの空気も納得はするかも」

「導力停止現象下とも違う、独特な空気だよな。リベールは経済で後手に回ったことは少ないから」

 ルークは続けた。カイトがジャケットにつけている支える篭手の紋章に目を向けた。

「情報収集。当然、遊撃士の肩書きは使うよな」

「もちろん」

 正遊撃士である以上、カイトは一つの支部に縛られずに活動することができる。国境さえ、本来は障壁にならない。今カシウスから受けた依頼もある以上、現地の依頼は現地の遊撃士に任せてもよい。

 だが、顔を見せて情勢を理解しておくべきだとは思った。

「じゃあ、さっそく遊撃士協会に行こう。場所は知ってる?」

「悪いな、さすがにそこまでは。この職人街にあったとは思うんだが──」

 

 ──爆発音が聞こえた。

 

 遅れて衝撃が肌をざわつかせる。鳥たちが鳴き飛び立つ。

 思わずそれぞれの得物に手をかけた。至近距離で起こった爆発ではない。衝撃と爆音は遠くからやって来たもので、自分たちの身体にダメージは全くなかった。

 夜空に星々がまばらに煌めく時間帯だ。瞬間的な光の膨張で、その爆発が新市街で発生したものだというのは簡単にわかった。

 二人して即座に動き出す。職人街から新市街を見ることができる見晴らしの良い場所へ。欄干へ手をかける。高層ビルの上層の窓ガラスがいくつも吹き飛んでいた。

 発生源が新市街とて、職人街も静寂ではいられない。音を聞きつけて人々が集まってくるカイトとルーク、二人の後ろがにわかに騒がしくなった。

「ジスカール親方!」

 男女限らない喧噪の中、若い男性が焦ったように言った。呼ばれた相手らしき、初老の男性のいかつい怒号が響いた。

「ああ、奴らに違いねぇ……野郎ども! 慌てんじゃねぇぞ! 避難者を迎え入れる準備だ!」

『ウィーッス!!』

 いくつかの気配は遠のいていくが、それでも野次馬たちは多い。仕方ないとも言える。この時期に旅行者は少ないだろう。地元民が住む場所を破壊されて冷静でいろ、という方が難しい。

「……行こう、ルーク」

「異論はない。人助けは俺も賛成だ」

 二人は走り出す。さっき通った道だとか、数日の移動後の疲れなどと言うものは考えない。

 目的地は新市街。

 初めての場所であろうが、関係ない。支える篭手の矜持にかけて、動くのみだ。

 夜の帳が降りる中。暗い職人街を進む。

 とはいえ、二人とも田舎のリベール育ち。導力灯があれば暗闇とは程遠く、視界は確保できる。

 行先は工学都市バーゼル、その新市街。職人街と新市街を繋ぐ道はいくつかある。導力車が通る車道か、あるいは都市の中心を横断する歩行者用の橋梁か。

 どうやらバーゼルでは、都市開発の一環として街区同士を繋ぐ路線が開発されている途中らしかった。カイトにとってはユミルのケーブルカーを思わせる風体だ。いずれにせよ、まだ開発途中の段階だ。

 二人は急ぎ橋を使って新市街へ向かう。橋のある場所は川近くで、この都市で最も標高の低い場所だ。必然的に新市街を見上げることになる。少しずつ爆炎を上げて燃え上がるビルに近づいていく。

「まずは民間人の避難を──」

「いや、それは後回しだ」

「ルーク……どうして?」

 遊撃士の性だろうか。民を助けることを第一とするカイトは、元特務兵の冷静な判断に思わず眉をひそめてしまう。

「俺たちは土地勘がないんだぞ? 誰をどこに避難させるって?」

「……」

「もちろん一般人の安全は最優先だ。だが地元警察や遊撃士たちに任せる。余裕があればそれを手伝うぞ」

「はぁ、わかったよ。じゃあ、オレたちは何をする?」

「おいおい、なんのためにこれを構えてるんだよ」

 斧槍を肩に当てる。金属音が響いた。

「十中八九テロ、昼間の人形兵器も噛んでる。斬った張ったがあるに決まってる」

「……了解!」

 新市街にたどり着く。細かい道路はあれど、この街区の目玉は中央広場とも言える広大な空間だ。

 爆発の中心となったビル。昼よりは人の数は少ないだろうが、それでも正面玄関から人が次々と出てくる。

 その人たちや、バーゼル駅構内から出てきた者たちを襲うように──人形兵器が待ち構えていた。

 各所の交差点や階段などの分岐点を塞ぐように、ゼフィランサスやファランクスが多数点在している。

「予想通りかっ」

 ルークは斧槍を振りかぶった。まずは橋の出入口を守っていたゼフィランサスを一刀両断。すぐさまカイトが水砲撃(ハイドロカノン)で残骸を吹き飛ばした。

 さらに次、最も近場の戦闘領域を見る。年若い女性が一人、ファランクスの集団と戦っていた。遊撃士であると直感する。拳法の使い手。実力はまずまずだが、突然のテロと人形兵器の急襲に押されていた。

「助太刀──するぜっ!」

 ルークが回転し、斧槍を横なぎに振り払った。飛ぶ斬撃は白光を放ち、円盤のようにファランクスを薙いでいく。

 女性もこちらに気づいた。

「……アンタたちは!?」

 発音に違和感を覚えた。カイトたちとは異なるイントネーション。けれどはっきり伝わる言葉。まるで、ケビンの独特な方言のような。

 カイトはソウルブラーを発動させた。第四世代、そしてENIGMAⅡの多重駆動。幾重の時の波動が雨霰のようにファランクスの数体を半壊させる。

 残るは数体。一気に形勢が傾く。女性はファランクスに肩を向け、

 

「月華流──双月」

 

 一気に掌底を放った。ファランクス一体が吹き飛び、残る敵を巻き込んでいく。

「大丈夫ですか!?」

 カイトたちが女性に駆け寄る。

「助かったネ。貴方たちは、遊撃士?」

「俺は違うが……」

 ルークがカイトを見やる。少年は自分の紋章を示した。

「リベールから来ました、カイトです。貴女は?」

「私も遊撃士。シャオリンよ」

 女性──シャオリン。髪を両サイドでそれぞれシニヨンにした、どこか年若い雰囲気を持っていた。カイトよりはやや年上か。

「細かい話は後で。オレたち、数時間前にバーゼルに来たばかりなんです。どういう状況なんですか?」

「数時間前って……徒歩でリベールから?」

「はい」

「なるほど、それがあったのね……」

 シャオリンはどこか得心がいったようだった。

「ごめんなさい、こっちの話ヨ。とりあえず、貴方たちを当てにしていいの?」

「もちろん」

「ただ、俺たちは土地勘がない。人形兵器の殲滅を担当して、住民の避難はあんたたちにお願いしたいんだが、構わないか?」

 シャオリンもルークの方針を否定しなかった。

「それじゃあ……とと、状況を話していなかったわね」

 走りかけ、シャオリンは語った。

「わかってると思うけど、これはテロ。人形兵器はただの使い捨て。敵は──《真なる憂士団》だ」

 

 

 







お久しぶり……!

リベール時代の帝国入り:帝国解放戦線
現在状況での共和国入り:真なる憂士団

テロリストと縁ある男、カイト・レグメント
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