心の軌跡Ⅱ~重なる標~   作:迷えるウリボー

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36話 標を求めて②

 

 

 影の国へ巻き込まれた、十六人目の協力者。

 それは、意外過ぎる人物だった。彼は一瞬だけ驚くも、その達人ともいえる実力を証明する速度で手に持つ太刀に手をかけて叫ぶ。

「何者だ!? 名乗りたまえ!」

 お決まりの光景だったが、予想外すぎる人選のせいで仲間たちでさえ初動が遅れる。

「これは……」

「なんとまあ……」

 オリビエ、そしてエステルをはじめとして誰も二の句が継げない。

 影の国に囚われた人物はリベールの異変にてケビン・グラハムと協力した仲間たち、という認識だった。

 いや、ある意味ではその認識は間違いではないのだろうが。

 見覚えのある黒色の軍服──過去リベール王国軍に存在していた情報部のそれだ。

 整えられた金髪はまだまだ艶やかで、壮年の男性というには生命力を感じさせる。

 元リベール王国軍大佐、アラン・リシャールだ。

「リシャール大佐! ……あ、大佐じゃなかったっけ」

 カイトは叫びつつ、一拍おいてから改める。おそらくこの場にいるリースを除く全員は、同じ間違いを踏むことになるだろう。本人が訂正しなければ一生気づかない気がするが。

 リシャールは、まだ臨戦態勢を解かないが、一瞬現れた殺気は消え失せていた。目の前にいる人物が果たして本物なのかどうか、判断しているところだろう。

 いかに卓越した武人であろうが、この状況は埒外だろう。現に、同じ経験をした十五人は初見ですべてを理解できた者はいない。よくて余裕を崩さなかったジンとオリビエ、理詰めを駆使したヨシュアというところだろう。

 やがて『少なくとも敵や罠ではないのだろう』という理解に至ったのか、リシャールは構えも解いて仲間たちと相対した。

「君たちは……どうしてここに? いや、そもそもここはどこなのだ?」

 まず正面にたつリースやエステル、ヨシュアたち。次に彼が敬うクローゼや同僚とも言えたユリア、さらにはオリビエやミュラーたちに言葉をかける。

 リシャールにとっては、ここにいる人とは浅はかならぬ縁がある。彼は少し複雑そうな心境をしていた。一方の仲間たちは最初の驚きこそ消え失せ、すでに再会を喜ぶ笑顔の嵐だ。

「できれば、今のこの状況を教えてもらえると、助かるのだが……」

 リシャールは、困ったように笑うのだった。

 例によって、十何度目かの状況説明である。リシャールは最初こそ疑問符を浮かべ続けているものの、やがては彼らの心理状況も仲間たちと同じものになっていく。

「なるほど……《影の国》に《影の王》。尋常ならざる力と目的をもって、我々を飲み込んだか」

「状況は理解していただけましたか?」

「ああ、リース君。……しかし、いささか拭えないものもあるがね」

「それは?」

「何故、私などという存在が君たちと同じような場所にいるのか、ということさ」

 状況説明はリースが中心となって行っていた。ケビンの様態も落ち着いてきたので、彼を除く全員がこの会話に同席している。

 リシャールの自嘲的な言葉。それが何を意味するのか、判らないものはいなかった。

 リシャールは過去、この場の多くの仲間たちに対して敵として立ちはだかった。リベール王国軍情報部のリシャール大佐は、軍事クーデターをもくろみ、デュナン公爵を新王とする傀儡政権を生み出そうとしていた。

 結果としてそれはエステルを中心とする遊撃士と仲間たちによって防がれた。

 歴史は勝者に味方する。リシャールの行いは国家に対する反逆者となった。

 仲間たちは息をひそめるが、彼の憂いを否定できるものはいない。彼にとっては、まさに刃を向けたエステルやカイトや、人質としたクローゼもいるのだ。なかなかおいそれと輪に加わることはできないだろう。

 だが、状況は安穏としていられない。彼の《剣聖の後継者》としての類まれなる実力は頼もしいの一言だ。

 何より、この場に彼を拒むものは一人もいない。リシャールに愛国心が備わっていることは知っている。彼を嫌い否定する市民がいるのは当たり前だろうが、同じように彼を信頼する確かな理由がる。

「でも、大佐は結社がグランセル城を襲ってきたときに協力してくれたじゃない!」

 カシウスの知略の結果ではあるが、リシャールは情報部の部下と共に結社の手先から王都グランセルを守った。その功績を持ってアリシア女王陛下から恩赦を賜っている。心理はともかく、法的な意味で彼を縛るものは何もない。

「ボクはさ……あんたに騙されはしたけど、同じように女王様から恩赦をもらってる。今は配達業をやってる。そんなボクがいるんだし、大丈夫じゃないの?」

 ジョゼットは朗らかに笑う。彼女は言う通り、リシャールと同じ立場だ。そして彼女の協力を拒み、否定する者はいない。

「大佐が協力したまさにその時、エステル君たちと敵対していたのは僕さ。姫殿下を追い詰め、エステル君を小馬鹿にし、カイト君と盛大な喧嘩をしたのは僕だよ。貴方は少し、楽観的になってもいいと思うのだがね」

 オリビエも同じようににこやかだ。その言葉遣いにはむしろ『貴様は慎重になれ』と青筋を額に浮かべるミュラーだった。

「……お話を聞く限り、貴方を拒む理由は見当たりません。なんでしたら、星杯騎士団への協力という建前でも構いません。私たちには、少しでも助けが必要なのです」

 場を進めるリースが妥協案をあげる。真面目なリシャールにとってはこれくらいが落としどころだろうか。

 リシャールは観念したように片膝をつき、そして笑い、主にクローゼたちに向けて首を垂れる。

「……承知した。アラン・リシャール、リベール王国に背いた逆賊の身。貴方がたを元の場所へと送るため、どうかこの身を剣として振るってほしい」

 

 

────

 

 

 リシャールの封印石が浮いていた場所は、優しくも荘厳な黄金の光が煌めく迷宮だった。ならばその次に広がる景色は、《影の迷宮》という呼び名が正しいのだろう。

 新たに仲間を解放した後は、解放された人物が探索班に加わるというのももはや恒例となっている。影の迷宮を探索するメンバーは、リース、エステル、リシャール、ヨシュア、そしてカイトだ。

「魔獣ではなく、魔物か。本当に不可思議な空間だが、心なしか、雰囲気は《封印区画》に通づるものがあるな」

 すでに何度目かの戦闘を終えていた。リシャールはトロイメライという異分子はあったが、過去に仲間たち九人を相手に戦ったほどの実力者だ。戦闘強者であるミュラーやジン、ヨシュア以上に頼もしく、大抵の魔物を一刀のもとに切り伏せている。まさに達人だ。

「さすがリシャール大佐ね、頼りになる!」

 明朗快活、エステルがはにかんだ。ヨシュアもリースも納得の反応に頷くのだが、当のリシャールは心なしか背を丸めたように見えた。

「だから大佐では……」

「あはは……」

 たまたま近くにいたカイトだけが、彼の哀愁を理解できた。

 だがどうにもできそうにない、とカイトは思う。自分だって気を抜けばそう呼んでしまうし、心の中では『大佐』で定着している。

「服役してたけど、リシャールさんの腕は変わりませんね」

「はは、そういう君は封印区画で見たときと様変わりしているね」

「そうですか?」

「ああ。心・技・体。全て、異変を通して鍛えられたようだ。初めて会った時は、ずぶぬれで殿下の後ろに隠れていた小さな少年だったが」

「え、え? そんなことありましたっけ……?」

 情報部クーデターの時、早退したリシャールの印象が強かったのは、晩餐会でのデュナン公爵の王位継承に関する話だ。あの時の、カイトの中で矛盾を生むような愛国心と行動に戸惑っていた。

「そうか、君にとってはグランセル城での時間が強いか。覚えていないかい? ダルモア氏の事件の時だ」

 会ったなんて、そんなことは……いや、あった。

 孤児院放火事件の最後、ダルモアを逮捕した瞬間。あの時、カイトは逃げるダルモアを追う際怒りのあまり先行し、そして失敗し海に落ちた。

 ダルモアは駆け付けた親衛隊にとらえられ、カイトはエステルたちに助けられた。そしてカイトは無茶な行動をクローゼに泣かれながら怒鳴られたのだった。今思い出しても死ぬほど恥ずかしい。

 そういえば、あの時リシャールに出会っていたか。

「あはは……懐かしいですね」

「あの時の君は、何物でもない少年だったね。それが今はリベールを背負って立つ遊撃士だ。見違えたものだよ」

 少し、リシャールの言葉に影が差した気がした。彼は真面目なので、昔のことを思い出して気まずくなるのだろう。まったく同じ空気感を、祝賀会の夜に二人して生み出した覚えがある。

 だからカイトは、話を変えることにした。

「今、リシャールさんは何を?」

 リシャールをはじめ元情報部の兵士は、ジョゼットたちと同じように恩赦を賜っている。何人かは軍属に戻っているとも聞くが、リシャールは戻っていない。

「今は、ルーアンで《R&Aリサーチ》という調査会社を経営しているよ」

 リシャールや腹心だったカノーネ、そして部下の情報部と共に開いた民間会社だ。まだ立ち上げてからそれほど経っていないが、そもそも社員が軍の情報部のスペシャリストたちなので、腕を心配するほうがおかしいのだろう。

 本社がルーアン市とのことだが、そういえばリシャールはルーアン市の出身だった。

 カイトにとって気になるのはリシャールだけではない。そのことについてはリシャールも理解している。

「ルークについては今は言えないが、オルテガ殿は世話役として助けられているよ。私も、カノーネ君も」

 オルテガ・シーク。カイトや仲間たちに立ちはだかった、斧槍を自在に駆使する老兵。その実力は確かで、きっと仲間たちもそう簡単には倒せない。

 ルーク・ライゼン。同じく斧槍を使う情報部の兵士だ。血気盛ん様子はあるが、オルテガと同じくらい強敵だった。

「カノーネさんもいるんですね。……ちょっと怖いな」

「君たちにとってはそうだろうが、あまり責めないでくれたまえ。彼女も純粋なんだ」

「あはは……」

 いずれにしても、因縁があった情報部の人間たちは、元気にやっているらしい。彼らも根っからの悪人ではなかった。改心して恩赦も得られた以上、今更火花を散らせる必要もない。

 リベールは今、平和だ。内数人は現在進行形で影の国なんてとんでもない被害を受けているが。

 リシャールは穏やかな顔つきで言った。

「君も里帰りの機会に、どうか寄ってくれ。大したもてなしはできないだろうが、歓迎しよう」

「はい。同じ故郷同士、仲良くしたいですね」

 

 

────

 

 

 その後、五人は順調に迷宮を踏破した。影の迷宮は怪しい空気はあったが、仲間たちは達人も含めた歴戦の猛者だ。カイトに不安はなかったし、仲間たちも同様に心を落ち着かせていただろう。

 ところが、十七人目の封印石を見つけたときは、全員が驚いていた。封印石が浮かぶ広間の奥に、その人形は見守るように立ち尽くしていたのだ。

 見上げる。七アージュを超える巨体の正体は全員が知っていて、固唾を飲むような緊張感を生んだ。リースも直接見たことはなくとも、教会の情報網で知っていたという。

 結社《見喰らう蛇》が開発したゴルディアス級戦略人形兵器、《パテル=マテル》。リベールの異変にも表れた一人の執行者が使役していた超常の人形兵器。

 本物かどうか、この場に専門家はいないので判らなかった。元執行者のヨシュアも、予想はできても確たる判断はできないという。

 だが、封印石の中にとらえられている人物は判った。それは予感でもあって直感でもあって、確信でもあった。

 慎重に封印石を回収し、庭園に戻って仲間たちを呼ぶ。

 ケビンを除く十五人。一同は仲間たちが現れた時の頼もしさでもなく、リシャールが現れた時の驚きでもなく、強い緊張だった。

 エステルはリースから封印石を受け取り、掲げる。彼女がもっとも真剣で、お見つめていて、そして優しい笑みだった。

 封印石から光が解き放たれる。まっすぐで強い光が膨張して、仲間たちの視界を少なからずくらませた。

 そして現れたのは、おおよそ《影の国》には到底ふさわしくない、安らかに眠って笑みをたたえる一人の少女だった。

 身喰らう蛇の執行者。リベールの異変でも遊撃士や王国軍を苦しめた。《殲滅天使》レン。

 本気で殺し合った。少なくともレンは戦いの中でエステルたちを殺すつもりでいた。カイトは琥珀の塔での戦いで、仲間の助けがどうなっていたかも判らない。

 それだけの緊張を生む少女が今、無防備すぎる姿で寝ている。いつもと同じ、フリルが付いた白色のドレス。物語に登場して、国中から愛されるお姫様のようだ。

 仲間たちのほとんどは、動くに動けなかった。寝ている目の前の少女のあどけなさと、過去に仲間たちを恐怖のどん底に陥れた姿がどうしても重ならない。

 動いたのはエステルとティータだった。二人は少女の下へと無防備に駆け寄り、その後ろでヨシュアが彼女たちを見守っている。

「レン……」

「レンちゃん!」

 複雑そうなエステルと笑顔いっぱいのティータ、けれど二人とも嬉しさがいっぱいなのは判る。

「……エステル、ティータ……?」

 少し喉を鳴らした後、瞼がうっすらと開いて、まず少女二人をぼんやりと眺めた。

 現実として、彼女が最悪の犯罪者であることに変わりない。だけど彼女をそれだけで見れない仲間たちなのもまた事実だった。

 レンはまだ、寝ぼけまなこだった。

「うふふ……エステルもティータも、そんなに……した顔で……お子様……ら」

 言葉は口の中で消えてすべては聞き取れないけれど、それでも幸せそうな顔をしているのは判る。

 本当に猫のようだ。幸せそうな顔をして、また寝ようとする。

 そして猫のように、眼を急に見開くと後方へ飛んだ。

「どうして……!? なんでエステルたちがここにいるの!? どうしてレンがこんな変な変な場所にいるの!?」

 その驚きは仲間たちと全く変わらないものだった。一方で、その金色の瞳の揺らぎかたは尋常でなかった。それは、目の前にいる人たちとの関係性ゆえなのだろうか。

「レン、落ち着いて聞いて。これには訳が──」

「近寄らないで! それ以上近寄ったらレンはエステルを殺すわ!」

 少女は明らかに殺気立っていた。それこそ猫のように、近づけばその手に出した大鎌を振り下ろすような。

 埒が明かない。仲間たちも彼女を制圧できるほどの実力者はいない。確実にどちらかは後戻りできない負傷を伴うことになる。

 そんな状況をどうにかできるのは、同郷に他ならない。ヨシュアは努めて穏やかな声でレンに語り掛ける。

「レン、本当に久しぶりだね。《中枢塔》以来だね」

 異変以降、それぞれ目的をもって大陸各地を旅することになったエステルとヨシュア。実は、二人はその目的にレンを見つけることも加えている。異変以降《結社》にも戻っていないというレン。

 エステルの遊撃士としての能力と、ヨシュアの結社時代の能力と情報網。それらを駆使して大陸中を回っていた。カイトは会えなかったが、一瞬だけクロスベルに来たこともあったと聞いている。

「僕らは君を捕まえようなんて思っていないよ。とにかく一度、君と話がしたかったんだ」

「あたしたち、あれからずっとレンのことが気になって、……こうして会えてよかった。ちょっと想像と違った形だけど」

 異変前後のことは当然仲間内で共有している。《中枢塔》で仲間たちがレンを倒した後、太陽の少女がレンを力の限り抱きしめたこと。

 だけど、レンはまだ信じ切れていないらしい。殺気は揺らぎ、けれど湛える笑みは悪魔のような怪しさを見せる。

「うふふ……わかったわ。エステルってば、上手いこと言ってレンを捕まえるつもりでしょ?」

「ちょ、ちょっとまってよ! そんなつもりじゃ」

「何だか知らないけど見たような顔がぞろぞろいるわね。さすがにレンを捕まえる以上、弱いあなたたちも学習したみたいね?」

 殺気がどんどん高まっていく。戦いになれた、また冷静な判断が下せる男たちほど、得物を手にかけることを反射的に選択する。

「いいわ。何人かは確実に殺してあげるから、その気があるならかかってきなさい」

 戸惑うエステルとティータ。後ろのミュラーやアガット、リシャールたちが緊張の糸を張り詰める。

 女性たちは動けなかった、唯一主を守るために、ユリアに苦々しい顔をしてクローゼを後ろに控えさせていたが。

 その中で、冷酷で当たり前な判断を下せる者が、一人いる。

「……我が儘でいるのもいい加減にしたらどうですか? 《殲滅天使》」

 リースだった。七耀教会の人間として、彼女はレンの正体を知っているらしかった。

「うふふ、教会のお姉さん? 私のどこが我が儘だっていうのかしら?」

「貴方ほどの頭脳があれば、この状況の特異性を理解しているはずでしょう。なのに駄々をこねる……これを我が儘と言わずしてなんというのでしょう」

 十八歳のリースと、十一歳ほどのレン。だいぶ年齢が離れているが、互いに遠慮はまったくない。裏の世界では、そんなことが意味をなさないことは知っているから

「……ふふ、教会のお姉さんか。ずいぶんと生意気な口を利くのね」

「そちらこそ。そのように得物を構えるなら、問答は無用ですね」

 もはや一触即発の状態だった。後戻りはできない──二人が得物を振りかざした、その時だ。

「い、いい加減にしてくださいっ!」

 世界を変えるのは、いつだって型破りな存在だろう。十三歳という年端もいかない少女でありながら、それでも仲間の一人としてここに立っているティータが叫んだ。

「二人とも、どうして嘘をついちゃうんですかっ!」

 ティータは両者の間に割り込んだ。誰も止められなかった。

 ミュラーもリシャールも、まだ構えを解けられなかったが、アガットだけは、彼女の後姿を見ていつかの光景を思い出す。

「リースさんも、レンちゃんが悪い子じゃないって気づいてるくせに! レンちゃんも、本当はお姉ちゃんたちと会えて嬉しいくせに!」

 アガットは構えを解いた。人知れず、彼は一番に『もう大丈夫だ』と思った。

「レンがエステルたちに会えて嬉しいだなんて、あるわけが──」

 ティータは涙目になって、顔をぐしゃぐしゃに歪めながら叫び続ける。感情のままに。

「だったらどうして、お姉ちゃんを見て幸せそうな顔をしたの!?」

 先ほどレンが寝ぼけていた時のことだった。レンは、『夢だから』と否定するだろうか。

 いや、無意識は隠せない。いくら体裁を繕おうとも、本心の一部であることは隠せない。

「お姉ちゃんに会えて嬉しくない、顔も見たくないなんて、そんなの絶対にウソなんだからぁ!」

 生活のすべてが違っても、同じ年ごろの少女で、同じようにエステルと触れたからわかるのかもしれない。泣きじゃくるティータは鼻水も垂らして、とても子供らしい。

 そして、カイトやエステルたちも含めた大人が誰もできない偉業をやってのける。

 レンは大鎌を手放した。レーヴェがそうしたように、空間から淡い光と共に忽然と消える。。

「まったくもう、ティータってば私よりお姉さんなのに、そんなに泣いちゃって……」

「だって、だってぇ……」

 アガットが柔らかい笑みを浮かべて、リシャールとミュラーに目を向けた。彼らも「やれやれ……」と溜め息交じりの笑みを浮かべて得物を収めた。

 それでとうとう、リースも観念した。

 エステルが言う。

「ねえレン、一つ提案なんだけど、ここは休戦と行かない? 私たち、ちょっと困ったことになっちるのよね」

 詳細は話さない。レンのこと、すでにある程度のことは察しているはずだ。

 リシャール、ジンがそれぞれ助け舟を出した。

「君がたぐいまれなる頭脳と実力の持ち主であることは知っている。協力すれば、私たちの情報と合わせ新たな知見が得られるかもしれない」

「それに嬢ちゃんも、俺たちを利用したほうがいろいろと都合がいいんじゃないか? 嬢ちゃん自身が、俺たちの実力は判ってるだろう」

 レンは、少しの逡巡の後に答えた。いかにも子供らしい、いたずら好きの笑みだった。

「……わかったわ。ティータに免じてここは休戦にしてあげる。まずは話してちょうだい」

 

 











この間、やべえ夢を見たのですが。
カイトがリィンと対話をして「これなら大丈夫だ」と許しを得て、その後カイトが展望台の上で待つエリゼと対面して何か話す。という夢。
え、何これ。今更ヒロインを変えろとかいう神様の神託ですか?
よくよく考えると、この二人似た者同士になる可能性があるのか……


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