レンに仲間たちとの探索の中で得た情報を伝える。頭脳明晰な少女は、一つ一つの情報に戸惑うことなく続きを促している。
おおよその話をした後に、レンは一瞬でこの《影の国》の概要……というより可能性を語っていったのである。
それは、《影の国》が人の想念によって変容しうる可能性があるということだ。発端は、すでにリシャールが『気になること』として挙げていた一つの現象だった。
リシャールは影の国由来の光に囚われたとき、軍服姿ではなかった。シャツにスラックスという、一般的なビジネスマンの格好だったという。それはリシャールが解放されたときに話しており、その時点ではどのような意味があるのかも判らなかったが、レンはリシャールにこう問いかけたのだ。『大佐さんは、その軍服に強い思い入れがないかしら』と。
リシャールは沈黙を作り、複雑そうな表情で肯定した。切り捨てねばならないが、しかし未練が残るものの象徴だと。
もともとが、ケビンの持つ方石は《輝く環》を擁する浮遊都市の残骸から発見されたもの。《輝く環》は、人の願いを無限に叶えるという神秘の古代遺物。そこにどんな関係があるのかはわからないが、無関係ではないことは間違いなさそうだった。
だが、仲間たちは納得すると同時に疑問も浮かべる。ならば、脱出を希求する自分たちはなぜ元の世界に戻れないのかと。
レンははっきりと答えた。自分たちでなくとも、それ以外の誰かがこの状況を望んでいる、と。
確証はないが、確信はある。《影の王》に他ならない。
レンの推測はこうだった。元々《影の国》管理していた女性──霊体のように現れる彼女──を追い出した《影の王》が影の国を自分勝手に利用し始めた。
今までになく、真実に進んだという実感があった。レンが仲間になるその影響は大きかった。星層も順調に下層へと降りてきている。もうすぐ《影の王》が動く……そんな予感すらあった。
そして、それはさっそく訪れた。
レンを含めてメンバーを入れ替えた探索班。カイトは再び待機組へと回り、その間仲間たちといろいろと話し合った。ジョゼットとは故郷のこと、ユリアとは王国軍やクローゼのこと、ティータとは試用している魔導銃のこと……気の置けない仲間たちだ。話したいことはたくさんあった。
探索メンバーはリース、エステル、レン、シェラザード、クローゼだったが。レンに加えエステルやシェラザードがいるだけあって、リシャールの時と同じくスムーズに進んだようだ。大蜘蛛の悪魔とも対峙したらしいが、レンを中心に倒してしまったらしい。
そして見つけた封印石。それは、今までの誰がおさまっていた封印石とも違っていた。
今までの封印石は、金色に輝く生命力に溢れたものだった。対して今、リースが持ち帰ったそれは青白く輝き、生命力というよりは
悪魔と対峙した後、毎度のごとく現れた《影の王》が言っていたという。仲間たちが遊戯版の《駒》であれば、この封印石は《ルールブック》のようなものであると。
少しの畏怖と共に、封印石を解き放つ。やはり青白い、神々しい光だ。
現れたのは、微かにその姿が透けて見える女性だった。整えられた顔立ちだが、どこかこの世のものとは思えない威光を備えている。とはいえ近づきがたいものではなく、親しみやすい柔和な笑み。そんな矛盾に満ちた風貌は、仲間たちの誰もが既視感を感じるものだった。
『やっと直接、言葉を交わすことができますね』
天より舞い降りたその人は、ゆらりと仲間たちと同じ目線まで降下して、それでもなお宙に浮いている。。
『初めまして、我が末裔よ。そして初めまして、わが庭園を訪れし客人たちよ』
穏やかな、母性と冷静さが混じった声。探索の中で度々耳にした、女性の幽霊の声と変わらない。
『私はセレスト。セレスト・D・アウスレーゼと言います』
セレスト・D・アウスレーゼ。聞き覚えがあった。
忘れるはずもない、浮遊都市リベル=アークの探索の時。その中で触れた都市そのものの歴史のなかで、彼女は存在していた。《輝く環》を異空間に封印した古代人たちのリーダー的存在、そしてリベール王家の始祖と呼ばれている人物。
クローゼやアリシア女王陛下や、デュナン公爵の先祖に当たる人物だ。
クローゼやユリアは神妙な顔をしている。それは当たり前だろう。自分の仕える王家の、あるいは自分自身の地の根源ともいえる存在だから。
「ただ、正確には私はセレスト本人ではありません。本物のセレストの
それは複雑な事情だった。仲間たちは、カイトは、やっとの思いで着いていけている。ただ、彼女は幽霊の類ではなかったようだ。
そこから語られたのは、遊戯盤に駒をそろえてルールブックを手にした仲間たちに対する、これから始まる
『《
結局これも、浮遊都市の福音によってもたらされたものだったのだ。
《輝く環》がリベル=アーク市民の願いをかなえる際、その膨大な願望やイメージを取り込み処理するために想像した、
だが、虚構であっても全くの嘘ではない。影は日陰の存在では留まりえない。実態が存在するから影であり、時に影によって突き動かされるのが人たりえる所以。現実の世界を反映しながらも、万華鏡のように変化しうる独自の法則で動く影絵の世界。
『そしてこの《影の国》は、《輝く環》の膨大な処理を助けるサブシステムでもありました。《環》そのものではないが、表裏一体にある存在。私たち《封印機構》はその関係に目をつけたのです』
中枢塔の根源区画でワイスマンにもたらされたある種の《奇蹟》は、《環》の力の一部でしかないのだろう。グランセル城地下のトロイメライを操ることさえできる《環》。それの封印は不可能と思われていたのだ。まさに《空間》そのものを支配できるのだから。時間凍結と重力結解という二つの手立てはあっても、それを実行に移せるだけの隙は見いだせなかった。
レンが得心が言ったように笑った。
「……なるほど。そこで作られたのが、お姉さんが持っている《方石》っていうわけね?」
リースはケビンから預かっていた方石を取り出した。突如として導力反応を取り戻し、ここまでの事態を引き起こすことになった古代遺物。
『はい。それの銘は《レクルスの方石》。《環》に頼らず直接この《影の国》に干渉できる唯一の端末です』
セレストの陽つまり本物は、レクルスの方石を通じて今この場にいる《彼女》を影の国へ侵入させ、《影の国》と《輝く環》は機能不全に陥るよう干渉を行った。そしてその結果が、第一結解、第二結解、第三結解とリベール王国の各所に仕掛けられた封印だった。
《環》が封印された後、彼女はこの場所で眠りについた。いつの日か、環の封印が解けた時に備えて。
結果として、カイトたちは彼女に頼ることなくリベールの異変を乗り越えた。《環》そのものが消え、どこに行ったのかという疑問は残るが、それでも《輝く環》による社会そのものの死は免れたといえるだろう。
『その時でした。《影の王》が現れたのは』
一同の表情が、殊更にリースの表情が硬くなった。
どこからともなく現れた《影の王》は、セレストの力を奪い、《影の国》を自らの意のままに造り替えた。それは星層という概念であったり、各星層の内部であったり、そして悪魔や魔物でもある。
『《影の王》や《黒騎士》……彼らの正体は私にもわかりません。侵入した方法も、貴方がたを取り込んだ理由も。一つ言えるのは、彼の者が第七星層で待ち受けているということです』
遊戯盤の環境は理解できた。勝利条件の一つも判った。だがまだ対戦の
《影の王》は、この遊戯盤を何故用意した。何故勝利しようとしている。勝利すればどんな報酬が得られる。
平行線となりかけたその時。
「それやったら、俺に心当たりがあります」
仲間たちは振り返る。ケビンだった。いつもの不良神父のような
「ケビンさん、大丈夫ですか?」
「おうカイト君、この通りやで」
肩に触れて手を回す。体の疲れは確かに感じていないようだ。心の戸惑いは判らないけれど。
ケビンは仲間たちの先頭、セレストの、目の前まで進む。そしてセレストでなく、リースに正対した。
「すまんなリース。迷惑をかけた」
「……うん」
「それとありがとうな。俺のいない間、ずいぶん前進してくれたようや」
「それが、私の従騎士としての役目だから」
「はは、むしろ俺のほうが、任務途中で気絶なんて降格もののヘマやな」
やわらかい会話だった。
ケビンは今度こそセレストに正対する。
「初めまして、ケビン・グラハム言います」
『初めまして、ケビン殿』
「ここにきてから、いろいろと助けられました。ホンマに感謝しますわ」
『ふふ、それが私の役目に他なりません』
セレストは笑った。リースを見て笑った。自らを《影》というが、だからこそそれは人間と変わりない。
『庭園から、浮遊都市で起きたことと顛末は把握していました。今回の件は……どうやら貴方が一番真相に近いようですね』
それは仲間たちも今までのケビンとリースの挙動から、まったく予想できないことではなかった。
リースによってではあるが、ケビンのことを知ることになった仲間たち。彼らは守護騎士の挙動をじっと待つ。
振り返ったケビンは言った。
「心当たりは、あります。けど確証が持てるまでは、少し待ってもらえんでしょうか?」
心当たりを口にするには、まだ
その説明には納得できる一方で、可能性であっても潰しておきたい仲間たちとしてはそれこそ間の悪い提案だった。
だが、仲間たちは了解した。大切な仲間である彼の願いを無碍にはしない。彼を信頼しているから、口を挟もうとは思わない。
「ただまあ、言えるんは……」
ケビンは己の右手を拳にして、目線を落として呟いた、
「正義ぶっているから相当にたちが悪い、ズル賢くて傲慢で、人を人と思わない。平然と処刑できるような冷血漢ってところや」
そして仲間たちを再び見る。不良神父の瞳には、誰も映らず、虚空が広がるのみだった。
────
目覚めたケビンが言う「調子がいい」というのは本当に嘘ではないようで、仲間たち相手に軽快な動きをして見せる。そうしてケビンは、再びリースとともに先頭となって探索を開始した。
次なるは第六星層。第五星層で悪魔を退けた後に表れた《黒騎士》をして『試練』というべきものだった。
翡翠回廊。異界化王都。金の道、銀の道。獣の道。夢魔の道。今までの道のりも決して楽な道ではなかったが、『試練』と称されたその道は確かに一筋縄ではいかなかった。
第六星層の始まりは異界化したエルベ周遊道──王都グランセル近隣の周遊道だった。探索を続けるケビンたちは、一つの石碑を見つけた。現実世界であれば周遊道に四つある、地水火風を象徴した石碑の一つが、光り輝いていたのである。
『影の王が告げる これより先は 無職の学び舎 白き翼を伴い先に進むがよい』
石碑に書かれていた文章だ。結論から言えば、次なる試練の行く先と、進むために必要な
白き翼、すなわちクローゼをメンバーに加えたメンバーは無色の学び舎──白黒のジェニス王立学園を探索し、最終的に第一の試練──《影の王》に人格と能力を再現され、しかし仲間たちと敵対しなければならなくなったフィリップ・ルナール元王室親衛隊大隊長と矛を交えたのである。
次の試練も順調に進んでいった。必要な駒は剣の乙女と活きる不動──アネラスとジンだったが、今彼らを含めた仲間たちは激戦を繰り広げているかもしれない。
「……とは言っても早三時間。そろそろ次の頃合いかなあ?」
隠者の庭園のなかを散歩するカイト。例によって待機中のカイトである。
待機中、休憩中の仲間のすることは人それぞれだ。読書にふける者、広場で模擬戦を行う者、泉の前で休憩する者。オリビエはよく酔狂なことを言ったり、ミュラーは黒子に徹していたり、アガットは鍛錬をしていることが多い。赤毛の遊撃士に関してはその元気がどこから湧いてくるのか、カイトは純粋に疑問を浮かべた。
カイトはと言えば、それぞれの場所に気ままに赴いては仲間たちと自由に語らったり仲間のすることに参加することもある。まったくもって行動に一貫性のない少年だった。
と言ってもついさっき話したシェラザードとアネラスは、カイトをクローゼのことについて冷やかしただけなのだが。魔導銃について話そうとしたティータも一緒になって顔を赤らめていたので、意気消沈してしまったカイトだった。
そして少し疲れたカイトは、人のいない場所を目指して歩く。巨大樹の向こう側にひっそりと階段があったのでそこに行くことにした。
と言っても残念ながらそこにも先客はいたのだが。
「あれ、レン」
「あら、お兄さん」
レンは床に腰かけ、両足をぷらぷらと宙へ投げている。下手をすればそのまま落ちて帰ってこれるかも判らないのに、怖くないのかとカイトは思う。
「レンとゆっくり話すなんて、エア=レッテン以来だな」
怖いと思うが、頑張ってカイトも腰かけることにした。
「まさか、初めて出会ったときはこんな風に話すなんて思わなかったよ」
言った通り、レンとの出会いはルーアン市での白い影の調査の時にさかのぼる。あの時いたカイト、エステル、シェラザード一同は、まさかレンが執行者であることなんて予想も発想もするわけがない。そもそも無自覚のヨシュアを除いては、執行者に出会ってすらいなかったのだ。
カイトとレンの二回目の邂逅は、カイトがグランセルの波止場でオルテガを倒した後だ。
「まったく、あの時は大鎌振り回すなんて思うか? お兄さんをびっくりさせないでくれな」
初めて自分のことを『お兄さん』と称した気がする。少しおっかなびっくりと言うか、乾いた笑いは抜けないが。
当のレンは変わらず楽しげだ。封印石から解放された直後の剣幕はなく、気ままな黒猫のようだ。下手をすれば猫なで声でも出しそうなきらいまである。
あの時、エステルやティータ、ヨシュアを除いては突然の状況に混乱していた。内数人に至っては、戦闘も覚悟しているほどだった。
こうしてカイトとレンが笑顔で話せているのはエステルやヨシュア、今回に至っては何よりティータのおかげだろう。
「あら、お茶会は楽しいから、またやるわ。その時は、本当にいろいろな人と楽しみたいもの」
「勘弁してくれ……」
レンが言う『いろいろ』だと、おそらく結社の幹部も入っているだろうから洒落にならない。カイトは顔を両手で覆った。
「うふふ、そう言わないでちょうだい。結社には、意外と優しい人も多いのよ?」
にこやかに言うレン。カイトはそんなわけがあるかと言いかけて、口をつぐんだ。
レンが可愛らしくカイトの顔を覗き込んでくる。
「お兄さん。お兄さんが考えてること、当ててあげましょうか?」
「……どうぞ」
「結社には、どんな人がいるのか」
「うん、正解」
カイトにとっては、結社とは悪の代名詞に他ならない。情報部のクーデターを裏から主導し、リベール王国各地で実験を行った。時に国民を恐怖に陥れ、レグナートの洗脳や強化猟兵で被害を生み、果ては《輝く環》を解放して国家機能を麻痺させた。国際的犯罪組織とは、まさにその通りだ。
《怪盗紳士》ブルブラン。《痩せ狼》ヴァルター。《道化師》カンパネルラ。《白面》のワイスマン。いずれも、犯罪行為を繰り広げ、特にワイスマンはさまざまな意味で許容できないことが多い。と言うより、カイトにとっては許容できることなどない。
だが……目の前の幼気な少女もまた結社の執行者だ。ヨシュアは元執行者で、今は贖罪のために大陸を旅している。
《幻惑の鈴》ルシオラは、シェラザードとの間に沢山の因縁があった。あの二人の間にあるものは、善悪だけで語れるわけはない。
《剣帝》という男がいた。他の者と同じく、彼が行ったことも決して無罪だとは言えない。だが今際の際、《獅子の果敢》を冠する彼は、間違いなくリベール王国の英雄だった。
それぞれの事情があって、それぞれの人物が、それぞれの場所にいる。
知りたいことは尽きない。
「よければ、聞かせてくれ。レンの知ってる結社のこと」
「うふふ……お兄さんは将来のこともあるから、少しだけなんだからね?」
レンは試すような……少しだけ妖しさを帯びていた。そうカイトは思った。
「そのお茶会は、前にもやってたの?」
「お茶会の作法を教えてくれたお姉さんもいたわ。彼女が入れてくれた紅茶は、とっても美味しかった」
「レーヴェも、ヨシュアも参加しそうだな」
「レーヴェもヨシュアも頭をなでてくれて、優しく眠れるの。ルシオラも、一座時代に巡った場所の話をしてくれた」
「ルシオラさん、か……オレ、あんまり関わらなかったけど」
「そういうものじゃないかしら。きっと」
「他にはどんな人がお茶会にいたのさ?」
「妖艶だけど意外と一途なお姉さん。格好良くて綺麗で、それでいてレーヴェよりも強かったお姉さん」
「男の立場よ……」
レーヴェより強いとは、恐らくカシウスでも叶わないのではないだろうか。そんな人が本気で責めてきたらリベール王国は崩壊するのではないか。
そんな怪物たちと仲間たちが一つの大テーブルを囲む姿を想像してみる。吐き気しかしない。
「……ますます結社のことがよくわからなくなったけど」
カイトは溜息を吐いた。どんな人がいるのかはなんとなく判ったが、絶望めいた感情しか浮かばなかった。
「どちらにしてもそんなお茶会は命がいくつかあっても足りないよ。レン、俺の実力知ってるだろ?」
カイトとレンは琥珀の塔で戦ったが、多少仲間を補助はできても基本的に遅れをとりっぱなしだ。
「確か、あの時はレンに鎌を首筋に当てられたし、パテル=マテルに吹き飛ばされたよな」
言ってから冷や汗を背中に感じた。自分はこの少女に二度殺されかけている。
「うふふ、楽しいお遊びだったでしょ?」
「楽しくない!」
ふざけるな。カイトは怒るが、悲しいかなレンはからからと笑っている。
「でも……お兄さんの言葉は一つ訂正しようかしら」
「え?」
「レン、お兄さんのことは少し見直しているのだけれど」
意外なことだった。
「お兄さんは弱くて、すぐに死んじゃうと思ってた」
「うぐ……」
「でも、どうしてか斧のおじさんには勝ってるし、エステルとヨシュアの隣にはいた。だから見直したのよ?」
斧のおじさん、つまりオルテガ・シーク。
カイトの実力が少なくとも浮遊都市の時まで今一つだったのは、カイト自身も理解している。だが、そんなカイトだからこそレンに注目されたのだろう。
というより、レンにとってはカイトに限らず仲間たちの全員が力不足だ。そういった彼らがレンをはじめとした執行者たちを退けたこと。レン自身が気づいているかはわからないが、きっと驚きの対象に違いない。
その感情の表れ、無自覚な感情。戦闘や天才的な頭脳という面ではレンには叶わないが、こういった面では少し大人ぶってもいいかもしれない。カイトは優しく笑って、おっかなびっくりレンの頭を撫でてみる。
「あ……」
「ヨシュアでもないし、レーヴェの代わりにもなれないけど……どうかな?」
「……ふふ、及第点かしら」
レンが言う及第点なら、上等だろう。
「さて、次に聞きたい御伽噺はあるか?」
「まだまだね。女の子への配慮はまだ足りないみたい。今教えてあげていたのはレンよ」
「あ」
「うふふ、どうしようかしら」
「観念します……じゃ、レンが聞きたいことはあるか?」
「そうね……」
ある意味、カイトにとってはこれ自体が興味深いかもしれない。殲滅天使と呼ばれる彼女が、見直したという自分の何を気にするのか。
それは意図のある質問だったのか、それとも年相応のただの思い付きだったのかは判らない。
だが、今この場でその質問が解き放たれたのは、きっと偶然ではないのだろう。
「お兄さんは、今リベールにいるの?」
レンとのお茶会、もうちょい続きます。