「じゃあ、僕の話を聞いてもらおうかな。君も聞いて損はないことのはずだ」
恐らくこちらが本題だろうと、カイトは考える。どちらかと言えば、今までの内容は双方流れに任せながら語り合ったことだった。
「話したいことというのは、今の帝国の情勢のことだ」
少年は目を見開いた。世界を知るという目的を持つカイトにとって、オリビエの提案は願ってもないことだった。一度は帝国を旅した、それで多くの知見を得た。それでも、ただ一度の短い間遊撃士として練り歩いたに過ぎない。あの国がどういう歴史を持ち、そこに住む人々が何を思っているのか。それをカイトは体験したい。
「帝国は今、二つの勢力が覇権を争っている。それは《貴族派》と《革新派》だ」
様々な分野が急速な近代化を進めている帝国だが、リベールと違い貴族制度が残っている。だからこその二つの派閥なのだろう。
帝国は領邦制だ。皇族であるアルノール家直轄領を除いては、土地は貴族が領主となっている。その中でも帝国をほぼ四分している《四大名門》は、二つの公爵家と侯爵家からなる大貴族のトップだ。
「あ。そういえばオレ、ルーファス・アルバレアって人に会いました」
「君もなかなかそういう体質だね……。そう、彼も《四大名門》に連なる者だ」
彼ら大貴族を中心に多くの貴族が名を連ねる、文字どおりの貴族派。莫大な財力を用いて自らの地方軍を操り、自分達の得るべき利益を守ろうとする伝統的な保守勢力だ。
「そうだとすると……オリビエさんが言ってた《鉄血宰相》は革新派ですか」
「察しがいいね。その通りだ」
平民出身の《鉄血宰相》を中心とした、貴族の風習を古いものとし体制に風穴を開けんとする革新派。貴族派の権力が通らない帝都や属州からの徴税によって軍拡を推し進め、大貴族の利益を奪わんとする振興勢力。
クロスベルでは政界で帝国派と共和国派に分かれている。というより、ある程度成熟した国家は独裁とならないよう操作されてか、あるいは自然発生的にか、対立構造が生まれるものだ。
「貴族派と革新派。両者の対立は年々激しくなっている。表面上なにもないように見えても水面下では深刻化していてね。我が父君の仲裁も全く効かないのだよ」
オリビエ──オリヴァルト・ライゼ・アルノールの父。皇帝ユーゲントⅢ世。ゼムリア大陸における二大国の片割れ。カルバード共和国が百年前に王制から共和制に移行した。七耀暦千年の歴史の中で、リベール王国と並び古くからの威光を放つ王朝だ。
オリビエは、まるで自らの悪態を告白するかのように肩をすくめる。実際王位継承権がないとはいえ、皇子である以上自分のことのように感じてしまうのかもしれない。
「鉄血宰相……ギリアス・オズボーン」
「どうだい? クロスベルにいるのなら、その名前もリベールよりはよく聞くと思うのだが」
クローゼが言っていたが、オリビエが異変後帝国へ戻るときに、鉄血宰相はアリシア女王陛下へ電撃訪問した。異変の時に蒸気戦車をリベール国境によこしたあの鉄血宰相が直々にだ。それだけで、只者でないことは理解できる。
「クロスベルにとって、その名前は皇帝陛下より恐ろしいですからね。遊撃士協会にいれば嫌でも覚えますよ」
帝国の改革は血と鉄によって果たされるべし、と説いた革新派のリーダー。帝国軍の七割を掌握し、帝国全土に鉄道網を敷いて急速に近代化を進めた張本人。帝国の平民にとっては英雄視され、貴族派には蔑み嫌われ、クロスベルにとっては恐れられている。
何とも忙しい人だと、柄にもない、意味のない同情をカイトはした。
現在、七耀暦千二百三年。導力革命、ノーザンブリア異変、百日戦役、クーデター事件、リベールの異変。数々の歴史がある。一つの事件が終わっても、世界にはまだ、結社もいる猟兵もいる。なによりも人がいる。だから、混迷の足音はまだ消え去らない。
だから、二大派閥がいるという帝国は今、それだけで不安定な状況なのだと判る。
「正直に言って、内戦の可能性もあると僕は考えている」
本当に最悪だなと、カイトは心の中で毒を吐いた。
百日戦役の発端はワイスマンの計略だった。しかし、数々の国が乱立するゼムリア大陸。戦争はそんな計略だけで生まれるわけではない。人が起こすものだ。
結局は戦争だ。カイトが守りたいと決めている、罪のない人にも危害が及んでしまう。
カイトには一つ気になることがあった。オリビエがそれを防ぐため、何をしようとしているのかについてだ。
リベールの異変を共に食い止めてから、オリビエは皇子として様々な行動を起こしている。今や帝国の華々しい社交界において、彼の名を知らない者はいない。
オリビエは皇族だ。どちらかと言えば貴族派に近しいようにも感じる。現に彼が止めようとしている鉄血宰相は革新派だ。だからといって身勝手に利益を守ろうとするような真似をするとは、カイトには思えなかったが。
数秒間の沈黙の後放たれたその内容は、カイトの予想外の言葉だった。
「僕はどちらにつく気もない。僕は、帝国を変える新たな風になるつもりだ」
「新たな、風……?」
オリビエは言う。ほんの少しの戸惑いと、万感の決意を込めて。
「僕は帝国が好きだ。祖国を愛している。苦みも甘みも……たくさんの感情がある美しい故郷がね」
「……」
「君が旅したのは、帝国のほんの一部さ。まだまだたくさんの、見えていない姿がある。見てほしいと、正直に思うよ」
「そう、ですね。そう思えるようになったのが、オレの収穫ですから」
「話を戻そうか。貴族派の在り方も、革新派の鉄血宰相のやり方も、僕はとても好みじゃないんだ」
既得権益にすがる貴族派も、彼らに抗するために手段を択ばない革新派も、どちらもオリビエの性には合わない。どちらかを陥れるためにどちらかに取り入るような人間でもない。だからこそ、オリビエは七耀暦千二百三年が始まった最初の日に、ハーケン門沿いの緩衝地帯で鉄血宰相に宣戦布告をしたともいえる。
放っておけば、先ほどオリビエが言ったような内戦の可能性もある。そうすれば、帝国のみならず大陸中に影響がでるだろう。西ゼムリアの覇権国だ。クロスベル自治州、ノーザンブリア自治州、果ては共和国。世が世ならリベール王国すら、悪影響を受けていたかもしれない。
つまるところ、オリビエが目指すところは……。
「まさか、オリビエさん」
「ふっふっふ……カイト君も僕のことが体の隅々まで判ってきたじゃないか」
「その言い方気持ち悪い」
「僕は二大派閥の勝利でも、戦争でもない道を行く」
過去の戦争は、過去の出来事は変えられない。けれど未来は変えられる。穏やかな対立による発展。他者を排斥することなく良き風習を残す。
「そして、リベールの人々のような誇りを持つ……そんな国になるよう、努力をしたいんだ」
「それは……すごく難しいことですよ? 人によっては不可能だって言う人もいるでしょう」
しかしオリビエは不敵な笑みを浮かべると、カイトの意表を見事に突いた。
「それは、君の目標も同じだろう」
「あ、まあ……」
カイトは恥ずかしげに頬を擦る。結局、根本の心意気は二人とも同じなのだ。
長い沈黙が訪れる。間接的であれ、帝国の情報を知り得たカイトはそれを暗唱する。
遊撃士はカシウスが解決した帝国遊撃士協会襲撃事件が原因で、事件の前と比べて帝国での活動に大きな支障が出ている。カイトが訪れた中で協会支部がまだ残っているのは湖畔の町レグラムくらいで、後は退去を余儀なくされているのだ。
カイトは帝国に来たとき、支部退去を促したのが彼の鉄血宰相であることを聞いた。まだ正遊撃士になって日の浅い自分の立場では、オリビエに力添えをすることすら困難に思えた。
きっと、仲間の誰もが彼の意志を聞けば同じこと思うだろう。自分は果たして、どうやってそこに力添えができるのだろうかと。
そんな風に黙考していると、オリビエが唐突に口を開いた。
「《トールズ士官学院》」
「……へ、学院?」
「知っているかい?」
突然、帝国の話からまったく変わる。予想外で、それに名前も聞いたことがなかった。真面目な話からまたいつもの変態節が始まるのかと思ったが、そうでもないらしく、むしろ先ほどよりも真っすぐカイトの目を見ているようにも見える。
日曜学校が主体となるゼムリア大陸において、高等以上の教育機関はそれほど多くない。例えば、リベールには高等学校は一つ、クローゼが通っていたジェニス王立学園しかない。
「あれ? たしか、トリスタにも行ったんじゃなかったかい?」
「確かにトリスタには行きましたけど、その時は質屋に寄っただけだったし学院なんて……あ、あったな」
帝都近くの近郊都市トリスタにある、由緒正しい軍事学校。それがトールズ士官学院だ。ただ最近は軍事学校の体裁を持ちながら、貴族の子弟や平民出身の優秀な人材を集める名門高等学校という色が強くなっている。
実際、卒業生うち軍の道に進む者は凡そ半数だそうだ。
確かに、トリスタに行ったときにそんな建物があったような気がする。
「帝国の情勢はここでも顕れるんだ。貴族生徒と平民生徒が制服の色で分けられていて、様々な分野で火花を散らしている。それは問題点でもあるが、結果として……まあいい具合に切磋琢磨してくれているのさ」
「は、はぁ……」
ぽんぽんと出る新しい情報に、カイトは戸惑いを隠せない。
カイトは十七歳だ。高等学校の学生なら、自分と同年代だろうか。
「僕はそこの理事長を勤めているんだ」
「え」
そして意表を突かれる言葉の雨には、驚きを隠せない。
理事長。つまり、ある種の学院の代表でもある。
「オリビエさん、色々やっているんですね」
「なに、放蕩皇子の悪あがきさ」
漂泊の詩人としてリベールに潜り込み、国境で盛大に隣国の王国軍人と自国を化かし、果ては苦難の中枢に乗り込み──帝国内では《視察》の名目となっていて、ちょっとした英雄扱いとなっているのだとか──白き翼で凱旋、そして帝国内でも社交界に顔を出し始めている。まさしく放蕩皇子だ。
そして悪あがき。そのように自分の行動を捉えているということは、先ほどオリビエが掲げた目標に関係しているということだ。
ただ、軍人を育てるその学校の理事を勤めることが、帝国をどうオリビエの目指す方向に変えていくのか。それが、カイトには予想がつかない。
理事長であること自体は、オリビエがリベールに渡る前からそうであったらしい。トールズ士官学院は帝国中興の祖と呼ばれる皇帝が興したものだという。その縁があり、トールズ士官学院の理事長は代々皇族が勤めているのだという。
「もちろん、理事長という立場はただのお飾りさ。ここからが本題だよ」
「……」
オリビエは、真っ直ぐカイトを見つめた。今までも充分実直な眼差しだったが、今度のそれは一際希望の光を宿している。
その言葉の一つ一つに、強大な力が意志と共に宿っている。そんな風に思った。
「……今度の新学期。今まで計五組だったトールズ士官学院に、新たなクラスが設立される」
カイトも、ただ真っ直ぐにオリビエを見る。影の国に共に迷い混んだ信頼のおける仲間たち。彼らに話さず敢えて自分だけに明かす理由。それを見極めようと感じた。
「その名も、《特科クラスⅦ組》だ」
「特科……Ⅶ組?」
その言葉を反復した。反芻した。不思議な感じだった。
特科クラスⅦ組。
五組から一つ飛ばしてⅦ組。しかも単純に人数が増えるわけではなさそうで、特科という文字がつく。
「それは、どう考えても普通のクラスじゃなさそうですね。それに、オリビエさんがそこまでもったいぶるほどだ」
「学院ではクラス分けの際平民と貴族で分けられる。平民クラス、貴族クラスという具合にね。だがⅦ組は違う。平民と貴族の垣根は完全に消さる。身分に囚われない、様々な経歴を持つ者が入れられる」
「それって……」
革新派と貴族派、二大派閥が水面下の争いを続けるエレボニア帝国。貴族の特権意識はもとより、平民でさえ人によっては対抗意識があるだろう。それは学生とて例外とは言い切れないはずだ。
そんな帝国内において、たとえ学院の中だけとはいえ、貴族派でも革新派でもない新たな存在が生まれることになる。
「そう、これが僕がもがいた結果。帝国において、新たな風となりうる少年少女たちさ」
カイトは、ただただ感心した。全ては何もないところから始まっていく。だとすれば、オリビエの足掻きは帝国において大きな一歩となる。いや、なってほしいものだ。
「実際のところはね、帝国で開発している戦術オーブメントの次世代器の試験運用のために特別なカリキュラムが組まれるというものだった」
戦術オーブメント、という単語で思い出した。帝国での依頼……自分の実力を引き出したクオーツをもらい受けたあの件で、とある科学者から新型戦術オーブメントの説明を受けたのだ。
あれのことか? と思いつつ、カイトはその思考を遮らざるを得なかった。それは本来カイトが興味を引く戦術オーブメントの話以上に、オリビエが有無を言わせぬ熱意を感じさせる説明を続けていたからだ。
その表情は、かつて国境で己の思想をぶつけ合ったときに近いものを感じる。
「だが空の女神は僕に微笑んでくれたようでね。きっとこのクラスの生徒たちは、単なる試験運用以上の経験をしてくれる。……混迷の大地を共に駆け抜けた僕たちのように」
「オリビエさん……」
リベールの旅路は、彼にとっても確かな時間になっていたのだ。言うまでもないことだが、カイトは嬉しかった。
自分が、オリビエが、エステルが、ヨシュアが。仲間たち全員が成長し、前へと恐れとともに進むことができた旅路だ。
「そしてこれを君に話した理由……」
カイトはそこではっとして、目を見開いた。
「もしかして……」
「どうやら気づいたようだね。……謹んで、言うよ。正遊撃士カイト・レグメント君。トールズ士官学院、特科クラスⅦ組に、君を推薦したいんだ」
それは、決定的な言葉だった。ある意味、衝撃だった。とてつもない誘いだった。
「帝国の学院に……オレを推薦する?」
「ああ」
「それは」
「カイト君。さっきも言った。リベールの旅路は仲間たちと築いた絆は、僕にとってかけがえのないものになったと思っている。そして、最初はいがみ合っていた君とも、友人と呼べるようになったと思っている」
カイトは頭をかいた。
「……まあ、オレもそうだって思います。年も離れてるし、いけ好かないし、変態だし。でも、確かに異変を解決した仲間で……友人です」
「嬉しい限りだね」
カイトはそっぽを向いた。この詩人に思い通りにさせるのは、言った通りいけ好かなかった。
「僕は君に話した。皆のことを信用しているし、いつかゆっくり話したいし、必要があれば力を借りたいと」
「はい」
「君だけに話すのは、互いの生き様を語り合うと約束したからだと言った」
「はい」
「エステル君にヨシュア君は、それぞれのために世界を旅している、遊撃士として。同じく遊撃士として、シェラ君、アガット君、ジンさん、アネラス君たちは、それぞれの場所で支える籠手の使命を果たしている」
ティータは技術者として本格的に活動を始めた。クローゼは王太女としての経験を積み始め、そんな彼女をユリアが支える。ジョゼットは家族と手下と共に贖罪をはじめ、リシャールは軍の外からリベールに尽くすことを誓った。全員が全員、いつか同じ旗の下に集うために、己の成すべきことをなしている。
「君は、何のためにクロスベルにいる?」
「……世界を知るために。それぞれの国を知るために」
「そうだ。そして、僕は帝国に戻り、Ⅶ組を創設する。帝国を戦火と、その火が灯る黄昏から救いたくて」
「……そう、ですね。そんな夕暮れはオレも嫌です」
「敵は強い。狡猾な貴族たち。強大な鉄血宰相。放蕩皇子などでは、とても太刀打ちできないような化け物たちだ。だから協力者を募った。遊撃士、軍人、中立派の貴族……絆が大きな力になると、リベールの旅で学んだからだ」
そう、オリビエも変わった。だからこれから出る言葉は、猿芝居でも、潜入捜査でもない、オリビエ・レンハイムであると同時にオリヴァルト・ライゼ・アルノールとしての願い。
「正直に言うよ、カイト君。矜持も建前も関係なく……君に助けてほしい。君に帝国に来てほしいんだ、特科クラスⅦ組の一人として。それが友としての僕の本心だ」
「……オリビエさん」
「君は今、クロスベルにいる。その旅路を途中で遮ってしまうのが、少しだけ申し訳ないけどね。けれど異変の時の旅路より、より深い目線で帝国のことを知れるはずだ。それは保証しよう」
仲間として、なにより友としてのカイトへの手助けと願い。
言われたカイトは、沈黙せざるを得なかった。これまで培い、今まさに進んでいる旅路。そしてオリビエに示された、自分の目標にもかなう一つの選択肢。
衝撃を受けていた。そして何よりも高揚していた。
「……そもそも、推薦って、オレは入学できるんですか?」
「帝国にいる知り合いの遊撃士に聞いたが、『活動休止』なだけで問題はないと聞いた。学院側も問題ない。トールズの学院長はⅦ組設立にも協力的だし、何より僕が反対する者を説得する。君は間違いなく、学院に必要な存在だと」
お膳立ては万全だという。
「……ちなみに、まだ設立はされていないんですよね? そのⅦ組は」
「ああ」
「いつから何ですか?」
「発足は千二百四年の三月。つまり、約半年後だね」
今までにない、オリビエの真摯な願いだった。誠実な回答だった。友人として、応えたくなるものだった。
だが、カイトは一歩を踏み出せなかった。とても魅力的な道筋であってもだ。
遊撃士を辞めるわけではない。だがそれでも、今までの自分の存在証明となっていた称号を置くことにもなる。帝国と言う、クロスベルでもリベールでもない大国に根を下ろし、その中から軍事帝国を見ることになる。今まで絆を培ってきた仲間とも、信頼を重ねた同僚たちとも違う、全く違う同世代の学生たちと共にだ。
この選択は、自分の人生を変えるターニングポイントになる。その確信がカイトにはあった。
だから。
「……今は、まだ、何も言えません」
カイトは答えを出せなかった。
「オレも正直に言います。すごく嬉しい誘いです。行きたいと思う。帝国はオレに色々なものを気づかせてくれた国だから」
「……」
「でも、オレはまだクロスベルで何も成し遂げていない。あの魔都で、《闇》を止める手立てを何も見つけていないんです」
今はまだ、少年は一人の遊撃士でしかない。大局を見渡せる、指し手のような人間でもない。
「だから……オレに決心をつける時間をください」
誠実な友人の願いに、何より真摯に応えるために。
「その時は。オレはオリビエさんの友人として、自信をもって答えて見せる」
「判ったよ、カイト君。なら……」
オリビエはカイトに向かって右手を差し出した。
「今はともかく、一緒にこの危機を乗り越えよう。二人で、みんなで、またいつか会うために」
「はい……またいつか会うために」
カイトはオリビエの右手を握り返し、何度目かの握手を交わした。
とても、大きな手だった。
零から閃へ。空から閃へ。
「帝国を穿つ《閃》」でした。四年位前に書いた文章にようやく肉付けできた……
次回39話「またいつか会うために」