「カイトさんも、例の魔獣の被害調査に来たんですか?」
「魔獣調査の被害? なんだそれ?」
聖ウルスラ医科大学のアルスの病室。カイトは遊撃士にあるまじき素っ頓狂な声を挙げた。
「あれ、違うんですか? この間も警備隊の人たちが調査に来たって言っていたので、つい」
「ちょっと待ってくれ、魔獣被害があったのか? この病院で?」
「はい。一週間くらい前のことです」
年齢の割に敏い少年であるアルスだ。この特別病棟にいながらそれを知っているのは看護師などに聞いたからなのだろう。
「それって、魔獣が病院敷地内に入り込んだってことだよな? 怪我人は出なかったのか?」
「それが、負傷者は出たみたいなんですけど……」
アルスも詳細は知らないようだ。いずれにせよ警備隊まで出動しているのであれば、病院側の許可がなければ自分が何かをすることもできない。
そこまでの事件があったとなれば気にならないわけがないのだが。
アルスの表情を見るに、事件なのか事故なのかはわからないが、解決には至ってないらしい。
「おかげで、僕もこの一週間まともに外にも出れませんでしたし」
「そっか……」
「シズクちゃんはその時間に変な音を聞いたらしくて。僕も違和感を感じました」
難病のせいで自由に身動きがとれない少年にとって、安らげる外での時間は大切なもののはずだ。それが奪われるというのは、寂しいものだろう。
現時点では自分が介入するだとかしないだとか、言えることは何もないが、とりあえず世間話以上の事は出来そうになかった。
「ま、もしオレや他の遊撃士が調査することになったら、頑張るからさ。またな」
「はい、カイトさん。また」
習慣となっている会話を終える。アルスも笑顔で対応した。ここ半年ですっかり定着した問答だった。
特別病棟は手続きも面倒くさい。一度棟を出れば、再び訪れるのが一週間以上は空くのがカイトの最近の動向だった。
しかし結果として、わずか数時間後にはまたすぐ訪問することになり、アルスの口角が少しだけ上がる事になるのだが。
カイトは改めて特別病棟を後にし、そのことを報告しにナースステーションに顔を出す。
「シロンさん、セシルさんはいませんか? アルスとの面会が終わったんですけど」
「ああ、セシルさんなら、ちょうど人に会うとかで一階に行ってるよ~?」
とかなんとか言われ、少年はそのまま一階に向かう。後ろから看護師長がシロンに説教を始める声が聞こえたが、カイトは無視した。
一階受付に向かうための階段を降りる。
降りた先の雰囲気は、とにかく甘ったるいものだった。
「お姉ちゃんに、そのまま甘えられちゃいなさい」
カイトとも懇意にしている看護師セシルが男性に抱きついていた。周囲の人はその様子に唖然としている。セシルといえば患者からは白衣の女神とも呼ばれ、同性からも男性からも憧れの眼差しを受ける優しい人だ。どこかの誰かの『姉』であるという意味で人知れず親近感を覚えていたのだが。
そして──彼女の抱擁を受けるのは、先日から話すようになったロイド・バニングス。
「背もこんなに高くなって……前に別れた時は、こんなに小さかったのに」
「そりゃあ、育ち盛りの三年間だったし」
心なしか照れているように見えるロイド。
カイトの目線は後ろの仲間たちにも向けられた。
「な、何ていうか……」
「……想像以上に甘々ですね」
「おのれロイドォォ……あんな素敵なお姉さんを……!」
各々憤慨したり呆れたり惚けたりする三人。
カイトはといえば、不意にクローゼのことを思い出していた。そして。
「なーんか気に入らないなあ……」
柄にもなく、嫉妬の感情を向けるのだった。
閑話休題。
抱擁は一分ほど続いたのだが、ロイドは気を取り直してセシルに挨拶をするのだった。
セシルが以前仄めかしていた弟がロイドであることにも驚いたカイトだったが、何よりも驚いたのは特務支援課をこの病院で見たことだ。彼等を市外で見かけたのは初めてだった。
改めて、カイトは五人に声をかけることにした。
「よっ。ロイドたち」
「なっ、カイト!? こ、これはその」
「なぁんだロイド? 別にオレは何も変なことはしてないよ?」
「……何だかカイトさんの方向から嫉妬の波長を検出したのですが」
ピンポイントでジト目なティオの発言は無視した。同時、セシルがカイトに気づいて声をかけてきた。
「あら、カイトさん。アルス君との面会は終わったんですか?」
「え、ちょっと待ってくれセシル姉! カイトと知り合いだったのか!?」
驚くロイド。セシルの朗らかな対応。だが、それが場の空気をさらに困惑させることとなった。エリィの発言が、全てを物語っていた。
「えっと、どういう状況なのかしら……これ」
面会の終了をセシルに報告しに来たカイト。ロイドとの再会を喜ぶセシル。何某か支援要請で来たらしい特務支援課。それぞれがそれぞれの用事で集まった訳だが、場所は一階の総合受付前。その場を占領するわけにもいかず、一同は休憩中だというセシルも連れて病院敷地内のレストランに向かうこととなった。
場を混乱させてしまった上に下手に挨拶した手前、カイトもそこに参加しないわけにはいかなくなった。
「三人には初めまして、ね。セシル・ノイエスと言います。ロイドの同僚さんたちだったのね」
エリィ、ティオ、ランディが己の名前をセシルに伝える。当然だが既に全員と面識があったため、終わるまで沈黙を続けるカイトとロイドなのだが。
普段のアルスやシズクとの会話を見ているカイトからすれば意外なセシルの一面を見ることになる。
「でも、私ったら慌てん坊ね。てっきりロイドが彼女を連れて遊びに来たのかと思っちゃったわ」
ちょうど飲んでいた水を吹いたロイドとエリィ。
「ちょ、ちょっと!? 何を言い出すのさ!?」
「ケホッ、コホッ。の、喉に入って……」
エリィは恥ずかしそうに顔を伏せていた。その代わり咳を隠せなかったが。
爆弾をぶちまけた当の本人はさも当然のように会話を続けている。
「だって、ロイドも三年ぶりでしょ? 彼女の一人や二人くらい作っているのかと思って」
聞けば、ロイドは警察学校に入る前は数年間共和国にいたというのだが。だがクロスベルに入って一ヶ月程度でしかも職場内に恋人を作るなど、セシルの中のロイドは相当軟派な男になっているようだ。
「というか、どちらかといえば共和国で作った彼女と遠距離恋愛、の方がしっくりくる気がしますけど……」
「でもカイト君……ひょっとしたら本当に付き合っているけど、仕事だから隠しているのかもしれないじゃない!? そうなったら、悪いことをしちゃったのだけれど……」
態度を一変させて落ち込みそうになるセシル。どうやら彼女は、弟の前では相当に天然になるようだった。三年ぶりの再会のせいか、その勘違いっぷりを身内らしいロイドも忘れていたようで呆れ返っている。
「あ、あのね……」
「それで、エリィさん、ティオちゃん、どっちと付き合ってるの? それとも二人いっぺんにとか?」
「ちょ、おまロイド……年下は好みじゃないが俺の目をすり抜けてなんてことを羨ましい……!」
二股疑惑をかけられたロイド、そしてありもしない想定に予想外の理由で怒るランディ。
混沌そのものである。そして巻き込まれる男たち。
「も、もしかしてそこの彼と……それともカイトさんと……!? ううん、私もそういうのには理解のあるで痛いから全力で応援させてもらうわ!」
「いやそこは反対することろだから!」
「オレとロイドが……え、え? ええ?」
「私とロイドが……違う、ティオちゃんとランディも……?」
「何だか、ユニークなお姉さんですね」
「はぁあ……天然なところも素敵だぁ」
「話を戻そうよ君たち!?」
ロイドのツッコミによって二度目の閑話休題である。
各々なぜこの場にいるのか、という話だ。特にカイトと支援課四人はそこを合わせなければならなかった。
まず今の状況でセシルとロイドが懇意にしているのはわかった。元々二人は同じ西通りの出身で、共通の知り合いを通して家族ぐるみで付き合うようになったとか。
特務支援課は、カイトが予想したところから外れておらず支援要請によってこの場に来たのだという。だが遊撃士の猿真似などと言われている彼らにしては、要請元がクロスベル警備隊であることに、カイトは偶然の状況を重ねる。
「クロスベル市郊外で頻発した魔獣被害。これを調査するのが、警備隊から受けた今回の支援要請なんだ」
市より東のアルモリカ村、市から北方のマインツ鉱山町、そして聖ウルスラ医科大学の三カ所がこの一週間ほどで魔獣被害を受けているのだという。今回は市の郊外での事件ということで、警察ではなく警備隊が担当となった。仮にも治安維持や自治州防衛を任された警備隊員なので調査能力はあるのだろうが……。
「ちょっと、事情があってね。大した損害や再発のリスクも少なかったとのことで、警備隊が主導の調査は打ち切られることとなったなんだ」
「それは……」
癒着。論証ではない直感だったが、ロイドの茶を濁すような説明の背後にあるものを、そう見た。
その闇をついたところで、現状は変わりはしないだろう。あくまで可能性だが。
「んで、オレは知り合いの子たちといつの面会で来てたんだけど……あの、セシルさん」
「どうしたの、カイトさん?」
「アルスやシズクちゃんが魔獣被害のことを気にしてたみたいなんですけど……その件ってことですか?」
「ええ……あ、そうだわ!」
思いついたかのように、セシルは手を叩いた。そして、主にロイドに向ける。
「今回の事件なんだけどね。実は病院に入院している子どもたちが『事件の時に変なものを感じた』って言っているの」
「そうそう、そうなんだよ。その魔獣の件、まだ遊撃士協会のほうには話が来ていないんだけどさ。ちょうどオレが会っていた子だから気になって」
「へぇ、そうなのか」
「遊撃士ってのはマメだねぇ」
クロスベルの治安維持を担う──言ってみれば政治に関わる組織の話だ。民間人に被害が出てはいるが、緊急性がそこまで高くないうえに被害者たちが遊撃士協会への依頼を出していない以上、積極的に動く理由は薄い。
「それで、もちろん道案内は私も手伝いたいけど……」
セシルはカイトに目を向けた。なんとなく、彼女の言わんとしていることがわかった。
「実はカイトさんが、その子たちと懇意にしてるの。だから、カイトさんにも案内を手伝ってはもらえないかしら?」
セシルは看護師として忙しく働いている。休み時間までは付き合えるというが、その先は患者対応を含めた業務に当たらなければならない。
そんな中で現れたカイトは、フットワークの軽い遊撃士であり、病院のことを部外者ながら精通していて、証言を得られる可能性のあるアルスやシズクとの面識もある。ある意味適任者でもあった。病院関係者であるセシル自身の提案でもある。
懸念事項はまだ遊撃士として依頼を受けていないことと、調査任務を受けている支援課の印象ということだったが。
「……いや、俺たちも先達の助けは欲しい。遊撃士からの見識も聞きたいと思う。できれば、頼むよ」
どちらも警察と遊撃士の関係性を警戒していたのは事実だが、少しずつ、お互いに、その壁は取り払われつつある。初日に出会ったカイトが他の遊撃士関係者よりも気軽に接せられる少年だったのもあるだろう。なお、聖ウルスラ医科大学に行く途中の街道でロイドたちがある遊撃士に出会い、その暖かさに毒気を抜かれたのもあったのだが。それはカイトの預かり知らぬところである。
かくして、カイトは支援課と同行することになった。
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まずはセシルに粗筋を聞く。そして次に被害者に事情聴取、次に現場検証。そして最後にアルスからの事情聴取だ。
聖ウルスラ医科大学における魔獣の被害以下のようなものだった。
一週間前、病院に勤めているリットンという研修医が魔獣に襲われた。負傷は肩周りと限定的で命に別状もなかった。不可解なのは事件発生時の状況だった。
通常この規模の施設にはまず間違いなく魔獣よけの導力灯が付けられている。事件発生の当日も、事後報告だがそれが故障してる形跡もなかった。にも関わらず、魔獣は敷地内の屋上に現れたのだという。
時間は深夜。被害者の勘違いという可能性もありえるが、被害者が発見された場所が屋上なのだ。魔獣に襲われても不思議じゃない場所で襲われてから、病棟までその足で移動して気絶した……というのもおかしい。
「警備隊の人たちも、最終的に魔獣が屋上に現れることはない、と判断したみたい。でもどこか納得が行かなかったんでしょうね。貴方たち特務支援課に再調査をお願いしている所を見ると」
それが事情を説明してくれたセシルの談だった。
そのまま、カイト、セシル、支援課四人はそのまま被害者リットンの下へ行く。
個室ではなく相部屋らしく他の患者もいたのだが、病室はそれ以上に騒がしかった。
「うん、これなら明日にでも退院できるだろう。ふふ……退院したら覚悟するといいよぉ」
研修医リットンのベッドサイドにいたのは一人の医者だった。水色の髪、眼鏡をかけた穏やかそうな男性だった。
どうやら回診中のようだったが、本来であれば部下らしい慌てるリットンに対してどこまでも嗜虐的な笑みを浮かべている。
「ちょ、先生!? 病み上がりの人間にそんな殺生な!?」
「裂傷、打撲、捻挫。これくらいで情けな最ことをいいなさんな。逆にしこたま休んで体力も有り余っているだろう? 世の中には寝たくても寝れない人もいるんだから」
「それとこれとは話が別じゃないですかぁ……」
その後SだのMだの怪しげな会話を続けていたが、セシルの「もう、なんの話をしているんですか?」という一喝で戻った。そして、医師はセシルを除く五人の存在を気にかけた。
「クロスベル警察と、遊撃士の方です。例の事件についてリットンさんからお話を伺いたいそうで」
「なるほど。それなら僕は退散したほうが良さそうだが……ん、遊撃士?」
医師が、カイトに目を向けた。目線からして遊撃士のバッジを探しているのだろう。巷で話題の特務支援課よりも遊撃士に気にかけることは気になったが。
「もしかして。君が『カイト君』かい?」
「え? はい、そうですよ」
「僕はヨアヒム。ここの准教授をしていてね。そしてアルス君の担当医でもある。君のことは彼から聞いているよ」
予想外の不意打ちだった。まさかアルスと関わりのある医師とこうして会えるとは思わなかったが。
「彼の病気は本当に複雑でね。微力ながら力添えさせてもらっているが、やはり励ましの言葉は何よりも大切だ。これからもよろしく頼むよ」
「……ええ。こちらこそ」
出された手を握り返した。少し細身で、不思議な感触。ここが病院であるということを意識させられる。
先ほどの飄々とした雰囲気と、今の医師としての空気。複数の顔を持つヨアヒムに戸惑い、支援課四人もカイトもあっけにとられていた。
「それじゃ、僕は他の病室を回診してくるかな」
「お疲れ様です。サボったら駄目ですよ? 水辺で釣りとか」
「ギクゥッ! いやいや滅相もない。それじゃあ失礼させてもらうよ」
ヨアヒム医師はそそくさと去っていった。
「ごめんなさいね、カイトさん、ロイド。とっても優秀な先生なのだけど趣味人過ぎるきらいがあって」
ヨアヒムは今回の事件とは関係ないらしい。ただ単にリットンの主治医となっただけのようだ。
一同は改めて、リットンから話を聞くことにした。
「わかった、改めて説明するよ。でも、その感じだとやっぱり僕の話は夢だと思われたのかなぁ」
改めて、リットンの主観からの説明を聞くことにする。
彼は事件発生の深夜、研修医としてのレポートを仕上げていた。それが特に過酷なものだったらしく、だいぶ精神と体力を削られたそうだ。本人が事件の状況を夢ではないかと疑う理由はここにあった。
レポート終わりの休憩に研究棟すぐ横の屋上に出た。そこで背後から獣の声が聞こえ、振り返ったらそこに魔獣がいたのだという。
「記憶があるのは、実際にはそこまでなんだ」
そして翌朝、用務員が気絶したリットンを発見した。
魔獣の外見についてランディが質問したが、覚えているのは僅かだった。『真っ赤に光る眼と白い牙。そして黒っぽい毛並み』だと。犬か狼か。外見を聞いた限りではそのように思える。
不思議なのは、必要以上にリットン含め人間を襲わなかったことだ。場合によっては命を落としていても不思議ではなかったのに。
腑に落ちない点を覚えながらも、リットンからの事情聴取を終える。次に向かうべきは事件現場だった。
「話を聞いた限りだと……このあたりが現場になるのかな? セシル姉」
「ええ。普段は患者さんにも解放されている場所なのだけれど」
アルスやシズクも気分転換に使う屋上だ。カイトにとっても馴染み深い場所となりつつある。もっともいい記憶だけではなくて、アスベル・A・アレスレードと初めて顔を合わせたのもこの場所だった。
「ありがとうセシル姉。あとは俺たちで調べてみるよ」
ロイドは言った。セシルの休憩時間も終わる頃合だった。
「わかったわ。それじゃあみんな、調査の方頑張ってね」
セシルを見届けてから、カイトとロイドたちは向かい合った。
「とりあえず、屋上を中心に一通り調査をしてみよう。『狼型魔獣が本当に屋上に現れた』という前提で、侵入ポイントを突き止めてみたい」
「ロイドさんお得意の、可能性を絞り込む方法ですね」
口々に賛同する支援課の面々。特にティオが述べたその調査の思考法は、カイトにとっても興味深いものだった。
「カイト、君もそれでいいかな?」
「問題ないよ。それじゃ、頑張ろう」
一同は、屋上をすみずみまで調査してみる。湖畔側、森林側、正面玄関側。それぞれの場所を探ってみるが、屋上は四階相当の場所だ。いかに魔獣といえどもその高さを四肢で駆け上がるのには限界があり、ほとんどの場所は移動することは困難と思われた。
唯一可能性がありそうだったのは屋上の正面玄関側で、そこはちょうどレストランの建物や職員寮が併設されている場所だ。一回層分低く設計されており、屋上は資材置き場になっている。そこからなら入ることもできそうだった。
病棟内を移動して、近くの山積みのコンテナや段ボールなどを調べると。
「見つけたっ」
「ビンゴだな。こりゃ、狼型魔獣の足跡だ」
ロイドとランディが見つけた。屋上までの侵入経路を見つけた形になる。奥の丘陵からの侵入の可能性が濃厚になったわけだ。この場所に対策を施すことは決定事項のように思えた。
ただ油断せず、特にロイドとカイトはもう一度辺りを調べる。その過程で気づいたことを、一同は話し合う。
どうして魔獣が屋上に現れたのか。どうして中途半端にリットンを襲ったのか。それは分からなかったが、事件現場でできることは限界のように思えた。
「さて、ここからはオレの出番かな。みんな、付いて来てくれ」
支援課の四人が屋上での調査を終了するときめた後、カイトはそう告げる。
返したのはランディだ。
「たしか、お前さんがよく見舞いに来てる子、だったか? いったい何者なんだ?」
遊撃士が、しかも自治州出身でないカイトが足繁く通うというのは珍しいものだろう。疑問を感じるのも当たり前だが。
「ま、色々あったんですけどね。そうだ、女の子の方は、会ったら驚くと思いますよ」
色々というのは、アリスのこともあったりしたのであまり多くは語らないでおいた。それよりも、とカイトは面白がる。
「なんせ、あのアリオスさんの娘さんですからね」
特務支援課は発足の日、カイトとそしてアリオスに助けられた。特にアリオスに対して、四人は意識せざるを得ないだろう。シズクは行儀よく自己紹介をするだろうしと、カイトは先に答え合わせをしておく。
案の定、四人はシズクと面会するまで驚きと戸惑いの表情を浮かべ続けるのだった。