心の軌跡Ⅱ~重なる標~   作:迷えるウリボー

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33話 Crossbell Diary①

 

 新人正遊撃士カイト・レグメントがクロスベル支部へと転属してから三日目。カイトはクロスベル市の一角、旧市街にいた。

「あーここだよな、《ロータスハイツ》」

 遊撃士協会支部のある東通りから南に行くと、下を大陸横断鉄道が走る鉄製の橋が見えてくる。少し錆もあり見た目頼りなさそうなその橋を渡った先にあるのが旧市街。巨大金融都市クロスベルの中で、開発事業から取り残されたことで時代から取り残された感のある区画だ。

 その旧市街の出入り口の近くにあるアパルトメント《ロータスハイツ》を見上げ、カイトは呆然としている。

「昔ながらというか……ちょっと古い?」

 つくづく、この都市に来てから失礼極まりない発言をしている気がする。元々閑散としている旧市街で助かった。

 ともあれ、自分が今ここに立っている理由は単純明快だった。

 アパートの中から初老の男性が出てきた。

「おや……君は?」

「始めまして。連絡させてもらったカイト・レグメントです」

「そうか、君が。連絡は受けているよ、ようこそ《ロータスハイツ》へ」

 少年にとっては新天地であるクロスベル。当然住む場所を整えなければならないわけで。

 新人正遊撃士カイト・レグメントが選んだのは旧市街のアパートだった。例えば家々が並ぶ場所としては数日前に不審者の調査を行った住宅街やそこに至る途中の西通りが有名どころだが、共にカイトにとって懐が痛くなる程度のものだった。なんせ、成長したといってもカイトはまだまだ十七歳になろうかという少年である。

 対してこの旧市街、賃金は安い。協会支部からも近い。加えて自然豊かなリベール出身の少年からすれば、人の往来が激しい場所と比べればまだ落ち着けた。

 そういった諸々の理由から、カイトは新たな居住地として旧市街を選んだのだ。

 管理人である男性に連れられ、自分の部屋まで歩く。鍵を渡され、いざ自分の部屋へ足を踏み出す。

 それほど広い部屋ではないのだが、今まで四人の弟妹たちと過ごしてきた少年にとっては、殺風景な部屋も大きく感じる。簡素なシンクや備え付けの寝台、一つだけのクローゼットなどなど……あるのは最低限の家具と設備だけだ。

 シンプルの一言に尽きる。これから自分は、ここで生活していくことになる。

 飛行船でリベールからクロスベルに向かうにあたり、カイトはリベールの異変でも苦楽を共にした旅装用の鞄に数日分の生活品や衣服や路銀を詰め込んでいた。それでこの数日を遊撃士協会支部で過ごしてきたが、さすがにそれだけでは今後は賄えない。

 かといって、現地で多くの物品を買う、なんて贅沢もしてられない。

 次は、自分の荷物の搬入だ。

「荷物を運ぶのは大丈夫かい? 多少は手伝えるが」

 賃貸の最終手続きを簡単にすませて一息つくと、男性は親切な提案をしてくれた。

 だが、今日に関していえば大丈夫だった。

「大丈夫ですよ。伝手があるんです。もうすぐ空港に着くはずだし、荷運びも手伝ってもらう約束なんです」

「ほう、搬入も手伝ってくれる業者さんか。珍しい商いだね」

「個人的な知り合いなんです。普段は配達が主な業務らしいんですけど」

 今後とも良好な関係を築けることを願いつつ、管理人の男性と別れる。カイトは財布と戦術オーブメント、双銃という最低限のものだけを装備して、残りは借りたばかりの部屋に鞄ごと放って部屋を出た。身軽になった少年は、クロスベルの街中へと溶け込んだ。

 旧市街から鉄橋を通り東通りへ。さらに中央広場を通って駅前広場に出て、クロスベル駅の隣の建物──カイトも利用したクロスベル国際空港の中へ入る。

 初日も感じたことだが、国際的な金融都市だけあって空港の利用者は多い。帝国・共和国の都市部からは大陸横断鉄道も通っているのでそこから行けるが、カイトがそうしたように鉄道のないリベールや大陸北方のレミフェリア公国、大陸中東部などからはこの玄関口を使うことが多い。観光客やサラリーマン、業者、付け加えるなら従業員。沢山の人がごった返している。

 その一角にカイトは控える。人が多いことにはまだまだなれないので、視線は妙に空中を泳いでいた、。

 しかし、カイトが待つことは一分もなかった。待つ相手は、ずいぶんと生真面目になったらしい。というより、客商売としては時間厳守は当り前の気配りか。

「おーい、カイトー」

 きつめの、しかし透き通った声色が少年を呼び出した。

「あ、いたいた」

 実に三か月は経つか。久しぶりの再会である。

 薄い黄色の服装、空港の中では目立つ、業者特有のサンバイザー。特徴的な褪せた水色のショートヘアが歩行の旅に揺れている。

「久しぶりですね! ジョゼットさん!」

 カイトは再会に笑みを浮かべる。

 リベールを中心に、一年ほど前に騒ぎを起こした元空賊団《カプア一家》。

 その紅一点、ジョゼット・カプアが朗らかな笑みを浮かべていた。

 

 

────

 

 

「あんたの荷物も全部運んだ。運送料の勘定も終えた。これで依頼は達成かな」

「はい。助かりましたよ、ジョゼットさん」

 新たな居住区として、都会慣れしていないこと以外に金銭の問題で旧市街を選んだカイト。

 自分の荷物を運ぶ手段についても、当然クロスベルへ旅立つ数週間ほど前から難渋していた。

 カイトの家はリベール王国のルーアン地方、その都心部から離れた自然豊かな海道沿いの孤児院だ。そこから多数の荷物をルーアン市の空港にまで運ぶ。これだけでも運送業者を雇う必要が出てくる。

 さらに、荷物を空輸で運ぶための費用。当然それなりに出費はかさむ。

 加え、クロスベル国際空港から旧市街までの移動。面倒くさいことこの上ない。

 カイトはこの一連の作業をどうすべきか悩んでいた。

 そんな時に思いついたのが、気心の知れた知り合いに頼るというものだった。つまり、ジョゼットたちの存在だ。

 カイトとは直接の関りは薄いカプア一家。彼らは元々エステルとヨシュアの二人との因縁が強かった。ロレント地方での翠耀石強奪事件、ボース地方での飛行船失踪事件。どちらも空賊家業をしていたカプア一家が引き起こしていたものであり、そしてエステルとヨシュアをはじめとした仲間たちの手によって解決し、カプア一家はお縄についた。

 その後クーデター事件に際して脱走し、一時はエステルの下から離れたヨシュアとも行動を共にしていたこともあった。

 紆余曲折を経て浮遊都市で再開し、その後は仲間として結社との戦いに参加。そして異変後はリベール王国女王アリシアの恩赦を受けた。

 犯罪者でなくなったカプア一家は、舎弟たちとともに生計を立てるために飛空艇を使用した運送業を始めることにしたのだ。

 それがカプア特急便。社長にドルン・カプア。副社長にキール・カプア。会計にジョゼット・カプア。従業員にかつての舎弟たち。彼らを従業員としている。

 彼らの存在を思い出したカイトは、さっそくカプア特急便へ連絡をしたのだ。

「結構上々みたいですね? カプア特急便」

「そうだね。始めたばかりの仕事だけど、感謝されることが多くて気に入ってるよ」

 ジョゼットが机に座り、自分と対面して炒飯を食している。ちなみにメニューは自分も同じ、龍老炒飯。

「ドルンさんとか、キールさんとか。みんな元気ですか?」

「うん、ドルン兄なんかは慣れない仕事で手間取ってるけど。優しい性格だからね、飽きずに続けてる」

 カプア特急便は、それ以前の空賊としての所業からは信じられないような──そもそも空賊時代から行ってきたのは窃盗が中心で、犯罪の中でもせこいことばかりをしてきた団ではあるが──安心・安全・お客様第一の社風をモットーに営業を始めていた。その甲斐あってか、カプア特急便は業界でも少しずつ頭角を現してきているらしい。

 そして彼らの評判がいい理由として、社風以外に彼らの所有する飛空艇《山猫号》の機動性にあった。元々が貴族の娯楽として造られた小型飛行艇は、十アージュ四方ほどの広場があれば場所を選ばず着陸でき、かなりの速度で物を運べる。空賊時代に培われた操縦技術も功を奏した。

 結果、カイトの荷物はマーシア孤児院の広場から直接クロスベル国際空港へ運ぶことができた。さらには仲間のよしみで荷物を運んでくれるし、費用もいくらか安くしてくれるというのだから、カイトにとってはありがたいことこの上ない。

「ほんと、助かりましたよジョゼットさん。お昼代くらい、いくらでも奢ります」

「別にいいけど……ま、受け取っておくよ。今後とも御贔屓にね」

 場所は東通りにある老舗東方料理屋《龍老飯店》だった。大陸東方に由来するという料理の数々と、それを料理する店長チャンホイ、ついでに看板娘のサンサンはクロスベルでも有名らしく、店内は常に賑わっている。ミシェルに『東通りで過ごすなら必ず寄りなさいな』と言われたので、カイトはこうしてジョゼットへ感謝の念を伝えるために休憩がてらの昼食に誘ったのだ。

 加えて、二人は直接の縁がなくとも浮遊都市での戦いを経験したもの同士。自然と連帯感は生まれてくる。

「あんたのほうは、やっと正遊撃士になったんだっけ? ヨシュアと同じ位だよね」

「これでも、この年で正遊撃士になったのはそれなりにすごいことなんだけどな……」

 一度落ち込んで、カイトは切り替えた。

「クロスベルにきてまだ一週間も経っていませんから。それにこの金融都市……慣れたなんて言えませんよ」

「大陸を見比べたら、リベールは田舎国だからねえ」

「でも、気分は新鮮ですよ」

 リベールの異変により、それまでの生活と大きくリズムや立場が変わった仲間や関係者は多い。カイトもその一人で、遊撃士の資格を経て国外に旅立つまでになった。目の前のジョゼットも同様だ。

 そして生活の場を大きく変えたのは、カイトとジョゼット以外では二人だけだ。

「エステルとヨシュアも、今頃は帝国を旅してる……」

 二人のリベールの英雄もまた、リベールを離れていた。遊撃士として経験を積むこと、そして二人にとってかけがえのない存在の強者に追い付くこと。それが理由だとカイトをはじめ仲間たちは聞いているが、特にヨシュアには別の意図があるようにも感じた。

 そんな仲間の存在を懐かしく思うカイトだが、対面に座るジョゼットはぶっきらぼうに返す。

「あんなノーテンキ女のことなんて知らないよ」

「え? ああ……」

 その本意が嫉妬だということを遅れて理解し、カイトは面白いものを見るように笑う。

 頬杖ををつき流し目で虚空を見るジョゼットに、カイトはいたずらを試みる。

「でも、手紙を預かる約束をしているんでしょ? 二人の仲のことも随分詳しく──」

「あんた関係の手紙、受け取った先から破いて捨ててやるよ?」

「すみませんでした」

 掌を返すのが早い少年である。

 お互い直接の縁が薄い二人ではあるが、間にいたエステルの人徳か気さくな態度でいることができる。

 ともあれ、当初の目的だった引っ越しはできた。ジョゼットをはじめ、社員の人たちには感謝しなければならない。

「まあいいや、これからもよろしくお願いします。カプア特急便、贔屓にさせてもらいますから」

 しかし、まさか彼らカプア特急便が有事の時にもカイトをはじめ多くの英雄たちの危機に駆けつけることになるとは、カイトもジョゼットも、誰も思わなかったわけだが。

 

 

────

 

 

 その後も世間話を楽しみ、次の配達があるというジョゼットを空港まで見送った。

 仲間たちとの再会は、やはり安心するものだ。知らない人しかいないクロスベルでの生活だが、少しは元気が出てきている。

 そうまで思って、自分が疲れを感じていることに気づく。

 慣れない新天地での生活。さらに、遊撃士における黒い職場とも揶揄されかねないクロスベル支部。体力的にも、精神的にも負荷がかかるのは当たり前のことだ。

 少しばかり、気分転換がしたいと、そう思った。

 今日は引っ越し作業ということで、一日休みだ。残るは半日ほど。遊びに繰り出す手もなくはないが、まだクロスベルの観光には疎い。

 というか、荷ほどきもしなければならなかった。休む暇はなさそうだ。

 カイトは、何往復めかとなる中央広場から旧市街への道を歩く。

 正午を過ぎた昼下がり。あと二か月もすれば夏だ。それなりに汗をかくような陽光がカイトを照らしている。

「とっとと荷物を整理して、日陰で休もう」

 だが女神は休ませてはくれないらしい。精神的な疲労はむしろ体を動かして発散しろということなのか。

 鉄橋に足をかけたところで、旧市街から喧騒が聴こえてくる。

「いい度胸だ、ワジィ……前に出ろや!」

「お望みなら、相手をしてあげるよ。久しぶりに本気を出してもいい」

 自分と同い年から少し年上の男たち。青、赤の二色に分かれ、それぞれがデザインの服を着て対面している。

 やってくれ、いいぞ、などの騒ぎ越えに押され、先頭に立っているのもまた二人の男だった。

 今にも衝突しそうな二人に、これは暴力沙汰だなあとカイトは嘆息する。

 しかも新たな家である《ロータスハイツ》の目の前で。これでは荷解きが終わってもとても休めたもんじゃない。

 溜息をついてから、カイトは男たちに向かって声をかけた。

「おい、お前ら! 人が住んでる前で騒ぎを起こさないでくれ!」

 男たちの声がうるさいので、こちらも叫び気味に伝えた。一斉に男たちは振り向いて、背丈の低い少年を中止する。

 こいつらの服装はともかく、統制が取れている割にはた迷惑な集団には覚えがある。ルーアンの不良集団《レイヴン》だ。こいつらも同じような集まりだろうと直感した。

 赤服の一人──恐らくは下っ端──が言った。

「おぁあ!? なんだてめぇ!? 邪魔すんじゃねえよぉ!!」

 おそらくリーダー格であろう二人は、言い争いを止め自分を見ている。怒りよりは興味が強く感じる目線。

 カイトはもう一歩前へ踏み出す。不良集団と三アージュほどの距離まで近づいてから、再び言った。

「だから、アパートの前で騒がれるとうるさいんだ。喧嘩ならよそでやってくれ。日曜学校で教わらなくても判るだろう」

「ああん!?」

 別の赤服、下っ端二号が叫ぶ。対して、青服の部下らしき男たちはにらみを利かせているが静観している。赤服のほうがカイトにとっては迷惑らしいことが判明した。

「てめえ見ない顔だな。ガキが調子に乗ってんじゃねえよ!」

「いやだから近隣住民の迷惑だって」

「ああん!?」

「おおん!?」

 ああ、だめだこいつら。レイヴンと一緒で、痛い目あわせないと。一回だけじゃ大人しくなるかも判らないけど。

 我慢できないのか、最初にたてついてきた下っ端一号が近づいてくる。その手には角材が握られている。ずいぶんと荒々しい装備だ。

 下っ端一号が足を回転させ、角材で殴りつけてくる。

 狙いが直線的。真正面からの殴打。甘すぎる。

 カイトは角材の一撃を紙一重で躱し、懐に潜り込んで脛を蹴った。

 男は悶絶。隙を見逃さず脇を通って背後へ。振り向きざまに足払い。

 特攻してきた男は三秒もかからず転倒した。

 その様子を冷えた目で一瞥してから、続けて不良集団を見やる。服装にバリエーションがない下っ端や部下たちは、先ほどまでの喧騒を引っ込めてカイトを見ている。

 カイトは再び口を開いた。

「言い方を変えるけど、人が嫌がることは止めてほしいな。日曜学校の道徳の授業で最初に習うことだと思うけど」

 伊達に修羅場は潜っていない。ただの不良なら簡単に黙らせることができる自信はある。

「おもしれえ」

 赤服集団の先頭に立っていた、大柄な男がカイトの前に立つ。

 鶏冠(とさか)のように反り立った髪とぎらついた瞳が特徴的な大男。

 男はカイトの真正面に立つ。威圧感は感じるがまだ殴りつけてくる気はないらしい。鎖が巻き付いた殺人的な木刀は、まだ足元でぶらついている。

「舎弟たちも言ってたが、てめえ見ない顔だな」

 声色も威圧的だ。なんだかアガットが不良のままねじ曲がったみたいな感じがする。

「そりゃ、最近クロスベルに引っ越してきたばかりだし。旧市街に来たのも今日が初めてだよ」

「よそ者が長く旧市街にいる俺たちにたてつこうってのか?」

「そんな習慣は知らないよ。オレは休みたいから、早く静かにしてほしいだけだ」

「はっ」

 一瞬、男は手に持つ木刀を振りかざした。カイトは咄嗟に後退する。

「オレはヴァルド・ヴァレス。《サーベルバイパー》のヘッドだ。てめぇも名乗れや」

「名乗らなきゃいけないのね……カイト・レグメント、クロスベルに転属してきた遊撃士だ」

 カイトの自己紹介に、一同は声を漏らしている。先ほど下っ端一号を組み伏せた実力の由縁も少しはわかってくれるだろう。

 だが、むしろ身分を明かしてヘッドであるヴァルドは悦んでいるようにも見える。

「はあ……正義のヒーローが俺たちを裁こうってのか?」

「そうしたい気持ちもあるけど……どうせ反省しないでしょ? なら痛い目にあってもらう」

 そう言ってカイトは、双銃を構えた。大仰に導力銃の操作手順を見せて、一応は非殺傷モードにしていることを見せつける。

「へぇ」

 その姿勢に声を出して興味を浮かべたのは、むしろ青服数段のほうのリーダーだった。碧髪のカイトと同年代の少年、中性的だが纏う雰囲気のせいかカイトとは違う妖艶な雰囲気を醸し出している。不良にはあまり見えない。

 一方、ヴァルドはにやけ笑いを続けている。

「いいぜ。おめえが勝ったら、少なくとも今日の所は大人しく帰ってやるよ」

「交渉成立。何なら下っ端どもと一緒に来てもいいけど?」

「は、ざけんな」

 ヴァルドは舎弟たちを下がらせた。

「ワジ、てめえとの決着はいったんお預けだ。いいな?」

「ま、別にいいけど。君が負けそうになるまでは静観させてもらうよ」

「け、ぬかせ」

 旧市街の広場。ヴァルドとカイトは対峙した。不良集団と、そして何事かと騒ぎを聞きつけた住民たちも来ている。

(あれ……オレ休みたいとか思ってたはずなんだけど)

 なんで戦おうとしてるんだ? と考えるがすでに遅い。

 不良集団、住民たち。

 カイトが感知していない存在として、武器商人とその娘、そして警察官。

 少年遊撃士が知らないままに、不良ヘッドとの抗争の観客は増えていく。

「そんじゃ……覚悟しろや、遊撃士ぃ!」

「……上等!」

 カイトの銃弾が地面に炸裂するが、ヴァルドは臆せず特攻してくる。鎖付き木刀を大上段から振り下ろす。先の下っ端よりは隙の無い一撃が、むしろ跳弾より鈍い衝撃を地面に与えた。

 振り下ろしを避けたカイトは、先ほどと同じように懐に潜ろうと試みる。

「舐めんなよ!!」

 反撃。大柄に反して俊敏な木刀が、カイトの頭蓋に迫った。

 

 

 







クロスベル小話の始まり始まり

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