「君たちの担任を務めることとなった、武術教練教官サラ・バレスタインよ。よろしくお願いするわね」
ワインレッドの髪を持つ女性はそう言って笑った。
武術教練教官。どおりで、ただの教官とは思えない服装だったわけだ。帝国軍人というわけでもなさそうだが。
「な、Ⅶ組……?」
緑髪の、眼鏡の男子が不審げな顔をした。いや、腑に落ちないのはこの場のほとんどの人間がそうなのだが、代表するかのようなわかりやすい反応を示している。
おずおずと、眼鏡の女子が手を挙げた。
「あの、サラ教官? この学院の一学年のクラス数は五つだったと記憶していますが……」
「お、さすが主席入学。よく調べているじゃない?」
教官は喉を鳴らした。
「そ。五つのクラスがあって、さらに一律で貴族と平民に区別されていたわ。あくまで去年まではね」
このあたりはむしろカイトのほうが無知だ。Ⅰ組、Ⅱ組が白い制服の貴族生徒であること。Ⅲ組からⅤ組までが緑の制服の平民生徒であること。留学生などもその外国での立場に応じて編成がなされてきた。
けれど、とサラは笑う。
「今年からもう一つクラスが立ち上げられたのよ。君たち身分に関係なく選ばれた、特科クラスⅦ組が」
呆然とする者、クラスの名を反復する者、黙って聞き入る者。反応は様々だ。
カイトとしては、隣の少年少女がもしかしたら貴族かもしれない、という予感にさしたる感慨はなかった。後で声をかけるつもりの青髪の少女は貴族の娘だが面識はあった。そもそもリベール出身のカイトは貴族と平民の差というものに若干疎い。
だがアリスの言動を考えれば、無視できない溝だというのは理解しているつもりだった。その答え合わせをするかのように、声を大にする眼鏡の少年がいた。
「冗談じゃない! そんな話は聞いていませんよ!」
「えっと、君はたしか……」
その場の注目を教官に代わり一身に受けても、叫んだ深緑髪の少年の態度は変わらない。
「マキアス・レーグニッツです! それよりもサラ教官、自分はとても納得できません!」
少年マキアスは続ける。
「まさか、貴族風情と一緒にやっていけと言うんですか!?」
隠しもしない態度にサラ教官は困った様子だ。
「そうは言ってもねえ。同じ若者同士なんだから、すぐに仲良くなれるんじゃない?」
「そ、そんなわけないでしょう!?」
この場に少しばかりはいるであろう貴族生徒に何を言われるかわからない。例えば四大名門のような大貴族がいたらどうするのだろう、とそんなカイトの心配は、空の女神の幸運かすぐになくなった。粋な計らいか、問題の解決ではなくではなく消失という形だが。
「ふっ」
笑ったのはマキアスの隣に立っていた金髪の男子だ。態度からして貴族生徒なのは明らかだった。
「君……何か文句でもあるのか?」
「別に。平民
「うわぁ……」
カイトは呆れた。どっちも随分火に油を注ぐこと注ぐこと。グラウンドでキャンプファイヤーでもやってくればいいんじゃないかと思う。
マキアスは続けた。
「これはこれは、どうやら大貴族の御子息が紛れ込んでいるようだ。その尊大不遜な態度……さぞ名のある家柄と見受け──」
「ユーシス。アルバレアだ」
マキアスの虚を突くように、その名前は発せられた。この場にいる者は十一名。その多くが、やはり男子の名前に驚く。
「し、四大名門!」
「東のクロイツェン州を収めるアルバレア公爵家の……」
橙髪の男子、黒髪の男子が言った。特に橙髪の男子が慌てふためいている。彼らは平民だろうか。
そして、カイトも驚く。印象深い帝国の旅路、その中で特に忘れられない人物の血縁だったから。
(ルーファスさんの兄弟?)
髪の色は同じ。顔立ちもルーファスと比べればやや幼いが似ている。若干棘のある視線が目立つが、それは自分と同じ若さゆえだろうか。
「どうした? 何をたじろいでいる? 貴族風情ごとき、家名など知らないと思ったが」
「っ……随分と人を見下すじゃないか! その大層な家名に誰もが怯むと思ったら大間違いだぞ!」
熱が収まる気配を見せない。たじろぐ少年少女たち。
(はぁ、初日から波乱含みだ)
入学式前にも思ったことを反芻する。学院生活、待っているのは楽しみなことだけではなさそうだ。
動いたのはカイト以外にも一人いた。褐色の肌、長身の男子がマキアスの前に立った。それを見て、カイトはユーシスの視界に立ちふさがる。
「二人共、それ以上は女神もお怒りになるだろう」
「まだなにも始まってもないんだから。挑発も過ぎると安くなるぞ」
「くっ……」
「……フン」
その高身長の男子と、そして大した背丈でないにも関わらず動揺しないカイトに、さしも喧嘩腰の二人も押し黙る。
サラ教官が言った。
「ありがとね、留学生諸君。お姉さん助かっちゃったわ」
カイトは褐色の男子を見た。立場は同じか。視線が会うと彼は少しだけ表情が柔らかくなった。
「文句質問罵詈雑言、色々あるでしょうけどそれは後で受けるわ。もっとも、君たちも若者であっても子供じゃない。少し慎みは覚えだほうがいいと思うけどね」
再びサラが注目を集める。
「そろそろオリエンテーリングの時間よ。覚悟はできてるかしら? まああろうがなかろうが始めるんだけど」
不意に教官が後ろへ下がる。
「オリエンテーリング……そういった野外競技があるのは聞いたことがありますが」
「もしかして、門で預けたものと関係が?」
紫髪の女子、黒髪の男子が続いて問う。ご満悦な様子の教官殿だが、先ほどの通り質問に答えるつもりはないようで、カイトたち生徒の目線から完全に外れるところまで下がった。壇上の彼女は縁に隠れて見えなくなる。
「ポチっとな」
そして呑気な声が漏れた。
その瞬間だった。地面が消失し、浮遊感が襲ったのは。
「え」
「はっ」
「む!?」
「なぁっ!」
「うわぁ!?」
どれが誰の声かを判断する余裕もない。生徒たちは、真っ逆さまに暗闇へ落ちていく。
だが、二人その波に逆らう者たちがいた。一人はその小柄な体躯をバネのようにしならせて跳躍。
「ほっ」
とっさに隠し持っていたらしいワイヤーを投げ、天井の梁に引っ掛けた。まったく驚いてもいない様子のその銀髪の少女を見ながら、もう一人であるカイトも危機を脱していた。
「あ、あぶねー……」
旧校舎についてから感じていた違和感はこれだったのかと納得する。カイトは同じく素早い身のこなしを活かして、地面が完全に無になる前に跳躍していた。傾いていない床の縁に肘と手をついて、上半身のみ覗かせている状況だ。
サラが叱責する。
「こら、二人共。どうして素直に引っかからないのよ」
「いや、どうしてって言われても……」
「サラ、めんどくさい」
「フィー、サボってないでちゃんと協力するっ。オリエンテーリングにならない──でしょうが!」
苦無らしき短剣を投擲、ワイヤーが簡単に切れて少女がため息を付きながら落下する。
とんでもない光景を見た気がするが、フィーと呼ばれた少女もサラも平然とした様子だ。
教官殿はカイトに向き直った。
「それで……オレもど突かれるんです?」
「別にそこまではしないわ。捻りもないでしょうけど貴方もよ。留学生として、ちゃんとすること! 支える籠手の紋章が泣くわよ?」
「え……それって」
担当教官なら、カイトの素性も知っているだろう。ミュラーやオリビエがどこまで手回ししたのかもわからないが、今の『支える籠手』という発言には含みを感じられた。
だが、それを確かめる時ではない。
「わかりました。よろしくお願いします、サラ教官」
カイトは身軽に飛び降りた。猟兵のような野外活動は慣れていないが、傾斜のある床程度なら体勢を整えながら降りることができた。
「よっと」
そして先に落下したⅦ組たちと同じ場所に着地。隣には、カイトよりもなお颯爽とフィーが着地し、衝撃に体をいたわっていた。
「みんな、大丈夫……ええ!?」
視線を床から正面へ移すと、そこには驚きの光景が広がっていた。ほとんどは起き上がっているⅦ組の中で、二人横になったまま硬直している男女がいたのだ。黒髪の男子が仰向けになり、その上で金髪の女子がうつ伏せに。
それはもう、盛大に熱烈な抱擁だった。というか、男子の顔が完全に胸にうもれていた。
「とっさにかばったのか? ナイスプレーだけど格好が……」
カイトが冷や汗をかいた頃、男子も女子も自分たちの痴態に気づいたようだった。
凍りついているのはカイトだけではない。喧嘩をしていたマキアスとユーシスも、彼らを一緒に止めた褐色の男子も、その他女子も全員だ。唯一フィーのみが「ひゅーひゅー」なんで口笛にならない笛を吹いているが。やめろと言いたいが声に出せる空気ではなかった。
慌てて
「その、なんと言ったらいいのか……!」
緩慢な動作で立ち上がった彼女に、慌てたままの男子は捲し立てる。
立ち上がり、震える彼女に近づく。
「と、とりあえず申し訳ない! でも良かった、無事でなにより──」
言い切る前に、女子の手が盛大な勢いで頬に炸裂した。
「んんっ!!」
「うぶっ!?」
────
『はろはろーん、三分ぶりかしら。この程度、全員怪我はしてないわよね?』
「レグメントです、サラ教官。一名負傷しましたけど」
『ええ、嘘!? 誰がよ!?』
「人為的な張り手を一回。綺麗な紅葉ができてます」
ひと騒動の後、少し経ってやっと喧騒は収まりを見せた。だがその後は男女それぞれの被害者を労わる沈黙の場に変わった。ほどなくして全員の懐から通信を告げる音が鳴る。備品として配られた戦術オーブメントからだ。
他の生徒たちはこの手のものに触れたことがないらしい。やはりというべきか、ENIGMAをつい昨日まで当たり前のように使用していたカイトが最も早く通話にこぎつける。
『……よくわかんないけど、別に問題はないのね? それじゃ続けるわよ。他もしっかり聞きなさい』
一通りの状況をカイトが説明し、通信器の向こうのサラは気を取り直す。
『それは特注の戦術オーブメントよ。エプスタイン財団とRF社が共同開発した次世代型戦術オーブメントの一つ。第五世代戦術オーブメント、銘は
第五世代、という説明にカイトは含みを覚える。
クロスベルで支給されたENIGMAも第五世代だったはずだ。そもそも戦術オーブメントは代々エプスタイン財団が主力で開発していたという権威的な面もある。特許などがあるわけではないが、第一世代から第四世代までにおいてその他の会社が開発したという出来事ははなかった。
『RF社と共同開発した』というあたり、財団の正統進化から外れた独自の戦術オーブメントというべきか。この分だと共和国のヴェルヌ社あたりも共同開発をしていそうだ。
薄暗がりだった景色が一瞬にして光を取り戻す。導力灯の明かりが、自分たちが円形の広場にいることを知らせる。壁際に、小箱と武具の入ったケースが置かれた台が十ヶ所。入学式前に上級生に預けたものだ。
『というわけで、各自受け取りなさい。君たちから預かっていた武具と、特別なクォーツを用意したわ。まずは動いてみなさい。全員がクォーツをARCUSにセットしたら、こちらから再度連絡するわ』
腑に落ちない説明のまま三々五々に散り散りになる。カイトも自分のものを見つけた。
台の上にはカイトが預けた二丁拳銃と魔導銃のトランクケース、そして手のひらに収まるほどの小さな小箱。
銃一式は構わない、そのまま装備して弾薬も整える。問題はもう一つだ。
小箱を開けた。
「……クォーツだ。でも、戦術オーブメント用にしては随分と大きいな」
今、カイトの手に収まる球形は赤色なので、火属性系統のクォーツなのだと理解できる。だがそれだけでなく、クォーツには紋様が刻まれていた。
両手を頭上で繋がれた人間が、針とも刃とも、格子の檻とも見れる線に囚われている。そんな象徴的な紋様だった。
小箱の中には説明書もあった。そこには長い文章もあったが、最初に目を引くのは名前だ。
『マスタークォーツ《クリミナル》』。それが、カイトの手に収まるその宝珠の名称だ。
《駆動》や《治癒》などの直接的な名称とも違う、ずいぶんと意味ありげな銘。
少しだけ指先で転がしてから、ARCUSのカバーを開いた。クォーツ盤のスロットは九つ。八つのスロットの中心に、マスタークォーツをはめるための大きなくぼみがある。
《クリミナル》を装着した。カイトにとっては、この二年間何度もやって来た慣れ親しんだ所作だった。その後にARCUSが光り、使用者であるカイトと同期・同調したのも、第四世代やENIGMAと同じだ。
「また、よろしくな。相棒」
昨日に続きそんなことを呟いてみた。代替わりが激しいのも、戦術オーブメントの常だろう。
振り返ると、他の生徒たちも徐々に集まりつつあった、特に行動が早い者たちが広場の中心にいた。
手こずっている人もいて、全員が集まるにはまだ時間がある。その期を利用して、カイトは一人佇む少女に近づいた。
「お久しぶりです。オレのこと、覚えてますか?」
第一声をどうするべきか悩んで、以前もそれほど会話をしていなかったことを思い出した。
「カイト殿か。まさか、そなたがいるとは思わなかった」
青髪の少女はラウラ・S・アルゼイド。帝国南東、レグラムの領主であるヴィクター・S・アルゼイドの一人娘だ。帝国遊撃士協会支部連続襲撃事件の再調査の時、カイトは仲間たちとレグラムに訪れていた。彼らを案内したのはトヴァルであり、そしてトヴァルはヴィクターやラウラとも面識があった。その縁で食事を共にしたこともある。
カイトにとっては便宜を図ってくれた地方貴族の娘、ラウラにとっては旧知の遊撃士の同僚。直接、というわけではないが、さりとて因縁のあるような間柄でもない。
ただ、以前は一応敬語を崩せていなかった。だからこその第一声だったが、ラウラはどこまでも自然な態度だった。
「そうかしこまる必要はない。Ⅶ組という枠組み……幸先は分からぬが、同じ学年の同志であることに変わりはないだろう」
「……そっか。それじゃ、オレのことも呼び捨てで。よろしく、ラウラ」
「うん。カイト」
二人は握手を交わした。以前と変わらず、どこまでもまっすぐな少女だった。
「それで、カイト。そなたが何故ここに?」
ラウラはカイトのある程度の素性を知っている。
「修行の一環みたいなものでさ。遊撃士は休業中なんだ」
「なるほど……興味はあるが、詮索は後にしよう。まずはお互い、この場を切り抜けなくてはな」
「ああ、そうだね」
マキアスとユーシスの件もある。まだ安穏とはしていられない状況だった。
ひとまず、縁ある自分たちだけでも仲良くしないと、とは感じる。
そこで、カイトに向けた別の声。
「もしかして……カイト?」
振り向いた。その先には、入学式でも目撃した橙色髪の男子がいた。もしかしなくても自分を見ている。
「えっと……?」
「覚えてない? でも、無理もないよね。一年以上前のことだもの」
幼げな少年は続ける。カイトが目を瞬かせていることを気にせず、朗らかに続けた。
「改めて、僕はエリオット。エリオット・クレイグだよ。帝都のマーテル公園以来だね」
帝都? 帝都に趣いたのは例の事件の調査の時だけだ。昨日も寄ったが、ミュラー以外の誰とも会っていない。帝都といえば思い出すのはアリスの依頼を引き受けたことだが……。
「あ! あの時バイオリンを弾いてた!?」
思い出した。その依頼の最中、カイトとアリスは目の前の少年と出会っていた。悩みを抱えていた少年だ。
「あはは、覚えていてくれてよかった!」
「久しぶりだな、エリオット! そっか、君まで!」
偶然か必然か、知り合いが多い。この分だと、他にもいそうだ。あの一週間程度の旅路の中で、カイトと接触した人間が。
「知り合いがいるのは頼もしいよ。よろしくね、カイト」
「こちらこそ、だよ。エリオット!」
記憶が確かなら、エリオットは音楽院を志望していたはずだ。それが士官学院とは、随分な道筋の変化ではある。
気になることは気になるが、やはりその話をここで長々と聞くわけにはいかなかった。ラウラとの話を打ち切ったのと同様の理由だ。
そのラウラとエリオットが言葉を交わす。エリオットはラウラが貴族であることに、若干の畏怖を抱いているようだ。彼は平民なのだろう。やはりカイトとは反応に違いがある。
そうこうしているうちに、ようやく全員が集まってきた。喧嘩腰のユーシスとマキアスも、ハプニングがあった黒髪の男子と金髪の女子も、仕方なしに集まっている。
再び、ARCUSから通信。いい加減慣れてきた。
『全員、ARCUSの調整は済んだかしら? それじゃあ、士官学院・特科クラスⅦ組の特別オリエンテーリングを開始するわ』
やはり質問に応じる気はないようだ。サラの声が聞こえるなり、広場に唯一あった扉が重い音とともに開かれる。
『その先はダンジョン区画になっているわ。ちょっとした魔獣も徘徊してるけど……戦闘の初心者でも
その場の八人ほどが、とある二人を見た。
『各自、ダンジョンを踏破して一階まで戻ってくること。ゴール出来たら、ほっぺにチューして上げてもいいわよ?』
そんな冗談を最後に、通信は切れる。残ったのは何度目かの沈黙だ。
カイトとしては、知り合いがいるのは行幸だった。だが他七人はどこの誰かもわからない同世代の少年少女。いきなりダンジョンを踏破しろと言われても、戸惑いが増すばかり。
それでも、動かなければならない。この程度でへこたれていては、帝国へ来た気合も風化してしまう。
そんな風に考えて、カイトは他の生徒たちの出方を伺う。
動き出した生徒は二人いた。ラウラとユーシスだ。偶然にも、どちらもが貴族に連なる者。特にユーシスは、一人ダンジョンの入口へと動き出していた。
「ま、待ちたまえ! まさか一人で行く気か?」
案の定というべきか、マキアスが突っかかった。二人の間に明らかに剣呑とした空気が生まれる。
「何がおかしい? わざわざ俺に声をかけるとは」
「魔獣だっているんだろう!? 協力し合えと教官が……!」
「なんだ、貴族風情と連れ立って歩きたいのか?」
「く、言わせておけば!」
マキアスは自分の得物を、導力式散弾銃を振りかぶった。
「僕だって、君と協力なんてゴメンだ! 旧態依然とした貴族よりも、上であるということを証明してやる!」
そう言うと、一応は協力を促していたはずのマキアス自身が先に行ってしまう。その様子を侮蔑し、ユーシスも続く。
さらにその二人の陰に隠れて、銀髪の少女フィーもまた欠伸を噛み締めながら行ってしまう。その様子にはカイトのみが気づいていた。
呆気にとられる残り七人。カイトはため息をついた。
「まったく、団体行動だってのにさ……ラウラ」
「どうした?」
「この場を任せてもいいか? あの三人をフォローしてくる」
「しかし……」
それは、カイト自身が言った言葉の否定になる。そういった意見だろう。だが、これ以上輪を乱さないためにはこの行動も必要だと思った。
お互いの実力はそれなりに把握しているし、何よりユーシスとマキアスとは言葉を交わしたいと思ったのだ。ルーファスと同じ家のユーシスと、貴族をあそこまで嫌うマキアスに。
カイトが仮にも遊撃士でありながらああいった場面でほとんど静観していたのは、やはり興味が強かったから。
「こっちにも火種はあるだろうし。頼むよ」
サラの言葉が事実であれば、自分と褐色の男子以外は帝国人だ。もっと彼らと話してみたいと思った。もちろん、留学生にもだ。
「……承知した。また後で落ち合おう」
頼れるラウラにそれだけ告げた。ざっと見て、エリオット以外の男子二人も戦闘は慣れていそうだった。自分が抜けても問題はないだろう。
カイトは一人、ダンジョン攻略を開始した。
カイトのARCUSの初期マスタークォーツは、クリミナルとなりました。