帝国南部サザーラント州、白亜の旧都セントアーク。ハイアームズ侯爵邸。
Ⅶ組B班の目の前に立つ人物は穏やかそうな外見ながら、帝国貴族としての相応の格式を持っていた。ルーファスから始まりユーシスやアンゼリカなど、四大名門に連なる人物とはそれなりに出会ってきた。
だが、カイトが当主と出会うのはここ数ヶ月だけのことだ。二か月前のクロスベルでカイエン公爵と。
そして今、二人目の四大名門に出会う。
「ようこそ、特科クラスⅦ組の諸君。サザーラント州の統括を任されているフェルナン・ハイアームズだ」
鉄道憲兵隊クレア・リーヴェルト大尉の案内のもと、カイトたちⅦ組B班はハイアームズ侯爵と対面する。四大名門の一角である彼は、執務室の大きな机に座っている。
カイトたち五人の中で、ラウラが一同の代表として立っていた。唯一の貴族だからだ。
「久しぶりだね、ラウラ君。アルゼイド子爵は壮健かな?」
「はい。侯爵閣下こそ、壮健で何よりです」
「彼とは爵位こそ違うが、気さくに話せる間柄だからね。彼や君との関係は良好でありたい」
「感謝します。父も喜ぶでしょう」
「さて、ラウラ君。級友を紹介してくれるかな」
「では改めて。私と同じⅦ組のメンバーです」
カイトたちはそれぞれ名前を明かす。
「よろしく頼むよ。ところで、男子諸君」
「は、はいっ」
エリオットは緊張しきりだ。ユーシスに対しての緊張が溶けている彼だが、さすがに相手と状況が違いすぎる。
「知っているかもしれないが、三男──パトリックもⅠ組に在籍している。不肖の息子はまだ世間に疎くてね。彼のことは何か聞いていないかな?」
エリオットはおろか、カイトもガイウスも黙り込んでしまった。パトリックといえば三人の記憶にも新しいが、あの導力端末基礎授業の一幕はハイアームズ侯爵に伝えられるものではない。
ラウラとフィーは事情を知らないため危機感もなく黙っている。
固まっていると、ハイアームズ侯爵は笑った。
「ははは、少し意地悪をしてしまったようだね。息子が迷惑をかけてしまったようだ」
「いえ、そんな」
「心配しないでくれたまえ、とって食おうとは思わないさ。君たちは息子の大事な同輩なのだからね」
「……お気遣い、感謝します」
カイトは固く会釈する。
カイエン公爵と余りにも威圧感が違いすぎる。ハイアームズ侯爵は対面しやすく、逆に警戒してしまった。
「うむ、結構」
ハイアームズ侯爵は机にあった封筒を取り出した。
「今回セントアークで行う実習において、課題を用意させてもらった。宿泊先についたら確認したまえ」
「謹んで頂戴いたします、閣下」
ラウラが受け取った。
「慣れない土地──いろいろとあるだろう。君たちは安全に配慮しつつ、慎重に動きなさい」
そんな父親のような言葉を最後に、カイトたちはハイアームズ侯爵邸を後にすることになった。
そのままクレア大尉に連れられ、セントアークの街並みを進む。
歩きながら、カイトはクレア大尉に声をかけた。
「改めて、お久しぶりです。大尉に昇進されていたんですね」
「はい。この二年の間でも、いろいろとありましたから」
「カイトもクレア大尉と知り合いだったんだ?」
エリオットが聞いてきた。
ラウラ、エリオット、ガイウスがクレア大尉と出会ったのは先月の実習の時の話だ。ケルディックの増税にまつわる盗難事件の調査の際、領邦軍の不当な拘束から守ってくれたのだという。
そういえば、その説明をリィンがしていた時にサラがものすごく不機嫌そうだったのを思い出した。あれはサラが遊撃士だったから、自分たちの活動領域を狭める鉄血宰相に連なる人間をよく思わなかった、という真相だったのか。
「あ、ああ。昔、いろいろとね」
カイトはそう言って、バツが悪そうにクレア大尉に頭を下げた。
「その節は、失礼な態度を取ってしまいました」
あの時も、ジンたち遊撃士とクレア大尉たち鉄道憲兵隊の間で軋轢があった。特にカイトは、それなりに強く当たったし強く言われた。
クレア大尉は気にするな、という。
「それぞれの立場がありました。気にしていませんよ」
「……そう言ってもらえると、助かります」
「私の方こそ、以前のことは水に流していただけると」
親しげに話すカイトの様子に、フィーが頬を膨らませた。
「……私だけ仲間はずれ」
それはクレア大尉と面識のある人間、という意味についてだった。ガイウスとエリオットがフィーをなだめる。
その間、カイトとラウラはクレア大尉と話す。
「ところで、どうして大尉が特別実習の案内役に?」
サラなら絶対に呼ばなそうな相手なのにだ。どうして彼女がこの役割を受け持っているのか。
「実は、トールズ士官学院の理事によって、私は手配を受けたのです」
聞けば、トールズ士官学院には三人の理事がいるのだという。その内の一人がカイトも知るルーファス・アルバレア。A班はユーシスの帰郷も相まって、ルーファスが宿などを手配しているらしい。
クレア大尉は正規軍だが、別の知事によって頼まれたのだと。
「そう、なんですね」
「ふむ、それならば納得だ」
そうして、クレア大尉はセントアーク住宅街の宿泊地まで案内してくれる。今回はサラの知り合いの宿酒場などではなく、少し大きな一軒家だった。以前は団体組織が活動に使用していたが、現在は使われずにいる場所だという。ちょっとしたコテージのように使えて、一晩の宿としてなら申し分ない。
「へぇ、いいもんだね」
「さすがに今回は男女同室とはならないようだ」
部屋を見てエリオットとガイウスがホッと息を吐く。このあたりの苦労はA班もB班も変わらなかったらしい。
そもそも仲が改善されたとはいえリィンは不可抗力な事態をアリサにしてしまったわけだし、だいぶ揉めたのだろう。先月のB班もフィーの言葉がなければ危うかった。
「そういう意味じゃ、よかったね。ラウラとフィー、今回は男子は別で──あ」
嫌な予感がした。当の女子二人を見る。
『…………』
女子用の部屋を見て二人して沈黙していた。フィーなどは『男子部屋のほうがいい』なんてことを言い出しそうだ。やめてくれ、余計に胃が痛くなる。
カイトは誰よりも大きなため息を吐くのだった。
五人は先月と同じように一泊分の荷物を部屋に預ける。そして建物の外へ出た。鍵はカイトが持つこととなった。
「Ⅶ組B班、始動ですね」
律儀に待ってくれていたクレア大尉が、そんなことを言ってくれる。
「案内ありがとうございました」
「感謝する」
「お仕事、頑張ってください!」
声をかけたのは男子三人だ。妙にハキハキしているのはクレア大尉が妙齢の女性だからというわけではなく、女子二人が終始無言を貫いているからである。
「私もしばらくの間はセントアーク近郊に詰めています。『自力での行動』が原則でしょうが、もしもの時は遠慮なく声をかけてください」
そう言って、クレア大尉は踵を返す。セントアークの街並みの中に消えていく。
その背を見届けて、カイトは言った。
「なあ、三人とも」
カイトが見たのはラウラ、エリオット、ガイウスに対してだ。
「先月会った時のクレア大尉って、あんな感じだった?」
「『あんな感じ』とは?」
「いや、なんか……切羽詰まったような感じ」
カイトは少し、違和感を感じていた。クレア大尉が自分に笑顔を向けたこと以上に、彼女の目に若者を導く目というよりは、品定めをするような、それでいていてはいけないものを見るような、そんな印象を受けたのである。
「ふむ、私はわからなかったが」
「ぼ、僕も」
「私も。というか、今日初めて会ったし」
ガイウスのみ、カイトに全面的でないにしても同調する。
「俺も感じた。少し、悪い風が吹いたようだ」
ガイウスはノルドの民として《風》を信仰し風とともに生きている。そういった中で、微細な気配を察知できる能力に関しては武芸に秀でたリィンに並ぶ。その彼が感じた違和感であれば、自分の違和感も当たらずとも遠からずだろう。
「そもそもクレア大尉は革新派、ハイアームズ侯爵は貴族派だろう? なんであんなに一緒にいれるんだよ」
『あ……』
一同の漏れた声が木霊する。先月A班だった三人は、クロイツェン州の領邦軍と鉄道憲兵隊が激しく対立しているのを目撃したばかりだ。
いかにハイアームズ侯爵が穏やかそうだとか、トールズという平等の領域に守られているだとか、そういった理由を並べても違和感が残っている。
「来て一時間も経ってないけどさ。もうきな臭い感じがする」
それはカイトが遊撃士として培ってきた第六感だった。
「だとして、私たちはどうするの?」
フィーが問うた。カイトは何も言わず、ガイウスに促す。
「だからこその特別実習か。まずは現地のことを知ることから始めよう」
「そ、そうだね。ケルディックの時と同じ……まずは動いてみよう」
エリオットはラウラから特別実習の課題が入った封筒を受け取り、そして中身を取り出した。文面は先月と同じだ。
『イストミア大森林の手配魔獣(必須)』
『壊れた導力灯の点検』
『薬草の採取と配達』
『魔獣被害の調査補佐』
『(必須)と記入のものは必ず実施すること。その他の以来は検討のもと実施すること。実習範囲はセントアーク周辺二百セルジュ以内とする。なお、一日ごとにレポートをまとめて後日担当教官に提出すること』
「例によって手配魔獣か」
「壊れた導力灯の点検……うう、僕たちにできるかな」
「調査補佐か、これまたオレたち学生には珍しい依頼だな」
男子三人が口々に語る。前回のパルムでの以来より骨が折れそうだ。
時間はそれなりに掛かるだろうが、今回は明日までも含めて良い依頼があった。後ろ二つの依頼だ。
例によって、特に真面目に依頼をこなすことに抵抗がないメンバーたち。必然的に時間が許す限り依頼をこなそうと決める。
そんな中、先導する男子たちを差し置いてラウラが口を開いた。
「そなたらに頼みたいことがある」
そしてラウラはもう一人の少女を見た。その目はまっすぐだ。
「フィー、この手配魔獣戦では《戦術リンク》を繋がないか?」
男子組、緊張走る。
少しだけ間があって、フィーは告げた。
「いいよ、やろう」
フィーの目もまたまっすぐだ。緊張は解けない、それでも二人は今までと違ってコミュニケーションを取っている。
「男子たちには迷惑をかけている自覚はある。そろそろ名誉挽回しなければ、私も家名に泥を塗ってしまうからな」
「戦場で役に立てなきゃ、私の役割を果たせない。汚名挽回の時間」
「そこは『汚名返上』な?」
カイトがつっ込んだ。続けてエリオットが心配げに声をかける。
「その、何も手配魔獣にしなくても。パルムでは危なかったんでしょう?」
協力姿勢を保つ二人だが、ユーシスとマキアスの影に隠れて、二人の実技テストの成績が悪かったことは全員が知っている。そして《リンクブレイク》を発生させてしまった手配魔獣戦の苦い記憶は、カイトとフィーも知っているのだ。
だが、あくまでカイトはラウラたちの賭けとも言える攻勢を推す。
「オレはラウラたちに賛成だ」
ラウラとフィーの場合、客観的な相性のよさは証明されている。それに二人の練度では、そこいらの魔獣と戦っては《リンクブレイク》を起こす前に魔獣を倒してしまう。
「二人が求めてるのはさ、もっと力強い……完璧なリンクだろ? ちょ、二人共近いっ」
ラウラとフィー、Ⅶ組女子で最も背丈に開きがある二人が、無言でしきりに首を縦に振る。
間違いは犯さない。得た経験は最大限活かす。それぞれの発言には強い意志が秘められていた。
「オレもだ。先月の失敗、同じ轍は二度踏みたくない」
カイトは久々に自分への怒りを覚える。ユーシスとマキアスたちに、彼らが変わる手助けをしきれなかったこと。今も、力となれてないこと。
それは、仲間との繋がりの中で数多くの事件を解決してきた遊撃士カイト・レグメントとして許せるわけがない。
「ラウラ、フィー。不甲斐ないかもしれないけど、絶対にフォローする」
「ふふ、そなたのそこまで本気の顔を見れるとは楽しみだな」
「なんか、戦場で突貫していった人に似てる」
フィーの発言によりまた凍りつくが、それも一瞬。カイトは学生手帳を広げた。
「今日の依頼数は多い。まずは依頼主に話を聞いて、全体の進捗度をチェックしていこう」
四人を見る。戸惑っている顔もあるが、以前に比べればやる気に満ちた目だ。
「Ⅶ組B班、始動! 張り切って行くぞぉ!」
若者たちの少し空元気な相槌が、セントアークの空に響き渡った。
────
カイトたちは北セントアーク街道を歩いていた。この街道はセントアーク出発地点では東向きだがすぐに北へと進路を変え、最終的に南オスティア街道を経て帝都ヘイムダルへ繋がる。途中にはドレックノール要塞──ガレリア要塞とも比肩する帝国正規軍最大規模の拠点が存在している。
「カイト、A‐20の導力灯は正常だったよ」
「カイト、B‐22の導力灯、正常だ」
カイトたちは、依頼のため街道の導力灯を一つ一つ、点検表を基に異常がないかを確かめていった。言うまでもなく『壊れた導力灯の点検』のためだ。
依頼主は住宅街にある《チェンバーズ工房》の店主。だが、依頼を出したはずの当の店主が少しばかり戸惑った表情で現れたのが印象的だった。
『お前さんたちに頼みたいのは導力灯を調べることでな。といっても、本当に導力灯が壊れてるわけじゃないんだ』
単純な壊れた導力灯の整備ならカイトも請け負ったことはあるが、それをやるわけではない。
依頼主が言うには、『最近ドレックノール要塞近郊の導力灯に原因不明の機能不全が発生している』のだという。しかし故障ではなく、依頼主や関係者が報告を受けて点検に向かった頃には異常は見られないというおまけつき。各種機器不良の兆候もなく、魔獣に破壊された痕跡もない。専門家も手を焼いているのだという。
そこでカイトたちが任されたのは特別なことではく、依頼主が点検に来れない時間帯での確認、ということだった。
「簡単なお仕事体験って感じだな」
エリオット、ガイウス、フィーは割と短時間で慣れたようで、数を重ねる度に要領を掴んでいく。ラウラはこういった機械類は苦手なようで、カイトとともに点検していた。
「なんか、予想外だったな」
「私の機械音痴がか? 誰にでも得手不得手はあるだろう」
「いや、ユーシスがパルムで蚕にギョッとしてたからさ。貴族様の苦手なものばっかり判明するから」
「なるほど?」
若干棘のある返しだが無視した。
「ラウラは機械でユーシスは虫か。はは、リィンはなにが苦手なんだろうな」
「あやつは隠し事であろう。何かを抱えているのに、頼ろうともしない」
会話を続け、なおも地道に点検していく。各人からの報告が続く。
「お? C-08が不良だ」
カイトが発見した。導力灯が明滅している。だがその様子を見るに損傷は軽微だ。依頼主からは簡単な修理器具も預かっているので、カイトならば修理ができるかもしれない。
クォーツ盤が見えるように蓋を固定。それを留めているネジを回収。中からは機械的な部品類が顔を覗かせ、それを軽く触って接続不良などを確かめる。
「ほう、鮮やかな手並みだ」
「職業柄、これくらいはね。けど……」
「おかしなところでもあったか?」
「いや、接続不良よりは単純な作業ミスって感じがして」
導力器そのものが修理不能なほど損傷しているわけでも、経年劣化から錆びついたりしているわけでもない。ネジが緩んだり、接続する回路を間違えていたりと、単なるミスレベルのものだ。
説明すると、これについてはラウラも気づいたようで、
「それはおかしいな。専門の技術者が間違えるものか?」
としきりに首を捻っていた。
「それだけじゃない。オレたち以外にも定期的に点検してる人がいるんだから、このC-08の不良は最近どころか今日あたりに発生したはずだ」
「……誰かが、人為的に引き起こしている?」
「まだわからない。とにかく全部点検して、報告しよう」
そうしてセントアークに戻る。
二つ目の依頼は『魔獣被害の調査補佐』。これは期限が明日までなので、概要だけ聞いておくことにした。
生じていたのはセントアーク市内での魔獣被害だった。肝を冷やすことに、魔獣が市内に侵入したというのである。被害場所は住宅街と聖堂広場の二ヵ所。街道沿いからきたわけではないということ、がわかっている。
依頼主はあろうことかサザーラント領邦軍だった。ケルディックでの所業を知っているので警戒したカイトたちだったが、クロイツェン州に比べると若干温厚なようで、またハイアームズ侯爵の根回しもあったのか説明だけはしてくれた。
領邦軍が既に得ていた情報に加え、『判明したことがあれば領邦軍に知らせるように』とのことだった。面食らってしまったカイトたちは、聖堂広場に向かい三つ目の依頼主を尋ねる。
次は『薬草の採取と配達』だ。内容事態は至極単純なもので、セントアーク大聖堂の司教が依頼をだした調薬に必要な薬草をとってくるものだった。
司教は「近頃発生している魔獣被害により需要が増えた」と言っており、それにより学生の課題として回される程度には逼迫しているのだという。カイトたちはその前の魔獣被害と関連しているのを感じる。
薬草採取の場所はイストミア大森林。手配魔獣が目撃された場所だ。これは都合がよかった。
カイトたちはセントアークを一通り回ってから、西サザーラント街道へ出る。時折襲いかかる魔獣を倒し、イストミア大森林にたどり着いた。
カイトがかつて大立ち回りを繰り広げたクロイツェン州のヴェスティア大森林と並ぶ、帝国二大森林地帯の一つ。こちらも鬱蒼とした気配が漂っているが、カイトたちが気になったのは魔獣の様子。
「な、なんか魔獣が手強すぎない?」
幾度目かの戦闘を終えて、エリオットがおずおずと聞いてきた。今回のB班は彼を除けば戦闘慣れしているメンバーばかりで、四人は満場一致でエリオットの問を肯定する。
「魔獣がざわついてるよね」
「数が多いんだ。尋常じゃない」
「私の大剣が通りづらい、興奮している証拠だ」
「嫌な風だ」
彼らの言葉で一層身を縮めるエリオット。
襲いかかる魔獣も多く、森全体が騒がしかった。魔獣もそうだし、鳥や獣もしきりに鳴き声や遠吠えを響かせている。異常事態に近い。
カイトはガイウスに聞いた。
「ガイウス。その《風》だけどさ、具体的には?」
この場はガイウスの気配察知を信じるべきだと思った。
「……恐れている、酩酊している、と言うべきか」
「魔獣が?」
「そうだ。自分の意志でない何かに突き動かされ、それに抗うような」
「……」
魔獣は人に害を及ぼすから討伐されているが、彼らとて生存本能に従っているのは確かだ。達人が森林に入ったからといってこうはならない。
幸い、魔獣の強さ自体はそこまで変わっていない。手配魔獣に向かうことに問題はない。
別の依頼の薬草も必要量採取した。そうして五人は手配魔獣を発見する。
魔獣は《グライムドローメ》、ドローメが突然変異で集合合体した球状の存在だ。
「ふむ、あれは中々に」
「うぇぇ、気持ち悪い……」
「同感、女子には気持ち悪い」
「男子にだって気持ち悪いぞ」
「ふむ、槍で突けるだろうか」
作戦を立てる。今回はラウラとフィーがリンクを繋げるのが前提だ。
「残るガイウスとオレでリンク繋ぐ。エリオット、後ろで補助は任せたよ」
「が、頑張るよ」
回復アーツを得意とするエリオットが後衛だ。
「ラウラとフィーは最前衛で。オレとガイウスは後衛で魔法を使おう」
今回の相手も油断はできない。以前の《クインクマンバ》と比べれば好条件だが、ラウラとフィーの《戦術リンク》も未知数だ。
「女神の加護を。皆、頑張るぞ」
手配魔獣との戦いが始まる。