心の軌跡Ⅱ~重なる標~   作:迷えるウリボー

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第10章 護るべきもの
53話 雨音の学院~中間試験~①


 六月八日。二回目の特別実習から一週間が過ぎた頃。トリスタに久しぶりの雨が訪れていた。

 高等学校としてのレベルの高い授業に、休む暇を与えない特別実習。クラブ活動や奉仕活動。Ⅶ組はその目の回る忙しい日々にようやく慣れてきた頃だった。

 だが学生生活はそう簡単にいかないもので、予てより告知されていたイベントがⅦ組メンバーの大半を苦しめることになる。

 授業終了後、サラが担当教官として行うHR(ホームルーム)も過ぎ去り──それはサラのハインリッヒ教頭やナイトハルト教官への愚痴で大半の時間を使ったのだが──雨の中の放課後が訪れる。

 そんな中カイトは一人、本校舎二階階段正面のオープンスペースにいた。他の生徒もいて沈黙とざわめきが半々の中、少年はざわめきを作る側となっている。

(ああああ……! 勉強ってなんだコレ……!?)

 カイトは机に突っ伏した。その心の声はうめき声となって響き渡り、若干の迷惑そうな視線と大半の同情の雰囲気が入り乱れる。

 カイト、というより学生たち全員に待ち受ける定期イベント。それは日頃の勉強の成果を試す試験であった。六月、今回は中間試験となる。成績や進退にも影響するものなので、学生たちの試験対策も真剣そのものだ。一部の生徒を除いてだが。

 カイトは決して不真面目というわけではないのだが、成績は学年で下位だ。そのためセントアークから帰還した後は勉強に精を出しているのだが、やはりトールズのレベルは高く、毎日知恵熱を出しながら机に向かっているわけである。

「あ、カイト発見」

 声につられて姿勢は変わらず顔だけ動かすと、そこにフィーを発見する。さらには続くようにエマとラウラが来た。

「委員長ぉぉ、助けてくれぇぇ」

 極めて情けない声をあげた少年である。

「カ、カイトさん……」

「ふむ、少しは落ち着くがいい」

 三人はカイトと同じ机に座る。少年が時々奇声を発するので別の生徒が近くに座らなかったのが逆に幸いだった。

「その、私たちもテスト勉強をしますので」

「主に私が教えてもらうんだけど」

「心配するな、フィー。教えることは復習にもなるからな」

 即座に教科書類を広げ、その準備をするクラスメイト。勉学に意欲的な姿勢を羨ましく感じつつ、カイトは三人をぼんやりと眺める。

 カイトの正面に座ったのはエマだった。必然二人の隣りにはラウラとフィーが座る。その二人が仲睦まじげに試験に付いて話し合っているのを見て、カイトは微笑ましく思う。

 エマと目があった。彼女もカイトの意図を察して微笑む。

(本当に、よかったな)

 五月にⅦ組のクラスに緊張を与えていたラウラとフィーは、セントアークの実習で仲直りができた。出自が違う二人は一時相いれなくなった時もあったが、元々気は合うらしく一度関係が改善されれば仲のいい二人となる。Ⅶ組からはずすことのできない戦闘においては名実ともに学年最強コンビと言えるだろうし、普段の生活でも一緒にいるようになってきている。

 またユーシスとマキアスに関しても、その関係性は改善を見せていた。女子二人とは逆の意味で元々の性格なのだろう、顔を合わせれば煽り口調と喧嘩腰なのは変わらないが、それは言葉だけだ。剣呑な雰囲気は過ぎ去り、喧嘩友達のような形でⅦ組を騒がせている。リィンとマキアスの関係性も同様に改善している。

 ともあれ、六月のⅦ組の空気はとても穏やかなものだった。一同、今は協力して試験対策に励んでいる。その試験対策というものが、Ⅶ組を穏やかにはさせてくれなかったが。

 Ⅶ組において、勉学に不安があると自覚しているのはカイト、フィー、エリオットの三人。マキアスは学年次席だが過剰なほど勉強家だし、主席のエマは自分以外にフィーやカイトの監督に精を出している。他の五人は真面目に取り組むメンバー。総じて騒がしいのである。

 試験日は十六日からの四日間。その間は通常より早めの下校となり、クラブ活動なども禁止される。ある意味運命の日を一週間後に控えたカイトは、例によって勉強に精を出し、そして精神的に死んでいた。

 そんな状況で現れた乙女三人(クラスメイト)。カイトとしてはエマが空の女神、天上の聖母に見えなくもない気分だった。ちなみに残る二人は女神を守護せし戦乙女として目に映る。

 そんなわけでカイトは三人に混ざり、気を取り直して勉強を再開するのだが。

「なんだ、ここにいたのか」

「あ、ユーシスだ」

 フィーが呟く。Ⅶ組随一の貴公子ユーシス・アルバレアの登場である。

「ふむ、そなたが我らを訪ねてくるとは珍しいな」

「少々、野暮用でな」

 ユーシスは短く答え、カイトを一瞥してからエマに向き直る。

「委員長、すまないが今日はこいつを借りるぞ」

「はい?」

「え?」

 出会い頭の指名にカイトだけでなくてエマもまた拍子の抜けた声が出た。

「ついてこい、カイト」

「へ?」

「ついてこいと言っている」

「ちょ、ちょっとっ」

 そのまま、ユーシスは歩き出す。彼は手提げ鞄を持っているが、いったいどういうことだ。

 カイトは面食らい、迷った後に自分の教科書類を鞄に乱雑にしまいこんだ。エマたち三人と少し言葉を交わしてから、小走りでユーシスの後を追う。

 その意図が読めず、カイトは彼の背中に疑問を投げかけた。

「なあ、どうしたんだよ?」

「今日は特別に俺が試験対策を監督してやる」

「はい?」

 さきほど以上に素っ頓狂な声が口から漏れることになった。

 というくだりの三十分後。カイトとユーシスは《キルシェ》の丸テーブルのうち一つを占領していた。といっても同じことを考えるトールズの学生は他にもいて、店内は通常客と学生たちでそれなりに賑わっている。

「──というのが軍事学の重要点だろうな。軍から出向しているナイトハルト教官が試験問題を作る以上、現場で必須の知識は求められるだろう。兵科記号は頻出だろうな」

「なるほど」

「それにガレリア要塞やドレックノール要塞……授業で扱った要衝の特徴。軍事歴史学。これも重要だ」

「あ、それならなんとか分かりそうだ」

「ほう? ならば導力革命によって戦場において大きな変化を及ぼした事項を四つ、述べてみろ」

「えっと、『①導力兵器の発明、②軍の機甲化、③飛行船の存在、④導力通信の発達』だろう?」

「正解だ。お前にしてはよくやっているな」

「褒めてんのか馬鹿にしてんのかどっちだ?」

 と、こんな具合に男子二人は勉強を進めている。ユーシス自身も自分のペースでこなしているが、カイトの苦手な分野を集中的に実施し、カイトに質問に対して答えたり問題を出したり。

 エマほどではないがわかりやすい説明には舌を巻いた。いや、教えてもらっている立場で比較するのもおこがましくはあるのだが。

 エマとマキアスの影に隠れているが、ユーシスも入学時の成績は高いと聞く。また宮廷剣術の実力も高いものだから、武術教練を含めた総合成績で言えば首位を走っている可能性もあるくらいだ。

「それで、どういう風の吹き回し? ユーシスがオレを誘うなんて」

「ただでさえフィーの面倒も見ている。そのうえお前までお守りが増えたら委員長も大変だろうからな」

「何の反論もできない……!」

 いや、別に何も毎日委員長のおんぶに抱っこというわけじゃないぞ。マキアスやリィンの世話にだってなっている。

「これでも導力学とか医学とかは結構強いんだぞ」

「それも遊撃士時代の臨床経験によるもので、基礎知識は微妙なところだろう。抑えておく必要はあるだろうが」

「はいっす……」

 大人しくペンを走らせるカイトであった。

 六月上旬、雨は続いている。試験が近いこともあって、当然のように屋外には誰もいない。店内には人が入るばかりで、出ていくことはほとんどない。席を確保できたのはユーシスにとっても僥倖だったのだろう。

「で、どうして《キルシェ》で?」

「そのまま夕食を取るからだ」

「さいですか。夜まで合宿だなぁ」

 カイトは朝は軽く済ませ、昼は学食。夜や自由行動日は自炊と外食を半々程度だ。Ⅶ組メンバーは自炊ができるメンバーが意外と多く、カイト、エマ、ガイウス、フィーなどは特に料理に慣れている。

 しかしユーシスはこんなところでも天才ぶりを発揮するもので、頻度は少ないが時折自炊をしていたりする。これは本人にとっての黒歴史であるバリアハート後マキアスとの料理番の以前からやっていたことで、大抵のものを卒なくこなすところもユーシスらしい。マキアスがユーシスにあれこれ突っかかる気持ちもようやく分かるようになってきた。

 それはそれとして、今日は外食だ。それも珍しいユーシスと二人で。カイトは鞄から財布を取り出し、現在の手持ちのミラを確認する。

 ユーシスが紅茶に口をつけてから言った。

「心配するな。俺が奢ってやる」

「どうしたのユーシスさん」

 なんだ、本当に今日は何があったというんだ。このまま雷でも落ちるんじゃないか。

「貴様、俺のことを馬鹿にしているな?」

「そりゃお互い様だろ……本当にどういう風の吹き回しだって」

「フン……」

 ユーシスは一旦ペンを置いた。元々休憩をするつもりでもいたのだろう、背もたれに寄りかかり腕を組む。

 カイトも休憩だ。さすがに少しは頭を空にしなければ逆に効率も落ちる。

「お前がクラスの厄介事に首を突っ込むあまり成績が悪くなる。そんなことでは俺のいるクラスの格が下がる」

「出たよユーシス節……ん? 厄介事?」

 この二ヶ月の中でⅦ組に存在していた厄介事。学生生活から試験勉強まで数あるが、Ⅶ組の当事者として語るのは二つだけだ。ユーシスとマキアス、ラウラとフィーの関係のことである。

 これについて、中立に立ってあれやこれやと突っ込んでいったのはリィンとカイトの二人が筆頭だ。当然ほかのメンバーも陰日向に努力をしていたが、サラにいいように使われて一番苦労したのはこの二人だったりする。

 特に二組の関係が改善した五月の特別実習で、リィンは男子組、カイトは女子組と同じ班となっている。特別実習以外のところでも、リィンとカイトは逆のペアにいろいろしでかしたりしていた。

 その厄介事のせいでカイトの成績が落ちては困るというユーシス。

 つまりはあれか。これはカイトへの侘びと照れ隠しというわけか。

 相変わらず目の前の御曹司はマキアスが見ればいらつくような憮然とした態度を取っているが、その真相を把握するととてつもなく面白いものを見ている気分だ。

 カイトはにんまりと笑った。

「素直じゃないなぁユーシスも」

「その程度の成績で俺に楯突けるとでも思ったのか」

「すみません助かります」

 カイトはユーシスから目線をそらした。

 とはいえ、実際ユーシスも丸くなったものだ。四月の頃からガイウスやエマ、ラウラなどに対しては普通の態度だったが、今では他の面々にも話すようになってきている。

 それもリィンのおかげだろう。ユーシスもまた、バリアハートでの実習で自分の半生をⅦ組の重心に語っていた。

 バリアハートの実習の時、ユーシスの兄ルーファスが出迎え、彼は弟とその学友を暖かく出迎えた。それに対し一度だけ導力車の向こうから顔を出しただけの父親は、尊大な態度かつユーシスに対しても興味のないように()()()いたという。これはマキアスの談だ。

 ユーシスはアルバレア家当主ヘルムート・アルバレアの息子。それは確かだが、実は正妻でなく公爵と平民との間に生まれた妾腹の子だった。元々は平民として市井で暮らしていたが、八年前に母親が病没して以降は公爵家に引き取られたのだという。

 リィンもまた正当な血を引いているかわからないと自称する似た者。そうした共感があったのか、ユーシスはリィンに出自を明かした。そして寝所、同じく夜半にセントアークでの男子組のようにしていた語らいはマキアスにも聞こえていたとのことで、それでマキアスはユーシスへの態度を軟化させたというのが、特にフィーのマキアスに対するからかいの種になっていたりする。

 それをⅦ組の面々の前で語ったのも、大きな葛藤があったのかもしれない。いずれにせよ、ユーシスはそれをぶっきらぼうに語った。それがその夜話したことの全てなのかそうでないのかは、リィンとマキアスにしかわからないことだった。

 全てを打ち明ける必要なんてない。Ⅶ組の中でだって、それぞれ関係性がある。けれどクラスとして一段と団結したことが嬉しい。

 カイトは、そうして距離が近くなったと感じるユーシスに語りかける。

「そういえばバリアハートじゃ、ルーファスさんにいろいろお世話になったんだっけ?」

 彼がトールズの理事の一人であると知った時は舌を巻く思いだった。

 ユーシスが怪訝そうな表情をする。

「何故お前が兄のことを気安く呼ぶ?」

「だってオレ、ルーファスさんと話したことあるし」

 ユーシスが持っていた紅茶のカップが揺れた。

「……は?」

「いや、ほんとほんと」

 ユーシスがおもむろに立ち上がり、カイトの正面までずいっと近づく。

「どういうことだ! 詳しく話せ……!」

「いや、話すから……ユーシス、苦しい! 頭が揺れる!」

 小休止。カイトは以前の旅路でバリアハートに寄った時のことを話した。

「そんなことがあったのか」

「はぁ、はあ……そうだよ。いや、視界がめちゃくちゃになって気持ちわるいぞ」

 乱れたネクタイと制服を直しながらカイトがぼやいた。今日のユーシスは本当に年頃の少年らしい姿を見せてくれる。

「お前……まさか旧校舎のオリエンテーリングで俺に突っかかったのも」

「貴族としてもそうだけど、あの人の弟っぽいユーシスが気になったんだよ」

「何故それを話さなかった」

「だってあの時のユーシス、今より人を寄せ付けなかったし」

「それはレーグニッツがいたからだ、阿呆め」

「それ、オレが悪いの? それともマキアス?」

 ユーシスからすれば二人共悪いらしい。

 別に落ち込んだわけでもないだろうが、ユーシスははぁっと息を吐いて紅茶に口をつける。

「昔から、兄上から学ぶことは多かった」

「……そっか」

 カイトとしてもその言葉に思うところがあった。カイトはユーシスの振る舞いに、兄ルーファスに似たものを見ていた。表面上の態度としてはともかく、貴族としてあろうとしていた姿勢。彼らが言う貴族の義務(ノブレス・オブリージュ)。それが重なって見えていた。

 父親がユーシスに興味がないというのであれば、ユーシスに貴族としての生き様を見せたのはルーファスかもしれない。

 年の離れた兄弟。ルーファスの影響力は多かったのだろう。ユーシスが、例えばパトリックのような傲慢にならなかったのはその辺にある気がする。

 なにせ、ルーファスはあの時貴族でも帝国人でもないカイトたちに対し、驕ることなく接していたのだから。

「ははは、ルーファスさんの前じゃユーシスも形無しなんだな」

「煩いぞ……まあ、否定はすまい」

 ユーシスの表情も柔らかくなる。

「それはそうと、ラウラと違ってリィンとユーシスは兄妹持ちか」

「そうだったか?」

「うん、この間妹がいるって言ってたよ」

 アリサやエマと共にクローゼからの手紙を追求された時だ。

「なるほど。あいつの事情では色々と苦労していそうだな」

「というと?」

「リィンは養子だろう。馬鹿らしいとは思うが、帝国貴族の家督では血筋の意味が強いのは確かだ。あいつのお人好しな性格もそこから来ているのだろうな」

 ユーシスはぼやいた。もはやリィンのお人好しな性格はⅦ組全員の知るところとなっている。

「養子の長子(リィン)と実子の妹。長子が家督を継ぐのが世の常、養子の相続も違法ではないが……まあ、そういうことだ」

「……少なくとも、オレには今まで無縁だった世界だな」

「だろうな」

 そのユーシスの言葉はカイトを馬鹿にしているのではない。貴族社会へのユーシス自身のため息だった。

「ユーシスの場合は……?」

「兄も俺も父上の血を引いている。まあ、父上は俺に継がせる気などそうそうないが」

「ルーファスさんか。確かに、もう領邦軍とかで仕事をしているみたいだけど」

 ルーファスは帝国の社交界でオリヴァルト皇子と話題を二分する存在でもある。

「なあ、ユーシスは将来どうするんだ?」

「どうだろうな。貴族領主としての義務を怠る気はないが」

 なんとなく聞いてみた。ユーシスは若干眉をひそめたが、それでも話を続けた。このあたり、やはり優しい性格だった。とはいえ冗談で返されたが。

「ルーファスさんの領地運営を手伝う感じか」

「さてな。どこか別の場所にとばされる気がしてならん」

「ん? どういうこと?」

 それはリベール育ちで平民、かつ孤児院育ちのカイトには馴染みのないことだった。

 カイトに対してではないだろうが、若干の苛立ちもあるのだろう。ユーシスは盛大に息を吐く。

「別の貴族家の婿となる、そんなところだ」

「いわゆる政略結婚?」

「ああ。父はそれに関しては熱心でな。もう話が来ているくらいだ」

「え!?」

 驚いて立ち上がったのだが、少しして座り込んだ。

 考えてみれば、当時十六歳のクローゼに対しリシャールは縁談を組んでいたことがある。それはデュナン公爵を王に仕立てるための策ではあったが、その年齢なら早くはあるものの決しておかしくはない。

 ユーシスは現在十七歳だ。

 アルバレア公爵家はカイエン公爵家に続く貴族の二番手。当然その威光は凄まじいものだ。その権威の中に入ることで家を守るか、あるいは強めたいといったところか。

「それ、受けるのか?」

「俺も興味はない。相手の令嬢も同じく乗り気ではなかったな」

 要するに親同士が本人の意思に関わらず進めている話なのだろう。貴族の世界ではよくある話か。

「ユーシスもちゃんと恋愛をしたいってことか」

「阿呆が。そこまで子供じみているつもりはない。必要性が感じられない、というだけだ」

「はいはい」

 カイトは面白いものを見るような目をユーシスへ向ける。

 この手の恋愛話で盛り上がるのは女子四人だ。特にアリサは色々とあるようで、この手の話は積極的にする傾向がある。まさかユーシスの口から恋愛観が聞けるとは思わなかった。

「義姉にうつつを抜かしていた小僧に笑われるとはな」

 即座に返り討ちに遭うカイト・レグメント。

「ぶへっ!?」

 思わず吹き出しそうになった。ユーシスが若干汚いものを見ているような目となった。失礼な。

「ちょ、ちょっと待て。それ誰から聞いた……!?」

 アリサか、エマか。二人ともそんな風には見えないが。

 まさかリィンが? リィンか、リィンなのか。

「フィーだ」

「あいつ、喋りやがったのかっ」

 というか聞いていたのか。あの時聞いていたのか。お仕置きだあの妹め。

 と再び立ち上がろうとする。

「待て、どこに行く気だ」

「決まってんだろ、フィーに鉄槌を──」

「エレボニア帝国の内戦《獅子戦役》の終戦年月はいつだ?」

「あ」

 錆び付いた機械のように振り返る。どうしてこの場にいるのかを思い出した。

「ユ、ユーシス」

「フィーの軽口は確かに考えものだが……お前の図々しさもそろそろ年貢の納め時のようだな?」

 容赦のない、圧倒的な勝者の笑みを浮かべてカイトを見るユーシス。その目は『勉強をおろそかにすることは許さんぞ』と言っている。

「あ、あはは……」

 カイトに逃げ場はなかった。

 珍しいユーシスとの一幕は、そうして《キルシェ》の閉店時間直前まで続いたのだった。

 

 

 








七組の料理事情(大まかな設定)

上手い:エマ(家庭料理)、ガイウス(遊牧料理)
慣れてる:カイト(大皿料理)、フィー(キャンプ飯)
作れる:リィン(郷土料理)、マキアス(珈琲や軽食)、ユーシス(ハーブチャウダーなどお袋の味)
練習中:エリオット(オムレツ)、ラウラ(お弁当)、アリサ(お菓子やスイーツ)


4月:忙しくてみんな学食や外食を多用していた。とはいえ女子の厨房利用率は高かった。

5月:この頃になるとエマ、カイト、リィンが時折誰かを誘って厨房で料理を振る舞うようになっていた。しかしユーシスとマキアスの出席率は悪かった。

6月:特別実習後の反省料理会以降、平日は二人一組の持ち回りで料理を試すようになった。とはいえ外食する人もいる。






お久しぶりです。
黎の軌跡Ⅱをクリアし、物語の再確認やトロフィー獲得目的で2週目もクリアし、戻ってきました。
様々な過去のしがらみや罪に向き合うこととなった、黎Ⅱのストーリー。今までの軌跡とは違ったストーリー構造……それぞれ楽しませてもらったぜ!

と、以前の更新から一月と少し。いつの間にやら閃の軌跡アニメなんかも続報が出され、シリーズファンとしては嬉しい限りです。
色々考察記事も出せたらなー、なんて思うので、もし見かけたら読んでくださると嬉しい限り。

小説共々よろしくお願いします! さあカイトは絶賛試験対策中! 成績優秀なクラスメイトたちに追随できるのか!?
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