心の軌跡Ⅱ~重なる標~   作:迷えるウリボー

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56話 高原の火種①

 

 

 朝七時。

 ノルド高原。ウォーゼル宅。特別実習三日目。 朝食の後、今日も今日とて実習の課題が渡される。

 ノルドを発つのは明日の早朝だ。行きと同じくトリスタに帰るには半日かかるので、今日が実習の最終日と言ってもいいぐらいだ。

 B班の面々はどんな調子だろうか。ブリオニア島も広いと聞いているが、フィーを中心にサバイバルはできているか、男子組は根をあげていないか。

 そんなことを話していたら、グエンとイヴン長老が血相を抱えてウォーゼル宅に訪れた。

 彼らが話したのは、Ⅶ組を新たな混迷に引きずり込む高原の火種だった。

「先ほどゼンダー門から連絡があった。帝国軍の監視塔が何者かに攻撃を受けたらしい」

 

 午前九時。

 ノルドの集落南西を馬で駆けるⅦ組A班。彼らの頭上、雲もまばらな大空に影がさす。それは明らかに雄大な大地に似合わない駆動音を共にしていた。

 第三機甲師団所属、軍用飛空挺《カバリエ》・《グエリエール》。

 共和国第八方面隊師団所属、飛空挺《アルデバラン》。

 ゼムリア大陸の覇権を争う二大国の尖兵が、空の上で睨み合い、蒼穹の大地に陰影をつくる。

 帝国軍の監視塔が攻撃を受けた。

 発生時刻は深夜だった。カイトとたちⅦ組A班が青春のひと時を過ごし、お互いの絆を確かめた後のことだ。

 帝国軍監視塔に突如として火砲による攻撃が発生した。監視塔に詰めている守備兵二名の死亡を確認。三名は重症を負い、ゼンダー門に救急搬送されている。

 そして不可解なことに、共和国軍基地もまた攻撃を受けたのだという。

 どれだけ辺境の地であろうと、係争地で両軍が攻撃を受け──そして互いが互いを疑っている。ノルド高原はにわかに緊張を帯びることになってしまった。

 ノルドの集落は、これを受けて集落全体の移動準備に入る。当たり前だった。集落は監視塔にも近い。火種にくべられる可能性はいくらでもあった。

 だが、Ⅶ組A班は──ガイウスは、その手伝いをすることはなかった。特別実習の最中、士官学院の一員として、この不可解な状況を確かめに行くために。

 それは、士官候補生としての意地であり、『自主性を育てる』ために発足されたⅦ組としての帰結であり、何より暖かく迎えてくれたノルドに戦火を広げたくない──この大地を守りたいという思いからくる行動でもあった。

 

 午前十時。

 ゼンダー門へ到着する。

 自分たちがゼクス中将に見送られ、馬を走らせ始めたその場所には、既に五台ほどの導力戦車があった。 驚くⅦ組にも目をくれず、兵士たちは点呼や点検など淀みない動きをしている。戦車自体も既に駆動音を響かせていて、着々と出撃に向けて準備が進んでいた。

 兵器群と兵士を見やり、ガイウスは焦った。目的の人物はどこだ。

「えっと、ゼクス中将は──」

「お主ら、来たか」

 ゼンダー門とは別方向から聞こえた。ノルドに来た日、そして昨日にも穏やかに話してくれた帝国の智将の声。

 ゼクス・ヴァンダールは自ら馬を駆って高原を回っていたのだという。言うまでまもなく、緊張感の跳ね上がった高原を自分の目で確かめるために。そこに実習時の穏やかさはなく、かつてカイトがハーケン門の先で対峙したとき以上の迫力を携えている。

 そしてゼクス中将は告げた。

「ちょうど三十分後にルーレ行きの貨物列車が来る。今回の実習は切り上げて、それで早めに戻るのだ」

 アリサとエマの目が大きく見開かれた。彼女たちの実習経験では、現場管理者から促されたことはなかったか。反対にカイトとガイウスは覚えがあった。

 カイトは聞いた。

「戦闘開始まで猶予がないんですね? 共和国軍の飛空艇も威力偵察をしているのを見ました」

 カイトはガイウスの顔を見れなかった。どんな類の表情をしているかなんてわかりすぎている。

「うむ。我々の予想では数時間もない。戦端が開かれ、周辺は戦地となる。……集落にも伝えていたはずだが?」

 ゼクス中将の言うとおりだった。だからこそノルドの集落は移動の準備をしていたのだ。

 Ⅶ組も避難のために来ていたと考えたのだろう。当たり前の判断ではある。戦火に学生が飛び込まなければならない義務などない。たとえ特別実習がこんな中途半端な形で終わることになっても。

 ゼクス中将がカイトに視線を下げる。

「今回の件は帝国軍と共和国軍の問題だ。かつてのようにお主が立つ交渉の場はない。それはわかっているな?」

「もちろん。オレは今遊撃士じゃなくて、士官候補生ですから」

「結構。では──」

「ですが中将閣下。交渉の場でなくても、できることがあるはずです」

 ピシャリと、カイトは言い放った。ガイウスが続く。交渉でなく戦端が開かれる可能性があるのなら、その芽を摘めばいいのだと。

「今回の一件、どちらが先に手を出したのですか?」

「……調査中だ。後にも先にも帝国軍が動いた事実はない。にも関わらず監視塔は破壊され、死傷者が出た。ゼンダー門を任された者として見過ごすわけにはいかんのだ」

 思案した後、リィンが聞いた。

「共和国軍の偽装工作。中将閣下はそう見ているのですか?」

 沈黙。

「……あちら被害は最低でもこちらと同等、いや、遥かに上に見えた。あくまで目測だ」

 おかしい。偽装工作ならそこまでする必要はない。帝国軍側にスパイが紛れ込んだとでも言ったほうが信じられるくらいだ。

 それでも、ゼクス中将の態度は変わらなかった。真相は定かではないが、共和国軍側もダメージを受けているのであれば、報復行動に移るのは当たり前のことだ。

 だから、両軍ともある程度の衝突は覚悟の上だった。是非は関係なく、それが今この場で軍人が取るべき選択だった。

 なら、未だ軍人でない者の取るべき行動は。

「どうか今回の事件の調査を俺たちにお任せください。ノルドの平穏を乱すこの事件、必ずや真相を突き止めてみせます」

 ガイウスがゼクス中将に宣言したのだ。故郷の火種。それを燃え広がるのを許すわけにはいかない。

 他のⅦ組だって、その選択に乗らない手はない。

「私は祖父がご厄介になっています。その安全のために尽力するのは当然のことです」

「軍属であっても士官候補生。身内がいても集落に属さない……そんな俺たちだからこそできることがあるはずですから」

「監視塔やゼンダー門に勤めていなくとも、まさに昨日まで高原を走り回りました。今の私たちには調査するに足る見識があると思います」

「お主ら……」

 一学生でしかない。Ⅶ組に対するその評価は至極正当なものだ。だからこそゼクスはリィンたちに帰還を促した。

 だが、セントアークでハイアームズ侯爵の意向を跳ね除け、バリアハートでアルバレア公爵に反旗を翻したⅦ組の胆力は、高原の火種を前に屈しはしない。

 出し抜けに、カイトがゼクス中将の目の前に立ちふさがった。

「オレたちはあの人が吹かせた《第三の風》──そうでしょう、()()?」

 オリビエのあの茶番劇を認めたこの人なら、許してくれるという確信があった。

「……お主」

 だからカイトは、揺らぐゼクス中将の瞳を揺らがぬ信念で捉える。

 あの放蕩皇子の決意に光を宿したのは、どこの国の誰なのか。今それを証明してみせる。

「……現在10:05。12:30までの調査を許可する」

「ゼクス中将……!」

 ガイウスが感嘆の声をあげる。

「それまでは戦端が開かれぬよう、こちらも力を尽くしてみよう。《世の礎》たるために、必ず生きて役割を果たすがいい。有角の獅子たちよ」

『はいっ!』

 Ⅶ組の斉唱が響く。ゼクス中将は戦車の方へ去っていく。

 A班は互いを見た。実習管理者の一応の確約は取り付けた。

「善は急げだ。そうと決まれば俺たちも早速動こう」

「ありがとう……みんな」

「水臭いですよ、ガイウスさん。私たちの仲じゃないですか」

「ええ、その通りよ。もう一心同体なんだから、一緒に守らせて」

「オレたちも急ごう──監視塔へ!」

 再び、A班はゼンダー門から再び馬を駆ってノルド高原を進む。

 真相を突き止める。その目標を達成するには、とにかく攻撃のあらましを知らなければならない。今の状態では詳細が足りないのだ。

 カイトは、百日戦役のあらましから帝国軍がマッチポンプを仕掛ける可能性はあると考えていた。だが、少なくともゼクス中将がそれをするとは思えなかった。

 百日戦役の時は、確かに《ハーメル》周りで戦果のためにリベールと人民を巻き込む巫山戯た陰謀があった。例えワイスマンが引き金を引いたとは言え、結果として帝国軍があらゆる悪意を振りまいたのは事実だ。

 だが、自分自身がパルムで仲間たちに言った。もう善悪のレベルではない。パルムで、セントアークで、そしてノルドで。帝国の悪だけではない側面を見てきた。

 第三機甲師団が偽装工作を働いたということは、ないように思える。

 そしてそれならば、確証はないが共和国だってその可能性が高い。

 どちらも辺境の地に赴任して、戦火を広げようという考えにはなりにくいはずだ。完全な否定はできないが。

 そして両軍への攻撃が同時に起こったという事実があるなら、やはり純粋な攻撃でない、戦火を広げようとする両軍以外の思惑があるのかもしれない」

 真実を突き止めなければならない。

 暖かく迎えてくれた集落の人々のために。ガイウスが愛する故郷を守るために。自分たちのやってきたことの意味を、証明するために。

 

 午前十時半。

「あちこちが砲弾で破壊されているな。想像していたよりひどい有様だ」

 馬を停め、リィンが監視塔を見上げて呟いた。昨日見た監視塔は、辺境の地にふさわしい穏やかな雰囲気で、鉄の威容とは真反対の印象だったはずだ。

 今、共和国軍基地を監視するための塔は最大限にその役割を発揮していた。ものものしい雰囲気に、慌ただしく動く兵士たちが生み出す雑踏。制服とはいえ軍人でない自分たちを警戒する監視者の目。

 何よりも、硝煙の匂い。

「実際に人もなくなっているのよね……まさか、こんな場面に出くわすことになるなんて」

 現場責任者に事情を話す。事前にゼクス中将に許可を得たことが功を奏した。現場を混乱させることもなく調査の許しを得られ、A班は再び監視塔に足を踏み入れた。

 監視塔中腹階層の屋上。つい昨日、共和国軍側の景色を見せてもらったその場所にやってきて、一同は愕然とした。

「……ひどいっ」

 その声が誰のものかも、理解する余裕はなかった。

 室内まで穿たれた壁面、直撃したと思われる黒焦げの地面、散らばった大小の瓦礫。

 もしここに人がいたとすれば、死傷者が出るのは想像に難くなかった。

 黙祷を捧げたくなった。けれど、誰もそれはしなかった。

 そこかしこで兵士が動いている。彼らは悔しさと苦しさと、断固とした意志を相貌に宿していた。

「……オレたちも、調査を始めよう。まずは状況を確かめないと」

 カイトが気丈に振る舞って他のメンバーを見た。

 

 ──大切な者を守るために、死ぬのではなく──

 

 女神の下へ旅立った者を想う時間は、後でいくらでもつくればいい。

 

 ──守るために、生きろ──

 

 自分は今、この世にいる。同じ場所にいる人たちを守るために動かなければならない。

(ああ、そうさ)

 リィンが指揮をとる。

「それぞれ視点も違う俺たちだ。バラバラにならず、冷静に自体を見極めよう」

 異を唱える者はいない。Ⅶ組が動き始める。

 一瞬だけカイトは動きを止めて、リィンたちを見た。

 最近、思い出すことがあった。銀色の意志がちらつく。

(立ち止まっちゃいられない。そうだろ? レーヴェ)

 激動の時代を前に、主体性を失わずに関わり続ける。

 興した決意を、迷うことなく。ひたむきに、前へ。

 

 

────

 

 

 監視塔で発生した被害の確認、そして聞き込みを終える。未だ慌ただしい監視塔屋上の一角で、五人は円を組んで向き合った。

 話を聞く度、調査で事実を確かめる度、疑念は膨らんでいく。それをカイトは代表して学生手帳にまとめつつ、各々の再確認に耳を傾けた。

 アリサとエマが科学的な見地を述べた。

「砲撃で壊された破片の中に混じっていた鉄屑。ラインフォルト社製の導力迫撃砲の弾よ。私が保証するわ」

「監視塔壁面を見た限り、被害は南側に集中しているみたいですね。当たり前に考えれば、南側から砲撃が放たれたことになりますが」

 ガイウスが事情聴取から、カイトが屋上から見下ろしてわかったことを語る。

「守備兵のザッツさんに聞いた。砲撃は深夜三時頃。その直前、共和国軍基地にも砲撃があったことが確認できたという。言質は取れたな」

「共和国軍基地の動向だけど、向こうもこっちと同じように混乱してるみたいだ。やたらと戦車が出入りしてるし、あれで偽装工作をしたって言うなら大した詐欺師だよ」

 カイトはそう言いつつ、書きまとめた手帳を俯瞰した。情報はそれなりに集まった。カイトはその手帳をリィンに渡す。

「まとめよう。深夜三時頃に砲撃が監視塔と共和国軍基地にほぼ同時に起きた。その規模はいっそ、共和国軍基地のほうが大きい」

 リィンはカイトの手帳を見つつ、重々しく口を開いた。それは、恐らく真実を最初に告げる者としての重みだ。

「この状況を考えると、帝国軍でも共和国軍でもない勢力からの攻撃……そう言ったほうがしっくりくる」

「オレも同感……というか、みんな同感だよな」

 ガイウスもエマもアリサも頷いた。両軍を争わせない勢力もないわけではないだろう。二大国が戦端を開けば大陸全体に影響が及ぶのは間違いないのだから。

 だが、状況を見ればそれは確信はなくとも予想はつく。ゼクス中将を始め第三機甲師団が開戦に向けて動いているのは、その予想以上に被害を受けた軍人としての役割のためだ。国の威信を背負っている以上、時に欺瞞を抱えて動かなければならない時はある。

 戦争を回避するには、機甲師団が停戦に動くための説得力のある真相とその因果関係を突き出さなければならない。

 アリサがため息を吐いた。

「なら……やっぱり必要なのは監視塔への攻撃が『どこから』行われたかということよね」

 『いつ』行われたのかということは明らかになっている。また『何で』というのも、共和国軍が扱うとも考えにくいラインフォルト社の旧ラインナップ製品だ。

 共和国軍基地から放たれたものでないという物理的な証拠が見つかれば、戦争を防ぐ一手にはなるかもしれない。

 カイトが唸った。

「うーん、でもどうやって場所を特定するんだ? ただでさえ人のいない、このノルド高原だぞ」

 ガイウスがいるとはいえ、そもそも高原自体が規格外の広さだ。場所を絞り込んだとしてもそこに行くまでに制限時間がきてしまう。

「アリサ、迫撃砲に有利な地形とかはわかるか?」

「あのねぇカイト、迫撃砲は高い射角から広範囲に撃ち込めるのよ? このノルド高原みたいな場所なら教科書上『どこでも撃てる』になるわよ」

「委員長、わかるか?」

「わかりますよ、リィンさん」

「そうだよな、さすがの委員長でも──え?」

 よどみなく話し合いが続くさなか、エマの言葉によって他の四人の声が途切れた。

「エ、エマ……?」

「わかるの? マジで?」

「はい……といっても、私一人の力ではありません。アリサさんからは迫撃砲の性能、ガイウスさんからはノルドに吹く風の性質。お二人の知恵を貸してください」

「わ、わかったわ」

「是非もない」

 そう言って、三人はそれぞれの知識を収斂させていく。エマはどうやら、環境と火器のスペックを頭に入れた上でこの着弾点から発射地点を逆算するつもりのようだ。

 その様子を少しだけ離れたところから見るカイトとリィンは、三人の様子にあっけにとられてしまう。

「リィン……馬鹿なオレに教えてくれ。砲撃の方向って勉強すれば割り出せるの?」

「カイトは馬鹿じゃないと思うが……いずれにせよ、高等学校のレベルをはるかに超えているよ」

「そりゃ、委員長は天才みたいな頭のよさだけどさ」

「マキアスが理詰めの努力タイプなら、委員長は文字通りの天才タイプだよな」

「その天才がちゃんと努力してるから凡人は追いつけないって。副委員長殿が可哀想に思えてくるよ」

 その場にいなくても弄られるような副委員長だった。

 それにしても、とカイトはさらに声を小さくして、話し合う三人に聞こえないようにリィンに聞いた。

「委員長って何者なんだろうな」

「バリアハートじゃ、負傷した時も委員長のおばあちゃん秘伝の薬が役に立ったよ」

「へぇ、そんなのが?」

 エマはⅦ組を陰日向に支える才女である。カイトやフィー以外にもほぼ全員が勉強面で助けてもらっているし、その穏やかな性格はガイウスと同じくⅦ組の緩衝材だ。今回は口喧嘩する中で仲裁役が多くなったⅦ組A班だが、だからこそエマがここで前に出たというべきなのか。それとも他の理由があるのだろうか。

 重心であるリィン。帝国兵器群に博識のアリサ。Ⅶ組の前衛ラウラとフィー。生真面目副委員長マキアス。帝国貴族界を知るユーシスに、帝都庶民の感覚を持つエリオット。帝国の常識に囚われないガイウスと帝国を取り巻く外を知るカイト。

 そんな中、エマは委員長として後方からクラスメイトを支えてきた。けれど今、支えるどころか文字通り天才的な頭脳を駆使してⅦ組を導こうとしている。

「リィンさん、カイトさん。こちらに来てもらえますか?」

 再び五人が円を組んだ。

「迫撃砲の発射地点は──この近辺の可能性が高いと思われます」

 ノルド高原の地図を広げる。エマが監視塔南のある地点を指さした。ちょうど丘の上となっている場所だ。

「エマ、やっぱり貴女は天才だわ」

「この辺は集落の民や帝国軍人の哨戒ルートからも外れている。可能性は高いだろう」

「そんな……お二人の知恵があってこそですから」

「委員長の凄さは普段勉強を教えてもらってるオレが保証するよ」

「迷っている暇はない。急ごう!」

 五人は監視塔管理者に状況を伝える。管理者はA班の推論に理解を示しつつも、エマが導き出した発射地点については半信半疑の様子だった。学生が導き出した計算だ。すぐには信じられないのも無理はないかもしれない。

 いずれにせよ、実際の証拠を突き出さなければ軍は動かないというカイトたちの考えは変わりない。

 五人は再び馬に乗り、導力迫撃砲の発射地点を目指す。

 今度はそれほど時間がかからず、ガイウスの案内もあって迅速にその場所に到着した。小高い崖の上の場所。そこには人工的なザイルが設置されていて、ガイウスが集落や帝国軍によるという可能性はないと断言した。

 ザイルを登り、帝国軍監視塔の見えない──導力迫撃砲を死角から撃ち込むにはもってこいの場所だった。

 そして。

「あ、シカンガクインの人たちだ!」

 無骨な導力迫撃砲とともに、白い肌と服が飛び跳ねる、(うさぎ)を思わせる幼子が元気に手を振っていた。

 

 

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