……ごめんなさい。
それしか言えないです、現在スランプ中なのでどこにも投稿していませんです、はい。
砂浜に立ち尽くす俺とドレイク、その後ろに立香と詩奈にクルーのメンバーたち。
全員が警戒し戦闘態勢を整え、今にでも迎撃しそうな勢いだった。
だが、無情の虎号は大砲を放つことも宣戦布告をする事もなく停留し、一隻の小舟が降ろされてはこちらに向かってくる――先頭に乗っているのはウィリアムだ。そして背後には数人の部下と美少女が付き従わせていた。
「あいつ……っ」
「アン、悪いがメアリーを抑えといてくれ。とっさに暴れてもらっちゃあ困る」
「あいあい、船長。 ほらメアリー、マスターたちと待ってましょう?」
「ちょっ、アンッ!?」
殺気を収まり切れないメアリーをアンに下げさせてもらい、俺とドレイクが先頭に立つ。
やがて小舟は浜に上陸する。そして、ウィリアムが陸に降り立つと同時に。
「——おぉっ、おぉ、おぉおおぉ! 本当に黒髭か、てめぇ!? ようやく会えたなぁおいっ!」
終始興奮しっぱなしで俺に駆け寄ってきては両手を掴んだ。
「ははっ、はははははははっ! 本物だっ、幻じゃねぇなぁ! ようやくだっ、ようやくてめぇに会えたぞっ!」
「おいおい、男に嬉しがられても俺は御免だ。 それで、一体何の用だ?」
こいつのことだ。どうせ碌なことを考えていない。……もしここで暴れて戦争を開始するとなるとやべぇな。まだ船も修復されてねぇし、戦力差も著しい。こいつはやっべぇぇいという状況だ。
……こいつはちょいと賭けになるパターンだが――俺が先にパーレイを申し込む。それと、場合によってはこの場での戦争は防げるかもしれねぇ。
今ここでパーレイを申し込んでも、それは火に油を注ぎこむようだ。
奴は激高し、そのパーレイを破ってでも俺との決着を望むだろう――だったら望めるようにこっちで仕立て上げようじゃねぇの。
奴が何を望んでいるのか、その望みに夢中にさせて『パーレイ』という言葉自体を忘れさせなきゃならんからな。
「決まってんだろ。決着だよ、てめぇとの」
やっぱりそうなったか――俺は諦めと何所か分かっていたのか達観したような感情を抱いた。
そして、互いの腰元に差していた銃を回し取り出しながら、額に銃口を向ける。その場にいた全員がざわめき、特に二つの殺気めいた気配を感じた。
「だったら何でわざわざ姿を見せたんだ? 後ろにいる連中から聞いたように不意打ちで襲いかかれば、俺との決着は簡単に着いたはずだろうが」
「はっ。やれるんだったらさいしょからやってんだろう。だが、決着の前に俺は交渉しなきゃならねぇことがある――ティーチ、俺と手を組めよ」
随分と忙しい奴だな、決着しろ云々抜かしたと思いきや、交渉とは。
しかも、さっきまで決着を付けに来たとか抜かしていたくせに、今度は手を組めだと? 滅茶苦茶すぎるじゃねぇの……あっでも海賊ってのは元々滅茶苦茶な奴らばっかかっ。
「俺の聖杯とお前の力があれば、いつでもこの海を支配することが出来る。 幸いにも他に邪魔をする奴はいない、この海を簡単に俺たちの手にすることが出来るんだ――俺の右腕になれ、ティーチ!」
…………かっ、こいつはもう忘れたのかねぇ。
俺が愛する言葉を、黒髭海賊団が海を出るときに必要な言葉はそんなもんじゃねぇっていうのによぉ。
俺は銃身でウィリアムの銃を弾き、そのまま奴の額に頭突きをかまし込んだ。
ガツッという鈍い音がその場で響き渡り――額から血を垂れ流しているのに奴は笑っていた。嬉しそうに。
「何度も言ったと思うがなぁ! 俺は支配なんざ興味ねぇよ! やりたいことをやるっ、それが海賊の、俺のやりかただ! どんな荒波や理不尽に飲まれようとも、俺は自由を愛して、やりこんできた!」
「だからこそ言ってやるっ――お前の申し出は断るってなぁ!」
俺の叫びが周囲に響き渡り、ウィリアムは叫んだ。
「つまり――今ここで殺してくれって意味だよなぁ!?」
「てめぇを含めて全員俺一人で叩きのめしてやるって意味だよ!」
今度は右手でカットラスの柄を掴み引き抜いては、切り裂こうと振るう――だが残念ながらウィリアムはステップバックして避けた。
「くくくっ、かぁはハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ! やっぱそうだよな、そうじゃなきゃてめぇじゃねぇ! だったらお望み通り――!」
ウィリアムが最後まで言葉を紡ごうとした瞬間、俺は叫んだ――。
「パーレイッ!」
海賊たちが必ず行わなければならない、魔法の言葉を。
「あん?」
「パーレイだ。ここで決着をつけたいところだが、残念ながら俺らには準備が必要でな――5日間もしくは7日間だ、それが過ぎたら戦争開始といこうじゃねぇの。そして、俺らの船を見つけた瞬間に戦争は即開始ってところでどうだ?」
「……っおい、てめぇっ!」
「おっと! 今更お前から申し込んでも、既にパーレイは開始しているっ! 今から5日間か7日間の間は俺に手を出すことは許されない、そしてこの交渉をお前は引き受けなければならないし、お前からもうパーレイは申し込めないっ!」
申し出た者には礼節をもって対応し、交渉が終わるまでは手出しできないことになるのがパーレイ。
つまり申し出勝ちって奴だ……いくら暴虐なお前でも海賊の掟には逆らうわけにはいかないだろうって。
そして、今のこいつには高揚感と楽しみが芽生えただろう――俺と決着を付けられるという。
歯軋りをして悔しそうにだが、どこか面白そうに口元を笑みを浮かべている。怒りと笑いが半々と云ったところか?
「……5日間だっ。5日間ですべての準備をしやがれっ! それ以上は待たねぇし、見つけた瞬間にてめぇとの戦争を始めてやるからなっ!」
…………よしっ、何とかパーレイをギリギリだが結ぶことが出来たっ!
ウィリアムは慄える身体を揺らしながら小舟に乗り込み、そのまま無情の虎号に向かって進みだしていった。
* * * * *
パーレイを無事に結びつけることが出来たのを見届けた一同は全員は勢い良く息を吐いた。
『いやあ、流石は海賊王同士の交渉……っていうべきなのかな? こっちまで冷や冷やしたよ』
「画面越しでしか見ていないあんたがいうんじゃないよ、ロマン。こっちは冷や冷やどころか、つららを背中に入れられたような気分さね。彼奴のやり方はめちゃくちゃで、例えるならね猛獣に餌をぶら下げてはお預けしたようなことをしたんだ。よくウィリアムはあんなんで条件を飲んだもんだっ……」
「左様。何時でもあの場で決闘を起こしてもおかしくはなかったですなぁ」
呆れと怒り半分のドレイクに同意したのはハサンであった。彼は脱ぎ掛けた黒布から手を離し、肩で息をしていた。
「そうならないように、ティーチは飴と鞭を含んだ交渉をやったんだと思うよ……正直気が気でなかったけどさ」
「あら、それが私たちの船長でしょ? ふふふふっ、相変わらずですわねぇ」
メアリーはどこか呆れた様にし、アンは愉快気にそして懐かしそうに見つめていた。
そして、二人のマスターとデミ・サーヴァントは先程のティーチとウィリアムの光景が今でも心象に焼き付いている。
マスターたちとマシュにとって、本の中でしか語られることのなかった海賊王が、この特異点に存在している。
緊迫した状況なのに、ただ前進あるのみと云った姿勢、そして賭けともいえる欲求にも拘らずに大胆不敵にそれを差し出すほどの前向きさ。こちらの心象を変える生き様。
「あれが……海賊王エドワード・ティーチ」
マシュの畏敬に満ちた声に重なるように、ティーチは叫んだ。
「おい! 今から作戦会議を始めるぞぉ、打倒ウィリアムと五日間のスケジュールについてなっ!」