誰様、俺様、黒ひげ様じゃい   作:春雷海

2 / 14
注意がある――これはオリジナルを多く含めたストーリーだ。

どんな物語であっても、見放さないでくれよな(歎願)

気に入ってくれるかどうかは、分からないが、最後まで見てくれよな。

そして、最後に云わせてくれ。

『待たせたな』


誰様、俺様、黒ひげ様じゃい2

これは、まだ黒髭ことエドワード・ティーチが異端の海に来る前の出来事である――。

 

「クソ、何だよあいつらっ」

 

「イアソン様、早くお逃げください!」

 

「逃げろというのかっ!? お前を、そしてヘラクレスを置いて!」

 

荒れ狂う海の上で、半壊状態となっている船が、波にうまく乗り流されていた。

 

その船には二人の男女がいた。片方は金髪の男。もう片方は薄い紫色の髪の少女だ。

 

金髪の男はイアソン。船――アルゴーの船長で多くの英雄たちとともに冒険した人物。

 

薄い紫色の髪の女はコルキスの女王メディア――『魔女』と呼ばれる前、少女時代のメディアリリィだ。

 

メディアリリィはイアソンと脱出しようとしていたが、彼はそれを無視し舵輪を操作する。

 

「撤退などするか! 大丈夫だ、君がいれば、ヘラクレスさえ戻ってくればあとは――」

 

突然、何かが飛んできて甲板に落ちた。

 

イアソンとメディアリリィは飛んできたそれに目を向け、絶句した。

 

それは自分たちが要としていた英雄――ヘラクレスの首だった。

 

「――流石に十二回は疲れちまったが、この力さえあればなんも問題ねぇな」

 

次いでやってきたのは、一人の男だった。

血まみれのカトラスと金色の杯を持った男は笑いながら、イアソンとメディアリリィに近寄っていく。

 

「メ、メディ」

 

「おっと残念ながら男は退場だ」

 

男のサーベルが煌めくと同時に斬撃が放たれた。

イアソンは最後まで言葉を紡ぐこともできず、首は斬り落とされてそのまま消失した。

 

「さてと、残ったのはお前さんだ……」

 

「っ」

 

「安心しろ。てめぇを殺す気はねぇよ……いや寧ろ死ぬ方がマシだったと思えるくらいにこき使ってやるさ」

 

ニヤリと笑みを浮かべる男に、メディアリリィは凄まじい寒気と嫌悪感を身体中に覚えた。

 

「かかかっ、その前に俺に対する反抗をなくさねぇとな。今日の夜は楽しみだ――俺も部下共もな」

 

そう言って、男はメディアリリィから目を離しては荒れ狂う海を見つめて一言。

 

「つまんねぇなぁ、やっぱり」

 

 

 

* * * * * * *

 

 

 

死んだと思った俺ことエドワード・ティーチはまた海に出ていた。

 

最初は唖然としていたが、もしかして俺は――。

 

・オレノカラダハボドボドダーッ!?

 

・カユ……ウマ……。

 

そんな状態なのかと思ったが、身体を見る限りそんなことはなかった。

 

寧ろ身体は快適で、今まで抱えていた痛みがスッキリさっぱり無くなっている。

それどころか腹も空かない上に渇きもしない……いったいどうなっているんだが。

 

更にこれもおかしなことに。船『アン女王の復讐号』が俺の思っていた通りに動いてくれる、まるで俺の手足のように。

 

何故、どうしてと疑問を抱かなかったわけではないが、それよりも再び俺の船で旅をできることの方が嬉しかったのだ。

 

そんな些細な問題は蹴って、アン女王の復讐号でこの海を駆け巡ることにした――俺が好きな潮の香りを嗅ぎながら。

 

 

 

そして、俺がここに来てから二日目。

 

今のところ島なんて何も見えない。

見渡す限り海ばかりだ。普段ならこの光景を見れば、新しい土地を想像し冒険心を沸き立たせるだろう。

 

だが今の俺はそんなことは感じない。

 

寧ろ、この海にキナ臭さを覚えている。楽しみも何も覚えない海はここが初めてだ……。

 

「だが、んなこと関係ない……ここに海と俺の船があるならな」

 

その道を行くのが、俺のやり方だ。

 

いつも通りに海を駆け巡ればいい。俺の船で。

嘗てこの船を賑わせてくれた部下共がいないことが悲しくも寂しいが、あいつらもこう言うだろう。

 

『辛気臭いっすよ、船長!』

 

酒を飲みながら、絶対に笑って云う。そもそも辛気臭いのも俺らしくない――いつも通りに俺のペースで行けばいい。

 

「よぉし! 全速前進だ、野郎どもっ!」

 

いないはずの連中に呼びかけるように叫ぶ俺だが、勿論返事はない。

 

だが、そんな俺の叫びに応えるかのようにアン女王の復讐号の船体が大きく揺れた……そうだった。お前もいたよな。すっかり忘れてたよ、ごめんな。

 

 

 

* * * * * * *

 

 

 

更に一日が経って、三日目。ようやく島が見えてきた。

 

初めて見える島に俺は笑ってしまう。

さて、どんな宝があるのか、出会いがあるのか……楽しみになってきた。

 

俺はアン女王の復讐号を停留させて降り立った――その島にあったのは多数の人工物。だが人影はゼロ。

 

外れかと思いきや……なんと岩山に穴が空いて階段が地下に続いている。感じる感じるぞ。俺の中に沸々と沸き立つのはやはり――。

 

「お宝と冒険の匂いだ……かかかっ、楽しみだなぁ」

 

そして、同時に感じる危険なにおいと空気……たまらないこの感覚。

これこそ海賊の醍醐味ってやつよ。普通じゃ決して味わえない。

 

懐に差しているクイーン・アン・ピストルとカットラスにサーベルを軽く調整してから、階段を下りて行った。

 

階段を下りて見えてきたのは迷宮だった。地下へ続く階段を慎重に下りて行った――階段から広い空間に出たのと同時に目に入ったのは石造りの壁。小さな火を燈した石の柱。似た風景が続くいくつもの分かれ道。

 

石造りの閉鎖空間に響く靴の音を聞く限り、こいつはかなり広い。

 

所謂迷宮(ダンジョン)であることが分かった……やっべぇなぁ。どんなのが出てくるのか、楽しみになってきた。

さてさて、鬼が出るか蛇が出るか……。

 

「……何もない、外れ部屋か」

 

「おぉ、金貨――よし普通のだなっ! 危なかったっ、これがあの金貨だったら呪われていた……っ」

 

「物置部屋……おっ!? 葉巻だっ、なんでこんなところに――いい宝だ」

 

一通り見て、俺は思った。

迷宮はやっぱり宝の山だと……収穫したのは葉巻のみだが。

 

葉巻は嘗て商船に置かれていたもので、高級な上に場所が場所で、入手困難だった。

 

しかし、この葉巻は部下たちには不平が多かった。

 

しかも吸ったら、アンメアコンビに臭いし吸うのを控えるように言われるわ、部下共からは「体に悪いですぜ、それ」って言われるし……別にいいじゃねぇかよ。葉巻ぐらい。

 

さっそく吸いたいところだったが火がないので、断念。勿論火だけではなく。

 

「お客さんも相手にしなきゃな」

 

「ウウウウッアアアアアアアアアアアアア!」

 

咆哮と共に現れたのは、鋼鉄の牛面を被った大男。そして仮面越しにくぐもった声で告げられる無慈悲な宣告。

 

「しね」

 

話し合う余地はなしか……まぁしゃあねぇよな。

 

俺はカットラスとサーベルを抜いて二刀流となり、振り下ろしてくる大男の右拳を二刀で受け止めるがっ重!?

二刀は大丈夫か!?

 

幸い刃は折れることなく肉が食い込むが大男は怯えることなく、食い込んだ刃を抜いては振り上げるがそんなことはさせるかい。

 

俺は左手のサーベルで大男の右拳を貫き、もう一刀のカトラスで足と床を貫き食い込ませようとするが、それよりも蹴りが襲い掛かってきた。野郎の脚についている鉄球込みでだ。

 

頭の直撃だけは避けようと左手で受け止めるも、勢いが強く軽く吹き飛ぶ。だがそれでも、すぐさま床に足を付ける。

 

そして左手はクイーン・アン・ピストルに持ち替えて、即射撃。硝煙が漂うとともに銃弾が着弾する場所は全て牛面。容赦ないのは承知の上だが手加減する理由もない……。

 

敵の牛面に亀裂が入って、真っ二つに割れて床に落ちた。出てきたのは童顔の男だった。

おいおい……もっと厳ついおっさん顔かと思ってたぜ。

 

「待ちなさい……ッ!」

 

ソプラノボイスが迷宮に響き渡った。現れたのは、美少女だ。

 

「分かった、分かったわよ! 私が付いて行けばいいんでしょ!? アステリオスはもう瀕死よ。戦力としては連れて行く価値もないわ! さっさと私を彼奴の元に連れて行きなさい!」

 

「何をほざいているんだ、嬢ちゃん。そもそも彼奴っていったい誰だ?」

 

「…………? あんた、彼奴の仲間じゃないの?」

 

「なんだ、追われている身か? お前さんはどこの令嬢だ……?」

 

「令嬢なんかと一緒にしないでもらえるかしら。私は女神エウリュアレよ。名前くらい知っておきなさいよ。失礼にも程があるわ。さては貴方、三流の海賊なのね」

 

こ、このガキ……っ。誰が三流だ、せめて二流にしやがれ――っていうか俺の名を知らねぇのか、こいつはっ。

 

いや落ち着け、こんな生意気で高飛車な女どもは相手にしたことが何度もあるし、我慢もできたっ。今度も我慢だ、我慢っ。

 

だが、このガキから放たれる気配というか、何というか、普通の女には全く感じられないものがある。

それがいったい何なのかは分からんが。

 

「とりあえず事情を説明するか……俺はな――」

 

 

この島には偶然停留したこと。お前さんのような存在がいるとは知らなかったこと。この迷宮に入ったのは宝と冒険が待っているからと一から順に説明すると。

 

 

 

「な・に・よ・そ・れ! まぎらわしいのよ、あなた!」

 

誤解を解いたらヒステリックに叫びだしたエウリュアレ。喧しいな、こいつ。

 

「んなこと俺に言うな。おい、アステリオスだっけか? 悪かったな」

 

「う、ん。だい、じょうぶ」

 

そんな彼女を無視して、俺は大男のアステリオスに声をかけた。

 

そいつはかなりのタフで俺がつけた傷にも怯むことなく、立ち上がる。

 

「さてと、お前さんが追われているのは分かったが……俺まで閉じ込められると流石に困る。悪いが、解いてくんないか?

 

「……仕方ないわね」

 

エウリュアレは予想外にあっさり承服……意外だな。もう少し粘るか、ヒステリックになるかと思ってたんだが。

 

「外に出るには、アステリオスが死ぬか、結界を解除するしかないんだから。だったら解除するほうがマシ。一人になるより、遙かにね」

 

寂しげに言うエウリュアレの顔立ちに、思わずため息をついた。

この表情は苦手なんだよ……独りぼっちが嫌いな子供みたいな顔を浮かべやがって。

 

昔、俺が襲って拾った奴隷船の子供たちを思い出しちまった……全員が暗い表情で瞳の中の光が薄れていたのを。

 

女神だから結構な歳を重ねているだろうが、やっぱ孤独は苦手なようだな。

 

「しかしよぉ、お前は結界っていうのを張んなきゃいけない位に切羽詰まってるんだろ?」

 

「そんなの、貴方に関係ないでしょ」

 

何を言っているんだ、こいつは。

 

「いや、関係あるな。今日からお前らは俺の仲間になるんだからな」

 

エウリュアレが面食らった。当のアステリオスは事の成り行きが分かっていないらしく、首を傾げた。

 

「お前は美人なうえに女神ときた、一緒にいれば女神の加護とやらを貰えるかもしれん。そんでもって、特にお前だっ、アステリオス! 俺の攻撃を食らっても怖じ気づかないその体力と根性はいいもんだ! お前のようなタフガイはそうはいない――何より女を守るために命を張る良い男だ、俺はそんなお前を気に入ったんだよ!」

 

嘘は言っていない、これは俺の本心だ。エウリュアレという女神の力を信じてみたいし、アステリオスの性格と態度を心底気に入った。

 

「う? ぼく、いいおとこ? きに、いった?」

 

「おうよ! まぁ、俺みたいな海賊に気に入られても嬉しくはねぇか?」

 

「! ううん。ぼく、うれしいよ」

 

「まぁ、そんな理由でお前らを俺の仲間にする――もちろん拒否してもいいぞ」

 

俺の言葉に迷ってエウリュアレはアステリオスに振り返り、どうするかを尋ねた。

 

「いく。――エウリュアレ、が、いく、なら、ついていく。ひとりはさびしい……それにぼく、ティーチについていきたい」

 

「よっしゃ! さっそくお前らを俺の船――アン女王の復讐号に案内してやる!」

 

こうして、俺は二人の乗組員を新たに加えた。

 

さて、新しい乗組員とどこへ行こうかねぇ。

 

そういや、エウリュアレの云っていた彼奴って誰のことだ?





※葉巻に関して
西洋の歴史にたばこが現れるのはコロンブスが1492年に、サンサルバドル島を発見した。
またスペインにおいても吸われていたことが確認。
今回、黒髭が吸っていたのと、入手したのは商船であると記載されているのは作中オリジナルである。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。