更新が遅くなってしまい、申し訳ない。
続きを待ってくれてうれしい反面……プレッシャーに負けて中々書けなかったです(汗)
ちゃんと楽しませられるのか、期待に応えられるのか不安の中で登校します。
作者オリジナルの黒ひげをよろしくお願いいたします。
人理継続保障機関、"フィニス・カルデア"。
近未来観測レンズ"シバ"によって人類は2017年に滅亡することが発覚。それを阻止するべく、カルデアは術者を過去に送り特異点の修復を行う儀式を開始する。
その儀式の名はグランドオーダー。
未来を取り戻すための冒険は、若き双子のマスターと未熟なるデミサーヴァント、そしてカルデアに召喚されたサーヴァントたちに託された。
これまで、彼らは崩壊した都市冬木を始め、邪竜百年戦争・オルレアン、永続狂気帝国・セプテムと三つの特異点で人理定礎を修復してきた。次なる舞台は封鎖終局四海・オケアノス。
この特異点の原因なる聖杯を求め訪れ、聖杯を見つけるも、それはこちらの探す聖杯ではなかった。
双子のマスターとデミサーヴァントのマシュは、その聖杯の持ち主であるイギリスの大海賊フランシス・ドレイクと共に海に駆け出した。
道中にあった孤島に到着し、血斧王エイリークと対峙し何とか倒し終えた。
食料や水の調達をしていくうちにすっかりと夜が更けたために、この孤島で野宿をすることを決定した。
『よっしゃ! 次の島に向かう前に――宴だぁ!』
『おおおおおおおおおおおっ!』
ドレイク船長の鶴の一声で、急遽宴が始まった。
フランシス・ドレイクが持つ聖杯で酒や食料を取り出しては、貪り飲んで楽しむ。
そのノリについていけずにいた双子のマスターとマシュたちであったが、自然と宴の空気とノリに乗せられて、宴を楽しんでいく。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、すっかりと深夜になっていた。
「ん……ふあぁ」 「うぅん……」
黒髪とオレンジ髪が特徴的な双子のマスターが不意に目を覚まし、身体を起こした。
黒髪と青目の少年、藤丸 立香は首の骨を鳴らす。
オレンジ髪と茶色の瞳の少女、藤丸 詩奈(しいな)は肩の骨を鳴らす。
双子――立香と詩奈は野宿の為に固い地面等で横になってしまったせいか、身体の節々が痛むものの、その痛みは既に慣れ親しんだもの。
「おはよ、詩奈」
「おはよう、立香」
互いの顔を見つめながら、そう言った。
「あの、先輩方。まだおはようという時間帯ではありませんが」
そう突っ込みを入れたのは双子の最初のサーヴァントで相棒的存在、マシュ・キリエライトだった。
そんな彼女の突っ込みなど気にも留めず二人は軽く体操して身体をほぐしていく。
周囲を見渡すとドレイクや彼女の部下たちは酒のせいもあってかまだ眠っていた。
「あれ、みんなは?」
「はい、ハサン先生は周辺の見回りを。キャスニキさんとロビンさんは食料の調達へ、アルトリアさんは周囲の警戒をしに行かれました」
双子の仲間であるサーヴァントたちの報告を受けるものの、もう一組のサーヴァントたちの報告がないことに気づいた詩奈が尋ねた。
「ねぇ、アンとメアリーは……?」
「……この特異点に来てからずっと同じ調子です。いつものように海岸で海を見つめています」
サーヴァントたちの中でも古参ともいえる人物たち――それは立香と詩奈のように強い絆で結ばれた二人のサーヴァント、アン・ボニー&メアリー・リード。
二人のサーヴァントはこの特異点に来てから様子がおかしい。双子とマシュ、そしてサーヴァントたちは心配しているのだ。
* * * * *
心地よい波の音と共に、砂の表面に月の光が反射してきらきらと光るのが綺麗だ。
僕ことメアリー・リードは相棒のアン・ボニーと一緒に砂浜に座って海を見つめていた。
「アン、今何を考えてるの?」
「うふふふっ、きっとあなたと同じことを考えているわ」
アンの言葉を聞いて、僕はすぐに納得した。
生前もサーヴァントとなった今も、僕が考えているのは……船長のことだからだ。
僕たちの船長——エドワード・ティーチは海と自由が好きだった。
何もかもを型破りにやり通してきた彼だから、自由を愛した彼だったから、付いてきたのだ。
彼と一緒に旅をして、海を渡った経験は今も、心の奥底に、一番忘れてはいけない場所にしまい込んでいる。
『やりてぇようにやるのが海賊って奴だ。自由を忘れるなよ、それをなくしちまったら海賊をやっている意味をなくしちまうぞ』
敵には残虐な姿しか見せず恐怖を覚えることもあったけど、強くて、勇敢で、信念をもって。
誰よりも海賊らしく、海賊らしからぬ彼はその言葉と共に船と共に旅路を進んでいった。
僕たちはそんな彼を慕い、仲間となって旅をしてきた。
彼の重荷にならないように必死に追いかけて――流石に古参の幹部らには負けたけど、それでも僕たちは食らいついてきた。置いてけぼりにされたくないから。
だけど、不満があった。
船長には時に逃げてほしかったし、泣いてもほしかった。僕たちには決して見せない姿を見せてほしかった。
でも結局、船長は僕たちにそれを見せずに逝ってしまった。
……あぁ、僕らしくないなぁ。感慨深くなってる。
多分、この特異点に来てからだ。
久しぶりに島に上陸しているのと海を見ているからだ――大好きな筈なのに憎たらしく感じるこの海の所為だ。
「そうね、メアリー。本当に憎たらしい海……でも嫌いになれませんわ。だって船長が愛した海なんですもの」
相棒のアンの言葉に同意するように僕は頷いて――俯いた。
なんで置いてけぼりにしたの。僕たちだって戦えることを知っていたのに…………バカ船長っっ。
「えぇ、本当に。あの人は馬鹿ね……本当にっバカな人」
アンは僕を抱きしめてくれる。
ごめんよ、本当はアンだって悲しいのに、慰めてくれているんだよね。
船長、ううんティーチ、いまどこにいるの?
まだ行ったこともない場所を冒険しようよ、きっとティーチが気に入る場所もあるよ。
僕たちは今でも待っているんだよ――会いたいよ……どうしてどこにもいないの?
早く会って僕たちと話そう? 冒険しよう? 今度は置いてけぼりなんかさせないから……早く迎えに来てよ。
僕たちはいつだって待っているんだからね。
「どうする、詩奈?」
「どうしよっか、立香」
砂浜でアン・ボニー&メアリー・リードが泣いていた。
それを木陰に隠れて立香と詩奈は見つめていた――今すぐにでも駆け寄って慰めたかったが、あの二人の間に入ることはできなかった。
これは二人の間にある問題だからと何となく双子は把握したのだ。
それを今無理やり聞いて慰めるのは得策ではないし、あの二人も望んでいない――そしてその役目は自分たちではないとも。
「戻ろうか……今の俺たちじゃ何もできないし」
「うん、悔しいけどね……」
双子はそっと離れていく――いつも世話になっているアンとメアリーに何もできないことに歯痒さを感じつつ、そして、いつかあの二人が救われることを祈りながら。
その時が来るのは、もう少し先の未来の話になる――。
※マスターについて
どっちのマスターも好きだし、どうしようかと悩んだ瞬間……そうだ双子にしようと思いついた。
※サーヴァントの編成について
趣味だ。あとアンとメアリー以外は本当にゲーム内での古参メンバーで、めっちゃ世話になりました。