誰様、俺様、黒ひげ様じゃい   作:春雷海

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今日投稿した内容とウィリアムについて、賛否両論あるかもしれません……。

追記
感想にある、ちらほらの疑問に対して答えるように、修正いたしました。最近アクセスが悪く、書いたはずのものが自動保存されてなかったです、もうしわけありません。




誰様、俺様、黒ひげ様じゃい6

フランシス・ドレイクとウィリアム・フライ。

 

それは本来交わることがない海賊と二隻の船の戦い。

 

黄金の鹿号とウィリアムの船『無情の虎号』から大砲の砲弾が容赦なく発射される――地震でも起きたのかと錯覚するほどの振動と音が戦場に響き、砲弾が飛び交う。

 

互いの船は玉に着弾しないように舵輪を操作し海原を旋回する。しかし、完全に大砲の砲弾を避けることが出来ず、時折に黄金の鹿号に着弾しそうになるも――。

 

「ほい、ほい、ほいさっ!」

 

「燃えろッ!」 

 

黄金の鹿号には最近入った、頼りになる仲間たちがいる。

 

船の帆桁の上に器用に立つロビンフッドが放った矢が砲弾にぶつかると同時に空中で爆破し、彼と共に帆桁の上にいるキャスタークーフーリンの放った火炎弾が砲弾を消し炭にする。

 

しかし、敵は砲弾だけでなく、人間もいるということを忘れてはならない。

 

無情の虎号から吊られているロープで大砲の雨をすり抜けていく三人の海賊。ロビンフッドとクーフーリンは撃ち損じてしまい、まんまと黄金の鹿号の甲板に乗り込んだ。

 

「ゴンド!」

 

「ドラム!」

 

「ムース!」

 

……わざわざ名乗りを上げて参上してきた三人の海賊たち。

 

思わず厭きれそうになってしまうも、敵であるのも事実である。

彼らからマスターたちを護衛するため、マシュとアルトリアは乗り込んできた三人を見て――思わず寒気を覚えてしまった。

 

「へへっ、いい身体だぜ」

 

「マシュマロボディにスレンダーな肉体……スゲぇなっ、メディアリリィちゃんと比べ物にならねぇぜっ」

 

「おいおい、お前らよ。リリィちゃんはそれがいいんじゃねぇかよっ」

 

三人から感じる性的欲望と劣情、そして同時に二人の身体を遠慮なく嘗め回す様に見入る欲望塗れの目……マシュは背筋に寒気を覚え震えてしまい、アルトリアも寒気を覚えてしまうも自らを奮い立たせるように正眼の構えをとる。

 

「不快ですね……早々にこの戦いを終わらせましょう」

 

「おっ、やるってのか? 言っとくが、俺たちはそれなりに強——」

 

海賊の一人が最後まで言葉を紡がれることはなかった。アルトリアの持つ不可視の剣――同時に宝具でもある――が首を斬り落としたのだから。

 

三人から一気に二人になってしまったドラムとムースは驚愕し、思わず後ずさりをしてしまう。

 

「っおいおいなんて姉ちゃんなんだよっ!? 一気にゴンドがやられちまったぞっ!?」

 

「あっ、その姉ちゃんは任せたぜぇ! 俺はあっちのマシュマロ嬢ちゃんをやるわっ!」

 

「あっドラム!? きたねぇぞ!」

 

アルトリアに恐れをなして、倒しやすいであろうマシュに目を向けたドラムだが――。

 

「申し訳ないが、マシュ殿に貴様らの相手をさせるわけにいかん。 薄汚れた者同士で悪いが、付き合ってもらおうか」

 

「っとぉ!?」

 

目の前に音もなく現れたハサンに悲鳴を上げながらも、ドラムは襲い掛かってくる短剣の刃をサーベルで受け止めた。

 

「むっ!?」

 

「へへっ、アサシンのサーヴァントかよ……それなら俺が相手でも問題ねぇなぁ!」

 

ドラムのサーベルとハサンの短剣が拮抗するも、それはすぐに終わることになる。ドラムが放った膝蹴りがハサンの脇腹に入ったことで一瞬体内にあった息が全て失った。

 

「ぐっ!?」

 

「へへっ、アサシンが痛みに負けてどうするんだっ――おらよっ!」

 

「がっ――!?」

 

次いでハサンの顎にドラムのアッパーが入った。ハサンが軽く空中に浮かぶものの流石はアサシンというべきか、空中で軽快な動きを取って上手く着地する。

 

しかし、ハサンが着地した場所は既にドラムがサーベルを振りかぶっていた。

 

「ぬぅ!?」

 

「はっはぁ! どうしたよぉ、その程度かぁ!?」

 

ハサンは短剣を翳したことでサーベルを何とか受け止めることが出来る――しかし、ハサンはこの海賊が予想以上に強いことに焦りを覚えて、同時に油断すれば確実に殺られてしまうとも感じ取った。

 

「ハサンッ――ぐぅ!?」

 

「おっと金髪の嬢ちゃんは俺と殺りあおうや!」

 

そんなハサンの戦いを見て手助けに向かおうとするアルトリアだが、ムースが持つ剣鉈でそれが出来なかった。

 

「へへへっ、見えないのはちぃと厄介だがこうやればわかるぜ……そいつが剣だってことがよ。伊達に海を冒険してねぇさ、それぐらいは分かるよい」

 

「ぐ―—っ!」

 

アルトリアの手の持ち方・間合い・刃の交わうことで、その正体が剣であるとムースは難なくと理解したのだ。

 

嘲笑いながら云うムースに悔しさを覚えるが、今はそれどころではない。今、他のことに目を向けてしまえば確実に競り負け、倒されるのはアルトリアのほうだ。

 

本来ならば、この程度の海賊はアルトリアの敵ではない。

 

しかし、今の彼女は霊基再臨が完全ではない状態なのだ。

まだ第二段階霊基のために、この程度の敵にも遅れを取ってしまうのだが……それにしても敵の強さが可笑しい。

 

幾ら英霊の部下でも、これほどまでの実力があるのだろうか。

 

「くっ……っ!?」

 

「ヒャッハアア! 海賊王ウィリアム・フライの部下を嘗めるんじゃねぇぞぉ!」

 

アルトリアとムースは顔を睨み合いながら、不可視の剣と剣鉈の刃が噛み合い、拮抗し合っていく――。

 

 

* * * * *

 

 

「ドクター! すぐにウィリアム・フライの海賊たちを調べて!」

 

「明らかに強さが可笑しいっ、皆が苦戦しているのっ」

 

マシュの背中に守られている立香と詩奈はカルデアにいるドクターロマンに通信を行い、現在の戦況を報告していた。

 

『っ海賊だって!? 冗談じゃないぞ、君たちが戦っているのはサーヴァントだぞ!? しかも一基一基がそれぞれクラスが異なる連中だっ!』

 

「で、ですが、あの海賊たちは全員ウィリアム・フライの船から降りてきましたっ! もしかするとウィリアム・フライは――」

 

聖杯を持っているのだろうかというマシュの考えは、ロマンの継いだ言葉で蹴られた。

 

『いや違う! あれは確かにサーヴァントだけど、決して聖杯で呼び出されたものじゃないっ、全員がウィリアム・フライの魔力で姿形を補い伴っている! つまり――海賊全員が彼が呼び出したサーヴァントだっ!』

 

その言葉を聞いて、驚愕するよりも茫然するしかなかった。

 

ウィリアムの海賊たちすべてがサーヴァント。更に部下のレベルは二人が連れてきた六人と同等、そうすると船長であるウィリアム・フライの実力は如何なるものか……。

 

そして、ふと気づいた――今そのウィリアムと闘っている二人を。

 

「マシュ、俺たちと一緒にウィリアムの船に!」

 

「アンとメアリーがあそこで戦ってるから、そのサポートにッ!」

 

マシュもその言葉に勿論内心同意し、二人と共に行きたいのは山々だ――しかし。

 

「っぐぅう!」

 

マシュだけだったら切り抜けられるかもしれない。だがマスターたちも一緒ではそれも難しい。

 

彼らの敵は海賊だけではない。いま上空から降り注いでいるこの砲弾の雨も敵なのだ。

 

今もマシュが防がなければ、二人は衝撃と爆発で焦げた肉の塊となって終わっていた。

 

「っマスター! ご無事ですか!?」

 

『流石マシュ!』

 

「お褒めの言葉ありがとうございます! ですが状況に応じて素直に受け取れられませんっ、ご指示を!」

 

「決まっているっ!」

 

「私たちをアンとメアリーの元まで連れて行って! マシュが行く先を私たちが着いていくから!」

 

何という無茶なオーダーを出すのだろうか、この双子は。

 

先ほども言ったように敵は海賊だけでなく、この砲弾の雨もそうだというのに……。

 

しかし、マシュがその敵らをなぎ倒すことが出来ると信じてのオーダー……それに応えられなければならない。故にマシュは叫ぶ。

 

「はいっ! マスターのオーダーに全力で答えます――マシュ・キリエライトは二人を全力で守り通しますっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ!」

 

「ッハッ! 相変わらず拙い剣の腕だなぁ!」

 

場所は変わり、無情の虎号の甲板。

 

ウィリアムの海賊刀とメアリーのカトラスが交差し合うと同時に、鍔迫り合いとなっていた。

 

しかし、ウィリアムの腕力が強いのか。メアリーは足元を踏ん張るも呆気なく鍔迫り合いは競り負けてしまい、吹き飛ばされてしまった。

 

「メアリーッ!」

 

吹き飛ばされたメアリーを抱き留めたのはアン。しかし、メアリーはアンに感謝の言葉をそこそこに彼女の腕の中から出て、駆け出したとき――。

 

「……」

 

「っぅあ!?」

 

メアリーの足元に光弾がめり込むと同時に弾き飛んだその衝撃に、彼女は転がってしまう。

 

「ハッ、ハハハハハ! 無様だなぁ、たかがキャスターの攻撃で転がるなんてよぉ!」

 

ウィリアムに付き添うように足をふらつかせて寄ってきたのはメディアリリィ――服は乱れ、首元や太ももには赤いマークが幾つか付いていた――は杖の先端を光らせ、アンとメアリーに突きつけていた。

 

先ほどの光弾はどうやら彼女の仕業のようだ……。

 

「邪魔をするな!」

 

「……わたしは、メディアリリィ。 ウィリアム様の部下で、皆様の奴隷です……契約に赴き、皆様に従います」

 

「おぉっ、流石は我が紅一点のクルーだ。どこぞの役立たずの女海賊共より動くなぁ」

 

ウィリアムはメディアリリィに近寄り、優しく頬を撫で上げる――その視線はアンとメアリーを嘲笑っており、決してメディアリリィを見ていなかった。まるで道具のようにしか、扱っていない。

 

「……っこのっ!」

 

「落ち着きなさい、メアリーッ!」

 

メディアリリィの態度とウィリアムの言葉にメアリーが激昂しかけたところを 責したのはアンだった。

 

「なんでさっ、アン――っいだっ!?」

 

メアリーが反発しかけたところを、アンがマスケット銃の銃身で頭を叩きつけた。

 

「っなにをするのさ!?」

 

「貴方が超突猛進すぎるからでしょうっ!? あんな男の言葉に惑わされるなんて、それでも黒髭海賊団の一人なのっ!? ティーチの言葉を思い出しなさいっ、『買う必要すらない喧嘩は絶対に買うな』! 今の貴方は、その喧嘩を買っているの!」

 

「……っ」

 

アンの言葉を聞いて、メアリーは熱くなった頭が徐々に冷えていくのが分かる――同時に船長であるエドワード・ティーチと仲間たちのことを思い出していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

それは、生前のとある町で酒場で過ごしていたとき。

 

同じ同業者にティーチが酒をぶっかけられ喧嘩を売られてしまうも、決して彼は相手にすることはなかった――馬鹿にされても殴られても、ただその同業者を笑い飛ばすだけだった。

 

結局、同業者が呆れ帰る迄、好き放題やられても嘲笑られても、やり返さなかった。

 

ティーチと長い付き合いである古参組はそんな彼を笑い飛ばし、当時まだ入ったばかりのアンとメアリーそして若い衆はなぜやり返さなかったのかと詰め寄った際にこう言われたのだ。

 

『買う必要すらない喧嘩は絶対に買わないのが、俺の主義だ。連中は海賊だが、俺ら程の土俵にすら入っていないんだよ……そんな奴らを何で相手にしなくちゃならねぇ』

 

『それにこんないい酒場で喧嘩なんざしちゃあ勿体ねぇ。折角の酒も飯も不味くならぁ……何この借りは返す時に返せるさ、連中も一応は同じ海賊なんだからよ』

 

『お前らも俺の一員だったら覚えておけよ――買う必要もない喧嘩は絶対に買うな、それをしちまえばたかが知れるぜ?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あぁ、僕もまだまだ……だね、ティーチ)

 

過去の、あの輝かしくも懐かしい記憶を振り返ったメアリーは一度深呼吸を繰り返して、アンを見つめなおした。

 

「ごめん、アン。 もう大丈夫だよ」

 

「ようやくいつも通りのメアリーね――それじゃあ行きましょうか。あのクソッタレ鬼畜野郎をさっさとぶっ潰しますわよ」

 

「うん、行こうか!」

 

メアリーの表情が落ち着きを取り戻したのを確認し、アンは優しく微笑みながらマスケット銃を敵に向ける。

 

「……ちっ、いい具合に動いてくれたのによ残念だ。 まぁいいさ、こっちの計画は既に済んでる」

 

「? それってどういう――」

 

凄まじい爆音と爆風で、メアリーが最後まで言葉を紡がれることはなかった。

 

アンとメアリーが振り向いてみると、黄金の鹿号の船体と竜骨が燃え上り黒煙が上がっていたのだ――!

 

「しまったっ!?」

 

「っまんまとやられましたわね……メアリーッ。こいつらとの決着は後回しですわ、今はマスターたちを!」

 

そう言ってアンとメアリーは無情の獅子号の甲板から跳躍して黄金の鹿号に戻っていく――それを追撃もしないウィリアムは愉快気に、勝利を確信めいた笑みを浮かべていた。

 

「さてさて……俺も一緒に行きますかね。お前もだぞ、リリィ」

 

「はい、分かりました」

 

人形のように感情の起伏を感じさせないメディアリリィを連れて、ウィリアムも黄金の鹿号に向けて跳躍した。




追記
今回の話で多くの疑問、おかしな設定があると思います。
しかし、それらはちゃんとした理由があるので、次回まで待っていただけたらと思います。

お手数をおかけしますが、よろしくおねがいいたします
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