いやでも、待たせている人もいるんだから書かなきゃとは思いますです。申し訳ありません。
しかし、生活するには仕事という労働を忘れてはならないし、シフト勤務だし。オリジナルも書きたいし、ゲームもしたいしと……煩悩まみれで申し訳ありません。
言い訳がましくて申し訳ありません。
ですが時間をかけてもこの小説は完結させていきたいと思います。
7月31日 修正しました
黄金の鹿号は度重なる砲弾を受け、更に船の上で戦った所為か、船体は綻びが生じて黒煙が上がっていた。
嘲笑う海賊たちが突きつけ迫り来る刃に、ドレイクは唇を噛み締めながら部下たちと共に後退する。
「へっへっへ、海賊ドレイクも大したことねぇなぁ」
「部下も大したことねぇし、こりゃこの海を支配できるのも楽だなぁ!」
海賊たちの声に反応せずにドレイクは視線を違う方向に――立香たちに向ける。
彼らもまた追い詰められていた。辛うじてアルトリアとハサンの姿のみ捉えることが出来るも、戦況はあまりよろしくない……寧ろ数が増えて苦戦しているのが見えた。
あちらの助けは望めないと判断し、最悪であると過言ではない。
(こいつら、ただの下っ端じゃないっ。 あいつらを相手にしても互角で済ませて、アタシらは満身創痍……ちょいとヤバイっ!)
ドレイクは舌打ちして海賊たちを睨みつける――だが海賊たちは気にも留めずに寧ろ厭らしい目で彼女の胸元を遠慮なく見ていた。
「へへっ、たまんねぇなぁ、その胸。 思わず触りたくなるぜ……」
「はっ! あんたらみたいなやつに触られるくらいなら、こいつらに触らせるか死んだ方がマシだね」
「いや、恐れ多くて触れやしませんって……へへでも死ぬ前に一度は揉んでみたかったですぜ」
苦笑しながらも鋭い光を瞳に宿すボンベの姿に、ドレイクは笑って「揉んだ瞬間に天国に行かせてやるよ」と軽口を叩いて、懐から銃を取り出す。
死ぬなら全力で抵抗してからでも遅くはないだろうとドレイクは決意して、力強く踏み込もうとしたとき。
「そうは問屋が卸しませんわよ!」
マスケット銃の銃声が響くと、海賊たちとドレイクの間に銃弾の雨が降り注ぐ。
海賊たちは後方に飛び下がると同時に人影が降り立ったのは同業者のアンだった。
「おっとこいつは助かったよ! 相方はどうしたんだいっ!?」
「メアリーならマスターたちの方に向かわせましたわ……さてっ、まだ行けますわよね? ドレイク船長」
試すような口ぶりで話しながらアンが不敵な笑みを浮かべて、ドレイクを見つめている。
「はっ、当たり前だろっ!」
ドレイクは自ら奮い立たせるように叫んで、強く足を踏み込んだ――それと同時に。
「いやいや、流石は太陽を落とした女。 諦めの悪さと粘り強さだけは尊敬するぜ」
嘲笑う声が響くと同時に空から降ってきたウィリアム・フライとメディアリリィを捉えた、ドレイクとアンは睨みつける。
「おいおい、よく睨めるなぁ……絶体絶命のくせに」
「はっ生憎だけどねぇ、海賊ってのは生き汚いのさ……それこそこんな絶体絶命の状況でもね!」
ドレイクは強気に笑いながら、引き金を指にかけながら銃口をウィリアムに向ける。
そんな彼女にウィリアムは嘲笑いながら「野郎ども集まれっ!」と叫ぶと、立香たちの元にいた海賊たちも一斉に集まる――全員の身体には傷やあざが出来、表情に疲れが見られるものの、まだ余裕が見られていた。
「やれやれ、俺の部下をここまでやるとはな……折角あの力を使ってやってるのによ、まぁ残りの半分は全勢力でやれば問題ねぇか」
『……あの力? それはどういうことだい、海賊王ウィリアム・フライ』
立香たちがドレイクと合流すると同時に、ロマンがウィリアムの言葉に引っかかったのか、通信機器を通じて尋ねる。
「あ? どっから聞こえるんだその声は……喋る義理は更々ねぇが、どうせここで死ぬんだ。慈悲深い俺様に感謝しろよ」
既に勝利を確信めいたようで余裕な表情を浮かべるウィリアムに、立香たちは口惜しそうにしながらも反抗出来ず、ただ彼の言葉を聞くしかない。
彼らの表情と自らが有利な立場を得ていることに優越感を抱きながらウィリアムは言葉を紡げだす。
「この海に来て俺らはある一隻の船と闘ったんだ……そいつが結構な奴でなぁ。 12回も殺し尽くしてやっと倒せたんだわ――まぁ俺も部下も散々殺されたがな」
ケラケラと笑うウィリアムに対し、彼の『12回を殺し尽くした』という言葉にロマンは驚愕の表情を浮かべながら叫んだ。
『12回を殺し尽くした、だって。 まさか……まさか君が相手にした敵というのは――!』
「確かヘラクレスとか言ってたなぁ……あの金髪のガキが云うには。 ったく12回も殺すなんてよぉ、結構しんどかったぜぇ」
「ありえません!」
立香と詩奈をマシュと護るように傍らについていたアルトリアが叫ぶ。過去の記憶――嘗ての聖杯戦争での記憶が霊基が覚えているのだ。
ヘラクレスと闘った記憶があり、彼女も苦戦し苦しめられたことがある。
だからこそ、そのヘラクレスが目の前にいるウィリアムという海賊に倒されたことが信じられないのだ。
「貴方は、神話上に生まれた英雄ではないっ! 特殊な力やスキルもない近代の人間では決して彼を倒すことが出来るなどっ」
「はははっ、嘗めてくれるじゃねぇの……まっ確かにその英雄様を相手にしたときは流石に寒気を覚えたが、同じ力を持てばそんな怖いもんはなかったさ」
そう言って、ウィリアムが胸元に掌を翳すと黄金の光とともに現れたのは、金色に輝く杯――聖杯だった。
それに立香たちとロマンは驚愕し、ドレイクは目を見張るもののすぐさま口惜しそうに唇を噛み締める。
「なるほどねぇ、あんたはその力を使って、そのヘラクレスとやらをぶっ飛ばしたわけかい……」
「おいおい、それだけじゃなく、俺の力もあるのを忘れちゃ困る――こんな感じにな」
ウィリアムは次いで左手を持ち上げる……何もなかったはずのその手に何かが握られている。
彼が握っているそれを辛うじて捉えることが出来た立香と詩奈は驚愕し、アルトリアに目を向けた。
アルトリアも自らの手中にあるものと、ウィリアムの左手を見比べ――叫んだ。
「馬鹿な、なぜ、私の宝具を――!?」
「ははっ、これが俺の宝具って奴よっ! てめぇらの宝具を、俺の一部にすることが出来る――『略奪せよ、全ての宝は俺のもの』って云うんだけどよ、まぁこいつはぶっちゃけギャンブルみたいなもんさ。 どの宝具が手に入るか、発動しなきゃ俺にも分からねぇ……だが俺も幸運がいいのかなぁ、都合のいいように俺の宝具は奪い動いてくれるのよっ!」
――ウィリアム・フライの宝具『略奪せよ、全ての宝は俺のもの』について、説明しよう。
彼の宝具は云っていた通りの能力だ。しかし本来であれば宝具そのままの力ではなく、劣化しながらもその宝具を利用出来るといった、所謂投影魔術のようなものである。
投影魔術は投影したものは世界の修正により魔力に戻ってしまうが、彼の宝具は戻ることはなく、更には自分の意志で消失させるか相手が消失するまでそれを使い続けることが出来る――何せその宝具は自分の物にしているのだから。
しかし、それがなぜ劣化せずにオリジナルのまま使えるか……解答は言わずもがな『聖杯』による能力向上のお陰である。
更に言えば、聖杯によりウィリアムのスキル『カリスマ』が倍増したことにより、海賊たちの能力も向上しているのだ――彼にとって聖杯様様である。
無論それはウィリアムは知っているのだが、教える義理もないので敢えて言わない。
「ついでに言えば、このメディアリリィもあの船にいた生き残りで俺の仲間にしてやったのよ——ここ限定だけどよ」
それならば、なぜ彼女はウィリアムの元にいてしかも闘っているのか――。
「こいつも俺の宝具の一つになっているんだよ。『俺の海賊共(コムラード)』っていう宝具でだな。最初は俺の聖杯を狙って俺をマスターとしたらしいが、ところがどっこい。とある宝について聞こうと全員で廻しつづけたら壊れて、最後はこいつの意志で宝具の一部になったわけ。まっ、ぶっちゃけキャスターはいらねぇんだけどよ、この女のスキルとか色々使えるから殺さずにいるんだけどよ」
無論、彼女がその一部になるまで過酷すぎる生活を送った。
彼女がウィリアムをマスターにしてから、二十四時間常に彼や海賊たちに見張られ、ある部屋ではお楽しみとして玩具にされ続けた――彼女の未来の姿である裏切りの魔女メディアであったら堪え切れたのだろう。だが、まだ精神的に不安定な少女にとってはその生活は過酷且つ地獄であった。
女としてのものを徹底的に破壊され、快楽や痛みに遂に屈してメディアリリィは壊れてしまった――何も考えることが出来なくなるまで。
「……っ外道すぎる!」
ケラケラと笑いながらも下種めいた発言をするウィリアムに詩奈は毒づいてしまうも、彼は気にすることなく笑い続ける。
『なんだいそれはっ、あまりにも卑怯すぎるだろうっ!? 相手の宝具を奪う宝具? 外部のサーヴァントすら仲間にするだって……そんな馬鹿なことがあるもんか!?』
「ありえないことなんてありえないって奴よ……まっお前さんらがどう言おうがもう関係ないさ。ここでもうおしまいになるんだからよっ!」
愉快気にそして勝利に満ちた笑みを浮かべて、アルトリアの宝具である――エクスカリバーを指揮棒のように回して
突きつける。
「さぁってと! もうこれ以上お喋りする必要はねぇな! 野郎ども、男は皆殺し、女はリリィのように好きなようにしろっ!」
『おおおおおおおおおおおっ!』
ウィリアムの号令に合わせて叫び出す海賊たちに圧され、全員は後ずさってしまう。
万事休す。絶体絶命の雰囲気が漂う中――無情の虎号から爆発音と叫び声が響き渡った。
「せんちょおおおおおおおおお! 6時の方向に敵影船発見ッ!」
それと同時に黄金の鹿号が貫かれる音と共に強い力で勢いよく引っ張られる――状況が理解できない上に不可解なことが一挙に起こっている為に舌打ちをしながらウィリアムは部下である海賊たちに撤退の命令を促した。
「っどうなっていやがるんだいっ!?」
「船長、あれを――!」
ボンベの指さす方向にドレイクはつられるように視線を動かす。
黄金の鹿号を曳航しようと引っ張り上げ、この場から逃げ出そうと走り出している一丁の船。
船は無情の虎号の追撃を許さないと云わんばかりに、強く引っ張っていきこの海域から抜け出そうとしていた――まるで意思を持っているかのように。
その船の旗印は、卍を背にした黒髭がかかれた髑髏マーク……。
「あ……あぁっ!?」
「まさか、そんな……!?」
その旗はアンとメアリーがよく知っている。
何せあの旗印と船長の下で、彼女たちは一緒に戦ってきたのだから――。