誰様、俺様、黒ひげ様じゃい   作:春雷海

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作者的黒髭さん、イメージ人間――BIGBOSS(チェゲプラ)、フィデル・カストロ。

更新が遅かった理由は、激務。以上です。


誰様、俺様、黒ひげ様じゃい8

卍に黒髭髑髏。

 

それは海賊の黄金時代において、カリブ海では最も畏怖すべき海賊団の旗印——黒髭と呼ばれる船長のエドワード・ティーチが率いる海賊団。

 

強くて、勇敢で、信念を持ち、船長に惚れ憧れて共に行く幹部と部下たち。

 

悪名と名声、そして富を手に入れながらも、彼らは危険な海に赴いて旅を続けていた。

 

時に同僚や海軍に襲われ返り討ちにし、また時に奴隷船やあくどい商売船を襲って生計を立てていた。

 

彼らはそんな生活でも笑顔を絶やさず、船の上で生きていった――。

 

だが、海賊たちのその生活は唐突に終わった。

 

船長であるエドワード・ティーチの死によって。

 

そして、それはあらゆる海賊たちの心を圧し折らせ、やがて海賊の黄金期時代を衰退させ終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウィリアム・フライは夢でも見ているのではないかと思っていた。

 

自らの目が腐っていなければ、夢を見ていなければ、あの海賊旗は、船は必死に追い求めていたものだ。

 

「ははっ、はははは」

 

船――アン女王の復讐号と海賊旗を捉えたウィリアムは知らずの内に口から押し殺しきれなかった笑い声をあげるが……やがて高らかな笑い声となって船の甲板に大きく響き渡った。

 

 

「はははは、っはははははははははははははははははは!」

 

 

喜びと笑いが抑えきれなかった。

 

生前に追い求めていた好敵手とその船がその目で捉えることが出来ている。

 

 

死後、サーヴァントになった今でもくすぶっていたこの思いが、ようやく果たせられると思うと心が躍り弾む。

 

 

「ぎゃあははっははははっははははははっははははははっはあはは!」

 

 

高らかだった笑い声は狂ったようなものへと変わり、甲板にいるウィリアムの部下たちは恐れ戦くものの、彼は気にせずに笑い声をあげる。

 

歓喜と狂気が混ざり合ったような笑いは次第に小さくなり、収まると――。

 

「総員、準備しろ――! ようやく見つけた俺たちの獲物を、みすみす逃すんじゃねぇぞ!」

 

部下たちに叫びながら命令を下すと、一瞬だけ唖然とするものの、即座に意識を切り替えて――。

 

『お、おおっ!』

 

雄叫びを上げては部下たちは自らの位置について、船を操作するため、必要な付属具を扱っていく。

 

船はやがて動きだし、追いかけていく。

 

「総員、大砲を放てっ! 絶対に逃がすんじゃねぇぞ!」

 

「イエッサー! 砲撃準備よしっ、はなてぇ!」

 

大砲から砲弾が発射され、狙いは黄金の鹿号とアン女王の復讐号に向けて飛んでいく。

 

しかし、その砲弾は炎と矢によって空中で爆散したり、アン女王の復讐号が左右に操縦されることで砲弾は避けられてしまう。

 

「ちっ! ありったけの砲弾を積みこめっ、アン女王の復讐号に――っ旋回しろぉ!」

 

凄まじい魔力の奔流を感じ取り、やがて遠目からも見えるほどの金色の光が集っているのが確認できた。更には両船から砲弾の雨が飛び交ってきたのだ。

 

砲弾の雨は兎も角、魔力の奔流だけは防がないと確実に全滅してしまうと判断したウィリアムは掴んでいるエクスカリバーの柄を強く握りしめる。

 

この宝具の使い方ならわかる。奪った瞬間に使い方も何もかも頭の中に入ってきたのだ――精霊とか何とか訳分らない単語が入ってくるも、生憎とウィリアムが生前に会ってきたのは幽霊や悪霊のみ。しかし、奪った宝具が何かしらの条件があったとしても、それを無条件に使えるのが、ウィリアムの力だ。

 

だからこそ、ウィリアムがすべきことはただ一つ……このエクスカリバーに魔力を込めて発射させればいい。

 

ウィリアムはエクスカリバーを両手で構え、大きく振りぬいた。

 

「くらいやがれ、『約束された勝利の剣』ァァァッァァァァァ――」

 

放たれたウィリアムのエクスカリバーから光の奔流――薄汚れた金色の奔流が放たれた。

 

薄汚れた金色と純金の奔流がぶつかり合う……奔流同士のぶつかり合いによって生じる凄まじい風圧と波が荒れ狂うことで船は揺れ動く。無情の虎号は二隻の船から大きく離されてしまう。

 

「ぐっ、ま、待ちやがれ、ティーチッ…………ティィィィィィぃィぃチィぃィぃィぃィぃィッッ!」

 

荒れ狂う波によって、凄まじい揺れが襲い掛かると、甲板に立っていられず全員が船の部位に捕まり転がっていくなかで、ウィリアム・フライはエクスカリバーを床に突き刺し耐えていた。

 

遠くなっていくアン女王の復讐号を求めるように手を伸ばすも、無情にも遠く離れていく。

 

——そして、荒れ狂う波が収まるころにはアン女王の復讐号と黄金の鹿号の二隻は姿を消していた。

 

歯軋りが甲板全体に聞こえるのではないかと云わんばかりに響き、そして。

 

「クソッタレがぁああああああああああああああああああああああああああああああっ!」

 

ウィリアム・フライは大声で叫んだ。

 

 

* * * * *

 

 

――ドナドナドナドナ、子牛を載せて、ドナドナドナドナ、荷馬車が揺れる。

 

そんな歌が立香と詩奈の脳裏に流れている。

 

先程までウィリアム・フライによって全滅しかけたと思いきや、今度は一隻の船によって黄金の鹿号が何処かに連れて行かれようとしている。

 

現状の状況から考えるとその歌が流れてくるのはしょうもないことだが……。

 

「いやぁ、とりあえずは助かったねぇ……正直腹が煮えくり返りそうになるけど、とりあえず今は救出してくれた相手との交渉だ」

 

「交渉、ですか?」

 

「なんだい、マシュ。 まさか相手の船が無償で助けてくれたと思っているのかい? そんなわけないだろう、大方恩を売って何かを交渉するためにやってくれたのさ……さていったいどんなもんを」

 

頭を悩ませてブツブツと呟いて考えをまとめていくドレイクに、これ以上突っ込めないマシュ。

 

『…………』

 

アンとメアリーは期待と不安に満ちた目で船を見つめている。落ち着きにもかけ、メアリーはソワソワし、いつもならメアリーを制止するアンも足が揺れ動かしている。

 

脳裏に浮かんでいたドナドナ曲より奪局した立香と詩奈、そんな二人の様子を今更ながら気づいて声をかけようとするも。

 

「マスターたち。今は、あの二人をそっとしてあげてください」

 

「あっ、ハサン先生」

 

「今、お二方はあの船に執着している様子。とてもではありませんが、マスターたちの会話に応じる余裕もありませんでしょう」

 

「当事者にしかわからない、何かを抱えているようだしな。 それよりもセイバーを慰めてやってくれ、宝具をコピーされて拗ねてるからよ」

 

「誰が拗ねていますか、クーフーリンッ!? いえ、それよりもそんな簡単なものじゃないでしょう……ドレイクの交渉も大事ですが、次いでウィリアム・フライの対策を如何にするかが問題です」

 

アルトリアの言葉に尤もだと云わんばかりに立香と詩奈は頷いた。

 

――海賊ウィリアム・フライは規格外すぎる。自らの宝具だけでなく、サーヴァントの宝具を奪うだけでなく使いこなせるとは……現にアルトリアの『エクスカリバー』の奔流も放つことが出来た。

 

厄介な相手だと思う、そしてそんな相手にどう対処すべきなのかと二人が悩み始めた時――。

 

「おっと、考え事は一旦置いておきな。 そろそろ島に上陸するよ……さてあの船から鬼が出るか蛇が出るかどっちなのかねえ」

 

「もしかしたら幽霊かもしれませんぜっ、せん――ぴぎゃあああああっ!?」

 

「悪いね、手が滑った」

 

ボンベのからかいに、軽い恐怖と苛立ちを覚えたドレイクは言葉とは裏腹に的確な射程距離で且つ躊躇いもなしに、ボンベの足元に銃弾を撃ち込んだ。

 

* * * * *

 

島に上陸した二隻の船。

 

一隻は黄金の鹿号。そこからドレイク、そして立香と詩奈に二人を護るように周囲を固まるサーヴァントたちと、浮足立つようにアンとメアリーが前に出る。

 

もう一隻の船――アン女王の復讐号から人が降りてくる。

見上げるほどの巨躯と全身に刻まれた傷跡を持つ大男、麗しさと美しさを兼ね備えた少女、槍を持つ中年男性、そして最後の一人が下りてきた。

 

それは、男だった。黒髪を伸ばしきり、フルフェイスという特徴的な黒いひげを蓄えていた。両肩にはエポーレットを羽織り、その下には適当なシャツと動きやすさを重視したズボンを着用し、腰元には黒いカットラスとサーベルに一丁の銃を差し込んでいた。

 

――その男を、見た瞬間にアンとメアリーは走り出していた。

 

「よぉ、危な――うをおおおおおおおおっ!?」

 

そして勢い良く飛びついては抱きついた。

 

男はアンとメアリーを受け止めきれずに砂浜を転がり、全身砂まみれとなってようやく転がりが止まった。

 

「ぐっ、て、てめぇら……なに、しやがるっ」

 

「うるさいっ…………うるさいっうるさいっうるさいっうるさいっ! 文句何て言うなっバカ! 僕たちがっ、どれだけ会いたかったとっ、思ってたんだよぉっ!」

 

「あぁもうっ、貴方って人はほんとズルいですわっ……こんな風な再会をしてくれるだなんてっ、我慢できるわけないでしょうっ!?」

 

アンとメアリーは瞳からこぼれてくる涙を抑えきれず、男の胸元に顔を押し付ける。

 

男――エドワード・ティーチは頭を掻きながら、泣きじゃくる二人の頭を撫でて一言。

 

 

 

 

 

 

 

「とりあえず、こう言っておいた方が良いか…………ただいま、アン、メアリー」

 

 

 

 

 

「俺の誇りは……大事に持っておいてくれたか?」

 

 

 

 

 

その言葉にアンとメアリーは泣きながら微笑んだ。

 

 

 

 

 

『もちろん、船長』

 

 

 

 

今ここに、一つの再会を果たしたが、まだアンとメアリーは知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

再び、黒髭ことエドワード・ティーチとの別れが来るなんて――。

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