誰様、俺様、黒ひげ様じゃい   作:春雷海

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すまねぇ、ほんとうにすまねぇ。

一か月間も待たせて……これも全て業務による度重なる出勤とオリジナル小説作成(没作品をリメイクしたり、新しいのを書いた地)やジオウの二次創作作成とゲームの所為なんだ。

許してくだせぇ。


誰様、俺様、黒ひげ様じゃい9

この海に来てから目を見張る島や化け物どもを倒したり、宝を見つけるもんで、大抵な事には驚きはしないが……それでもうやっぱ驚くところは驚く。

 

その一つとして珍客との出会いと共に新しい仲間が増えたこと。

 

もう一つ懐かしい仲間との再会、そして……対立している彼奴を見ることになるとはな。

 

 

* * * * *

 

 

まずは珍客というか新しい仲間との出会い――ヘクトールについて語ろう。

 

アン女王の復讐号がなにかにぶつかったので確認すると、小船に乗船していた中年の槍を持ったおっさんが膝をついて消えかけているのを発見した。

 

何故に消えかけているのか不思議でしょうがなかったが、とりあえず介錯はしてやろうと思い、銃を構えた瞬間におっさんが叫んだ。

 

「あ、あのぉ、船長さん? おじさんと契約してくんない?」

 

「はぁ?」

 

何をほざいているのか分からなかった為、銃と剣を使って事情聴取。

 

物騒でやりすぎだと思ったが、このおっさんは只もんじゃない。立ち振る舞いからして油断したらこっちがやられちまうと判断してのことだ。

 

どうやらおっさん――ヘクトールとやらはサーヴァントとかいう英霊で魔力を提供してもらえなきゃ消滅するらしい。

 

「因みに私とアステリオスもサーヴァントよ」

 

「えっ、マジで? 初耳なんだけど」

 

「うっ、だまっ、てて、ごめんね。ティーチ」

 

「いや別にいいんだけどよ……はぁぁ、俺はいつの間にか英霊をも部下にしちまったのかよ」

 

「いやいや、何言ってんの船長さん。 あんたも――あぁはいはい分かったよ、おじさん何も言わないよ」

 

ヘクトールはなんか知らんが勝手に納得しているようだが、取り合わないでおく。

 

しっかし、契約ねぇ……。ぶっちゃけ裏切られる可能性が高いし、このヘクトールとやらが何者なのか分からん以上したくないんだが。

 

「おじさん、こう見えても戦うことが出来るよ。 まぁ闘うってよりも護る方が得意なんだけど……見る限り船長さんの戦力は手薄じゃない? おじさんだったらその手薄さを埋められると思うよ」

 

「……」

 

ヘクトールの言葉は的を得ている。

 

アステリオスはよく働いてくれている――エウリュアレは時たま手伝うだけで大抵アステリオスに甘えている――がそれでも人手が足りない時もある。

 

だが、だからと云ってヘクトールを雇うのもリスクが大きい――エウリュアレを狙う一人かもしれないし、こいつもアステリオスたちと同じ英霊というなら俺の船を簡単に制圧できるだろう。そして、何より正体不明の奴を俺の船に乗せるわけにもいかん。

 

戦力埋められんのはつらいが、消えるんだったらそのまま消えてもらおうと銃口をヘクトールに向け、撃鉄を引くと。

 

「あぁ! そうだそうだ、おじさんはね、ここら辺の海を知っているよっ!? とある目的の為に周辺の島を漂着したし、ある程度の海周辺を理解してるっ。 船長さんにとってこの情報をかなり重要じゃないっ?」

 

……まぁ確かに。海図は持っているわけもないし、流石にコンパスで方角を算出と推定し続けるのも限界か。

 

この海にある島周辺による特徴的なものも何も知らない以上、コンパスで進むのにも少々厳しいところもあったわけだし、ここはひとつ口車に乗せられてやるとするか。

 

銃をしまい込みながらため息をついて答える俺。

 

「いいだろう。ヘクトール、お前の乗船を認める」

 

「おっ、そいつは嬉しいねぇ。 おじさん、頑張って働かせてもらうよ――ってなわけで、契約を早くしてくれない?」

 

「……おい、やり方を知ってる奴いるか?」

 

そうは言われても、そんなやり方は知らないので聞くも、二人は首を振って答えた。

 

「うっ、しらないよ?」

 

「私が知るわけないじゃない」

 

残念な返答だった。もちろん、俺がそんな契約のやり方なんて知るわけがないので。

 

「…………短い付き合いだったな、ヘクトール。 やっぱ介錯は必要だな」

 

そう笑顔で再びヘクトールに銃口を向けた。

 

「ちょっ――諦め速すぎない!? いや大丈夫っ、再契約の仕方はおじさん知ってるからっ問題ないからっ! お願いだから銃を仕舞って頂戴!?」

 

軽い冗談だったはずなのに、ヘクトールは汗と涙を一遍に出しながら慌てて俺の足にしがみついてきた。

 

……そういや俺の冗談は分かりづらいって彼奴らにもうよく言われてたわ――冗談と態度が相まっていないとか。

 

取りあえず涙目と吃逆を上げながらも中年おっさんが教えてくれるその言葉を、俺は何とか覚えた。

 

「さてっ、早速且つ急いでやろう! おじさん、マジで消えそうだからっ!」

 

というか呪文ってこんな長いの? もうちょい軽くていいんじゃない?

 

一言で「俺と契約しようよ!」じゃダメなのか……?

 

「ちょいと船長っ!? 早く呪文を紡いでってばっ!」

 

必死めいたヘクトールの叫びを聞いた俺は、ため息をつく。まぁ文句をブチブチ云ってもしょうがない、長ったらしい呪文を、噛まないようにしていくか。

 

「―――告げる! 汝の身は我の下に、我が命運は汝の槍に! 聖杯のよるべに従い、この意、この理に従うのなら―――我に従え! ならばこの命運、汝が槍に預けよう……!」

 

俺の言葉を継ぐようにヘクトールは叫んだ。

 

「ランサーの名に懸け誓いを受ける……! あんたを我が主として認めよう、エドワード・ティーチ―――!」

 

凄まじい光と共に俺の右手が熱く感じる、銃口による火花で手に負った火傷よりもそれ以上の熱を感じた。

 

しかし、それは一瞬のみで、光と共に熱は冷めていく――光が収まると見えてきたのは右手に変な赤い痣が確認できた。

 

「ほいっと、それで完了。これからおじさんはあんたの槍として働かせてもらうからよろしくねぇ」

 

……何とも軽い言葉で言ってくれるなこいつは、しかしありがたく早速働いてもらう。

 

「そんじゃ今から海図をある程度でいいから創るからよ。ヘクトール、早速仕事だ、お前の見た島や風景及びに風の向きを思い出せ――」

 

「えっ!? おじさん、少し休みたいんだけど……」

 

「それは海図がある程度出来上がったら。 いやぁこれからは少し航海が楽になるな、お前さんが見た島々と風の方向——んでもって水路に緯度・経度について教えてくれ」

 

「いやいやいやっ!? そこまで詳しくは分からないってっ、おじさんは素人なんだよ!? それに海を渡れたのは、元マスターが指示してくれたのもあって……」

 

「だったら島の特徴と風の方向だけでもいい。それを基準にしてコンパスで示していけばいずれは到着するさ」

 

「ちょっとこの人話を聞いてくれないっ!?」

 

騒ぎ立つヘクトールの首根っこを掴んで、俺は船長室に連れて行った。

 

 

 

 

 

 

ヘクトールからこの海域について聞きだしてから一晩経った――奴は優秀だ。

 

お陰でこの海に存在している島がいくつかあることが分かり、更には嵐が常に巻き起こる海域や潮目の海も存在していることも分かった。

 

彼奴曰く「いやぁ、全部おじさんが体験したものばかりだからねぇ……え? この島には翼竜がいるんだけど大丈夫?」とのこと。

 

寧ろ万々歳だ、翼竜か……お宝ある所にはドラゴンありきと聞くからな。

 

さてっ、それじゃあ翼竜が住む島に向けて出発するか――。

 

「よっしゃっ、翼竜の住む島に向けて出発! 宝と新しい仲間を迎え入れた宴をするためにな!」

 

「うっ、しゅっぱぁつ!」

 

「……あの船長、おじさんは休憩したいんだけど――まるまる一晩付き合わされたんだからさ」

 

「そんなことどうでもいいから、アステリオスと私の代わりにさっさと動きなさい」

 

「女神さま酷くない? ねぇ船長、おじさんはもう休んでも……」

 

「俺だってピンピンしてんだから、英霊様も頑張れや」

 

ヘクトールの弱気発言をバッサリと切り捨て、俺はアン女王の復讐号の舵と海図を取りながら進めて行った。

 

 

 

* * * * *

 

 

 

そして、これが懐かしい仲間との再会と奴の発見となる話だ。

 

アン女王の復讐号を舵を取ってから早数日……ここの海に来てから初めての船を二隻も見つけた。

 

直ぐに望遠鏡を取り出しては二隻を確認する。

見えたのは見知らぬ船とこれまた懐かしい上に何度も殺し合っての対立したウィリアム君の船じゃないの――うん? 見知らぬ船にいるのって……アンとメアリーかっ!? しかもあの船には女と子供が結構いるじゃねぇか!?

 

女子供関係なく相変わらずあいつは支配したがってんのかっ、あの野郎は!?

 

「おぉ、おぉ……やっているねぇ、どうするの船長さん?」

 

「助ける……あそこには俺のクルーが、そして子供が乗っているんだ。 あいつに捕まったら最後死ぬまでこき使われるからよ、流石に目覚めが悪い」

 

俺はヘクトールに応えながら、アステリオスと共に大砲に砲弾と予備用アンカーを詰め込ませていく。砲弾は勿論ウィリアムの船に、アンカーはアンとメアリーが乗っている船を曳航させるために。

 

大砲の照準を船に向け、後はタイミングよく発射をさせるだけだ……ウィリアムが油断したその時がチャンスだ。

 

望遠鏡のレンズに映る奴の顔と身体を見つめる――不愉快且つ勝利に満ちた笑みを浮かべた瞬間を見逃さなかった。

 

「アステリオスッ、ヘクトール!」

 

俺の宣言と共に火が焚かれると同時に大砲が噴いた……砲弾は無事に直撃して、アンカーも無事に食い込んだ。

両方とも凄まじい激音だったために、両者ともに驚愕しているのを機会と捉えて叫んだ。

 

「よっしゃ、それじゃあ引き上げるぞっ――目的とした島に向けて進めぇ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ティーチ、ティーチィ……ッ」

 

そして、到着した島の浜辺にて俺はアンとメアリーに抱きつかれて転がりまくっての今に至るというわけだ。

 

お陰で砂まみれだ全く……こいつらはそんなに俺が恋しかったのか? まぁ、確かに死んだ俺がこうやって現れちまったんだから、そりゃしょうがねぇか。

 

だけど、何時までもこのままってわけにはいかねぇ。

 

「さて、お前らよ、何時までもこうするわけにはいかねぇだろ……あの嘗め腐ったウィリアムをぶっ倒すんだ。いい加減に切り替えて作戦を立てるぞ」

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