SIREN in Bloodborne   作:猫屍人

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赤い水

それは血であって血にあらず。
人の血の代わりに流れる、あの世に揺らめく海の水。

死した人間を決して死ねなくする矛盾を孕んだこの水は、
摂取した人間を異形の姿へと変えていく。

しかし、それは人の感性でいう異形である。
あらゆる生命が入り混じった姿は、やがて世界との一体化を示唆している。

命は、世界に還るべきなのだろうか。


白痴

 なみなみと洞窟内に満たされた、底の見えぬ水面。恭也が見上げてみれば、いくつか空いた天井の穴から月光が降り注いでいる。そのおかげか、視界の確保は可能だった。しかし問題はそれではない。

 水面から跳ねるワームのような生物、そしてそれらを意にも介さず、腰を曲げて歩く焼け爛れた皮膚を持った巨人たち。ねじ曲がった茎を持つ白い花が咲き誇る神秘的な光景も、底に住まう者共によって悪質な空間へと早変わりと言った具合である。

 

 そんな中、彼がピチャリと踏み出した一歩。靴から染み出してきた足元の液体はたやすく彼の肉体を蝕み、鋭い痛みを与えてくる。それどころか、息を吸う度に内蔵が重く、痛みを放つ。これは、毒。それも酷い中毒症状であると気づいたときには、恭也は咳き込み喀血する事態に陥っていた。

 

 水銀の洞窟湖、といったところか。重くけだるい体を支えながら、その不死身と成り果てた体が傷つけられ、修復される繰り返しが更に彼の身を襲う。およそ自然現象では理解でき得ぬエネルギーのぶつかり合いから生じた灼熱にすら焼かれつつも、ここは何をするべき場所でもないと判断した恭也は、心配げに見つめているのであろう美耶子に語りかけた。

 

「美耶子、とにかく赤い流れってやつを見ててくれ。俺もそれを追いながら駆け抜けるから」

 

 口元から垂れる血を腕で拭い、息を止めた恭也は美耶子の視界を半分だけジャックする。無言でうなずいた美耶子はしっかりと役割を果たしてくれているのであろう。右半分の彼女の視界は、彼女のみが視認できる赤く禍々しい血の意志とやらを映し出している。

 その奔流の出処である、松明に照らされた出口までもを。

 

 たどり着くべき場所が見えたなら、あとは駆け抜けるのみ。武器は左手に握りしめた宇理炎のみ。走るとき重心の邪魔になる焔薙は背中に収め、彼は鋭い一歩を踏み出した。

 

 すると、彼の存在に気づいた巨人や、醜悪な見た目をしたワーム共が水銀の毒をものともせずに一直線に恭也へと襲いかかってくる。巨人が振り下ろした手が水銀の水面を地面までかち割り、その衝撃を利用して飛び出てくるのは巨大なワーム共。カチカチと人のサイズにまで達したことで、肉をバターのように切り裂いてくる大アゴを振りかざす異形は、羽生蛇村にもいたのっぺりとした水死体を思わせる生理的嫌悪を抱かせる。

 だが一度足を取られれば、如何な不死なる恭也とて質量に巻き込まれ生き地獄を延々と味わうのみ。分かっているからこそ、彼に容赦は何一つ存在しなかった。駆け抜ける腕の振りと同時に宇理炎が輝き、襲い来るワーム共を塵すら残さぬ横薙ぎの煉獄の炎で消し去った。襲い来る巨人共は、虚空から降り注ぐ鉄の火にて背中を焼かれ、やがて全身を焼き尽くされてのたうち回るままに灰燼と化した。

 これらの攻撃は、しかし、恭也にとっても諸刃の剣。熱され幾ばくかが蒸発した水銀の水面は、彼の呼吸器官を侵す猛毒となって心身を攻撃する。渡りきってもそのうち死に至り、渡りきろうとする前にこの番人のようなモンスター共に押しつぶされる。地獄のような秘密の扉は、この先に一体何を隠しているというのか。

 

「っ……オェッ…ごほっ」

 

 結核患者ですら吐かないような大量の血は、水銀以外にも過剰な毒素が彼の身を蝕んだ証ともいえよう。されど、吐き捨てたそれを最後に、彼はようやく対岸の松明に照らされた岩場へとたどり着くことが出来た。

 転がるように急ぎ飛び込んだ彼は、落ち着くための深い呼吸をしたのだが、それがまた酷い嘔吐感をもたらした。これまで以上に鼻をつく死臭だ。ひどい吐き気に見舞われる。だが、ソレにかまっていれば後ろより迫り来る脅威に対応できぬ。故に、急ぎ煉獄の炎で蓋代わりの壁を作ると、最後の機会を伺って恭也に向かって飛び込んだワームが、哀れにも焼き尽くされる音が虚しく鳴り響いた。

 

 炎が空気を熱し、死臭は更に高まった。浄化の炎ですらも祓いきれぬ、あまりにも異様で濃い匂いに疑問を掲げた恭也。その場を見上げると、今度こそ彼は絶句する。

 

「……なんだよこれ」

 

 死体、死体、死体。どこに目をそらしても人間の死体が目についた。

 腐った死体に白骨化した死体、冷たい血を流す肉のついた死体やミイラになったような死体。目につくモノはおぞましい人の死ばかり也。生の息吹は欠片たりとも感じられぬ、あまりにも冒涜的な光景。救われるとするならば、ここの死体はもう羽生蛇村のアレと違って動き出すことがないことだろうか。いや、誰にも知られぬ洞窟の底で死んでいる時点で、救いなど無いのだろうが。

 

 恭也は、幸か不幸か己の中の啓蒙が働くのを感じた。死体から漂う何者かの純粋な狂気が満ちているのを。美耶子すらも絶句するのか誰も言葉を発さぬ中、その知識はまっすぐに、上へと示す警鐘を彼の中で打ち鳴らしている。

 なんとも言えぬ中、恭也はようやく己を取り戻し美耶子の視界を間借りしようとするが、対する彼女は立ち直れていないのだろう。借りた視界は真っ暗で、彼女がうずくまっているのか、それとも単純に目を伏せているのか暗闇しか映さない。

 

 だが、己の脳に根付いた啓蒙は導いている。ひたすらに、上であるのだと。

 

「啓蒙、啓蒙…なんなんだよこれ」

 

 恭也は、ここではじめて頭の中をナメクジが這い回っているような、おぞましい気配を感じた。己自身の感じたことであるのに、己とは全く別のものが頭に入り込んでくる異物感である。そう気づいた瞬間、彼は頭に居座る何者かを捉えるように右手を伸ばし、がしりと、頭の外側で実体を知れぬ何かを掴んだ。

 ぬるりと、ひんやりとしながら発光するそれは、まさしくナメクジのようにぬれそぼっている。

 

「………」

 

 掴んだ感覚はあれど、恭也は手元にあるはずのソレを視認できていない。

 そして苛立ちと、こんなものが頭を這い回っていたという嫌悪感から、その実態のないぬめりを握りつぶした。

 

 頭の中がクリアになっていく。啓蒙、と感じられていた啓示のような知識がようやく彼の頭の中で実を結び、己自身で引き出せる確かなものとなっていくのを感じる。ずっと、ずっと、感覚的なものでしか無いが、ようやく己自身を取り戻せたような爽快感が恭也の中をおぞましく駆け巡る。

 歓喜とも思えるような寒気が、鳥肌となって恭也の体に降りてきた。

 

「クソっ」

 

 されど、彼がそれを喜ぶことはない。今己のしたことをすぐさま振り払って、彼は死体が積み重なる縦穴に伸びた、一本のハシゴに手をかけた。

 

「……恭也?」

「もうちょっと目、閉じててくれ」

「うん」

 

 濃厚な死血。その源流は僅かではあるが太くなっている。今の恭也は、先程まで美耶子にしか見えていなかったその流れがはっきりと見えていた。もはや原因など言うまでもないが、見えたこと以上に彼は抑えられぬほどの怒りを内包していた。

 こんなものが人の所業であるというのならば、こんなものが。

 嫌悪と憎悪をむき出しにしたのはいつ以来であろうか。いや、美耶子と出会う前ですら、このような強い感情を抱いた事はないだろう。彼はそうした強い思いを抱えながら一段一段、握りしめたハシゴを軋ませながらも、ようやく月光の見下ろす事ができる地上へと到達する。

 

 墓穴の悪用。登りきった恭也が抱いた第一印象であった。同時に思い起こすのは、この焔薙に宿る木ル伝が開放されるための手順。墓とは、暴かれるためのものではないというのに。

 

「ここって、市街地か?」

 

 そして墓穴の辺りから少し移動すれば、人の立ち入りを制限する大きな柵、それに連動するであろうレバーを引き、柵の扉から歩いた向こう側には見覚えのある大橋が見えている。ここは、またヤーナム市街の中でもアヴァの自宅があった住宅地に戻ってきたのだろうか。

 アヴァと出会った場所からは見えづらかったが、今、自分の背中にあるひときわ大きな建物は、おそらく何かの施設なんだろう。そして、墓穴側からしか行けない通路に、死血の流れがますます太くなって流れているのが見て取れた。まるで、導くように。

 

 何が導いたのだろう。そんな疑問もあるが、義憤に駆られた恭也は焔薙を抜き、臨戦態勢にて奔流が指し示す細道へと向かっていく。細く心配そうな美耶子の息遣いが彼の耳を撫でるが、恭也の形相に何も言えずにいるのか、美耶子が何かをいう気配も無かった。

 仁王のごとき佇まいの彼が進む内、びちょ、びちょ、と静かで寂れた土地には似つかわしくない奇妙な音が響いてきた。動物が嘔吐したときの喉の音にも似たそれを響かせるそれは、人のシルエットをしながらにして、似ても似つかぬモンスター。獣と呼ぶにはあまりに異形の怪物である。

 

 いきなりの登場に面食らった恭也であるが、幸いにもその謎の生物にまだ気づかれては居ない。そしてその生物の近くには、ぬめりを帯びた体液を頭に付着させた死体が、月の光にて照らされている。

 

「あれも殺さないとダメなやつか」

 

 もう、この異界においてはマトモな思考の人間以外は全員殺すべきなのかも知れない。今までの異界で人を殺したこともあるといえばあるのだが、ここまで規模が大きく、厄介な異界もはじめてである。何より狂気に満ちたこの世界は、恭也の性格を多少すり減らすだけの事態があまりにも多かった。

 

 覚悟を決め、彼は無音で切りかかった。だが、恭也は柔らかそうな海産物に似た見た目に反し、思ったよりも深く切りつけられなかった感触を受ける。対し、攻撃を受けたその奇怪なモンスターは、手元で光を生み出したかと思えばそれを恭也へと投げつけてきた。

 

 当然、怪しい攻撃にむざむざ当たりに行ってやる道理もない。恭也は身をひねることでその光を避けると、今度は焔薙に蒼炎を灯して怪物の脳天へと突き入れた。扱い慣れた得物は彼の狙い通りにモンスターの頭部を貫くと、まとっていた蒼炎にて浄化の炎上を引き起こす。

 彼はその勢いのまま、トドメと言わんばかりに股下へと刃を振り下ろし、二枚に降ろされた怪物はブチブチと汚らしい白い液体を撒き散らしながら灰燼へと還されていった。

 

「……なんなんだよこの建物」

 

 正面から入るという選択肢は、この時点で消え去った。そんな彼を導くように、視界の死血が流れを変えてランタンの明かりが照らす短いハシゴの元へと彼を導く。この死血と啓蒙が導き出した赤い流れは、一体なんであろうというのか。恭也に何をさせたいのか。

 ここに来て、意思を持ったような動きを見せている死血の奔流に、美耶子共々、警戒を抱かずにはいられない。とはいえ、ここまで来て引き返すという選択肢も、彼らにはもはや無いのだが。

 

 タン、タン、とリズミカルに登った彼は、屋根を抜けた先で大きく穴の空いた建物の中へと侵入することに成功する。立地的に、単なる入り口から入って階段を登った辺りになるだろうか。先も見えぬ真っ暗な渡り廊下は、伽藍堂で静かなものであった。

 

 キシ、キシ、と踏みしめる度に老朽化した木材が悲鳴をあげる。誰かがいるならば、もうとっくに自分の存在などバレているだろうか。少しばかりの不安がよぎったが、今更であろう、という開き直った思いも彼の中には渦巻いている。

 入り口とは反対側に伸びる死血の奔流は、やがて階段のある開けた部屋でぐるぐると上に向かって渦巻いているようであった。

 

 ここが、終着点なのであろうか。

 恭也が美耶子に話しかけようとしたその瞬間であった。

 

「あら、穢らわしい気配ね。あなた、どうやって潜り込んだのかしら」

 

 部屋の上から、声が投げかけられる。声は、どうにも反響していて位置を悟らせないが、声色から女性のものであるということは分かる。同時に、ひどく何か計り知れない意思が渦巻いているという印象をすら受けた。

 

「あんたは?」

「私はヨセフカ。この診療所の医療者よ。そう、獣でない人の治療をできるといえば、どうかしらね」

 

 嘘か真か、どのみち、死血という赤い何かが導いた先にいた人間だ。言葉の真偽はどうあれ、ろくな人物ではないことだけは確かだった。

 

「あなた、本当に不思議な穢れを纏っているのね。傍に悍ましい神秘のうねりを感じるわ。そう、血族ともまた違う……人為的な淀みの塊……ああ、魅力的だわ」

 

 ほぅ、と艷やかな吐息を織り交ぜるヨセフカと名乗った女の声は、未だ一言も発していない美耶子の存在に気づいているのだろう。この時点で恭也が焔薙を握る力は強まったのだが、その覇気をも感じ取ったのか、恭也の反応に被せるように言葉が投げかけられた。

 

「でもね、もうそんなモノには興味がないの。私はついにたどり着きそうなのよ。ねぇ、あなた。今すぐ引き返しなさい。治験の甲斐もなさそうだし、あなたはここで得るものもない。そうでしょう? 狩人でも、獣でもないあなたは要らないの。だからね、扉を開けて行ってもいいわ。ただ、私の邪魔をしないで欲しい」

「結局さ、お前もおかしいやつだってことかよ」

「おかしいのはあなた達ではなくて? よそ者さん」

 

 あまりにも一方的に投げかけられる言葉は、会話にすらならない支離滅裂なものだった。まるでここに訪れるものは、全て自分の治験とやらの材料であるかのような見下し方。かかわらないに越したことはない、というのは本人が言ったとおりなのだろう。

 だが、この場所に一人の人間も居ないということと、あの赤い死血の奔流が指し示した場所という状況。これらが、恭也と美耶子の二人に悪い印象を抱かせる。

 

 かといって、狂人であるからと殺しに行くほどの理由もないのが確かだった。

 オドン教会の避難者たちには、絶対に近づかないようにしたほうが良いと伝える情報を手にしただけでも良しとしようか。

 

 煮えきれぬ気持ちのまま、恭也は無言でもと来た道を引き返し、ついでにこの建物の構造を把握するため、ヨセフカ女医が言ったように入口の扉を開け放って出ていこうと、寂れた廊下を歩いていった。

 扉を開け、何やら異星人のような死体が転がる部屋に足を踏み入れる。異星人に似た怪物の近くには、何やら誂えられた血の入った試験管が転がっていた。

 

「……血?」

「狩人は青ざめた血ってのを探してるって言ってたし、持っていって見れば良いんじゃないか?」

「あー、そうだっけか。わかったけどさ、割れそうで怖いな」

 

 美耶子の助言に従って試験管をズボンのベルトの輪に通して引っ掛けた彼は、振り返った先の診療台になにやら手紙が落ちているのを見つける。封は開けられており、鈍ったアルファベットで書かれている以上読むことは出来なかったが、彼はその内、片方の封筒に妙な引っ掛かりを感じて手にとった。

 すると、

 

「……え?」

 

 to,Kyoya Suda.

 英語に疎いとはいえ、その意味が分からない恭也ではない。

 

 自分宛ての手紙だ。こんな異界の、訪れたことのない診療所に。

 

「もう一通は……ダメだ、誰の名前かわからないな」

 

 衝撃を誤魔化すようにもう一通の手紙を調べてみるが、同じく開封済みで、内容の文章が同じだということ以外に判明することはなかった。見慣れない名前ではあるが、もしかしたらオドン教会の誰かが知っているかも知れないという期待を込め、彼はその手紙も丁寧に折りたたんでポケットへと突っ込んだ。

 

 これ以上探るものもない。あってたまるか、という思いのまま扉を乱暴に開け放った恭也は、もと来た毒沼を好き好んで通る理由もなし、ひとまずはオドン教会に戻るため市街地の方へと歩みを進めることにしたようである。

 

 

 

 キィ、と誰もおらぬ扉がひとりでに閉まる。

 ヨセフカの診療所は、再び、哀れな患者を待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 長杖が、湖の先へと指し示された。

 得体のしれぬものを生やした、かつての叡智を誇ったであろう人間の成れの果ては、ひっそりと桟橋のたもとで安楽椅子を揺らし続けるだけの存在に戻った。アレが、彼の得たかったものなのだろうか。だとすれば、傍から見ればなんと呆気のない終わりであることか。

 

 血塗れのノコギリ鉈を握りしめ、狩人は何度目になるやも分からぬ目眩を覚える。もはや、かつて知の探求として知られたビルゲンワースも、人の言語を無くした怪物や、人の道理を忘れたかつての学徒が襲い来る、最果ての寂れただけの土地へと成り下がっている。だが、確かに藁をも掴むようなヒントは幾つも書き殴られていた。

 

 

 赤い月が近づくとき、人の境は曖昧となり

 偉大なる上位者が現れる。そして我ら赤子を抱かん。

 

 あらゆる儀式を蜘蛛が隠す。露わにする事なかれ

 啓蒙的真実は、誰に理解される必要もないものだ。

 

 

 以前、アデーラを発見した隠し街にて地面に掘られていた殴り書きと照らし合わせると、この月が照らす景色は、おそらく偽物であるということが啓蒙から齎されている。そして、かつて頭蓋に触れたことで知った、この半植物となったウィレームという人物が指し示す先。偽りの月を破った先。すなわち、水面に映る月を通った先にこそ、真実へとつながる道があるのだろう。

 

 嗚呼、ひどく突飛な発想だ。そのまま水に落ちてしまえば、哀れにも装備の重さで沈むばかりであろうというのに、脳に囁き蠢く啓蒙的な発想が、間違いではないと根拠のない真実味を帯びた後押しをしてくるではないか。

 

「……狂ってしまったというのならば、そうであるのだろうな」

 

 さて、己は本当にこのような物静かな青年であったのだろうか。血の医療より以前を思い出せぬ身としては、もはや追い求める真実とやらが、己の過去に結びついた試しがない故どうにもやる気が出ない。

 さりとて、進む以外の道はなし。後に退く道もなし。酷いものじゃあないか。

 

 飛び込んだ先には、やはり水などあるわけもなく、代わりに常識を置き去りにした純白にして息の詰まる澱んだ空間が待っていた。視界の先にて佇むは、秘匿の主であるのか、白く歪な蜘蛛のような多脚の何か。

 

「虫も、獣も、ウンザリだ」

 

 ならば殺そう。秘匿を破ろう。

 己が狩人であるというのなら、害為す糞どもを狩り殺せば良いんだろう。

 

 それしか、無いのだから。




申し訳が立たないのであえて座ります。

つまり土下座。申し訳ない。

魔女の一撃が襲ってきたんだ。ヘルニアもくっついてな…
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