SIREN in Bloodborne   作:猫屍人

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未使用音声

人の想像を掻き立てる、あったかもしれない可能性
それでいて、間違いなく用意されていた選択肢

多くを語らず散りばめられた世界は好奇心を掻き立てる
少しでも多く、あともうひとつと
むず痒い腫れを掻かずにいられる者は多くはない


人は人である限り
秘匿を暴かずにはいられないのだ


扁桃

「お、お帰り。無事だったんだな」

「赤い人、みんなも、無事で本当に良かった」

 

 これが宇理炎の炎ではなくてよかった。というつぶやきは心に仕舞いながらも、恭也は赤衣の盲人にハイタッチするように挨拶し、心の底から息を吐き出すように座り込んだ。

 蒼炎に包まれるオドン教会。恭也が辿り着いた頃には、狩人が掴んだ情報はすでに全員に行き渡っており、一体何が作用したのかは不明ながらも完全に正気を取り戻した住民たちによる意見交換も済んだ頃であった。

 そうして恭也に狩人への伝言として渡されたのは、「メンシス学派という檻を頭に被った狂人集団がいる。そいつらが怪しい」という情報。その出処は意外なことにも、未だに恭也を訝しげな表情で眺めている老婆からもたらされたものであった。

 最後に見たときの衰弱した様子はもはやどこにも見られず、目を吊り上げて近寄るものを遠ざける苛烈な雰囲気は元気そのもの。彼女に向かって、恭也は礼を告げる。

 

「ありがとう、おばあさん」

「はんっ!こっちみて喋るんじゃないよ!!あんたも穢らわしい余所者さね。唾でも飛ばしてみな、呪ってやる!」

 

 しかし正気も体力を取り戻したということは、余所者に対して嫌悪感や罵詈雑言を放つ口までもが蘇ったということ。こればかりは、恭也という顔の作りさえ違うあからさまな外来人では如何ともし難い問題であった。だがそんな言葉を許さない存在が彼には付いている。

 神代美耶子。彼女もまた老婆のように激昂していた。

 

「おい、なんなんだこの婆。誰のおかげでここが安全なのか、その余所者の使ってる炎が守ってるのかわかってないんじゃないの?」

「美耶子」

「でもっ!おまえがバカにされてるのなんてもう」

 

 老婆には見えないよう、首を横に振る恭也を見て彼女は口を閉ざした。

 全ては詮無きことだ。化け物を殺せる相手は新しい化け物でしか無い、と。そんな扱いをされたことも数少なくはない。むしろ、疲弊したところを問答無用で刺しに来ないだけこれまでの異界の輩に比べればマシだった。

 椅子に座り直し、鼻を鳴らして恭也から視線を外した老婆を一瞥し、恭也は懐から例の手紙をニ通取り出した。

 

「アリアンナさん、アデーラさんも。、今度こそ狩人さんを追いかける前にこれ読んでみてくれないかな」

「この、手紙は?…確かに貴方の名前みたいね」

 

 アリアンナが手に取ったのは恭也宛の手紙だ。

 

「なんか、宛先に俺の名前と知らない名前があったんだけど、流石にこの国の言語までは読めなくて。しかもここに来たのは完全に予定外だったんだ。なのに手紙があるってのが気味悪くてさ」

「そうね……貴族っぽい挨拶から始まってるけど、結局はこれに尽きるわ。“あなたをカインハーストに招待します”って内容ね」

「カインハースト…それって」

「恭也!アルフレートってやつが言ってたお城だ!血族とか言うやつがいるとこ!」

 

 アルフレート。己を穢れた血族狩りと自称していた、奇妙な車輪の武器を操る狩人の一人だった。彼らと出会ったのはまだ記憶に新しく、この招待状はともすれば、彼が探し求めていたそのものと言ってもいいだろう。

 

「じゃあ、こっちのはアルフレートって書いてありますか?」

「これは…いえ、違う名前ですね。少なくとも私が知る名前ではありません。…いえ、ですがまさかこれは」

 

 これが、と目を瞬かせて尋ねるも、帰ってきたのはそこまで事態はうまく動かないという事実であった。とはいえもう一つの招待状を手にしていたアデーラのほうは心当たりがあるのか、アリアンナとともに恭也へ手紙を返して言う。

 

「この名前、狩人様の名かもしれません」

「狩人さんの? なんて読むんだ?」

「それは…御本人から聞いたほうがいいかもしれませんね。同じ時期にいらっしゃった異邦人。同じ場所に手紙があって、同じタイミングで宛てられたのならば、というだけの予測に過ぎませんので」

「なら、聞いてみるよ。本当にありがとうアデーラさん、アリアンナさん」

 

 懐に手紙をしまい直し、焔薙とルドウイークの長銃の装備を整えた恭也はオドン教会の入り口へと手をかけた。今度こそ、出発だ。と思っていたのだが

 

「キョーヤさま、最後にこちらを」

 

 アデーラが取り出したのは、聖布で注ぎ口を塞がれた血の入ったガラス管。そして小さな皮のポーチに入れられた、この街の狩人が用いる水銀弾と呼ばれる狩り道具。

 それのベルトを恭也に握らせ、祈るように彼の手を両の手で包み込む。

 

「これは、我々教会の血の聖女からの施しの血。狩人様にとって必ずお役に立てるものです。どうか、どうかお渡し下さい。あの方とは長らくの間、会えない気がするのです」

「輸血液…だっけ。アイリーンさんも使ってたやつか」

「そしてこちらは、貴方の銃にも使える弾丸です。これだけしか見つかりませんでしたが」

「大丈夫、これで十分。ありがとうアデーラさん」

 

 受け取り、水銀弾のポーチは腰に。ガラス管を大事なモノをいれる小袋にしまい込む。恭也は最後に、全員へ深く頭を下げてオドン教会の炎の外へと飛び出していった。もちろん行く先は、大階段を昇った先にある大聖堂の向かって右側、もう使う人間もいなくなった険しい崖道である。

 入り口の向こうが炎のゆらめきで埋め尽くされ、彼の姿は以前と比べて瞬く間に見えなくなる。二人、勇気ある探索者を見送ったアデーラは祈りの手を解き、いつのまにか椅子に座り直したアリアンナへと向き直った。

 

「渡すのね」

「はい。今の私は血が多い方ですので。これくらいならば負担にはなりません」

「そ、羨ましいわ」

「ところで、カインハーストとやらの手紙を随分と流暢に読むのですね」

 

 アリアンナの指がピクリと反応する。

 確かにアデーラも手紙を手にとってはいたが、彼女にとって見慣れない文体は貴族めいていて、宛名はともかく文章も読みづらいものであった。

 対してアリアンナは、さらりと目を通しただけで内容をすべて把握してみせた。

 

「遠くにある良いものより、近くにある愚かが好きなのよ。なんて、ね」

 

 お望み通りにと気取ったように言ったアリアンナに、かぶりを振る。

 

「まぁ、詮索はしません。全ては詮無きことです」

「フフ、そう?今の貴方とのおしゃべり、私は結構好きよ」

「そうですか。私はそうでもありません」

 

 二人の会話を聞いていた初老の男はうげえ、と本気で吐き気を催した表情で少し離れた。確かに、今ここにいる全員があの二人が戻ってくるのは相当先になりそうだと言う予感があったが、それはそれとして醜い女の腹のさぐりあいなど好き好んで聞きたいものではないのだ。

 

「ん」

「あら?」

 

 アリアンナは布の敷かれたテーブルに寝かされた眠る少女、アヴァを撫でながら少しばかりのおしゃべりに興じていたが、手元から聞こえてきた声に首を傾げた。

 先程から、目覚めてから青い炎を見つめてゆらゆらと眠りに戻る少女が再び目を覚ましたのだ。恭也は無理に起こそうとせず、静かに会話をしていたが、タイミング悪く目覚めの瞬間には立ち会えなかったらしい。

 

「お兄ちゃん、は?」

「もう行っちゃったわ」

「そ、っか」

 

 うとうと、ゆらゆら。そうして炎をしばし見つめて、アヴァは意識を深く落としていく。その小さな体が背負うには、あまりに重い運命。獣を克し、しかし目覚めは遠い。この街の住人にとっては明らかな偉業を成し遂げた彼女は、今このコミュニティにおいて最も弱く、そして皆が少しばかり手を差し伸べる存在だった。

 あの老婆ですら、わずかばかりの硬い焼き菓子を握らせている。

 

「……待ちましょう」

「そうね。そう、それしかないもの」

 

 住人たちは確かに命を守られているが、このあまりにも長すぎる夜は自由に動ける狩人でもなければ、今度は飢えが彼女らを襲う。そういう意味では、たしかに初老の男や老婆のあまり動かず、家から持ち込んだ最低限の食料をちまちまと食べ、下手な交流をしないというスタイルは理にかなったものだった。

 だがアデーラは狩人のために血を消費し、アリアンナはアヴァのために必死に看病を続けた。隠しきれない疲労が、リミットを縮めてしまっている。

 オドン教会の人間として当たり前の不安はまだまだ拭いきれていないのが実情である。だが、しかしだ。彼らは知らない滅びと狂い捻り曲がった運命は、たしかに退けられていた。

 それを知らぬは、幸か不幸か。

 

 だが少なくとも、彼女にとっては不幸であった。

 この炎がもたらす鎮静は、心の底から安心を生むもの。薬で抑制できる範囲をすら超えた神使木る伝(ケルビム)の加護は、あくまでも人の心が分からぬ上位者の齎した加護であると言わんばかりに。

 

「可愛い……パッチちゃん……どうして」

 

 正気のままに、顔を覆う。

 この現実を避け続けた孤独な老婆にとっては、不幸であったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 往復した狩人の行き先は、夥しい死体に溢れた道であった。だからこそ死体が標となり、彼のもとに案内しているとも言うのだが、それはそれとして多くの人間に見える死体が通りにあふれかえる光景というのは、恭也にとっては辛いものであった。

 

「うわ、色々折れてる」

「狩人が蹴り落としたんだろうな」

「かな。にしても、アルフレートさんも待ってるってとこに居なかったし、どこ行ったんだろ」

 

 大階段のすぐ下まで来ていた恭也は、せっかくだからと手にしたアルフレートにとっての最大の手がかりである手紙を携え、かつて通った禁域の森に向かう階段の踊り場へ目をみやったのだが、近くに人の気配はなくなっていた。

 今度こそ狩人との合流を目指している恭也からしてみれば迷う案件ではあったが、結局は狩人の痕跡を辿る方を優先した。同じくどこに行ったかわからない人物であるのなら、明確に行き先がわかっている方を優先するのは自明である。

 

 また、ノコギリ鉈という痛ましい武器を用いられた死体という目印はこの上なく目立った。そこまで迷うこともなく、恭也は大聖堂を右に逸れ、射手がいたであろう崖道を通り、ボロボロの扉を抜けて到達したのだが。

 

「……なんだアレ。アーモンド?」

「あっ、みんながいる教会の外に似たやつ居たぞ。燃えてからは居なくなってたけど」

「え?あんなでかいのに?見えなかったぞ俺」

「ってことはアイツも普段は見えないやつか」

 

 狩人の姿は見えず、代わりに見えてきたのは新しい怪物。

 恭也が表現したようにアーモンド状の頭部に、やせ細った体からは無数の手足が生えている虫のような印象も受ける姿は、その巨体も相まって常軌を逸した怪物であることは間違いない。

 彼らは知る由もないが、アメンドーズ、と名付け呼ばれているその存在はかつての神秘の探求者たちにとっては最も名が知られた上位者の仲間だった。

 

 もっとも、恭也たちにとっては最初に見た聖職者の獣よりかは見慣れた怪物だ。一定の距離を保っていればこちらを見るだけで特に何をしてくるでもないアメンドーズの動向を監視しつつ、呑気に会話を交わす余裕があった。

 

「美耶子、見えてるか?」

「ん……うん、私の目を使ってみて。あの医者の女が居たとこみたいに、変な流れがちょっとだけ見えるぞ」

 

 頭に片手をあて、美耶子の視界をジャックする。彼女の言う通り、自分の視界では見えなかった僅かな赤い痕跡が、目の前の怪物が張り付いている場所の下にある扉の向こう側に続いている。

 そして視界ジャックのアンテナを変えてみるが、この化け物の視界にリンクすることはなかった。羽生蛇村の神、堕辰子同様にある程度次元が高い相手にはジャックできないのは他の異界の経験から理解していたが、目の前の怪物は上位の存在であるらしいと情報を得る。

 ジャックを終えた恭也は改めて自分の視界でアメンドーズを見やったが、あいも変わらず多腕のアーモンド頭は恭也を、正確には美耶子のほうを見つめて静かなものだった。一歩、その長い手が届きそうな範囲に踏み出してみるも、動き出す様子は微塵も見られない。ギョロギョロと瞬きするように、アーモンド頭の縫い目から無数の視線が刺さるばかり。

 

「追いかけてみるか。前みたいに案内頼んだ」

「わかった」

 

 アメンドーズの下の扉を彼がくぐれば、ヤーナムの空がまた見えてきた。暗く、陰湿で初めて訪れたものを拒絶するかのような不快な雰囲気。だが階段を少し下るだけで見えてくる。あれは、見たことがある。

 人をそのまま鍛造したかのようなオブジェ。確か、隠し街ヤハグルと呼ばれた場所ではなかっただろうか。

 

「恭也うしろ!!」

 

 不意に、チリンチリンと微かな鐘や鈴にも思える音が鳴り響いた。鞘から引き抜いた焔薙を構えるや否や、農具を手にした民衆が異様な形相で恭也に襲いかかった。刀身で4つ又の鋤をとっさに受け止めるが、これまで戦った正気を失った市民よりも若干強い押し付ける力に耐えられず転倒してしまった。息をつかせず再度ねじり込んできた鋤の切っ先が襲ってくるが、恭也は体を捻って地面を転がり立ち上がり、ルドウイークの長銃を背中から左手に握って引き金を引く。

 飛び出した散弾が民衆の手から鋤を弾き飛ばし、そのまま膝と腹を貫通する。相手が怯んだ瞬間を見逃さず、肉薄し焔薙を横に切り払った。首が飛び、一瞬遅れて青い炎がその体を覆い尽くす。だが炎が燃やし尽くすよりも先に、その体はまるで飛び散る血液のように弾け飛んで中空に溶けていった。

 

「あいつ、いきなりなんにも無いところから出てきた。消えたときも一緒だ」

 

 美耶子の視界から見ても、先程の敵は余りにも唐突に出現していた。これまでと違って、遠方の索敵がほとんど機能しない厄介な敵の出現は、オドン教会の人々との交流で緩んでいた恭也と美耶子の意識を切り替えさせる。

 

「だから死体が見当たらないのか…変な流れが見えてよかったな」

「それにさっきチリチリ聞こえてたのが怪しいぞ。アイツらどこから来るかわからないから、一気に行った方がいい」

「わかった。なんかあったらとにかく言ってくれよ」

「うん!」

 

 未だに声だけしか聞こえないが、言葉をかわすことができるからこそ、美耶子はこの上なく嬉しかった。これまで見ていることしか出来なかった恭也の役に立てる。自分が無間地獄に引きずり込んだ罪に、報いることができるのだから。

 

 恭也は息を整え、啓蒙がもたらした知識により長銃に水銀の弾丸を再装填する。啓蒙とやら、気味の悪い湧きあがる知識ではあるが、異界に存在した何かしらを利用してこれまでもリスクを承知で使ってきた。いっとき己に流れ込んだ赤い水。そして美耶子から分けられた血による不死性。彼らは前に進むしか無い。それがどれだけ、先のないことだとしても。

 

 チリン、チリン、とどこからとも無く聞こえて来る鐘の音。耳を済ませるよりも先に走り出した恭也は、相棒の視界からもたらされる赤い流れに従って先を進んでいった。やたらと階段が多く、建物の中を通り抜ける複雑な地形は何を思って建造されたものだろうか。

 先程みたアーモンド頭の怪物(アメンドーズ)が張り付いた階段を通り抜け、しばらく進んでいけば、やはり見たことのある景色だった。アデーラ、狩人と一緒にヤーナムの聖堂街へと戻る道を探していた場所。大きな豚が跋扈する大階段が特徴的な広場だ。

 だが見覚えのある場所に、見覚えのない生物が増えていた。先程からチラホラと見かける、妙に赤く染まった幻影のような獣狩りの民衆。そして、棺から飛び出た人間のパーツが積み重なった肉塊。

 辟易する化け物ばかりで、救われない。

 

「全部ぶっ壊す。こんな所」

 

 一度来たから、ここには求めるものがなにもないのはわかっている。

 長銃を背中に仕舞い、宇理炎を握る。

 突き出した煉獄の炎は、焔薙と違う滅びの炎。

 

 広場を明るく照らした異界の理は、先を進む狩人を振り返らせた。

 

 

 

 

 

 

 

 ノコギリ鉈に滴る血が、風に煽られ地面に落ちた。

 

 己が通ってきた広場から、異質な熱を感じる。

 陰鬱な街を照らす明かりは、いつぞやに見たことがあった。あまりにも苛烈な炎がこのヤハグルの雄大な建造物の陰影を強め、火柱を立ち上らせている。この秘匿が消え失せたヤハグルには、求めてやまない情報や、使えそうな物資も含めて得られるものが多く、寄り道で時間を浪費していたが、それが今の自分にとって幸運になったらしい。

 

 狩人が踏み入れようとして目を向ける先。そこには確かになにもない筈なのに、心臓を嫌に突き刺す淀んだ予感がしてやまない。これまでの戦いを幾度となく夢としてきた狩人であったが、この度に相対するモノは、獣ではないという妙な確信を持っていた。

 

 狩人は未だに「人」のままであった。

 記憶のすべてを亡くし目覚めてからというもの、自筆であること以外は何もかもが不明なメモに書かれた「青ざめた血」を探してこのヤーナムをさまよっていた。人間的で困惑も顕にした小市民じみた仕草は、いつの間にか「狩人」としての振る舞いに代わり、冷徹なまでに戦うようになっていた。

 重ねて思い出す。戦ったことすら無い素人であり、気取った口調も馴染まぬ一市民しかなかったはずなのに。記憶がなくとも、最初期の人格は間違いなく狩人などという強者ではなかった。

 その性根が、人として感じられる最大の警鐘が、啓蒙とやらの陶酔を超えて足を止めさせる。この先に進むと後戻りはできないのだと。

 

 故に、後方の炎を目にした狩人はこの場にて、彼らを待つという選択肢を取った。

 近くに落ちていた頭蓋に絡まるナメクジ共を踏み潰し、薄汚れたレンガの壁を背により掛かる。おもむろに酒混じりの血液を取り出し、口に含んだ。生臭く鉄臭いはずのそれを甘美に感じながら、思考と体を落ち着かせる。

 血液は狩人としての体を滾らせ、僅かな酒精は人としての乾いた心をほんのちょっぴりだが潤していく。

 

 飲み干し、吐き出した息は霜となる。

 空の瓶を持ったまま白く立ち上って消えていくそれを見届け、目を瞑った。

 

「貴公らが間に合って、良かった」

 

 他でもない自分自身に向けた言葉は、紛れもなくこの狩人が弱い人のままであることを表していた。

 

 あたりに散らばる無数の屍を築き上げた彼が、未だに弱いままであることを。




アーマードコアの新作が出るので記念の投稿です

今のところはしばらくゲームどおりにボス倒して進んで~の流れの模様

恭也くんほんとにこんなところで美耶子と触れ合える術があると思ってるんですかね
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