SIREN in Bloodborne   作:猫屍人

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贄実の生血

神の花嫁、神代美耶子の「分けられた血」
HP全回復に加え、一定時間、怯みを無効化する

神の贄となるため、生まれながらに存在しない
やがて肉体すら果てても死なぬ者の血
解呪のため、新たな呪縛が生まれるのは摂理であった


青雷

 黒き骸骨のような獣。その咆哮は命あるものとは程遠い、板を掻き毟るような絶叫。それと同時に空気に弾けた青の雷が迸り、大地をも這って大きく伸びた。明確な敵意と意思を持って恭也たちを傷つけようと迸る青雷に対し、恭也と狩人は左右にステップを刻むことで初撃を躱す。

 彼らの衣服の先を黒く焼き焦がした青雷は、見ているだけでも目に痛みが走るほど。骸骨の頭を持った異形の獣は、やはり骨を擦り鳴らすことで再び咆哮を上げ、その筋張った右腕に3本もの巨大な鋭爪を並べ立て、雷とともに恭也のほうへと振り下ろした。

 

「恭也! もっと後ろ!」

 

 空気を伝わる連続のラップ音。爪の間合いから逃れたかと思えば、音を立てて体中から湧き出る青雷がその爪先から放出され、枝分かれする。恭也の体を掠めて飛んでいった雷は、しかし掠るだけで彼の体を内側から焼き尽くす。

 美耶子の叫びに反応するも間に合わず、焼け焦げ損傷した内蔵から逆流した血液が彼の口から吐き出された。その弱った恭也のほうが仕留めやすい獲物だと判断したのか、青雷の黒獣はなおも彼に対してその体躯を存分に使った飛びかかり攻撃を敢行する。

 長い黒毛が慣性に引かれて一瞬Uの字を描き、そして重力に従いまっすぐと伸びた。黒獣の体はこれまでになく帯電しており、着地と同時に狩人をも殺し尽くそうとする悪意をすら感じる。

 

 されど、狩人がそれを見逃すはずもない。恭也が諦めるはずもない。

 狩人はアデーラを逃した壁際までは雷が来ないであろうと当たりをつけると、迷うことなく黒獣の着地点へと急行。そして恭也は一瞬白く剥いた目に生の輝きを取り戻しつつ、崖際の木柵へと急いで走り、パールの着地を避けると同時に木柵から大きく跳躍した。

 

 目を焼くほどの青雷が、旧市街の外壁を青く染め上げる。

 

 人の丈よりも小さな人工物はみな黒煤へと帰す。暴力的な雷の破壊の跡は着地点を大きく抉り、宵闇をすら上回る黒い大地へと変えた。

 だが肝心の二人は依然として健在。壁際から反転し、伸ばしたノコギリ鉈を手にした狩人が眼光で射抜きながら駆け寄り、上からは恭也が蒼炎を灯した焔薙を翳して降ってくる。そして二人が黒獣に到達するのは同時だった。黒獣のドクロの顔が大きく縦に割かれ、胴体の下をすり抜けるようにノコギリ鉈を自らの背中から前へと振り下ろしながら駆け抜ける。十文字の傷を負った黒獣は、しかし血を吹き出さぬが故にさほど致命傷とは行かなかった。

 再び黒獣の体には青雷が迸り、帯電するその体は小刻みに震え始めた。予兆である、とは恭也も狩人も察していた。

 

「くそっ!」

 

 それはどちらの悪態か。

 ギリギリのところで体をかばった狩人の右腕は衣服ごと焼け焦げ、激痛を彼の利き腕にもたらした。だがそこは狩人、左の袖口から滑り込ませた輸血液を太腿へと打ち込んだ。

 恭也は彼の行動を予期して黒獣の意識を引き、宇理炎の炎を黒獣と狩人の間に打ち込むようにして燃え上がらせる。不死身の使者すらも焼き尽くす炎には本能的な恐れを抱いたか、反対側の恭也を脅威とみたか、先程よりも荒々しい動きで彼へと襲いかかる。

 

「恭也、もうあと6歩うしろ! そこだとアデーラを巻き込むぞ!」

「了解!」

 

 恭也が美耶子の指示のもと一人の立ち回りを繰り広げている頃、輸血液を己に打ち込んだ狩人の右腕は、焼け爛れた皮膚は吹き飛ばされ、内より新たな肉が吹き出る血とともに生え、まっさらな肌が現れていた。

 そして確かめる間もなく取り落としたノコギリ鉈を持ち直し、飛び込むように後ろを取った彼は体を弓のように限界までしならせ、ノコギリ鉈を黒獣へと振り下ろした。渾身の一撃は、獣の頑強な体を削り切る構造をした刃が骨肉を裂き、先のお返しだと言わんばかりに黒獣の背中から右腕へと飛ぶような切込みを入れる。それは深い深い、溝である。

 これにはたまらず苦悶の軋みを上げた黒獣は(自我と呼べるものがあるかはわからないが)、我を忘れて放電の準備をしはじめる。だが、二人にとってそれはあまりにも愚かで鈍い選択であった。

 

 焔薙の炎が一層の揺らめきを見せ、轟々と燃え上がる。今度は狩人が恭也の意図に気づき、彼は隙だらけの黒獣の手足を深く切り込んだ。人の身の丈をいくつ積んでも足りぬ巨躯は膝を折り、地に伏せる。そして集まっていた青雷は散り、ついに黒獣の体から光が失われる。

 代わりと言わんばかりに、蒼炎が黒獣の頭蓋を貫いた。やがて蒼炎が黒獣の顔から体へと燃え移り、皮肉にも同じ青の光に身を包まれながら黒獣は炎上する。だがこれはただの炎ではなく、退魔と消滅の荒れ狂う炎でもあった。穏やかな最期は許されず、黒獣の体毛その一本に至るまで炎が回ったところで炎が獣の内より弾け飛ぶ。

 

 蒼き火花を散らし、黒獣が消滅していく。

 

 燃え尽きた跡、かの獣が宿らせていた青雷を閉じ込めた狩人証が残された。

 

「……あれも獣か。雷を纏うとは面妖なものだ」

 

 集中のあまり、釣り上げていた目元から力を抜き、狩人証を拾い上げ、握りしめた狩人がつぶやく。異界はといえば、特殊な能力を発揮する敵がいなかったわけでもない恭也にとっては慣れたものとはいえ、あれほど強大な存在が何体も存在するこの街は異常の中の異常であった。とはいえ、何度こんなことを思ったのかも定かではない。気が抜け、恭也は苦笑を漏らしながら体を大地に投げ出した。

 

「っあーっ! きっつ!! ほんとなんなんだよ獣って!」

「成れの果てであることは、確かであろうな」

「お疲れ様、ふたりとも」

 

 息を切らす二人は、短いながらも濃密な戦闘から生還できた互いへと健闘を称え合う。倒れている恭也へと、武器を仕舞い込んだ狩人が手を伸ばしてきた。彼はにっこりと笑って、その手を掴んで引っ張られ、立ち上がる。

 

「背中が煤だらけだ」

「えっ、ああ。そういえばさっきの電撃で地面ごと焼けてたっけか」

 

 あの目が眩む様な雷光と、身が内より焼き尽くされる痛みを思い出す。恭也も撃たれる斬られる焼かれるといった稀有な経験をしてきたが、あの痛みを痛みで上書きするような全身を走る衝撃は忘れられないだろう。

 汚れと記憶が恭也の表情を七変化させた。もちろん、辟易とした表情である。

 

「あのような恐ろしい獣を狩るとは……あなたは、優れた教会の狩人なのですね」

「アデーラさん」

「狩人様、素晴らしい…」

 

 顔をほころばせ、狩人を称賛するのは避難していたアデーラである。連れ去られ、同じ境遇の人間がいる牢より抜け出したかと思えば、聞こえてくるのは人の悲鳴。そこに己が信じる教会の背布を身に着けた狩人が現れた。

 救いそのものである。もとより妖しげな瞳の色を灯していた彼女は、比類なき狩りの腕を見せた狩人に熱っぽい視線を乗せていた。恐ろしく、強大で、闇のように深き黒く異端の雷を纏った死の権化のような獣に挑み勝利する姿。とどめを刺した恭也の姿も、彼女の頭の中ではすでに狩人の姿へとすり替わっている。

 

 彼女は浮ついたような声で言う。

 

「ああ、狩人様。私をお救いくださりありがとうございます……」

「貴公……」

 

 狩人は一瞬で、彼女の内に秘める危険性に気づいたが、あえて目を伏せた。緊張感のあまり、高揚が過ぎただけであろう。そうであってほしい、と。狩人の人らしさを求める感性が、そのような結論を下す。

 思えば、彼女は他の生存者達とは毛色が違う。出会った状況も、安全な場所へと連れて行くための方法も。

 

「なんかあいつ、前にも増しておかしくなってるぞ」

「前にも? 美耶子、それって」

「でもまだ引き返せる。多分狩人も気づいてるからな、恭也は気にするな」

 

 美耶子の意味深な言葉に、恭也はアデーラの態度に引っかかりを覚えつつも、狩人がどうにかするというのなら任せるしか無いだろうと結論を出す。それよりも気にするべきは、ようやく安全になったこの場所からの移動だ。

 

 黒獣がいなくなったことで開放された扉の前に恭也はたち、歯を食いしばって強く力を入れる。重く巨大な扉は間違いなく一人で開けるものではないのだが、人の身を外れた力を持ちつつある恭也ならばギリギリで力が足りたらしい。舗装された道に積もった土を捲りあげながら、扉が半開きな場所で硬い音をたてて止まる。人一人が通るには十分で、変異した獣が通るには不十分な隙間ができた。

 

「狩人さーん?」

「うん、ああ、そうだな。先を急ごう」

 

 アデーラに対して何を言うべきか迷っていた狩人であったが、呼びかけによってその問題を後回しとしたらしい。彼女にはぐれず着いてこいと告げた狩人は、先行して扉をくぐった恭也の後へと続いた。

 

「やはり旧市街か」

 

 見覚えのある景色に狩人が呟く。

 

「知ってる場所?」

「あぁ、そこの廃屋から螺旋階段を登ればオドン教会はすぐだ」

 

 道の複雑さや飛び降りを繰り返すためアデーラには険しい道であるが、是非を問えば間髪入れず狩人についていくとのアデーラからの返事が帰ってくる。あまり良くない兆候が顕著になって現れているが、それももう少しの辛抱だろう。オドン教会での少女や、先に避難している幾人かの人間が、交流を持ってくれれば。

 

「なんか静かだな……」

「旧市街にはもう獣もいない、残っている獣も軒並み上層街にいるんだろうな」

「まぁ、なんか出ても関係ないけどな。今の俺たちならちゃんと獣も楽にしてやれるだろうし」

「なんかテンション高いな恭也」

「そりゃあ、アデーラさんも助かるし、みんなで頑張れたし。もうひとふんばりってとこだろ?」

「……あぁ、そうだな」

 

 狩人も相槌を打ちながら、これまでにしてきた獣狩は、最終的には生き残った人々への不安を晴らすための間違っていないものであるのだろうと己を納得させていた。だが今でも思い出す。この旧市街に初めて足を踏み入れた時、銃撃の雨を降らせてきていた古狩人の言葉を。

 それでも、もはや狩人の道は踏み外すくことなく止まれないだろう、とも。

 

「狩人様?」

 

 長考にふけっていた狩人を呼び戻したのは、アデーラであった。彼女になんでもない、と返した彼は上り詰めた螺旋階段からのルートを各人に教えていく。

 

 

 

 

 その後、彼らは程なくしてオドン教会の門戸を再び叩くこととなった。獣避けの強い香の匂いと、むせ返るような澱んだ空気は相変わらず。だが、それゆえに安全は保証されているということがよく分かる。

 

「あぁ、教会の方の匂いがする。よかった、まだまともな人はいたんだな……なんて」

 

 赤い衣の男は新たな避難者を歓迎する言葉を発したが、アデーラに無視をされてしまった。そのことで多少は落ち込むも、助かる命があるのならと諸手を挙げて喜んでいるようにも見える。そんな中、オドン教会に戻った恭也にはひとつの気がかりがあった。

 

 引っかかりを覚えたまま辺りを見回してみれば、なるほど、確かに避難者は増えている。だが肝心の、恭也が連れてきたガスコイン神父の娘、アヴァの姿が見当たらないのである。狩人は到着して早々、アデーラから話し相手として捕まってしまっているためあてにはならない。

 

「なぁ、アヴァはどこいったんだ?」

「ぅっ……その、さ」

 

 そうなれば、必然と質問の相手は限られる。

 赤い衣の男は怯えるように身を竦めた。恭也の問いが、尋問のようだと感じたらしく両手で体を抱いて震え始める。そんなつもりはないのだと恭也が優しく諭しながら男に話を聞くと、彼は何度も謝りながらに語った。

 

「獣避けの香が切れかけたんだ。そ、そしたら、あの子は他の家にさがしに行くって言って飛び出しちまった。あの子、武器ならあるって墓地のほうへと行っちまって……」

 

 頭を抱え、泣きいるような声で赤衣が続ける。

 

「なぁ、あんた、お願いだよ。あの子を探し出しておくれ。きっと、香をあまり使わない市街地に戻ってるんだ。いくら獣を狩ったとして、尽きないわけじゃない。不安だ、お願いだよ……あんな優しい子を失いたくなんてない」

 

 加えて、赤衣の男にとっては本当に奇跡のような存在であった。笑顔を向け、真摯に己の行為に取り合ってくれる少女アヴァは、赤衣の男という教会に住み着くほどの人間が信じる神よりも大切にしたい存在。

 そして恭也もそれほどの思いは無いけれども、まっとうな人間の一人としてうなずかないはずもなかった。

 

「もちろん行くさ。情報ありがとう。他の人にも少し聞いてみるから、安心して待っててくれ」

「あ、あぁ……ありがとう、ありがとう」

 

 何度も悔いるように告げられる感謝の言葉は、恭也というよりも自分への贖罪のようにも聞こえる。今日この時に至るまで、いったいどれほどの卑下を含めていたのか、これまで赤衣の男の生き方を知らない恭也にとっては、酷く哀れな姿に見える。

 

 とにもかくにも、情報収集だろう。今回は美耶子の視点でも痕跡らしいものを見つけられなかった恭也は、同じオドン教会へと避難してきている人間へと語りかけたのだが、

 

「余所者に話すことなんて無い。俺には分かるんだ、分かるんだよ! おまえは俺を騙して脅そうってんだろ!? その抜身の剣がなによりの証拠じゃあないか」

「いや、これは…」

「狩人でもない余所者め、所詮俺たちなんて搾取する田舎の負け犬とでも言いたいのか…!」

 

 と、偏屈な男には真っ向から否定され、

 

「あぁ、優しい子。アタシの可愛い可愛い息子よ。でもね、優しいあんたがわざわざ外に出たやつを探さなくたっていいんだ。あんたも危険だから、外には出るんじゃないよ」

「ええっと、その、おばあさん」

 

 と、真実を違えた老婆には諭される始末である。ヤーナムの住人はかつて少女の言ったように、たとえ夜を生き延びても次第に偏屈者と成り果てる事が多く、また常識では測れない会話も多い。特に後者の場合は一見普通の受け答えに思えるが、一方的で過去の映像しか見ていないような物言いであるのだから、彼女もまたヤーナムの異常の犠牲者とも言えるだろう。

 

 こうなると、あとはアデーラとは別の意味で妖しげな雰囲気を醸し出す高嶺の花のような女性が頼りなのだが、恭也にとっては少しばかり気後れする相手であった。なんせ、現代日本で健やかに過ごしていた恭也にはまだ出会ったことのない人種……赤衣の男いわく、娼婦であるというのだから。

 

 しかし、そんな恭也の心情もお見通しといったところだろうか。難しい表情を浮かべつつも近づく恭也に対し、娼婦の女――アリアンナは、極めて自然に浮かべた美しい笑みを携えていた。

 

「坊や。聞いていたわ。アヴァちゃんなら知り合いの家を当たってみる、ってつぶやいていたわよ」

「本当ですか!?」

「ええ。それにあの子、あのガスコイン神父の娘さんなんですって? あの子、あなたの事を、お父さんとおじいさんとお母さんの次に、頼れるお兄さんだなんて事も言っていたわ。本当に、素直で可愛らしい子だったわ…本当に……」

 

 だから、こんな自分が接するべきではないと彼女は目を伏せる。

 

「えっと……」

「ごめんなさいね、最後のはただの独り言だから。さ、早くいきなさいな」

 

 微笑と共に、ひらひらと手を振ったアリアンナもまた、少しばかり偏った性格ではあるらしい。そんな彼女は考え事をするかのように座り直した。恭也も第一印象で苦手意識を持っていた相手にこう言われてしまえば、第一印象が恥であると認めざるを得ない。

 彼は言葉少なく一礼し、その印象についての謝罪を伝えてアリアンナに苦笑されたところで、恭也は再びとなるオドン地下墓地へ続く階段へと足を向けた。

 

「なんていうか、不思議な雰囲気の人だったなー」

「浮つきすぎだぞ恭也」

「いや違うんだって! こう、いい匂いがすっげーしてたから―――」

「ふんっ」

 

 言い訳を重ねながら、恭也は最終的に美耶子へと謝った。とはいえ時すでに遅し。女性としての魅力を比較されたようなものである。繊細で複雑な美耶子の感情は、いまは恭也に対してツンとした出会った当初のような心持ちに戻されている。

 きっとこれも、美耶子なりのエールでもあるのだろう。きっとそうであったならばいいなぁと、背中から毒舌を受けながら、恭也は地下墓地のほうへと再び消えていった。

 

 

 

 

 その頃、オドン教会ではまだ狩人たちの話は続いていた。

 とはいえ、アデーラは熱狂的に広げていた話の途中ではたと、狩人の時間を無駄に使っているのではないかと気がついたらしく、その頭を深く下げた。

 

「あぁ、狩人様、貴重なお時間を使ってしまい申し訳ございません」

「い、いや、良い。気にするな」

 

 面食らった狩人がすかさず静止させる。すると彼女はすぐさま姿勢を正す。まるで言いなりになる人形のような応え方である。どこか、おかしい。

 そうわかっていてもどうにもできないのが現状である。逃げるように視線を泳がせつつ、こうなれば腹をくくるしか無いだろうと諦めをも含んだ決意をし、狩人はアデーラに告げた。

 

「それより、貴公。この場所ならば安全故にな、この夜が明けるのを待っていてもらいたい」

「ええ、もちろん、もちろんですとも。医療教会の助けを待ちます。もちろん、狩人様が望むならば血の施しとて……」

「血の施し……」

「ああ、申し訳ありません…出過ぎた真似をいたしました……俗体など、貴方に相応しいはずもありません」

 

 深く問うように唸った言葉は否定に聞こえたのか、せわしなく瞳を動かしながらアデーラが狩人に謝った。そんな彼女のうちに眠る熱狂がいつしか冷めることを祈りながら、狩人は踵を返し、大聖堂側の出入り口へと向き直った。

 

「では、私は禁域の森へ向かおう」

 

 口元のマスクを目元まで引き上げながら、武器を片手に狩人は走り去った。

 あの娼婦や、出る時に舌打ちをわざわざ効かせてきた偏屈な男ともいずれは言葉を交わさなければならないだろうなと思いつつも、恭也のようには上手くいかない苛立ちも少し携えているのは仕方のないことだろうか。

 

 そして秘密と神秘のため、奔走する彼の姿が見えなくなったところで、アデーラはひたすらに祈りを捧げるポーズで下を向いた。酷く恍惚とした、尼僧にあるまじき表情を浮かべながら。




SEKIRO中盤初期ボスの弦一郎をやっと倒せたので投稿です


あと本文中にネタっぽく入れたのは魔が差した
反省も後悔もない。でもオルフェンズは好きです 第一期

4/17追記 サブタイトル変更しました
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